そしてぼざろの二次小説増えないかなと言っている人を見かけて衝動が荒れ狂い……
気づいたら書いてた☆
これもまたロック!!
俺、
名前は後藤ひとり。
我が家の隣に住む後藤一家の長女であり、俺の悩みの種である。
簡単に説明すると根っからの陰キャ。
それも陰キャと呼ばれる人種の中でも上澄みと評される逸材。陰キャ界のスーパースターである。
学生にとって重要なステータスを三つに分けたとしよう。勉強、運動、コミュ力の三つだ。
こいつの場合、勉強、運動も壊滅的だが、特にコミュ力が致命的なまでに欠けている。社会でやっていけるのか不安になるくらいに悲惨だ。
まず、家族や俺以外とは目を合わせるどころか顔すら向けれない。会話することも苦手でよく言葉に詰まるし、挙動不審な行動も多い。
正直フォローしきれないくらいに悲惨な有様だ。
性格も自己肯定感が低く、ネガティブで悲観的。妄想癖もひどく、独り言を喋っては奇行を繰り返す。
それに加えて承認欲求が人一倍強く、調子に乗りやすいから空回りして黒歴史を量産する痛いやつ。
こんなダメダメな幼馴染だが、一つだけ人より優れた点がある。
身内贔屓に聞こえるかもしれないが、それでも言おう。
──後藤ひとりは、誰よりもギターが上手い。
◇◆◇
平日の早朝、まだ日も昇っていないような時間帯から俺の一日は始まる。
隣に住む幼馴染に付き合って、片道二時間の高校へ進学したから早めに起きなければいけないのだ。正直後悔している。
日課のランニングをこなし、シャワーを浴びてから部屋着に着替える。
まだ待ち合わせの時間まで一時間以上あるし、制服に着替えるのは出かける前でいいだろう。
さて、いつもなら勉強して過ごしているのだが、今日はギターを弾きたい気分だ。
何故と聞かれれば、昨日の夜に投稿された人気バンドのカバー動画が原因だろう。
投稿主は『guitarhero』。
その正体は、まだ俺にネット活動がバレていないと信じている哀れな幼馴染だ。
というか、ひとりのアカウントは家族共用のため後藤家のみんなにはバレバレだし、関わりの深い俺もすぐに知った。
今では時折、みんな(ひとりを除く)で鑑賞会をしている。
目玉はひとりの陽キャアピール(笑)である。幼馴染として言わせて貰うと内容に全く心当たりがない。バスケ部エースの彼氏やロインの友達数1000人とか盛りすぎにもほどがある。
そんなことを頭に浮かべているうちに部屋に着いた俺は、ギターを片手に弾く準備をする。
朝からギターを弾くなんて近所迷惑かと思うだろうが、そこらへんの対策はバッチリだ。早朝から騒音を撒き散らすほど常識知らずではない。
チューニングなどの準備を終わらせ、音源を再生して演奏を開始する。
弾くのは昨日投稿されたカバー曲。他にもひとりが過去に投稿した曲をいくつか通しでやる。
流れる曲に合わせてギターをかき鳴らす。時には自分なりにアレンジを入れたりしてみる。
駆け抜けるような感じや暗いようなイメージで弾くなどの様々なアレンジを、どれが良いかと考えながら試行錯誤していく。
そんなふうに集中していたら時間など簡単に過ぎ去るもので……
いつの間にか時を忘れるほど熱中し、気付いたら待ち合わせ時間まであと数分というところだった。スマホのアラームがなければ、確実に遅れていただろう。
まだやりたいと訴える心を抑えて、片付けてから制服に着替える。そして制服の上からパーカーを羽織り、ギターバッグを背負う。
いつもなら持っていかない。……が、今日はまだ弾き足りないということもあり、持っていくことにしたのだ。ひとりに人のいない場所を聞いて、そこで演奏するのも悪くないだろう。
玄関で靴を履いて、両親へ「いってきます」と告げてから家を出る。そのままひとりの家へと行き、合鍵を使ってお邪魔させてもらう。
正直幼馴染とはいえ合鍵渡すのはどうなんだと思うのだが、便利だし使わせて貰っている。
「お邪魔しま〜す、ひとりを迎えに来ました」
そう告げると奥からひとりの母、美智代さんがやってきた。相も変わらず若々しい姿をしている。
「おはよう、いっくん。いつも悪いわねぇ」
「おはようございます、美智代さん。いえいえ、こちらもお世話になってばかりなんで気にしないでください」
そりゃもう頭が上がらないレベルでお世話になっている。
うちの両親は仕事で家を空けることが多く、その関係で幼い頃からよく面倒を見てもらっていた。もはや第二の家族と言っても過言ではないだろう。
ひとりが来るまでまだ時間がかかるらしいので中で待っているよう言われた。現在、俺は後藤家のリビングで飼い犬のジミヘンと戯れている。ここか、ここがええんか?
「いっくん、おはよ〜! お姉ちゃん連れてきたよ〜」
「あっおはよう、いっくん。待たせてごめん……」
「ありがとう、ふたりちゃん。そして遅いぞ、ひとり。もっと時間に余裕を持っ……て……えっ?」
妹のふたりちゃんに連れられて、ようやく部屋から降りてきたひとりを視界に入れた瞬間、俺の思考は漂白された。
先程までのジミヘンによってもたらされた穏やかな気持ちが、一瞬で凍りついたように感じる。
急にフリーズした俺にあたふたするぼっちの姿が見えたが、今はそんなことどうでもいい。
ひとりはいつもとは随分違った装いをしていた。
具体的に言うと腕に大量のラバーバンドを巻き付け、隙間なく缶バッジが付けられたトートバッグを片手に、ギターケースを背負っている。
正直この時点でも絶句ものなのだが、俺の直感が囁いている。この程度ではないと。
俺は自分の直感の正体を確かめるために無言でひとりに近付いていく。
「あっえっと……きっ急にどうしたの?」
「……少しバッグの中を見せてくれ」
「あっうん。別にいいけど」
「何かしたのかな?」なんて不安でビクビクしているこいつを放置して、バッグを受け取り中身を見る。
中には音楽雑誌やCDなど、普段こいつが持ち歩かないようなものが数点。
格好と所持品から何故こんなとち狂ったような姿をしているのかなんとなく察したが、まだ俺の勘が悪い方向に働いている。
こいつの性格や今の格好からおおよその当たりをつける。バッグは既に確認したし、ギターケースにも何も入ってないはず。ポケットに膨らみがないことから隠せるとしたら……ここか。
俺はひとりの着ているジャージのチャックを掴み、勢いよく下ろした。端的に言うとひとりの服をひん剥いた。
「……うぇっ!? あっえっちょっ、なっななに、どっど、きっ急になにぃ!?」
ひとりは急な展開によってパニックになっているが知らん。少し黙っててくれ。
「あらぁ、今日はお赤飯かしら」
「ひとりももうそんな歳か。父さん感慨深いよ」
「お姉ちゃん、真っ赤になってて面白~い!」
「ワンッ!」
外野のキャッキャとした声もスルーだ。今俺は目の前の情報を処理するのに忙しい。
ひとりの着ているジャージをひん剥いた先に見えたものはバンドのロゴTシャツだった。それもゴリゴリに悪魔みたいなのがプリントされたデスメタル系のやつ。
先程のラバーバンドや缶バッジも合わせると、見ているこっちが恥ずかしいくらい痛い格好だ。この服で学校に行くとか正気か?
俺は幼馴染のあまりの姿に大きなため息を吐いた。
そのせいでひとりはショックを受けたようにビクついたが、構っていられるほどの余裕は俺にはない。足に力を入れなければ崩れ落ちそうなくらいには衝撃を受けている。
「えっとその、いくら私でも服を脱がされてその反応は傷つくというか、なんというか……」
「……なんとなく察しはついているが、その格好はどうした?」
「あっ無視された。……か、かっこいいバンドマンの格好をすれば誰か話しかけてくれるかな〜なんて……へへ」
「……そうか。今の格好、最高にロックだぞ。多分成功すると思う」
「そっそう思う? ……えへ、えへへへ」
まあ、嘘は言っていない。
似合っているかはさておき、型破りという意味なら今の格好はロックだ。それに多分や思うなんてのは俺の感想でしかない。成功するとは一言も言ってないからな。
とはいえ、こんな格好しているやつに話しかける人なんていないだろう。教室に入った途端に氷河期が到来すること間違いなしだ。
仮にいたとしても失敗するのが目に見えている。
会話はキャッチボールだ。誰かがボールを投げ、それをキャッチし投げ返さなければいけない。
こいつの場合、基本受け身だから相手が話しかけないと何も始まらないし、始まっても上手く相手に返せない。大暴投するに決まっている。
もっとも、俺はそれを指摘したりなんかはしない。しても意味がない。
もう着替えるような時間はないし、何よりこいつの目を見ればわかる。「これならいける!」なんて根拠の無い自信に満ちた目をしている。
仮にだが、登校中にラバーバンドや缶バッジを外させ、Tシャツを見せないよう忠告したりする。
一時的には解決するかもしれない。しかし、こいつは何かと理由をつけてこれらの呪いの装備をつけるだろう。
後藤ひとりという人間は、淡い希望を藁にもすがる思いで掴もうとする性質だ。
「もしかしたら……」なんて思いがほんの少しでもあれば確実にやる。そういう謎の行動力は母親に似たのだろう。
だから、やらかした後に反省させた方が効果的だ。その方がこいつの為になる。
取り返しのつかないようなレベルならともかく、これくらいの失敗であれば幾らでもすればいい。
こうした経験を重ねて成長しろ。気が向いたら骨くらいは拾ってやる。
……別に忠告しないのは面倒くさいという理由ではない。
ましてやギターを背負っている俺に「同じ考えなんだ!」なんて同士を見るような視線にイラついたからなんて理由では断じてない。
◇◆◇
――そして時は流れ、放課後。場所は下駄箱にて。
まさしく茫然自失といった顔のひとりを見て俺は全てを悟った。
移動教室の際に覗き見た様子から何となく察していたが、やはり作戦は失敗したらしい。
大量のラバーバンドは全て外され、缶バッジを隠すようにトートバッグを抱えている。ジャージのチャックも首元まで上げてるため、中に着ているバンドTシャツも見えない。
あの見ているだけでSAN値が削れる痛々しい格好から、いつも見ている芋ジャージ姿に変身していた。
ただ普段よりも陰鬱なオーラを纏っている。朝とは別の意味で近寄りたくない。
「あ〜……念の為聞いておくが、大丈夫か?」
「…………」
「返事なしっと」
これまた随分と精神的にボコボコにされたらしい。まあ全部自爆なんで弁明の余地もないが。
ひとりは幽鬼のような足取りで学校を後にする。この状態のこいつを一人にさせる訳にはいかないので俺もついて行く。
それから俺たちは直接家には帰らず、学校周辺の住宅街にある小さな公園へ寄り道していた。
ふらふらとさまよい歩いてたどり着いたのだが、人が少ないからかどこか寂しげな印象を受ける。そして上の空といった様子のまま、ひとりは空いているブランコへ腰を掛けた。俺もブランコを囲む柵へと腰を下ろす。
正直、成功するなんて微塵も思っていなかったが、こうして落ち込んでる姿を見ると指摘しなかったことに僅かなりとも罪悪感が……湧かないな。暴走したこいつが悪い。
しかし、ひとりが努力したことには変わらない。
方向性が盛大に間違っていたとはいえ頑張ったのだ。労ってやるのが良い幼馴染というやつだろう。
俺は飲み物を買ってくると告げてから、ここに来る途中で見つけた自販機へ向かった。
何やら同じ公園にいたサラリーマンの男性を見てポロポロ泣いているがスルーする。
おおかた、公園で一人でいる彼に仲間意識を感じ、迎えに来た奥さんや子どもとの仲睦まじい姿を見て勝手にダメージを受けたんだろう。流石にそこまで面倒見切れない。
自販機で俺の分のコーヒーと、ひとりの分としてオレンジジュースを購入した。選んだ理由はなんとなく。
両手に飲み物を持って先程の公園へ戻るとそこには――
「ありがとう!! 早速ライブハウスへGO!」
情報が処理できずに固まっている幼馴染と、そんな幼馴染の手を握って何処かへ行こうとする少女の姿があった。
……一体どういう状況なんだ?
お気に入り登録、感想、高評価をください。ナイトプールでサーフィンするくらい喜びます(承認欲求モンスター)
ちなみにオリ主のキャラコンセプトは「属性を反転させたぼっちちゃん」。ただし、根本的な部分ではぼっちちゃんと同じ。
つまりコミュ強で自信に満ちた承認欲求モンスター。なんだこいつ無敵か?
なお「ペンネームは虎の癖に主人公はライオンなのかよ」なんてコメントは受け付けてません。書き終わった後に気づいたんや……