葦毛の少女と走る道   作:柳 明音

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追記
主人公の名前、知人より「初見で読めない」といわれましたので
漢字を変更しております。
本編には影響はありません。


1-2.選抜レース

 

「快晴!今日は絶好のレース日和だな!この天気だと新入生たちも自分の実力を十二分に発揮できるだろう!!」

 

「そうですね!予報通りに晴れてくれてよかったです。」

 

理事長とたづなさんがたわいもない会話をしている。

 

「今日の選抜レースを見て、ぜひとも担当ウマ娘さんを見つけてくださいね!柳瀬さん!」  

「・・・正直なところ柳瀬さん自身に実績がありませんので、他のトレーナーさんと

 スカウトが被りますとかなり不利にはなりますが、、、

 最後に選ぶのはスカウトされたウマ娘ですので柳瀬さんもアピールすれば

 可能性はゼロではありません!積極的にスカウトしていきましょう!」

 

たづなさんからの屈託のない笑顔でそう告げられる。

 

「は、はい、、頑張ります、、、」

 

嫌味ではないと思うが正直に実績なしを告げられて、返事がどもってしまった。

そらスカウトしようと思ったら実績はみられるよなぁ

 

・・・新人トレーナーではなく二年間はトレセン学園に在籍しているわけだし、、

むしろ二年間も担当を持たないでなにしてたんだろうこのトレーナー?っ思われてスカウト断られる可能性高いのでは?

 

・・・・あれ?結構積んでない?スカウトするのかなり不利な気がするんだが、、、

 

そんなことを考えてるうちに選抜レース開催のアナウンスが流れてきた。

 

「さあいよいよ開催の時刻となりました!新入生による選抜レースの開幕です!

 新入生にとってはトレーナーにアピールしスカウトしてもらうチャンスとなるレースです!!

 まずは第一レース、第一ゲートのウマ娘の入場です!第一ゲートは―――」

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「いよいよ最終レースです!最終レース、第1ゲート走者は――――――」

 

さて、ここまでのレースが終わったわけだが、、

 

「柳瀬さん、スカウトしたいウマ娘は決まりましたか?」

 

「何人かは候補がいますが、、、」

 

たづなさんに少し歯切れが悪そうに伝える。

 

「どのウマ娘でしょうか?」

 

候補に考えていたウマ娘の名前を伝えるとたづなさんは怪訝な表情をした。

 

「その娘たちはちょっと、、、難しいかもしれないですね、、」

 

たづなさんが気を使って答えてくれたのも無理はない。

俺が名前を挙げたウマ娘はレースで周りから一目置かれるような走りを見せた娘たちである。

周りの声に聴き耳を立てると実績のあるトレーナー達が候補に挙げているのも聞こえた。

十中八九、自分がスカウトしたとこで負けてしまうだろう。

 

「まぁとりあえずスカウトしてみます」

 

正直なところ、記念受験的な気持ちになってしまっているが、、、

 

「そ、そうですね!諦めたらそこで試合終了ですもんね!」

 

たづなさんの励ましが逆につらい、、やっぱり二年間何もしてこなかったのは痛いな、、

 

 

「―――第10ゲート走者はタマモクロス!ほかの娘たちと比べると小柄だがどのような走りをみせてくれるのでしょうか?」

 

そんなことを話していると、出場者の開設が流れてきた。ふとゲートに目をやると、、

 

「あの娘は・・・」

 

見間違いじゃなければ、一週間ほど前にぶつかった娘だ。かなり集中しているな、、、

たしかに選抜レースの勝敗はスカウトの結果に大きく影響するが、

あそこまで集中している娘はなかなか見ない。

それこそ今日の選抜レースで、上位に入賞してきた娘たちと同じぐらい、、、

いやそれ以上の集中力だ。

 

だが、、、、彼女からは”勝つ!”というより”勝たなければならない”という意思を感じる。 

・・集中するのはいいことだが、身体と精神に力が入りすぎているように見える。

 

「勝たなあかん。 こんなところで、、、、負けてられへん、、」

 

「さあ、いよいよ最終レース、すべてのゲートに走者がそろいました!間もなく最終レーススタートです!!」

 

彼女の様子が気になりつつも、レースが始まろうとしていた。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「はぁっ、、、、、はぁっ、、、、、はぁっ、、、、、!!勝つんや、、、、!

 絶対に、絶対に勝たな、、、、!」

 

「あーっとっ、タマモクロス、ここでいっぱいか!? 先頭集団から離脱!沈んでいくーっ!!」

 

 

 

 

結局、彼女は15人中10着という形でレースは終わった。

レース中の彼女の走りには、どこか余裕がないように見えた。

 

「タマモクロス、ね。レース序盤は目を引く気迫だったけれど、前のめりすぎてペース配分に失敗した、といったところかしら、、、」

 

「あの小柄な体格では、終盤の競り合いには体が追い付かないだろうな。となると逃げか先行を意識した育成となってくるか、、、」

 

「まぁそんなに考えたところでG1優勝を狙えるような素質はないでしょ。なんたって葦毛の娘は走らないですからねぇ」

 

「はははっ、確かにそうだな」

 

「それよりも2着になった〇〇〇のあの力強い走りが~~」

 

彼女の走りを評価するトレーナー達の声が聞こえてくる。あまりいい評価ではないようだが、、、

 

 

【葦毛の娘は走らない】

 

 

ただの噂話みたいなものだが昔からそう言われている。

しかし、これまでの歴史で葦毛のウマ娘が活躍していないことから、

ただの噂話が定説のようなものになってしまっている。根拠はなにもないんだけどな、、、

 

とにかくやっと全レースが終わったのだから、自分が目をつけていた娘をスカウトしに行くか、、

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「案の定、全滅か、、、」

 

やはり目をつけていた娘は、他のトレーナーも目をつけていて、

何の実績もない自分のスカウトを承諾してくれる娘はいなかった。

 

「一応また7月には選抜レースはあるが、、」

 

7月にまた選抜レースが開催されるため、もう一度スカウトのチャンスはあるが

素質のある娘はだいたいベテラントレーナーに刈りつくされた後のレースになるので

まあ、、お察しの通りである。

もともと担当を持つ気もなかったし、今日だって理事長の顔をたてるために一応来てみただけだ。

たづなさんには頑張りましたが駄目でした(笑)と伝えておこう。

 

 

レース場を後にしようとすると

 

「ナメんなやッ!!ウチは勝ちたいんや!勝って勝って勝ちまくる!勝たんとあかんのや!!」

 

大きな怒号が聞こえた。あの声と方言は、、、タマモクロス、、か?

なにやらスカウトにきたトレーナーと言い争っているようだが、、

 

「―――バカにすんのも大概にせぇ!ウチはそんな半端な気持ちで勝負してへんわ!!」

 

そう言い放つと彼女はレース場を走り去ってしまった。

先ほどのやり取りは注目されていたものの走り去る彼女を追いかける人は誰もいなかった。

 

かという自分も追いかけることはできなかった。

追いかけたところでかける言葉は見つからないしな。

 

・・・今日はもう帰るか。

 

 

理事長とたづなさんにスカウトは成功しなかったことを伝えると

7月の選抜レース後もチャンスはあると言われた。

が、、、やんわりともうスカウトはしないと二人に話した。

二人とも残念そうな顔をしていたが、しょうがない。

これからもほかのトレーナーやウマ娘のサポートの仕事を主にしていき、

トレーナー業を本業でするのはやめておこう。

 

 

・・・もともとトレーナーになりたかったわけでもないしな。

 

挨拶の後、学園を出ようとすると、校舎裏で誰かの声が聞こえた。

なんだ?こんなところに誰かいるのか?

 

校舎裏をのぞいてみると、先ほどレース場を走り去っていった彼女がいた。

 

「君は確か、、、タマモクロス?」

 

彼女はこちらを向くと

 

「なんや自分? ・・・ウチになんかようか?」

 

先ほどのレース場での怒りからか、にらむような目つきで話しかけてきた。

 

「いや、帰ろうとしたら校舎裏から声が聞こえてきたんでな。なにやら随分と機嫌が悪そうだな。」

 

「うっさいな。アンタに関係あらへんやろ。用がないんやったらほっといてくれや」

 

「ずいぶんと取り付く島もないんだな。せっかく河川敷への道を教えてやったっていうのに」

 

「・・・ん?アンタようみると、河川敷までの道教えてくれた兄ちゃんか!?」

 

「覚えていてくれたか」

 

彼女の表情が少し柔らかくなる。

 

「道、教えてくれてありがとうな。おかげで練習できたわ。まぁ、、、今日のレースには活かせんかったけど、、」

 

「まぁ練習したことが本番で発揮できないなんてよくあることさ」

 

「そうかもしれへんけど、、、な、」

 

さっきの会話で少し打ち解けられた気がしたが、気まずい空気になってしまった。

 

「なぁ、よければ教えてほしいんだが、君はなぜそこまで勝ちにこだわるんだ?」

 

気まずい空気に耐えられないのもあり、レース開始前と後の彼女をみて気になっていたことを聞いてみた。

 

「なんやその質問?そりゃレースの勝ちにこだわることなんか、当たり前やろ。みんな勝つためにレース出とんのやから」

 

「確かにそうだが、君の様子と走りを見てると「勝ちたい」っていうより「勝たなきゃならない」って感じがしたんでな。ちょっと聞いてみただけだ」

 

彼女の表情が一瞬こわばった気がした。

 

「なんやそれ。へんなやっちゃな自分」  

 

しばらく間が空いて、彼女はこう続けた。

 

「ほなウチもういくわ。声、かけてくれてありがとうな。だいぶ落ち着いたわ。」

 

「お礼をいわれるようなことはしてないと思うが、どういたしまして」

 

そう言うと、彼女はレース場の方向に走り出していった。

 

 

去り際の彼女の、少し思いつめたような表情が妙に胸に残ったまま、帰り道についた。

 

 

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