主人公の名前、知人より「初見で読めない」といわれましたので
漢字を変更しております。
本編には影響はありません。
最初の選抜レースも終わり、約二週間がたった。
外のレース場を見ると練習しているウマ娘が見える。
選抜レースでトレーナーと契約を結んだウマ娘は担当トレーナーと練習を、
残念ながらスカウトされなかったウマ娘は自分で練習方法を考えながら練習をするか、
手の空いているトレーナーに見てもらいながら練習している。
ふと目をやった先に、見たことのある葦毛が見えた。
緑の帽子を被った人となにか話しているのが見える。
なにやらたづなさんがタマモクロスになにか提案しているように見えるが、、、
まぁなんでもいいか。
この先担当を持つ気のない俺には関係もないだろうし
そんなことを思いながらこの日は家に帰った。
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□次の日
「魚梁瀬さん、今から少しお時間よろしいですか?」
今日も一通り業務を終え、帰ろうとしていたところをたづなさんに引き留められた。
「まぁ、これから帰るだけなんで大丈夫ですけど、、」
「よかったです!実は会ってほしい娘がいまして、、、
数日前から練習の様子を見ていた娘なんですけど、
どうもオーバーワークな練習をしすぎるというか、
なにか焦っているのか自分のことを鑑みない練習を続けていて、、、
いつか身体を壊すんじゃないかと心配なんです、、、、
なので一回だけでもいいですから練習を見てあげてくれませんか?」
そう言うとたづなさんは、こちらの様子を伺うように見つめてきた。
そんな風に見つめられるとさすがに、帰りますとは言えない。
「一回練習を見るぐらい大丈夫ですよ。別にその娘と契約するっていう話でもないですし」
「ありがとうございます!では早速行きましょう!その娘はもう練習を始めていると思いますので!」
そう言って、たづなさんは俺を案内してくれた。
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「魚梁瀬さん、あの娘です」
たづなさんの正面に見えるのは見たことのある葦毛のウマ娘だった。
「タマモクロスさん。練習の調子はいかがですか?昨日お話したトレーナーさんを連れてきましたよ」
たづなさんの言葉を聞くと、彼女はこちらを向き、頭を下げて挨拶をしてくれた。
「こんにちはです。自分、タマモクロスっていいます。
昨日たづなさんから、理事長も目をつけている凄腕のトレーナーさんって聞きました。
実は自分、今なにしたらええかわからんくて、、、
練習してるんやけど全然速なってる気いせえへんし、、、
一回だけでええんで練習見てくれへんですか?
ウチと契約結んでほしいとか全然そういうんじゃないんで、、、ほんまにたのんます」
そういう彼女の声は少し震えているように聞こえた。
少しでもこの状況を脱却しようと必死なのだろう。
ただ、、、、たづなさん、俺の説明を盛りすぎてない?
二年間も担当を持ってない奴が凄腕のトレーナーみたいな注目なんてされたことあるわけないだろ。
ちらっとたづなさんのほうを見ると期待のまなざしで見ている。
いやいや、、、勘弁してください。
なにも答えない俺に不安を感じたのか、彼女は顔を顔を上げながら言葉を続けた。
「やっぱ、、、選抜レースでいい結果やなかったウチの練習なんか見てられへんですか?
・・・・ってあれ?もしかして、、あんときの兄ちゃんか?」
「・・・・三度目ましてだな。タマモクロス。」
「ははっ、そうやな。三度目ましてやわ。まさか兄ちゃんが凄腕トレーナーやったなんてなぁ」
「あー・・・そのことなんだが俺は凄腕でもなんでもない。
たづなさんや理事長はなぜか俺を評価してくれているが、
そんなやつが二年間も何も実績がないままトレーナー業やってると思うか?」
「・・・はい?今なんてゆうた?二年間もトレーナーやっててなんも実績ないん?」
「それどころか担当も持ったことない」
「ちょ、ちょいまって。ちょっと落ち着かせてくれんか。」
空気が冷えてる気がする。
もう春だっていうのに、、これは完全にたづなさんのせいだ、、、
そんな空気の中、彼女は話を切り出した。
「・・・いや、この際四の五のいってられへん。
ウチがいま伸び悩んでんのは変わらんし、なにしたらええんかわかってないのも変わらん。
改めてたのんます。一回だけでもええから練習、、、見てもらえへんやろうか?」
彼女は、必死で現状を変えようともがいている。
そんな彼女を見捨てるような非道なことはさすがにできない。
「・・・とりあえず、普段どんな練習をしているのか、見せてもらっていいか?」
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「はぁ、、、はぁ、、はぁ、、、、どう、、やろうか?、、、、」
一通り練習を終えたタマモクロスは、息を整えもせずこちらに話かけてきた。
「まずは軽く歩いて息を整えてこい、、アドバイスとかはそれからだ。」
そういうと彼女はレース場をゆっくりと歩きながら息を整えにいった。
練習を見せてもらったが、練習内容は悪くない。
おそらく彼女が伸ばしたいと思っているであろう部分を鍛えられる練習メニューになっていた。
問題は、、、練習中の彼女の様子だ。走っている最中に走ること以外を考えているような、、、
いや、違うな、、なにかを背負っているように感じられた。
そのせいか身体に余計な力が入り練習しても、いまいち成長につながっていない。
彼女はそのことに気がつかず、成長しないのは練習量が足りないと思いこんでしまい、
結果、オーバーワークをしてしまうという悪循環に陥ってしまっているわけか、、
たしかにたづなさんの言う通り、この娘はこのままではいつか壊れてしまう、、
考えていると、息を整えた彼女が戻ってきた。
「なぁ、、アンタの目からみてどうや?ウチが速ならんのは練習が悪いんか?
もっといい練習方法があるんか?なにしたらウチは、、、ウチは速くなれるんや、、?」
最後の言葉は、絞り出すような声だった。
やばいな、、本当に壊れる寸前な気がする。
「率直に言うと、練習内容は悪くない。」
「ほんまか!?なら、、ならなんでウチは速くならへんのや!?」
彼女は声を荒げた。
「原因は2つあると俺は思う。1つは、オーバーワークだ。
いくら練習内容がよくても自分の身体を壊すくらいの練習量をこなしていては逆効果だ」
「うっ、、でもウチは、、、、速ならんといかん、、
それでレースに勝たんと、、、、勝たんとあかんのや!!」
彼女は先ほどよりも大きな声を荒げた。
レース場で練習していた他のウマ娘やトレーナーがちらちらとこちらを見ている。
俺は言葉を続けた。
「もう1つの原因は、、、
その前にもう一度、この前会ったときと同じ質問をさせてもらっていいか?
タマモクロス、君はなぜそこまで勝ちにこだわるんだ?」
「・・・・前も答えたやろ。
レースの勝ちにこだわることなんか、ウマ娘やったら当たり前やろ。」
「・・確かにそうだな、、、だが君は、勝つことに縛られすぎているように見える。
そのせいか余裕がなく自分の力を十二分に発揮できていない。練習ですらこうなんだ。
本番なら言うまでもないだろう。
君は、、、勝たなきゃならない”呪い”をかけられているみたいだ。」
「アンタになにがわかるねん!!!」
瞬間、彼女の怒号がレース場に響いた。
「ウチが今背負ってるもんを、、、ウチの大事な家族の思いを、、、、”呪い”なんてバカにすんなや!!」
そう言い放つと、彼女はレース場を走って出て行ってしまった。
俺は彼女の気迫に圧倒され、固まってしまっていた。
「魚梁瀬さん!!何してるんですか!?早く追いかけてあげてください!!」
たづなさんの言葉を聞き、遅れて彼女を見失わないように必死に後を追いかけた。
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たしかこっちのほうに走っていったのを見たんだが、、、
見失ってしまった周辺の校舎裏をのぞくと、膝を抱えている彼女を見つけた。
「君のことをよく知らないのに知ったような言い方をしてしまい、すまなかった」
「・・・わざわざ追いかけてきてくれたんか ・・・謝るのはウチのほうや。
自分から練習見てアドバイスしてくれって頼んでんのに、
そのアドバイスに逆ギレするなんかありえへんやろ、、、」
彼女は膝を抱えたまま、弱々しい声で答えた。
俺は何も話すことができなかった。
「ほんまに、、ウチはなにやってんやろうなぁ、、」
「でもウチがレースに勝って、、チビ達や父ちゃん母ちゃんを楽させたるんや
、、これはウチにしか、、ウチにしかできへんのやから、、」
彼女は膝を抱えながらもそうつぶやく。
その姿はまるで――――――――
『俺が、、俺がやらなきゃならないんだ、、だって俺は、、』
――――――――昔の自分を見ているようだった。
「タマモクロス、君をスカウトしたい。」
俺は考えるよりも先に口にだしていた。
彼女はぱっと顔を上げ、驚いたような表情をしていた。
が、その後、疑うような目でこちらを見つめてきた。
「、、なんやいきなり、、同情のつもりか?」
「そんなつもりはない。」
「、、、いっとくけど、ウチが目標にしてんのはGⅢ、GⅡの勝ちなんかやない。
GⅠでの勝利や。それに一回だけやない。勝って勝って勝ちまくって、、、
ウチの名前を日本にとどろかせたるつもりや、、」
「わかっている。君が勝てるように全力でサポートする。」
「、、、、なんやそれ? なんで、、、なんでウチなんかにそんな期待が持てんねや!?
レースでは散々な走りのくせに、、、、
そのくせ口だけはいっちょ前のこというてるウマ娘なんか、、」
彼女は声を荒げ、こちらに聞いてきた。目には少し涙を浮かべている。
「それは、、、わからない。期待をしているのかと言われても違う気がする。」
「ただ、、、ただ君の力になりたいと思った」
あの時、なぜ咄嗟に彼女のことをスカウトしたのか考えてみてもわからなかった。
だが、昔の自分と重なった彼女を見て、考えるよりも先に言葉がでた。
だから、今、、思っていることを正直に彼女に伝えた。
「・・・正直なやっちゃな自分。 ええんか?ウチなんかで?
アンタが思ってる以上にウチが目指してる道は困難な道やで?」
「ああ、君がよければよろしく頼む。君のほうこそ実績のないトレーナーで大丈夫か?」
「・・・ウチが求めてんのは実績のあるトレーナーやない。
ウチと一緒に困難な道でも一緒に目指してくれる覚悟があるトレーナーや。
だから、、ウチのほうこそ、、よろしくたのんます」
そう言うと彼女は右手を差し出してきた。
俺は差し出された手を握り、彼女の、、タマモクロスのトレーナーとなった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
最初の導入部分まで、書き溜めていた分を投稿しています。
ここからまた、自分の中できりのいいところまで書き溜めたら投稿していくと思います。
また、物語は主に主人公視点とタマモクロス視点の2つの視点から書いていこうかなと思っております。
次は、タマモクロス視点でのここまでのストーリーを書ければと思っております。