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この衝動のまま出来たてほやほやの最新話を投稿!
プロット? 書き溜め?……んなもんねぇよ(泣)
「いや〜、急にごめんね。こっちの事情なのに付き合ってもらって」
「大丈夫ですよ。話聞くかぎり仕方ないと思うんで」
「…………(ぷるぷる)」
俺とひとり、そして先程の少女の三名は現在、下北沢に来ていた。
何やらぷるぷる震えてるミジンコは放置する。どうせ下北沢の個性的な雰囲気とやらに圧倒されてるだけだろう。
それはさておき、俺は彼女――伊地知虹夏を横目で見る。
長い金髪をサイドテールでまとめた、首元の大きな赤い水玉模様のリボンが特徴的な少女。明るく元気な雰囲気をしていて、ひとりとは無縁な今どきの女子って感じがする。
そんなひとりとは正反対と言っていい彼女から事の経緯を聞いてみた。
なんでも、これからバンドのライブがあるのだが、ギターの人が直前になって逃げ出してしまったらしい。
これは困ったと新たなギター担当を探すべく道を歩いていたところ、ギターを背負って公園で悲嘆に暮れていたひとりを見つけたので、今日だけでもいいからサポートギターをやって欲しいと頼み込んだそうだ。
まさかこいつの「バンド女子の格好をしてれば声をかけてもらえる作戦」が成功するとは……。いや、流石にあのフル装備状態だったらスルーされただろうけど。
そうした事情から俺達は下北沢にあるというライブハウスへ向かっていた。
「ひとりちゃんと一心くんは下北によく来たりするの?」
「何度か来たことあるってレベルですね。ひとりは一度も来たことないはずです」
「あっはい」
「へぇ、そうなんだ〜。二人とも秀華高って事は家はここらへんなのかな?」
「いや、県外で片道二時間くらいのところに住んでます」
「二時間!?めっちゃ遠くない!?」
「そうなんですよ、おかげで朝早いから大変で」
「そりゃそうだよね。ひとりちゃんも朝大変じゃない?」
「あっはい」
……頑なに目を合わせないし、話にも入ってこねぇな。
いつもの事とはいえ、彼女の目的はお前なんだからもう少し頑張ってほしい。
一歩引いたところでぷるぷる震えながら歩くひとりに呆れていると、虹夏さんが話題を振ってきた。
「そういえば一心くんもギター背負ってるけど、どのくらい弾けるの?」
俺だけに話題を振ることから、ひとりには既に聞いたのだろうか。もしそうなら、そこそこなんて答えたんだろうなと思う。……実際は音楽関係者からも注目を集めるレベルで上手いんだけどな。
しかし、正直に答えてもいいのだろうか?
おそらく大言壮語に聞こえるだろうし、だからといって過小に答えるのも俺の性格的にモヤッとする。俺はギターに関しては嘘をつきたくない。
……まあ、いっか。そこまで困ることないし。
「そうですね、プロでも通用するくらいには弾けます」
「あはは、すごい自信だね。それだけ上手ならバンドとかも組んでるの?」
「バンドは組んでないですよ。基本一人で自宅練習か路上ライブですね。ネットにも何曲か投稿してます」
「へぇ~、そうなんだ。結構色んなことやってんだね」
俺の実力云々は綺麗に流され、今はどんな活動をしているかの話へ移行した。
ジョークの一種と思われてるのか本気で信じてはなさそうだが構わない。
高校に入学したての奴がプロ並みなんてそうそうないし、あくまで自己申告。信憑性は薄いだろう。
この話について追求されると説明が困るから助かった。そこまで必死に隠しているわけではないが、説明が面倒なのだ。俺ってそこそこ有名だし。
こういう空気を察知して別の話題に移れる彼女は俺の幼馴染なんかより何百倍もコミュ力が高い。
……ところでひとり、お前はなんで自分の服や虹夏さんの匂いを嗅いでいるんだ?もし自分と比較しているのなら烏滸がましいにも程があるぞ。防虫剤の匂いが染み付いたお前とは違うんだ。
お前がどれだけ変人扱いされようと今更なのでどうでもいいが、今は近くに俺もいるんだ。巻き込まれて俺まで変人認定されたらたまったもんじゃない。
「ん? 歩くペース速い?」
「いっいえ」
すげぇな、幼馴染の俺でも軽く引くのにこの対応。天使か?
「そうそう、これから出演するライブハウスは『STARRY』っていってね。あたしのお姉ちゃんが店長やってて……ていうか店の上のマンションにあたしら家族が住んでて~」
「へぇ、お姉さんが店長なんですか。凄いですね」
「いやいや、そんなことないって。だからね、ひとりちゃんも緊張しなくても大丈夫だよ!」
「あっはい」
虹夏さん、気遣いはありがたいがこいつには何を言っても無駄だ。その程度で緊張が解けるならこいつは苦労していない。
「でね、あたしはそこでバイトしてて〜」
「あっはい」
「スタッフさん達もいい人ばかりだからさ〜」
「あっはい」
俺の目の前では、なんとかして目を合わせたい虹夏さんと、絶対に目を合わせたくない……というか合わせられないひとりによる不毛な攻防戦が繰り広げられている。
頑張れひとり。お前の性格的に難しいのがわかるが、ここまで積極的に話しかけてくれる人なんて滅多に居ないぞ。天使の慈愛を無駄にするな。
「……ひとりちゃん、実は結構運動できる?」
「いっいえ……あっでもドッジボールだけは何故かいつも最後まで残ってました……」
「そ、そっかぁ……」
秒で無駄にしたな。お前の悲しいエピソードを聞いて虹夏さんめちゃくちゃ気まずそうじゃねぇか。
本当にすいません。そんな「幼馴染なんでしょ。どうしてこんなになるまで放っておいたの?」なんて目で見ないでください。
こいつのぼっち気質は生まれた頃からのものだし、小学校上がってから一度も同じクラスになった事ないのでロクなフォローもできなかったんです。
「じゃあ一心くんはどうなのかな。運動できる?」
俺が心の中で必死に言い訳していると、虹夏さんが先程の話題をこちらに投げてきた。
おそらく、というか間違いなくひとりが自分の世界に入ったからだろう。見た感じ、先程の質問で語られた悲惨なエピソードが原因ではなく、この後行われるライブへの緊張によるものだろうか。
この場合、話しかけずにそっとしておいた方がいい。多分変な表情や行動、言葉が出るだろうが、それで緊張を紛らわせてライブできるなら御の字だ。
「運動部に勧誘されるくらいにはできるって答えておきます」
「え、なになに〜? 運動もできてギターもできる、それに顔立ちも整ってるしすごいハイスペックじゃん。学校だとモテるでしょ〜?」
「いや、それが全然。まあ入学してから一ヶ月しか経ってないし、放課後もひとりに付き合ってすぐ帰るんでそんなもんかなって思います」
とはいえ、そう言って貰えるのは素直に嬉しい。運動も容姿も先天的な部分があるが、それ以上に必死に磨いて培ってきたものだ。自分の築いた努力が認められるのはいつだって心地よい。
「っていうか、一心くんっていつもひとりちゃんと一緒にいるんだよね? もしかして二人って付き合って――」
「ないです。なんて恐ろしいことを言うんですか」
「そこまで言う?」
言います。
「でも、そっか〜。やっぱり漫画やドラマみたいに幼馴染同士の恋愛ってあんまりないのかな」
「余所の幼馴染を知らないので詳しくないですが、そんなもんだと思いますよ」
それに、こいつと付き合ったりしたら身が持ちません。要介護者みたいなものですし。
確かに容姿自体はいい。ちゃんと整えればアイドル事務所も狙えるほどには顔もスタイルも優れている。
だがそれも、常にうつむきがちな事でできる暗い表情に二重顎、陰鬱な性格と壊滅的な服装センスが足を引っ張っているせいで美少女とは到底言えない有様だ。
さらに言えば中身も酷い。コミュ障と承認欲求、行動力を最悪なレベルにまで拗らせた彼女の世話をするのは生半可な覚悟じゃできない。百年の恋も冷めるだろう。
結論、ありえない。このダメダメな幼馴染に惚れてお世話してくれる奇特な方がいるのなら是非出てきてくれ。全力で応援するから。
なお、度々ひとりのことを押し付けようとする美智代さんの思惑には気づかないふりをする。俺は普通の恋愛がしたいんだ。
「実はもう一人のバンドメンバーって私の幼馴染みたいなものなんだけど――」
「私は武道館をも埋めた女……」
「えっ?」
「あっいえ」
「あ、あはは」
虹夏さんが他のバンドメンバーについて話そうとしているときに、ひとりの口から頭のおかしい一言が飛び出した。
内容から読み取るに妄想内容は武道館のような大きいステージでのソロライブあたりだろう。現実だと観客どころか一対一でもまともにコミュニケーションを取れないクソ雑魚なのだが。
それはそれとして、会話の流れをぶち壊して妄想垂れ流すなよ。虹夏さん困惑してるじゃねぇか。
すいません、この子悪気はないんです。ただ致命的にコミュニケーション能力がないだけで。
だからやばい子を見るような目で「頼む相手間違えたかなぁ?」なんて思わないであげてください。その事実にこいつが気づいたら精神崩壊しそうなんで。
◇◆◇
「――あ、着いた! ここだよ〜」
あれから数分後、虹夏さんに案内されて俺たちはライブハウスに到着した。
そこそこ大きなマンションの地下へと続く階段の先に入り口があり、その周りには店の看板やバンドのポスターなどが掲示されている。
暗くダークな雰囲気のライブハウス。まさしくアングラ。秘密基地みたいで男心を大変くすぐられる。
他のライブハウスには何度か行ったことあるが、この独特な雰囲気にいつも俺はワクワクを抑えられない。
それにひきかえ、ひとりは真っ青な顔でライブハウスの入り口を眺めている。基本暗く狭いところを好む彼女だが、はじめてということもあり威圧感の方が大きいらしい。
「ほら、行くぞひとり」
「はっはひ!」
そう情けなく返事する彼女の背を押して、虹夏さんと一緒にライブハウスへ足を踏み入れる。
「おっはよーございま〜す」
虹夏さんの明るい挨拶がライブハウスに響く。身内が運営する箱だからか、通い慣れた様子の彼女の後ろを歩きながら全体を見渡す。
全体的に黒と赤を基調とした内装をしている。入ってすぐの階段を降りると、目の前にはドリンクを提供するカウンターが見えた。
他にも多角形型のテーブルが何席かあり、そこで今日出演するであろう女子高生達が歓談を楽しんでいる。
なにより目立つのはライブステージだろう。見た感じ機材は割と良い物が揃っているし広さも申し分ない。
まだ出演するバンドの演奏やそれを見に来る観客の入りなどは見ていないが、それでもわかるくらいには総じていい箱だと思う。
「ひとりちゃん、大丈夫?」
「ふへぇ、私の家」
「違うよ!?」
違うぞ。俺もこの暗さと圧迫感から、ひとりは気に入りそうだなと思ったが断じてお前の家ではない。ライブハウスと押し入れを比べるな。
「簡単にだけどスタッフさんを紹介するね。あそこにいる人が照明さんで、そこにいるのがPAさんだよ」
「おはようございます……」
機材を囲む柵から顔を出したPAさんがダウナーな感じに挨拶してくれた。
黒く長い髪の姫カットで耳や口などにピアスをつけたミステリアスな風貌の女性だ。パッと見イケイケな雰囲気で威圧感を感じるが、バンド関係者は似たような感じの人が多いので気にならない。
だから俺は普通に挨拶を返したのだが、ひとりには刺激が強すぎたようで――
「いいいいイキってすみません……」
「急にどうした!?」
このようにぷるぷる泣き震えながら謝っていた。あまりに急な変貌に虹夏さんがツッコミを入れたが割と日常茶飯事だから慣れて欲しい。なんなら体が崩れていない分マシである。
「やっと帰ってきた」
「おっ、リョウ〜〜」
情緒不安定すぎるひとりの様子に戸惑っていた虹夏さんだが、突然奥の方から現れた人物に声をかけられると表情を明るくして返事を返した。彼女の様子からして知り合いなのだろう。
青い髪を肩より上の位置でふわりと整えられ、左にある泣きぼくろが特徴の大人しめな女子だ。ただ声のトーンが低めで容姿も中性的、服装もシャツにゆったりとしたパンツなのでユニセックスな雰囲気を醸し出している。
「ひとりちゃん、一心くん。紹介するね、彼女があたしのバンドメンバーの山田リョウ。ベース担当なんだ〜」
「ん、よろしく」
「で、この子が後藤ひとりちゃんで、こっちの子が獅子堂一心くん。奇跡的に公園で見つけたギタリストとその付き添いだよ」
「獅子堂一心です。よろしくお願いします、リョウさん」
「ごっ後藤ひとりです。大変申し訳ございません!」
なんかリョウさんが横ピースしながら挨拶してくれた。無表情だがノリは良さそうである。
しかし無表情ゆえに睨まれてると思ったのか、ひとりは自己紹介で謝罪しだした。
先程のPAさんのダメージでボロボロなところにクリーンヒットしたのだろう。HPがレッドゾーンの瀕死状態である。
「えっ、ちょっ!? 大丈夫だから、表情に出にくいだけ。変人って言ったら喜ぶよ~」
「嬉しくないしぃ」
そういうならもっと表情を引き締めてください。顔ゆるゆるですよ。やはりベーシストは変人が多いらしい。知り合いの酒カスベーシストを思い出す。
天使と変人コンビのおかげでひとりは落ち着いたらしい。
「そういえば店長が……」
「えっ?」
「時間まで練習しとけって。あと虹夏が勝手にライブハウスから抜け出した事、怒りながら買い出しに行った」
「ひぃっ!嘘っ!? 帰ってくる前にスタジオ行かなきゃ怒られるでしょ! そういうことは早く言ってよ、ばかばか……あほ〜」
「別に早く行こうが怒られるのには変わりないじゃん」
「そういうのじゃなくて〜」
虹夏さんとリョウさんの微笑ましいじゃれあいを眺めていると、虹夏さんが俺たちへスタジオへ行こうと誘ってくる。
「ひとりちゃんに一心くんも、ほら!」
さも当たり前のように俺たちを仲間として数えている、そんな声だった。
それが、今まで孤独だったひとりに居場所ができたみたいに感じられて少し嬉しかった。
「はっはい!」
「わかりました」
なんというか、たった一日でいろいろと変わった気がする。
長年誰とも仲良く出来なかったひとりが、ようやく前へ進み出したのがその証拠だ。
現実はそこまで甘くない。
でも、これから歩く道のりは光に満ちている気がする
二次創作やばい。PVやお気に入り登録、高評価が気になって自分の作品ページをちょくちょく覗いてはニヤニヤしてる。すごく心が満たされる
というわけで、気軽にお気に入り登録、感想に高評価してくれてもいいんだぜ!
今回高評価を入れてくれたAfuroさん、本当にありがとう!
反響がある度に創作意欲がバリバリに湧いて頑張れる。