それと評価バーが赤色になって驚いてます。応援本当にありがとう!
ぼざろ第8話楽しみですね、予告にライブ場面がなかったけどサブタイが作品名だから神回確実。リアルタイムで見なければ……
今回は作者公認である作中一の萌えキャラ登場です。
それでは本編へどうぞ。
彼女らへ衝撃のカミングアウトをして控え室を去った後、俺はライブステージ前の客席にいた。この後ライブが始まるからだろうか、人もまばらに集まっている。
……ちなみに「ライブ終わったら絶対に問い詰めるからね!」なんて声が聞こえた気がしたが、おそらく空耳だろう。帰ったら念入りに耳掃除をしなければ。
閑話休題
俺は虹夏さんのお姉さんである店長に挨拶しようとしていた。というのも、いくら妹である虹夏さんに誘われたからと言って経営者である店長さんには関係のない話。
虹夏さんは付き添いで来てくれたんだから無料でいいなんて言ってくれたが、流石に気が引ける。数百円とかならともかく、ライブ見るのに一回2000円くらいかかるからな。
だからお姉さんが払えと言うならむしろ喜んで支払おう。チケットノルマとかあるだろうし、そこまで痛い出費ではないのだ。どうせなら正規の手段で楽しみたい。
……それに虹夏さんの苗字や外見からして知り合いの確率が高いため、そういう意味でも挨拶はしておきたいと思っている。
そういうわけで俺は店長である虹夏さんのお姉さんを探すため、この店のスタッフであるPAさんに話しかけた。
「すみません、少しよろしいでしょうか?」
「はい、なんでしょ……ってあら、あなたは……」
「虹夏さんに招待されて来た、獅子堂一心といいます。店長さんにご挨拶しておきたいのですが、どこにいらっしゃるかご存知ですか?」
ライブ前の忙しい時間に話しかけるのはどうかと思うのだが、あまり時間は取らせない気はないし、他のスタッフさんは準備に走り回っていて話しかけづらい。
その点、音響機器の調整で持ち場へ待機しているPAさんは声をかけやすかった。
交流なんてほぼないので失礼のないよう少し硬い言葉遣いでの質問に、彼女は笑って答えてくれた。
「うふふ、そんなにかしこまらなくていいですよ。店長ならドリンクカウンターのほうにいると思います」
「そうですか、教えてくれてありがとうございます」
「いえいえ、ライブ楽しんでくださいね」
かしこまらなくていいと言われたので楽に、しかし目上の方なので敬語は崩さずお礼を言う。
余程のダメ人間じゃないかぎり丁寧に接したほうが印象はいいからな。ちなみにそのダメ人間は際限なくつけあがるのでオススメしない。具体的に言うと、いまだに俺に金を返さない酒カスとか。
ひらひらと手を振ってくれるPAさんに俺も振り返してドリンクカウンターの方へ向かう。
とはいえPAさんがいた場所からは近くにあるため、すぐに目的の場所が目に入った。これだけ近くにいるのに気が付かなかったのはちょうど人集りで遮られていたせいだろう。
先程まではドリンクを購入しようとするお客さんの対応で忙しそうにしていたが、今では落ち着いたのか暇そうにしていた。
目の前に来た俺に対して、驚いたように口をポカンと開けている彼女へ久しぶりに声をかける。
「お久しぶりです、星歌さん。元気にしてました?」
最初は呆気に取られていたが、やがて落ち着きを取り戻した彼女――伊地知星歌は穏やかな笑みと共に、しばらく顔を合わせていなかった俺へ再会の言葉を告げた。何故かこめかみに青筋を立てながら。
「おう、久しぶりだな。
……あれぇ? もしかしてなんですけど、めちゃくちゃ怒ってます?
◇◆◇
互いに久しぶりの挨拶を交わした後、星歌さんに「手伝え」と命令されるがまま、俺はドリンクカウンターの内側へ引きずりこまれた。
どこに何があるかの簡単な説明をされ、その後はぼちぼち来るお客さんへドリンクを渡す作業に従事している。
そしてもうライブが始まるとあってお客さんが完全に途絶えた頃、星歌さんから話を切り出された。
「それで? このハコ開いてから一度も足を運んでいない薄情者のお前が、一体なんの用だ?」
「それで怒ってたんですか……」
「怒ってねぇよ」
「いやでも……はい、もうそれでいいですよ。だからそんなに睨まないでください」
「睨んでもいねぇ」
相変わらず素直になれないというか、ツンデレ乙というか。
どうやら俺がこのライブハウスに一度も来なかったせいで拗ねていたらしい。割と気に入られていた自覚はあったが、そこまでとは思わなかった。
とはいえ俺にもやむを得ない事情というものがある。
「今日はあなたの妹さんに連れられて、ギターを弾くことになった幼馴染の付き添いです」
「ふ〜ん、幼馴染の付き添いねぇ。そういやいるって聞いたことあったな」
「……あと俺、開店したなんて知らされてないですからね。そりゃあ来れませんよ」
「えっ? お前に言ってなかったか?」
「言われてないですよ。ライブハウスやるからバンドもアルバイトも辞めたってのは聞きましたけど、それ以外はさっぱり」
受験やら進学後のあれこれで直接会ったり、連絡を取ることも少なかったからな。
ライブハウスやるなんて聞いたのもだいぶ前で、虹夏さんの姉が店長と聞いてようやく思い至ったくらいだ。知らなくてもしょうがないだろう。
それらの旨を星歌さんに伝えるとどこか申し訳なさそうにしながら謝ってきた。
「あ〜、そのなんだ……悪かったな」
「別にいいですよ。誰とは言いませんが、受験期とか関係なく金を無心してくるベーシストよりはマシですし」
「流石にそいつとは比べられたくないんだが……。まあいい、ほらやるよ」
そう言って星歌さんは俺に可愛い熊がプリントされた紙パックのジュースを差し出した。俺は「良い子りんご100」という彼女が好んで飲むジュースを受け取るが、なぜ渡してきたのだろうか。
「いきなりどうしたんですか? いや、貰えるのは嬉しいんですけど」
「……まあ、詫びみたいなもんだよ。こっちが誤解して理不尽に怒っちゃったからな。それに進学祝いとかもしてねぇし。……だから、そのあれだ、ありがたく受け取っとけ」
気恥ずかしくなったのかそっぽを向いている彼女によると、このジュースはお詫び兼進学祝いの品らしい。そういうことならありがたく貰っておこう。
俺は星歌さんにお礼を言い、付属のストローを差して貰ったりんごジュースを飲む。昔から何度も彼女と飲んだ慣れ親しんだ味が口に広がった。やっぱり美味い。
俺が貰ったジュースを堪能していると、星歌さんがそういえばと問いかけてきた。
「今日出るギターの子ってお前の幼馴染なんだろ? どのくらい弾けるんだ?」
「……ギリギリ、ほんのちょっと、紙一重であいつのほうが俺より上です」
「へぇ、お前より上手いのか……。って、はっ? 嘘だろ?」
「あくまでほんの僅かにですけどね!」
「わかった、そこまで差がないってのは伝わったからその苦い顔やめろ。……にしても負けず嫌いなお前が認めるなんて相当だな」
そう、後藤ひとりは天才だ。
容姿の良さとギターの腕前以外は何一つ持ち合わせないような人間だが、それら二つは超人的なものを持っている。
特にギターの才能に関しては埒外と言っていい。狂気にも等しい時間を練習に費やしていたとしても、たった三年でネットで話題になるほど上達するなんて馬鹿げている。
「たった三年で追い越されましたよ。もちろんすぐに追い抜くつもりですけど」
「へぇ、そりゃ凄いな。じゃあ注目しておくか」
そう話す星歌さんの楽しげな声とは裏腹に、目には冷たい色があった。
大切な妹が心配なのだろう。もし彼女の考えていることが俺の想像通りなら、最悪の場合バンド解散なんてことも十分にありえる。
しかしその心配が現実になることはないと言っていい。
「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。どうせ杞憂に終わりますし」
「そりゃどういう意味だ?」
「どういう意味も何も……って、そろそろ妹さんのライブ始まりますよ」
俺らが若干不穏な会話をしている間に彼女たち、結束バンドの出番が回ってきたようだ。
「はじめまして〜、結束バンドで〜す! 今日は多分みんなも知っている曲を何曲かやるので聞いてください!」
ステージ奥のドラムの前に座り元気にMCを進行する虹夏さんに、こちらから見て左側にベースを携え静かにたたずむリョウさん。そして右側で何やらガタゴトと音を立てて動くダンボール。うん、実に異色だ。
隣の星歌さんはステージ上の結束バンド、特にダンボールに目を向けぽつりと呟いた。
「なんだ、あれ?」
「俺の幼馴染ですよ。極度の人見知りみたいなもんです」
「いや、それにしても限度が……って、んなことはどうでもいい。お前が杞憂だって言った理由も演奏聴けばわかるだろ」
ええ、本当に要らない心配だと思いますよ。むしろ心配なのはこっちのほうというか……
そんなことを考えている間に結束バンドの演奏が始まった。
虹夏さんのドラムがリズムを刻み、リョウさんのベースが全体を支え、ひとりのギターが自己主張激しく音を奏でる。
最初はまだなんとか合っていた演奏も次第に崩れ始めていった。
突っ走るひとりの演奏に、虹夏さんとリョウさんがカバーするように合わせるが次第にミスが増えていく。
お世辞にも上手とは言えない演奏を聴いて、星歌さんは呆れたような声で話しかけてきた。
「……本当にお前より上手いのか? 演奏ボロボロなんだけど」
「さっき人見知りみたいなものって言ったじゃないですか。誰ともバンド組んで演奏したことないから上手く合わせられないし、人前だと一切実力を出せないんですよ。演奏は上手いけど人間が下手って感じですね」
「なんだそれ。まあ、確かにこれなら杞憂だったかもな」
どうやら懸念は晴れたようなので俺は彼女たち、結束バンドのライブに集中する。特に完熟マンゴーと書かれたダンボールの中にいるひとりへ注目する。
いや本当にちやほやされたいからギター始めた癖に、人前だと弾けないなんて本末転倒もいいところだ。
ライブ前のMCも滑ってたし、今も演奏はぐちゃぐちゃ。『guitarhero』としての実力なんて見る影もない。
……でも楽しんでいるのがわかる。
あいつは夢にまで見たバンドを組んで、初めて人前で演奏している。
ダンボールに隠れて見えないが、あいつの楽しそうな様子がありありと目に浮かぶ。
どれだけ酷い音でも姿でも関係ない。俺の目にはあいつがキラキラと輝いて見えている。今この瞬間、あいつこそが主人公だ。
……なんてことを思っているうちに演奏は終了。
案の定お客さんのウケは悪く、少し微妙な雰囲気のまま次のバンドに出番が回ってきた。
見るもんも見たし、そろそろ彼女たちの方へ戻るか。
「じゃあそろそろ控え室のほうに戻りますね」
「なんだ、他の奴らは見てかないのか?」
確かにまだライブが終わってないがひとりの世話があるからな。目を離すとなにをやらかすのか心配だ。
何より
「別にいいですよ、俺の目当ては結束バンドだけですし。それに今回は新人みたいな、そんなに売れない奴ら中心のライブでしょう? そこまでして見るものでもないし、ダイヤの原石は勝手に上へ登ってきます。その時に改めて見させてもらいますよ」
そんな俺の傲慢極まりない発言に星歌さんは呆れたような声で返事を返した。
「あっそう。……あと微妙にスイッチ入ってるみたいだから戻る前に切り替えな」
「おっと、すいません。最近、切り替えてる機会がなかったので緩んでたみたいです」
危ない、危ない。慣れているひとりならまだしも、初めて見る虹夏さんやリョウさんを驚かせてしまうところだった。いやリョウさんならそこまで驚かなさそうだけど。
しっかり意識を普段のものに切り替えてから控え室に向かおうとすると、星歌さんに呼び止められた。
「最後に一つだけ質問なんだが、お前はあいつらのバンドに入る気はあるのか?」
「ないですよ。これっぽっちも入る気はありません」
「ん、そうか。ならよかったよ」
俺は今度こそ結束バンドのみんなが待つ控え室へ向かった。多分ショックでボロボロになっているであろうひとりにはフォローが必要だろう。
「あっ、あと詳しいことは後で連絡するけど、お前にはここでバイトしてもらうから」
「なんて?」
なお、拒否権はないらしい。
◇◆◇
星歌さんからの突然のバイト宣言の後、俺は控え室の扉の前に立っていた。
バイト自体は構わない。昔からの付き合いってのもあるし、時間も空いている。元々バイトは探そうと思っていたところだ。むしろ探す手間や面接なども省けて助かったと言っていい。
そんなことをつらつら考えながら扉をノックする。
中から入室の許可を貰い部屋へ入ると、部屋の奥で談笑している虹夏さんとリョウさんの姿があった。入ってすぐのところにいるボロボロのダンボールゴミはスルーしておこう。
「二人とも、お疲れ様です」
「ありがと〜! でもごめんね、折角のライブなのにミスりまくって」
「MCも滑ってたね」
「てへっ」
二人の様子を見た感じ、先程のライブを引きずるようなことはないらしい。むしろ悪かった点を分析して改善しようとする余裕がある。
正直ほっとした。
ミスをいつまでも引きずって落ちるところまで落ちるバンドは山ほど見てきたからな。ひとりと組んでくれるという奇特なバンドが無くなるのはあまりにも惜しい。
「あっ、あの!」
俺は二人にライブの感想を伝えようとするが、突然大きな声をあげてひとりが勢いよく立ち上がった。
「つつつつつ……」
「な、なに!?」
ダンボールを脇に退け、奇声を発しながらゾンビのような足取りで近づくひとりに、虹夏さんが怯えたような声をあげる。
「つっつつつつつ……」
「なに!? 怖いんだけどっ!?」
正直付き合いの長い俺から見ても今のひとりは不気味としか言えない。
やがて突然の奇行に驚いて身構える虹夏さんとそれでも平然としているリョウさんの前にたどり着くと、ひとりは自身の決意を大声で宣言した。若干声が震えていたが。
「次のライブまでにはクラスメイトに挨拶できるくらいにはなっておきますぅ!」
「なんの宣言?」
いや本当に挨拶くらいはできるようになっておけ。それだけでだいぶ印象良くなるから。
そんなある意味情けない、しかしひとりにとっては大きな決意の宣言にリョウさんは「目覚しい成長」なんて言いながらホロリと泣き真似をしだし、虹夏さんはどこか嬉しそうに優しい微笑みを返してくれた。
「でもそっか〜、うん。よーし、じゃあ今からぼっちちゃん歓迎会兼ライブの反省会。ついでに一心くん尋問会だ〜!」
どうやら虹夏さんは俺を逃す気はないらしい。ライブやら新しいメンバーとの交流なんかで忘れてくれたら助かったのだが……。
でも今回ばかりは逃して貰おうか。
「あっ今日は人と話し過ぎて疲れたので帰りま〜す」
「えっ?」
はい、ワンアウト。
超絶ド陰キャコミュ障のひとりにとって今日は激動の一日だっただろう。相当消耗したはずだ。
「ごめん、眠い」
「えっ?」
これでツーアウト。
我がマブダチ山田リョウは、我が道を行くゴーイングマイウェイなマイペース少女。空気を読むなどできるわけがない。
「じゃあ、自分もそろそろ遅い時間なんで帰ります。お疲れ様でした」
「しっ失礼します」
「えぇっ!?」
最後にスリーアウト、ゲームセットである。
実際、俺とひとりの家はだいぶ遠いし、もう遅い時間だ。帰りが遅れると連絡したが早く帰るに越したことはない。
俺たちは驚き固まっている虹夏さんと眠そうに船を漕いでいるリョウさんに挨拶してすぐに控え室を出た。
人といる空間に耐えられないひとりとすぐにでも逃げたい俺は、猛スピードで走っているため追いかけることなど不可能。普段は運動音痴なこいつもこういう場面では凄まじい能力を発揮する。できるなら常に発揮しててほしい。
「結束力全然ないっ!」
後ろから虹夏さんの声が聞こえたが無視する。俺もこんなに結束力がなくて大丈夫なのかと言いたいが、今はそのおかげで逃亡できたからな。俺からはなにも言えない。
「……で? どうだった、初めてのバンドは?」
ライブハウスから出た後、街灯が照らされた夜の暗い道をひとりと一緒に歩きながら俺は問いかける。
ひとりは少し考え、ぽつりと呟くように今日のライブのことを語る。
「全然普段の実力出せなくて最悪だったけど……」
「けど?」
「……誰かとバンド組んでする演奏ってこんな最高な気持ちなんだなって思った」
「そうか、ならよかったな」
「……う、うん」
どこか満足気な表情の彼女を見ると今日は来てよかったなと改めて思う。
……それはそれとして。
「危ないからもうちょっとこっち寄れ」
危うく通行人にぶつかりそうになったひとりの肩を抱き寄せる。ここの道は結構細いから気をつけないといけないのだ。
「あっありがとうございます……」
「なぜに敬語?」
何故か小さくお礼を言うひとりに疑問を抱きながら俺たちは帰路へついた。
ようやくアニメ1話の内容終わりました。次はバイト編かな。
それはそうと前書きでも言いましたが評価バーが赤になってました!正直ビックリしてる。
それにUAも4000以上、総合評価ももうすぐ400になりそうです!
そんな前回から爆伸びした本作ですが、何故か感想が一切来ない。誰か話しかけて(ぼっちちゃん節)
今回高評価をくれた
☆9 : 葉月とうかさん、塩結びさん、LM_Lilyさん
☆8 : うっつんさん、地球儀さん
本当にありがとうございます!
そのほか応援してくれる人たちもありがとう、愛してる!
次話は土日で更新できたらなーって思ってます(未確定)