ソレは無用のもの
必要のないものだから
だとして
足を得たいと願った蛇がいたならば、
その蛇はいったい
何になるのだろう。
…ひ………びきちゃ……ひび……
「響!」
自身の名前を呼ばれ、少女は跳ね起きる。
目を白黒させる少女の身体は、微かな揺れを感じていた。
横を振り向けば、親友の顔がある。
「もうすぐ着くよ」
その言葉を聞き、少女は窓の外を覗いた。
そこには大海原に浮かぶ島が見えた。
壮大な野と山を抱いた、緑豊かな島。
「間もなく、着陸態勢に入ります。シートベルトの着用をお願いいたします」
しばし寝ぼけた目で島を眺める少女だったが、アナウンスを聞いて身辺を確認する。
「楽しみだね、響」
そう言って笑いかける親友に、少女も笑顔を返した。
「そうだね、未来」
立花響 17歳
好きなものはご飯&ご飯
彼女はリディアン音楽女学院の学友と共に
修学旅行の真っ最中。
工程最後に訪れるのは、眼前の島
名を
管(くだ)渦(うず)島(じま)
国造りの伝承息づく、
神近き島。
──────────────────────────────────────
「—————といように、管渦島は神の国ニラルカナルからお越しになった、神様の手によって開拓されたとして、今お話したような祭事が受け継がれてきたのです。
一時は絶えそうになりましたが、島の観光地化。そして文化保全に携わった学者様方の助力もあり、この島は伝承と近代化を併せ持った島へ生まれ変わったのです」
観光ガイドの話を聞いていた立花響。普段の授業は、勿論意図してではないものの、居眠りや上の空になってしまうことが多い。が、今回の話に関しては、真剣に耳を傾けていた。
「さて、ではこれから自由行動になります。皆さん事前に調べていると思いますので、車には気を付けてくださいね」
担任の女性のアナウンスを受けて、各班がそれぞれ移動を始める。
「それでは、私たちも参りましょうか」
そう言って立ち上がったのは、班員の一人の寺島詩織だった。
「そうだね。それじゃ、えーっと」
同員の安藤創世が同意し、用意していた資料を取り出す。
「そ・れ・よ・り・も!」
言葉と共に勢いよく肩を組む板場弓美。その表情はいつになく興奮していた。
「やっぱり気の赴くままに島探検しましょうよ!」
その言葉に創世は嫌そうな顔をする。
「えー……折角いろいろ調べてきたのにぃ」
「いいじゃん!未知の土地に来たときは、風の導くままに進むのがいいって、アニメでもよく言ってるし!それに」
そして悪戯っぽく笑った。
「そっちの方が面白そう!」
「流れに身を任せるのも、また旅の醍醐味ですね!」
予想外に詩織も同意する。
「ちょっとぉ…」
その様子に創世は肩を落とす。そんな三人を見て、隣にいた響の親友、小日向未来笑った。
「響はどうする?」
そう尋ねる未来を見、響は少し悩んだ。
「ビッキーはどうしたいの?!」
「えぇぇ??……私は……」
詰め寄る創世に対し、たじろぐ響だったが、その視線がふと頭上に移る。
「あれ…」
目線の先、この博物館よりも離れたところ。海に突き出した崖がある。
そして、そこに建物の影だろうか。ナニカが、微かに見えたように思えた。
未来が隣で彼女の顔を伺う。
「どうしたの?…あ、崖があるね。何か見えたの?」
創世も目線の先に気付いたようで、目を凝らしている。詩織は入り口で配られたマップを開き、場所を確認しようとしている。
「うーん……地図にそれらしい場所は載っていないみたいですね…」
その言葉に、弓美は満面の笑みを浮かべる。
「そう!そういうのよ!私たちの求めているものは!!」
「えー私たち、ではないでしょ…」
弓美と創世の軽いじゃれ合いを、詩織は笑顔で見ている。
「響は、どうしたい?」
横を向けば、未来の顔がある。その、普通の女子高生ならば当たり前であろう風景に、響は心が安らぐのを感じた。
「そうそう!響特派員!!君の意見を申してみよ!!」
四人の視線が、響に向けられる。
「私は……」
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「思ったより…だいぶ…遠いわね……」
舗装されていない道を、歩く。最初は先頭で意気揚々と行軍していた弓美も、今では最後部で息を切らしていた。
「大丈夫?休憩する?」
創世が気遣うように後ろを向く。問うた少女は、片膝で息をしながら、弱弱しくサムズアップする。
「無理なさらないでくださいね。先頭が先頭ですし…」
そう言った詩織の目線の先には、三人よりも少し遠く、登っている未来と響の姿があった。
「さすが元陸上部…と、正義のヒーロー…」
弓美もそれを見、少し眩しそうにしている。
「でもほんと、ビッキー来れてよかったね」
創世がしみじみと呟く。他の詩織も頷いた。
「立花さん、お仕事続きでしたからね。必要とされているとは言え、こういう行事にも参加できなかったら可哀そうですし…」
二人の立つ位置まで、弓美が這い上がってくる。
「もし…そんなことになったら……私が…あの赤毛のおじさんに……文句言いに行ってやる…」
「いる場所だってわからないのに?」
創世に言われ、悔しそうな顔を浮かべる。
「そこは…えっと……超、頑張る?」
小さく笑った詩織は、持っていた水を弓美に手渡した。
「せめてこういう時間だけは、ゆっくり過ごしてほしいですね」
その言葉に、頷く。
「おーい!みんなー!はーやくー!」
坂の上から響が手を振っている。その笑顔は、自分たちと同い年の、普通の少女のものであった。
「ホント…私たちがいないとダメなんだから…響は…」
「そうだね、ビッキーが守ってくれた日々。今度は私たちが、ビッキーの日常を守ってあげなきゃね」
三人はお互いを見合い、そして再び歩き出す。
「今行く!」
「なんの話してたのかな…?」
小首をかしげる響の隣で、未来は後ろを振り返る。目的の崖は、おそらくもうすぐだ。
「待つ?」
そう問いかける未来に対し、響は少し考える。
「もし行って何もなかったら悪いし、先に見に行っちゃおっか」
二人は傾斜がゆるくなった道を、歩く。未来はあたりを見渡し、しみじみと呟いた。
「それにしても…のどかね…」
「島の反対側は、伝承を活かしたアクティビティがあるらしいよ。神様を誑かそうとした蛇と神様を助けたウミヘビの話。蛇を丸呑みしちゃったウミヘビにちなんだ料理があるんだとか…」
先程聞いた話を思い出す響を見、未来は悪戯っぽく笑みをこぼした。
「詳しいのね。普段の授業はいーつも、タチバナサン!なのに」
それを聞き、慌てふためく響。
「そんな!確かに授業中は先生の声が心地よくて気付くと意識が途切れてることは、多々あるけど…ってなっちゃうけど…」
少し、少女の表情が変わる。
「神様って聞くと、無関係、とは思えないから…」
そして、己の胸に手を置いた。そこには、いつかの傷と譲り受けた力がある。
「……」
未来は何かを言おうとしたが、口を噤む。二人はそのまま、寄り添い歩きだした。
壮絶だったパヴァリア光明結社との死闘。あれから、まだ一月余り。身体の傷は時間によって癒えてくれるが、心の傷は、簡単ではなかった。
「あぁ…ごめんね!私は平気、大丈夫だから!折角の修学旅行、最後まで楽しまないとね!」
そう言って浮かべるのは、いつもの焦って笑みを取り繕った表情。余計に未来は何も言えなくなってしまった。
「…うん」
少し進むと、ややこけ毟った岩の密集地に当たってしまった。上手く超えれば、あの博物館から見えた崖は目の前だ。
「あっれ…ここの段差登れそう…ちょっと待ってね…」
響は手探りで岩を調べている。未来はその後ろ姿を見ていることしか、できなかった。
一歩踏み出したいという想いは、以前よりも強く、大きくなっている。激戦の中で自分の声に応えてくれたくれたからこそ、更に。
しかし、故に、その想いは当人の足を竦ませる。すべてが始まったあの日。胸に傷を負ったのは、立花響だけではなかった。
「…」
二人に空いた距離は、誰よりも近いはずで、それでも途方もなく遠いような、そんな気がした。
「私の、我儘なのかな」
微かにつぶやく声は、
一番傍に居る、届けたい人には届かない。
「未来!」
顔をあげた少女の前に、手が差し伸べられる。その先には、お日様のような、笑顔がある。
その手を取り、
開けた場所に、出た。
「すごい………」
そこは 一面の 花化粧
微かに黄色がかった白い花が咲き誇る
満開の花畑があった。
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「綺麗……」
感嘆の吐息が漏れる。花の形状は少し特殊で、細長い花弁がまるで星を形作っているようだ。
「やっと追いつきまし……これは…」
追い付いた詩織たちも、一様に目を丸くしている。
「まるで…アニメじゃない……」
その言葉に頷く創世。ほのかな花の香りが、あたりを満たしている。
「あ、あれ…」
見惚れていた中で、未来が何かに気付き、指をさす。皆の視線がそちらに移る。
廃屋か。花畑のある崖の隅、古い木製の建物があった。外壁は経年により所々朽ちかけており、人が住んでいそうには見えない。
「こんなところに…人が?」
五人は恐る恐る廃屋へ近づいていく。全貌を確認すると、どことなく寺のようにも伺える。やはり誰かが定住している様子ではない。
「この崖の祠とか社みたいな…感じなのかな?それにしては、何人かで住めそうな広さ…だよね…」
創世の言葉を聞き、傍の崖下を見ていた弓美が手を叩いた。
「わかった!ここは見張り小屋よ!丁度海を見張るには絶好の場所じゃない!」
「建てられた意図まではわかりませんが……でも、歴史を感じますね…」
詩織は時が経ちながらも、建物を支える柱にそっと触れる。
しばし五人は、この建物の見てきた景色と時の長さに思いを馳せた。
「おや、来たのかね?」
何者かの声が、空間を伝わった。
声の方へ振り向く響。そこには、一人の老婆がいた。その顔に、響は。
「あ、こんにちは。すみません!勝手に入ってしまって…」
慌てて謝る創世に対して、老人はにこやかに手を振った。
「いいよぉ。気にしないで」
老人はそう言って、彼女たちの方へ歩いてくる。杖を付き、そのまま廃屋の縁側に腰を下ろした。
「確か、どこかの学校の生徒さん方が来ると、聞いていたけど…」
「はい。私たちです。リディアン音楽女学院と言います」
そう答え、未来は丁寧にお辞儀をする。
「ほぅ…りでいあん…と、いうんだねぇ」
「ねぇおばぁちゃん!ここはどういう場所なんですか?」
隣から勢いよく弓美が問う。老婆はしばし考える素振りを見せる。
「少し難しい質問だねぇ。元々誰かが建てていた屋敷を、いろんなことに使っていたらしいから」
「それじゃあ、もしかして本当に見張り台として使われたことも…?」
創世の言葉に、老婆は頷いた。
「そうねぇ。だいぶ前は、妙な輩が上陸してこないか、監視する役目の方が住んでおったよ。ここは海岸が広く見えるからねぇ」
老婆の目は少し細くなる。
「大正解、ナイスです!」
弓美と詩織がハイタッチを交わす。
「…今はおばあさんが住んでいたり?」
創世の質問に、頭を振る。
「いんやぁ、あたしも久々に来たよ。もう誰も住まなくなって何年になるのかしら…」
談笑する他の者を見ていた未来は、ふと隣に立つ親友の方へ顔を向ける。響は、別の方を見ていた。
「響、どうしたの?」
言葉を聞き、響は少し呆けた様子で、指をさす。海岸の一区画を指差している。
「あそこ…なんだろう?」
響の言葉が耳に入ったのか、老人は立ち上がり、響の元へ移った。
「あれね、あれは国造りの神様が、初めて降り立ったとされる場所さぁ」
綺麗な砂浜と、白いしぶきをあげる波。その中にあって、異彩を放つ、岩片。
高さは丁度数メーター程度だろうか。人ひとりが腰かけるには十分そうな突起物が、海の中から顔を出していた。
「ニラルカナルにお住まいになられておった『形もたぬ神』様が、この地に降り立った最初の場所。
あそこで存在を得、後に恵みをもたらしたとされているわ」
皆一様にその岩を見つめる。
「あてっ」
素っ頓狂な声があがる。響だ。何があったのか、響は頭頂をさすり、不思議な顔をしている。
「どうしたの?響」
「うん…何かが落ちてきたような……」
そう言って足元の地面を見ていた響は、ソレを見つけて拾い上げた。
「石…?」
それは不思議な石だった。表面は石灰のように白く、銀色にも見える。欠けた後らしく、断面は奇妙なことに、光によって七色に色彩を放っているようにも見えた。
「何それ!すごい!」
石に気付いた弓美たちが駆け寄る。五人はその謎の石を代わる代わる手に取り眺めた。
「でも、空から?」
響は首をかしげる。
「風で飛んできたものではないでしょうか?ほら、こんなに軽いですもの」
詩織が手の中で弾ませた。確かに、大きさもそこまで小さくはないが、不思議と軽さを感じる石だ。
「でも、綺麗な石よね。響、持って帰っちゃえば?」
そう言いながら、最後に触っていた弓美が響に返す。
「ダメよ!資料館でも先生も言っていたでしょ?この島にあるものは、持って帰ってはいけないって。お土産とか買ったもの以外は」
未来が窘めると、弓美は悪戯っぽく肩を竦める。その様子に、創世が軽く手刀をかます。
「気にしないで。それは、ここのものではないから」
しばし五人と離れ、岩を見つめていた老婆が話しに加わった。言葉の意味に小首をかしげる一同に向かって、話を続ける。
「この場所はね、様々なものが流れ着く場所。時折あるのよ。どこから、誰が持ってきたのかもわからぬモノが、いつの間にか落ちていることが」
そう告げると、老婆は廃屋の玄関に相当する場所から、何かの紙の切れ端を持ってきた。
「例えば、これね」
受け取った弓美が注視していると、
「これ!来年の新聞じゃない!!!」
五人が確認する。それは見出しも何も欠けて汚れてしまい、確認できるのが日付の欄だけだが、紛れもなく紙の新聞だ。
そして、更にその日付には2045年2月1日と記載されている。
「誰かの…悪戯でしょうか?」
一層首をかしげる詩織。だが、こんな辺鄙な場所に、誰がそんなことをするだろうか。眼前の老婆がやるにしては、手が込みすぎているようにも思われた。
「でも、これが本当だったらそれこそアニメみたい!!おばあちゃん!この下の部分はないんですか?!」
詰め寄る弓美に頭を振る老婆。残念そうに肩を落とす弓美を、詩織がなだめる。
「じゃあ。これは…」
響は手に納まる石に視線を落とす。
「そうね。きっと——」
「そうだ!!」
今まで肩を落としていた弓美が、顔を勢いよく上げる。
「もしかして…『うたずきん!』の初回限定ボックスとかも…あるいは?!?」
花畑に入っていこうとする彼女を、必死に止める創世。そんな様子を笑う一同。
「時間は大丈夫?ここに来るまでにも、時間かかったと思うけれど…」
老人の言葉に、時計を確認した創世が声をあげる。
「マズイ!帰りも考えると、自由時間もうあんまりない!ほら行くよ」
「お爺さん。有難うございました。私たちはこれで」
駄々をこねる弓美を引きながら、先に駆け出す詩織と創世。響と未来も、老人に一礼する。
「いろいろ教えてくれて、有難うございました」
老人はにこやかに返す。
「こちらこそ、話ができてよかったわ。有難う」
手を振る老婆を残し、二人は走り出した。
──────────────────────────────────────
「あ~お腹いっぱい…美味しかった~」
浴衣姿になり、ホテルの廊下を歩く弓美。あとに続く響も頷いた。
「ビュッフェ形式。しかもご飯が炊き込みご飯で、4種類もあるのには恐れ入ったね!口の中でこんなに多種多彩なコンビネーションを試せたのは初めての経験だったよ~」
昼の少し影のさした顔はどこへやら。とても幸せそうな表情の彼女を見て、詩織と未来は笑顔でうなずき合った。
「それじゃ、部屋でカードゲームでもやろうか!」
創世がそう言うと、弓美が何やら良からぬ顔をして笑った。
「皆…まだ、見に行けてない場所、ない?」
未来が、少し怪訝そうな顔をする。
「どこの話?」
「あの海岸よ!」
弓美は皆を廊下の端に誘い、話し出す。
「崖から見えた海岸、結局あの後時間なくて行けなかったでしょ?明日の自由時間はお土産漁ることを考えたら、今の内に行った方が良いって!」
創世が腕組をしたまま、軽くため息をした。
「こんな夜中に?確かに夜空で幻想的かもしれないけど、出掛けたのが見つかったら先生に怒られるよ?」
その言葉に弓美が詩織に頷く。すると、彼女は懐から館内マップと島の地図を取り出した。
「抜かりはありません。先ほど漫画コーナーにいらっしゃった従業員の方とお話しました。先生方がいる表玄関とは別に、この従業員出入り口から外に出られるそうです。そこからこの道をたどっていけば、最短で海岸まで行って帰ってこられるとのこと。人数分の懐中電灯も部屋に用意しています」
ピースサインを向ける彼女の周到さに、若干引き気味の響。
「たまに…すごい行動力だよね…」
「でも、先生たちの部屋への巡回はどうするの?声かけられたらバレちゃうよ?」
その言葉に、静止する詩織と弓美。巡回のことを完全に忘れていたようだ。
「行動前に問題点発覚、ナイスです!」
「いや、そこは忘れちゃダメでしょ」
そんなやり取りの中、弓美は頭を抱える。
「そんな…私の超完璧な計画が……」
苦笑いを浮かべる響と未来。どうもこの夜中のこっそり計画は流れそうだ。
「その話、手伝おうか?」
突然の言葉に身構える一同。この話が教師陣に聞かれていては事だ。しかし、幸いにもそこにいたのは彼女たちの学友だった。
「唐渡さん!」
クラスメイトの一人。名を唐渡と言う。眼鏡をかけたショートボブの少女は、後方を指しながら肩を竦めた。
「部屋のメンバーで見たい番組がバッティングしちゃって。テレビ使わせてもらえるなら協力できるよ」
その言葉に、弓美は彼女の手を握った。
「素晴らしい助っ人だ!!有難う!!」
「でも、巡回で来たら応対しないといけないし、その時はどうする?電話とかでごまかす?」
その言葉に、弓美は妙な含み笑いをした。
「そうか…みんなは知らないんだね…この、来年アニソン同好会の初代部長となる予定の板場弓美。ちゃんとキャッチしてるよ…唐渡さんの知られざる特技を…」
皆の視線を受け、唐渡は自身の喉に手を当てた。
「タチバナサン!!!」
「ヒャイ?!!」
その声に、思わず響は身体が硬直する。紛れもなく、担任の声だ。あたりを見渡すが、担任も他の誰の姿もない。
「私は立花響!15歳!誕生日は9月の13日!」
今度は響の声。自身の喉を混乱して触るが、違う。視線を戻す。声を出したのは、唐渡だ。
「そう!唐渡さんの秘儀とは!声帯模写なのだ!!」
弓美は我が事のように胸をはる。皆が一様に目を丸くしており、当の唐渡は少し照れくさそうに笑った。
「これなら部屋のドアを開けられたりしない限りには、対応できるでしょ?」
場所を憚らず、拍手が起こる。
「すごいね唐渡さん!そんなことができるなんて!演技も上手いし、将来は声優さんかな?!」
興奮気味に手を叩く響。
「どうしたんですか?」
また担任の声がする。
「唐渡さん、またまた~。折角だから未来にもやってみてよ!」
そう言って笑う響。しかし、他の誰も笑っていない。不思議に皆の顔を見てみると、一様に彼女の背後を見ている。目線をそのままに、未来がぎこちなく笑う。
「えーっと…響…」
首をかしげる響の肩に、誰かの手が置かれた。
「タチバナサン?」
目の前の、唐渡の口は動いていない。
「あは…あはは……」
震えながら振り返った先には、件の、本物の担任の姿があった。
「ヒィ?!先生!!」
「突然拍手が聞こえたから、何事かと来てみたら…どうか、されたんですか?」
全身から冷汗が噴き出る。担任の笑顔が、怖い。
「わッ私たち、卒業後の夢で盛り上がっていまして!!」
未来が助け船を出す。皆一斉に頷いた。
「私はアニメ監督で響は、、えっとなんか正義の味方っぽいので、流れで唐渡さんは声優になれるかもねぇって!」
手をばたつかせながら弓美が話を繋げる。
「成程、それで将来という言葉が出ていたのですね。でもここはホテルの廊下です。他のお客様の迷惑にならないよう、大きな音は出さないように」
担任は響たちの説明を聞き、少し訝しそうにしながらも、納得したようだ。去っていく後ろ姿を見送り、全員が胸をなでおろした。
「あぶ…なかった……」
「ここで話すのはよそう。作戦会議の続きは部屋で!」
そう言って弓美が歩き出す。あとに続く一同。
「ちなみに、その声帯模写って、すぐに切り替えできるものなの?」
創世の質問に、唐渡は首を振る。
「今みたいに馴染みのある声や直前に本人の声を聞ければ寄せられるけど、いきなりだと流石に無理かな」
「いやでも実際、特技自体が難易度高すぎだって」
弓美のツッコミに未来も響も頷いた。
「もし出来たら、一人二役で漫才も出来そうですね!」
「そうだ!よく芸人さんとかがやってる、特徴の重ね掛け?掛け合わせみたいのは出来るの?」
「…」
談笑が続く中、響は足を止めた。
「どうしたの?響?」
「え?ああ…うん…なんでもない。ごめんね」
未来の問いに、笑みを作る響。その答えに、何とも言えない表情を微かにのぞかせる少女。しかし、それ以上踏み込むことはせず、頷いた。
「…そう…じゃあ、行こうか」
響は浴衣の内に仕舞っているネックレスに触れた。二人は自分らの部屋へ歩き出す。しかしその思考は、修学旅行の数日前に遡っていた。
──────────────────────────────────────
「おー来たか。装者ども」
間延びした声で迎えたのは、ガスマスクの男、伴成蘭堂。聖遺物研究の副主任たる彼は、背もたれに身体を預け、彼女らの方を向いた。
場所は聖遺物共同研究室。普段であればエルフナインもいることが多いが、今日は蘭堂が勧めた休暇取得中につき、いない。何度か来ている場所だが、今までは存在しなかった、人が一人入れそうな、円筒状の機械が目に付く。
「蘭堂さん。お疲れ様です」
集められたのは、立花響、風鳴翼、雪音クリス、マリア・カデンツァヴナ・イヴ、月読調、暁切歌、計六名。
「それで?ギアの不調は改善されたのかしら?」
腕を組みながら質問したのはマリアだ。その言葉に、男は首を振る。
「すまないが、その問いに対しては、否だ」
「原因もデスか?」
切歌が手をあげて問う。蘭堂はコンソールを操作しながら答えた。
「いや、原因は察しが付く。だが、今の俺では対処できない」
「歯切れ悪いな。じゃあ何で集めたんだ?」
クリスが手を腰に当てつつ聞くと、蘭堂は彼女に向かって手を伸ばした。その掌には、赤い結晶のようなネックレスがある。
「根本は改善できていないが、代案は整備できたんでね。これが手元にないと、何かと不安だろう」
「とは言え、訓練の時のような強制解除は、勘弁願いたいものだが…」
翼が怪訝そうな顔をする。パヴァリア光明結社との戦闘、最後に統制局長たるアダムヴァイスハウプトを撃破した彼女ら。しかし、その後からシンフォギアシステムに異常が発生。訓練中、予期せぬタイミングで強制解除されてしまうことが頻発していた。
「ダインスレイフも焼却してしまった以上、決戦機能で一気に決めることもできないし…今戦闘になったら……」
そう不安そうな声をあげる調に対し、肩を竦める。
「まぁ原因は、さきの戦闘で強引にラピスフィロソフィカルの力を変換利用した余波だ、と言っておこう。この状況も長引きはしない。だから、今はこれで我慢しておけ」
差し出されたギアを受け取るクリス。続こうとした一同だったが、
「さっきも言った代案、の説明をここでしておく」
蘭堂は手で彼女らを制し、今度は響に手招きした。響は素直に蘭堂の前にやってくる。彼女の分のギアだけは、先行してエルフナインから渡されていた。
「ギアを貸して、円柱の前に立ってくれ」
響は言われた通りギアを首から外し、蘭堂に手渡した。受け取った蘭堂は、新設された円筒状の機器の方へ行くように示す。機器は、複数の管に繋がれ、妙な低い音が聞こえる。
「これ…ですか…?」
響が不安がりながらも、その前に移動する。
「そんじゃ」
蘭堂の操作により、その前面が開かれた。中は銀一色で、突起などは存在しない。しかし、どことなくヨーロッパの拷問器具を連想した響は、少し引きつった笑みを浮かべた。
「まさか…入れってことで……?」
振り返られた蘭堂は、そのまま響の背に手を置いた。
「さっさと行ってこい。ヒビ割れ少女」
声と共に背中を押され、響は転ぶように円筒内に入ってしまう。
「え?!え?!?!」
そしてその瞬間、抗議する暇もなく、前面のハッチが閉められた。
「オイ!大丈夫なのかコレ?!」
動揺する他の装者を意に介さず、蘭堂は先程のコンソールを操作する。
『蘭堂さん!開けてください!っていうか、だからその呼び方しないでください!』
どこからか叩く音と共に、響の声が聞こえる。どうやら円筒機器の内側にマイクがあり、スピーカーから聞こえているらしかった。
「ヒビ割れ少女、少し静かにしてくれ。そこに居る分は問題ない。というか叩くなしばし待て」
そう告げ、今度はクリスの方へ何かを放った。
「それ持って実験室入ってくれ。説明は後でする」
投げられたのは、先ほど受け取っていた響のシンフォギア、ガングニールだ。
「どうしろって…」
混乱したまま、クリスは併設された部屋へと入る。ある程度の衝撃を緩和できる、小規模な防壁のある部屋だ。その中央に立ち、クリスは不愉快そうに腕を組んだ。
「これでいいのかよ!」
蘭堂はそちらを一瞥すると、コンソール操作を締めくくる。
「そんじゃ、ギアを装着してくれ。いつも通りで、ガングニールも持ったままで構わん」
「っわかったよ…ちゃんと説明するんだろうな…」
悪態をつくと、クリスは目を瞑った。
「Killter Ichaival tron」
彼女の歌が、優しく空間に木霊する。
そして展開。赤い結晶が周囲を弾けるように飛びまわった。
レーザーが射出され、閃光と共に次々とギアとして固着していく。
イチイバルの重火器要素と彼女自身の魅力。
その両方を見事な形で体現し、雪音クリスは降り立った。
「これでいいかよ」
赤を基調とした、シンフォギア イチイバル。クリスはピストルを回転させながら、変化の具合を調べた。が、大きな変化はない。ただ一点。胸のコンバーター部分の形が、今までと違う。下部より一片が前面へ突き出している。
「コンバーターの突起部分に、ガングニールを接続してくれ。置くだけでいい」
言われた通り、そちらに設置する。すると、響の入っている円筒機器に光がともる。
「大丈夫なんでしょうね」
蘭堂の横で低く問うマリアに対し、蘭堂は目線を向けることなく答える。
「ああ、理論上、問題はない」
「理論上、ね」
「そんじゃ、掛け声か。そうさな…フィーチャリングクラッド、着奏」
蘭堂の気の抜けた言葉と共に、光がはじけた。
次の瞬間、クリスの纏うギアに変化が訪れる。
接続したガングニールのギアが展開され、イチイバルの上から重ね掛けするかのように各所を覆っていく。赤と橙のコントラスト。突然の変化に目が追い付かない。
「ッ?!」
明滅する光が収まると、そこにはガングニールの面影を残す武装を追加装着された、イチイバルの姿があった。
「なんだ?!?!コレ?!?!」
クリスは驚きのあまり声をあげる。
『え?!なんかすごいね!クリスちゃん!!』
クリスが声に振り向くと、そこには。
「ハ?!?!ハ???……ハァァァァ?!!?!」
響の姿が、あった。
いや、クリスの目には、彼女の姿が半透明になり、空中に漂っているように認識されている。思いもよらぬ状況に、足が震えだす。
「おーい大丈夫かー?」
部屋越しの蘭堂の声を認識するのに数秒を有する。未だパニックの中、クリスは何とか言葉を紡いだ。
「え?!ハ?!?!おま…これ…バカが…浮いて…え?!無事なのか?!?!え??!!」
彼女の慌て様に、他の装者たちも動揺する。
「あー心配するな。ヒビ割れ少女が見えているんだろう?そういう機構だから無問題だ」
「大丈夫って…ええ???」
自身の姿を見、響も唖然としていた。
『私、幽霊になっちゃってる……???』
「違わい。亜空間転移の余波でもって、精神体がそちらに移っているにすぎん」
説明になっていない説明を述べた後、蘭堂はコンソールを操作する。するとクリスの前にアルカノイズ四体のホログラムが出現した。
「相手してみてくれ。訓練施設よりも壁は脆弱だから、あまり火力は出すなよ?その必要は、今のお前にはないはずだからな」
クリスは言われた通り、アルカノイズを前に構える。
『クリスちゃん…これって……』
隣で浮遊している響が呟く。クリスは頷いた。彼女自身、自分の今の状態を肌で感じとっていた。
「!!」
アルカノイズが一斉に動く。肉薄する敵に対し、クリスは不敵に笑った。
「こうして…欲しいんだろ?!!」
彼女が腕を振り上げた。その手には、主兵装である飛び道具はない。その代わり、腕にはイチイバルにはなかった、拳のプロテクタが装着されている。
「あれって!」
調が驚きの声をあげる。プロテクタの配色は、橙色。
「できらァァァァ!!」
眼前に迫るアルカノイズの腹部に、右拳を叩きつける。瞬間、アルカノイズの腹部が爆発し、身体が後方へ吹き飛ばされる。迫っていた二体に対し、爆煙を纏ったままの右腕を振りぬく。二度の爆発。最後の一体が爆煙の中に腕を振るうも、そこには既にクリスはいない。
「これで!」
彼女は煙の中、直上に飛び上がっていた。そのまま重力に任せて蹴りを放つ。特徴的な赤いヒールに付随し追加された、橙の装置が作動。地面へのアンカーが、アルカノイズの身体に深々と突き刺さる。ホログラムはなすすべなく消失した。
「どんなモンだ!」
敵を一瞬で倒し、得意げに胸をはる少女。他の装者たちは少し呆然としながらも、拍手して答える。
「ッ!だから抱き着こうとするな!!」
突然クリスが肩越しに言い放つ。どうも響の精神体、とやらと会話しているようだ。しかし、研究室を挟んでみている他の者には、その声は届いていない。
「どういうことデスか?まるでクリス先輩に響さんが乗り移ったみたいな……」
切歌の問いに、蘭堂はガスマスクの位置を合わせつつ答える。
「その言い方は半分正しい。この新兵装は、ギアに別のギアを重ね掛けして、戦闘スタイルの多様化を目的としている」
研究室のモニターに画像が映し出される。円筒に入った人間と、別の人間をつないでいる簡単な図だ。しかし、書かれている言葉や数字の意味は、少女たちでは判別できない。
「そこの円筒機器に入った装者のフォニックゲインを増幅、別の使用者のギアへ転送して、遠隔地にいながら起動。実際纏うよりもレベルダウンするが、他者への固着化、複数ギアの同時使用をしているわけだ」
翼が円筒ポッドの表面にふれる。
「この中の立花のフォニックゲインを、雪音のイチイバルに飛ばしているのか…どうやって?」
「それを説明しても、お前らじゃ理解できんだろう?」
その言葉に、不満そうな表情を浮かべるマリア。
「理論はわからないとしても、こんな装置、いつ作っていたの?そのままに聞くと、他のことにも代用できそうだけれど」
「遠くに居ながらみんなでカラオケできるデース!」
切歌の言葉に、隣にいた調が困ったような笑顔を向けた。
「確かに。こいつは元々、お前ら適合者を鉄火場に送らないための装置。安全地帯から他者の身体を媒介にし、ギア運用出来るようにするための理論。その副産物だ」
その言葉に、少し場の空気が変化する。安全地帯から、他者の身体を利用した、シンフォギア運用。他者を守るためにこれまで戦ってきた彼女ら。その立場思考からすれば、今の言葉は表面上だけで捉えれば、到底聞き流せる話ではなかった。
「……」
翼とマリアの無言の圧力を受け、呆れたような顔をしながら男は話しを再開する。
「そもそも、シンフォギアシステム自体の問題点だ。適合者が極稀にしか見つからないにも関わらず、先頭きって戦わせるのは、あまりにもハイリスク。万一、二度と歌えないほどの負傷を負ってみろ。そのギアは次の適合者が見つかるまで使えなくなる」
「しかし!」
翼の割り込みを手で止める。
「現在、広く出回ったアルカノイズへの特効兵装、それがただの六つしかない。常に利用する兵装としては、あまりにもお粗末、と考えた」
コンソールを再びタップすると、今度は別の図が表示される。先ほどの図と近いが、今度は円筒状の装置が六台と、それに続く複数の人型の姿が映し出される。
「だから遠隔地から操作できるようにできないか、試した。成立すれば、戦場で躯体が破壊されても、装者に影響はない。ギアか、もしくはその破片でも回収できれば、十二分に戦闘復帰は可能だ…ったんだが」
そう言うと、画面に表示されていた図を横断するようにバツ印が表示される。どうやら研究は何かの要因で頓挫したらしかった。
「運用を可能にする躯体が、現状では確保できない」
「人には使えない…ってことですか?」
調の問いに、蘭堂は頷く。
「人間では一番ダメだ。余計なものが多すぎる。雌雄がある、別の微細な寄生生物と共生している等々…そしてなにより、歌だ」
蘭堂は腕組をしつつ椅子にもたれ掛かった。
「それぞれ固有に持つ歌の素養が、送られてくる装者の歌の邪魔をする。一般人に使用するには、今度は躯体に適する、適合者を探す羽目になる。本末転倒ってわけだ」
しばし口元に手をあて話を聞いていたマリアが口を挟む。
「じゃあ、今クリスたちがやっている、装者同士の状態は、歌の影響を受けないってこと?」
一同はクリスを見る。何やら響と痴話げんかまがいをしているらしく、研究室サイドの話を聞いているのかは不明だ。
「逆だ。今回の装者同士の運用には、寧ろその特徴がはっきりしているがゆえに流用出来たところがある。先のアダム戦における、ヒビ割れ少女のアームドギア。他の装者の技を再現してみせた、アレを解析独自転用している。理論上、特徴に類似点が多ければ多いほど、扱いやすくはあるがね」
そこで難しそうな顔をしつつも、切歌が手をあげる。手をあげながら、首を捻ってはいるが。
「ちょっとどころかさっぱりのままなのと…全く気はすすまないデスけれど…例えばオートスコアラーは、どうなんデスか?」
「着眼点は悪くないが、アレは歌を収集する。基本構造が組まれているようだから無理だ。先に言っておくと、エルフナインのようなホムンクルスも、不可。あの技術は、確かに性別や肉体の錬金生成という観点から見ても、理想的だと思ったんだが……過程でどうしても歌が発現するようだ」
独り言のような解説に、皆取り残されている。
「条件に見合うのは、死後数年経過した丈夫な人間の死体、なんて話になる始末だ。まぁ…」
そう言うと、蘭堂は機器の中の響を含め、装者全員を一瞥する。
「歌を持たないヒトなど、この世には存在しない、と言うべきか、ここは」
自嘲に近い笑いと共に、蘭堂は言った。
「それで、戦闘スタイルの多様化って言ったが、どう使えばいいんだ?」
ギアの調子を確かめるように、ひとしきり殴る蹴るを試していたクリスが聞いた。
「戦力アップはゼロではないが、充分な水準には達しないだろう。それこそ、イグナイトの抜けた穴を埋められるとは、思わないことだ」
コンソールを操作する蘭堂。
「今実演してくれた通り、一人二役、重ね掛けだ。イチイバル長距離広範囲射撃とガングニールの近距離戦力。二つが重なった結果、言い方おかしいが、近距離爆撃に化けたというわけだ」
一体だけ出現したノイズのホログラムを、再びクリスの拳が突く。先ほどよりも抑えられた小規模な爆発が、ノイズの身体を木っ端微塵に吹き飛ばした。
「正直運用してなければ、ギア同士でどういう重ね掛けが起こるかは不明だ。これ乞うご期待、とでも言っておこう」
そこで翼が手をあげる。
「しかし、だとするのなら、このシステムを使って人数を減らして戦うより、六人で一気に攻めてしてしまえばよいのでは?」
そこまでして戦術の多様化を推す理由は何なのか、その問いに蘭堂は率直に答えた。
「戦闘データ、だ」
その言葉と共に映し出されたのは、過去の彼女たちの戦闘時の映像。ルナ・アタック以前から、前回の結社との死闘もある。思い返せば、この数年間の間に数多の戦闘を繰り広げ、そして彼女らS.O.N.Gは生き残ってきた。
「お前たちは、何はともあれ再三世界とやらを救ってきた。その都度ギアの機能拡張も、お前たち自身の練度の向上もあった。だが、裏を返せば戦場に立ち続けた多くの戦闘データを、敵に収集させていることにもなる」
映像を止め、ガスマスクの男は装者へ向き直る。聖遺物研究の一角として、そしてルナ・アタック以後から、彼女らをサポートする場所にいたものとして。だからこそ、彼の言葉は重く響く。
「情報は強大な武器になる。これまで以上に、分析解析を重ねた、対シンフォギア戦術を組んでくる輩が出てくる」
「相手の予想予測を覆し、想定の外より有効な手段でもって戦況を打破する。昨今ギアの不調が顕在化する前に戦闘を終える。この二点のための、そしてこういうタイミングでなければ使い勝手の無い追加武装」
一区切りつけた蘭堂の後ろの画面、そこに大きく文字が表示される。
[Featuring Clad System]
「それが、言ってしまえば、
急場しのぎの蛇足兵装 フィーチャリング・クラッドシステムだ」
創作を理性で止められるものかよォ!!
サリッサと申します。
お読みいただき、誠に有難うございます。
苦節2年あまり、ようやっとスタートラインにございます。
原作理解不足、文章力不足、構想力不足。全て承知の上。
どこまで行けるかわかりませぬが、もはや我欲を満たすことだけを目指す所存。
よろしければこの道行、見守っていただけると幸いです。
PS.シンフォギアライブ行くぞおおお!!!