能力バトルかと思ったら魔法少女、相手は怪獣   作:ハピ粉200%

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第四話 新たなる魔法少女、試練の動画作成

 『怪獣』動画が世間様を賑わせた3日後。

 ある意味それ以上のインパクトのある動画が、大手動画サイトに投稿された。

 内容は以下の通りである。

 

 ───動画再生。

 

 ででん、と言う音と共に暗転した画面に広がる『重大発表』の文字。

 その後フラッシュしたと思ったらどこかの草原が映し出され、BGMが流れる。

 

『まーほう、しょぉ↑ーじょ~↓、せいぎのしょぉじょ~↑』

 

 唐突にあかりの下手糞な歌が流れる。

 そしてカメラが動き、背を向いて立つ少女が映る。

 

 背中と大きく開いたデザインの黒いインナーに、短いマントとフレアスカート、左右色違いのニーハイソックス。

 言うまでもなく魔法少女イスタスである。

 

 草原で仁王立ちしたスタイルの彼女が振り返る。

 すると急に視界がぶれてカメラが下からぐいっとパンしてタイトルロゴがドーン。

 次々とイスタス達を映したカット割りが流れる。

 

 ───窓際で黄昏るイスタスが、ふと何かに気づいて空を見上げる姿。

 ───(あ、ここから~)という琴音の声と共に登場人物の紹介なのか、次々とポーズを付けた人物が入れ替わる。

 ───イスタス、ポヨ公、カボチャを被った黒いインナーの謎の魔法少女、箒とトンガリ帽子を被ったひょっとこ仮面の少女。

 ───全員が走る姿、なぜか手を伸ばす姿。

 ───とりあえず、なんかよくあるOPぽい画である。

 ───全員が振り返る姿と、どういう状況かカボチャ頭とイスタスが向き合って対峙する画。

 ───そうこうしているうちに尺が無くなり、最後に制作委員会名と3人と1匹が整列した姿が映る。

 

『私たち魔法少女は、人類を守りまーす!』

 

 ───終了。

 

「ヨシッ」

 

 アップされた動画を見返し、魔法少女イスタスは満足そうに頷いて、あかりは倒れた。

 

 

──────────────────────────

 

 

 ───その日の放課後。

 

 いつもの通りにいつもの神社に集まった彼女ら『魔法少女』たちは、天幕の下で持ち寄った椅子とテーブルで飲み物飲みながらディスプレイを見ていた。

 ちなみに勝手に占拠していた廃神社の天幕はみんなの私物によりアップグレードを続けている。

 

 巨大なテーブルを持ち込んだイスタスに、クッションやら椅子を持ち込んだあかり。

 後輩である魔女っ娘、琴音は実家からデスクトップPCとディスプレイも持ち込んでいた。

 

「あ、先輩。結界敷き終わったっスよー」

「ご苦労様」

 

 んで、色々できる後輩である琴音。

 3日前に唐突に加わった彼女は自称『魔法使い』の魔女っ娘である。

 人となりを全く知らないイスタスは入れるのを躊躇したが、もうここまでばれてしまっては仕方ないと開き直った。

 ポヨ公もあっさり捕まってたし。

 

「ナナ先輩お疲れ様でーす、どうしてそんな潰れてるっスか?」

「だって……あの動画」

「いいじゃないスか。

 私の編集、ナイスっしょ!」

 

 ぐいっと親指を立てる琴音に、イスタスもぐいっと親指を立て返してにやりと笑う。

 何となく感覚で通じ合う二人を横目に、あかりは机に突っ伏した。

 なんでこいつへこんでるんだ?という答えは机の上に置いたディスプレイに流れる一つの動画にある。

 

『ちーきゅうのへいー↑わをまーもる、ため。よぉ~せい、のくにからやってきた↓』

 

 そこには冒頭で展開されたなんか魔法少女ものOPっぽいものが流れている。

 実に手探り・・・感が溢れているが、編集自体は琴音が頑張って何とか上手く繋いでいた。

 

「なんでこの歌使うんですかぁ~……」

「だってあかりが顔出したくないって言うし」

「琴音ちゃんも隠してるじゃないですかぁ……」

「あたし変身してないし、まだ『仮入部』じゃないスか」

 

 琴音を入れることで膨らんだこの集まり。

 なんか女の子3人集まれば名前を付けるとアキハバラで電球持った娘が言ってた気がするので、イスタスはとりあえず『魔法特捜部まとくぶ(仮)』としてエセ部活を発足。

 部長、イスタス。副部長兼ごみ捨て係のあかり。見習いの琴音。ペットのポヨ公。

 まとくぶっ! 3人と1匹が勢揃いである。

 

「あー……でもこの動画、再生数17万突破してるんですよねぇ……」

「そりゃそうですよ。

 今まで不明だった謎の魔法少女が動画出してるんスよ。

 再生数回るっしょ」

 

 天幕に戻って自分の琴音が腕をぐるぐる回しながら動画をコメント欄をスクロールする。

 そこには大量の多言語コメントが溢れていた。

 

「さすがに返信は無理っスねー」

「アップロードはイスタスが物理的に別場所からやるから、止めときなさい」

「了解っス」

 

 ちなみにこんなんアップロードしたらアクセス先辿られて見つかるんちゃう?

 っていう対策はイスタスが力ずくで海外に飛び、全然知らないフロリダのコーヒーショップからアップロードして解決していた。

 後日、そこは警察とかFBIに囲まれたそうな。

 

 んでアカウントは勿論、虚偽の名前と住所などで押し通しているので見つかればすぐBANされるだろう。

 でも、目的は既に達していた。

 

「まあ、これで私たち『魔法特捜部まとくぶ(仮)』の目的が地球の平和を守ることと、ポジティブなイメージを展開することには成功したでしょう」

 

 満足げなイスタスと琴音に対し、あかりはまだ自分用クッションに頭を乗せて関連動画を見ていた。

 そこには、自分たちの動画を素材化した様々なMADが溢れている。

 

「代償が大きいですよぉ……。

 あたしなんて、黒タイツで手を合わせながら謎の踊りさせられてる動画作られてるし……」

「いやそれはカボチャ頭を選んだあかりが悪い」

 

 変身後とはいえ顔を出したくないと駄々を捏ねるあかりに対し、イスタスが提示した仮面は二つ。

 カボチャ頭とひょっとこの仮面である。

 あかりはその二つなら、まだましかとカボチャ頭を選んだのであった。

 ちなみに琴音は笑顔でひょっとこの方を受け取った。

 

「んじゃあ、そろそろみんなのタスクの確認をするから、集まって」

「了解っス」

「……ぁぃ」

 

 元気よくPCから振り向く琴音と、ダウンしながら顔をあげるあかり。

 二人の目が向いていることを確認し、イスタスは切り出した。

 

「じゃあまず、あかり。

 射的の腕は少しは上がった?」

「……まだ20点です」

「この後境内までの階段50往復ね」

「うそっ!?」

 

 あかりにはボウガンを有効活用すべく、中古のモデルガンやら和弓を借りて射撃練習をさせていた。

 丸い和弓用の的目掛けて社距離30mで命中率はまだ20%。先は長そうだ。

 

「次は琴音。状況を報告して」

「了解!まずこの境内近辺は結界敷き終わったっス。

 仮にナナ先輩が裸踊りしてても「あれ気のせいかな」って気にしないようになったっス」

「どうしてそこで私を出すの……?」

 

 魔女っ娘琴音ちゃんはとんがり帽子を押さえて舌を出しながらあかりを見る。

 あかりは謎の理不尽を受けて机の上にぐでっと凹む。

 

「次に怪獣の捜索っスが、やっぱり魔力持ってないやつはよく見つけられないっス。

 もっと魔力があれば違うんスけどね~」

「まだ『涙虹石イーリス・リアクター』はあげません」

 

 隙あらば『涙虹石イーリス・リアクター』を要求する琴音に対し、断固としてイスタスは拒否。

 3日間である程度の琴音の人となりは把握したイスタスではあるが、用心は欠かさない。

 まだ腹を割って話すまでには至っていなかった。

 

「『まだ』ってことは、何時くれるんすか、イス先輩?」

 

 琴音は未練たらしく足を振りながら、ポヨ公が干されている物干しざおを見る。

 そこには案山子よろしく磔にされて近づく不審者を見張るポヨ公の姿があった。

 

「私を未来人みたいに言うな」

「じゃあタス先輩」

「別にタイムアタックもしてない。

 ……2文字ぐらいちゃんと発音して?」

「じゃあスタ先輩で」

「もうそれでいいわ……」

「……?」

 

 どうしてもあだ名で呼びたい琴音VSどうしても四文字で呼ばせたいイスタスVSまたしても何も知らないあかり。

 場が少し混沌としたところで、イスタスが気を取り直してディスプレイ前に座りなおす。

 

「じゃあ、残りは私。

 四国に居座る『怪獣』と国の動向について」

 

 えへんおほんと咳払いしてから、イスタスはまたぞろ白衣眼鏡できりっとしながら話し始めた。

 

「まず、知っての通り政府は四国からの避難命令を発令。

 四国の住人370万人は本州に避難を開始。

 現時点で99%の避難完了って報道が出てる」

「大丈夫なんですかそれ……」

 

 あかりの呟きを無視して、イスタスは四国の地図を画面に表示する。

 作戦地図の上には、中国地方と九州地方、瀬戸内海、太平洋側にそれぞれ凸印が記されていた。

 

「それから自衛隊・警察及び米軍は既に共同で四国に戦力を向けているわ。

 海自の第四護衛隊群を中心に、呉・佐世保地方隊、淡路島に展開した陸上自衛隊を中心に防衛線を形成。

 瀬戸内海および太平洋海域を封鎖。

 九州南西海域には米第七艦隊が空母ロナルド・レーガンを中心に展開中。

 何かあれば空爆できる体制よ」

 

 あかりは地図とイスタスを見比べながら感心したように言う。

 

「よくこんな情報集めましたね……」

「ほんと現代はよく情報が集まるわ。

 フェイクも多いけど」

 

 実際、今表示した情報も結構嘘がある。

 本当のところはいってみなければ分からないだろう。

 

「みんな『怪獣』の言葉は信用してないんでしょうか……」

「信用する・しないの問題じゃないわ。

 知能があるかも知れないとはいえ、100mクラスの怪獣がいて備えない訳無いじゃない」

 

 『怪獣』の保護を求める言葉は政府でもちろん審議されているが、こんな怪しい動画を根拠にもまー動けない。

 世論は保護すればいいんじゃない、と無責任に書き立ててもいるが、前回ティラノもどきに何百人も殺されているのだ。

 軽々な判断はできないと、対応が協議されている。

 

 ちなみに米軍と国連も横から茶々を入れて来ているので、日本政府としてはあっちにもこっちにも配慮して混乱状態だ。

 とりあえず、暴れだしたときに備えて避難と部隊の展開だけが先に決行された形である。

 

「政府の動きはここまで。

 で、琴音ちゃんにはもう一つ頼んでたんだけど……」

 

 そこでいったん区切り、琴音をチラリとみると待ってましたとばかりにPCを弄って某掲示板やSNSのSSを見せた。

 

「はいはーい、こっからはあたしっスね。

 色んなところから噂集めたっスよ」

「どう、見つかった?」

「色々出てきたっス。

 まず、本州脱出してきた人たちなんスけど、どうも脱出時の名簿より人数が『足りない』らしいっス」

「え?99%終わったんでしょ?」

 

 思わず、と言った風にあかりが驚きの声を漏らす。

 報道を特に疑わずに信じていたあかりとしては、結構ショックな言葉であった。

 

「そう。脱出時の名簿では数はあってたらしいっス。

 でも、今日になって気が付いたら人がだいぶ消えてたらしいんスよ」

「それって何人ぐらい?」

「ざっと3万人ぐらいっす」

「……」

 

 イスタスもあかりも暫く沈黙した。

 避難してきた3万人が消えた?

 色々な理由で避難に反対したりしない人間はまあ、出るだろう。にんげんだもの。

 でもそれを踏まえても、3万人となるとちょっと数が多すぎる。

 

「それはどの程度確かな情報なの、琴音ちゃん?」

「最初はSNSでも掲示板でも嘘乙って感じでした。

 でも、どこそこの家族がいないとか子供が見当たらないとか、色んなところから出てきてパンクしてます。

 3万人かどうかは分からないっスけど、相当数居ないのは間違いなさそうっス」

「そう。少し気になるわね……」

 

 まあ370万人を急いで動かしたと考えれば、たかだか1%未満の数とも考えられる。

 混乱も起こるだろうし、行方不明者が出るのも致し方ない。

 政府の言う『99%避難した』も、数字的には合ってる。

 

「あ、も一個あったっス。

 これは怪談じみてるんスけど……どうも、消えた人たちは本州の避難所で昨日まで普通に生活してたらしいんスよ。

 で、今日になってふっといなくなったそうっス。

 出しっぱなしの食器とか、毛布とかが残ってて、ふらっとどこかに出かけたように消えてるって」

「……」

 

 ホラー展開が苦手なあかりが青くなる。

 イスタスは少し眉を顰めた。

 

「そんなところっス。

 スタ先輩、お役に立ったっスか?」

「ありがとう。助かったわ」

 

 いやほんとに。

 琴音はあかりとは違ってPCにも詳しく資料集めや調査もでき、人避けの結界を張ったり大まかな怪獣捜索までできるスーパー万能ユニットであった。

 これでまだ魔法少女では無いのだから、世の中は広いとイスタスは脱帽するばかりだった。

 

(まぁ、こいつが腹の内で何考えてるか、分からないが……)

 

 イスタスこと三上ユウも別に人生経験豊かな訳ではない。

 一見陽キャな後輩が何を考えているか、読み切れていなかった。

 なまじ優秀なだけに判断が難しい。

 

「……よし、じゃあ週末はみんなでパーッと温泉にでも行きましょうか」

「え……」

「いよっしゃー、でどこ行くっスか?」

 

 急に話題を変えたイスタスに、素直に喜ぶ琴音と困惑するあかり。

 今まで人死にや消える何かの深刻な話題からの一転に、あかりは当惑した。

 

「え、急にそんな……」

「でももうここらで話題は出尽くしたわ。

 残りは温泉でも入りながらゆっくり調べるしかないでしょ。

 二人とも予定は空けといてね?」

 

 白衣を翻しながらあっさりと言うイスタス。

 

「いいっスよー」

「でも一体どこに……」

「そりゃ決まってるでしょ。

 ───四国の秘湯に入って、ついでに調査。

 あわよくば『ルクス』さんとご対面と行きましょうか」

 

 さっそく秘湯・温泉宿を検索する琴音に、あかりへ向けてにやりと笑うイスタス。

 あかりはようやく、ここに普通の感性を持つ人間が自分だけしかない事に気が付いた。

 

「ま、それはそれとして、あかりは階段50往復ね」

「……ぁぁ」

 

 そして直近の憂鬱を思い出したあかりは、椅子から崩れ落ちるのだった。

 

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