能力バトルかと思ったら魔法少女、相手は怪獣   作:ハピ粉200%

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第六話 新たなる変身、虹の扉を超えて

 

 地球に帰って、ポヨの事情を吐かせる。

 ポヨの策を使ってミアを国政に復帰させる。

 んで、龍の国民に地球人類の犠牲を思い留まらせる。

 

 ユウの達成目標はこんなところに決まった。

 中々に困難な道ではあるが、でもやらないよりはマシだ。

 ……最悪、上手くいかなかったら全部吹き飛ばしておわり、ENDもあり得るのだが。

 

「で、これで戻れるんだな?」

「ああ。私は裏切り者となろうがな」

 

 三上ユウの事情───自分が『魔法少女イスタス』である事を明かしたこともあり。

 ミアと騎士ラ=グラリアは地球行きを同意してくれた。

 そして3人はその足で手早く荷物を纏めると、移民船後部にある格納庫へ向かう。

 そこには、外から見た移民船をダウンサイジングしたような、全長100mクラスの龍型の船があった。

 

「王族専用船───アル=ラツェルト二世だ。

 これを動させるのは、今はもうミ=ア様以外にない」

 

 脱出用に二人が提案したのは、王族専用のクルーザーだった。

 遺伝子パターン認証のセキュリティがあるようで、他の誰も動かせないとのこと。

 内装は樹脂っぽい地の素材であり、いささか殺風景だが四の五の言ってはいられない。

 ユウ自身だけなら最悪自力で帰れるが、二人は無理なのだから。

 

「じゃあ……行きます」

 

 三人が席について騎士がアル=ラツェルト二世に火を入れる。

 特に揺れることもなく静かに熱量が高まる仕様なのか、するすると格納庫を滑るように動き出した。

 途中、整備のために巡回していたロボット兵に見つかるが、無視して強行する。

 

「三上殿! 前方のシャッターを!」

「任せろ。少し荒っぽくいくぞ」

 

 クルーザーの上部ハッチから身を乗り出したユウが、手に持った鋼材を『強化』してぶん投げる。

 投擲力が強化された腕で投げられた鋼材が、閉じられているシャッターを穿つ。

 そのままばきりと穴の開いたシャッターから空気が漏れる中、クルーザーは無理やり通過して外を出た。

 

「よし……では、地球へ行こう。

 ホーマン軌道……じゃ分からんか。

 推力をケチって楕円軌道にしなくていいから、直線軌道で行ってくれ。

 ΔVが足りなかったら、こっちで補う」

「了解した」

 

 通常、惑星や衛星に行く際は推力ΔVを極力節約するために、軌道変更量が少なくなる楕円の軌道を使用する。

 しかし加減速をユウの能力である程度コントロールできる以上、楕円軌道にこだわる必要はない。

 直線軌道でまっすぐ地球まで飛べば、時間を節約可能だった。

 

「脱出は上手くいったが……問題は地上だろう。

 我々の事は既に通知され、迎撃態勢が取られる筈だ」

「分かっている。

 予想される敵戦力は?」

 

 騎士ラ=グラリアは大きく広い窓の一部に手を伸ばすと、地球周辺の図が浮かび上がる。

 其処には地球を周回する1つの点が描き出されている。

 それがこちらに敵対する、と図は示されていた。

 

「軌道巡洋艦アル=サーペント、我々が保有しているステルス衛星艦だ。

 大きさはそれ程でもないが……地上往還システムがあり、定期便が通っている。

 ……それに、自衛用の戦闘龍神がいる」

「戦闘龍神?」

 

 聞き返すユウに、騎士はぴっぴと画面を操作して映像を切り替えた。

 其処には人型と龍の中間……のような、10mぐらいのロボットが映し出されていた。

 尻尾や手に、火器と思しき装備も確認できる。

 

「太古の我らの姿を模して造られた、戦闘用の筐体だ。

 我ら国民の意識がインストールされている。

 武装は光学レーザーと電磁加速砲が搭載されている」

「へぇ……」

 

 ロボット好きのユウとしては、少しワクワクする造形でもあった。

 壊すのが惜しいと思ってしまうぐらいには。

 

「……まあ、三上殿の力ならどうという事は、ないのだろうが」

「いやいや、そんな事はない。

 知らない攻撃は防げないし」

 

 三上ユウの『強化』能力の行きつく先、魔法少女イスタスとして揮った力を知った騎士は少ししおらしくなった。

 実際、単体の戦闘能力で戦闘龍神程度では、今まで出現した大怪獣にも及ばない。

 ましてや魔法少女イスタスをどうこうすることは、現状存在しないと言ってもいい。

 

「少し見てみたいけど……無駄に戦う必要もない。

 中間点まで来たら加速をかけて、軌道巡洋艦が地球の反対側に居る隙に大気圏突入しよう」

「……それでは我らが燃え尽きてしまうが」

「任せろ。減速なら一家言あるからな」

 

 今までに何度か生身での大気圏突入を経験している三上ユウである。

 重力関係の操作には慣れもあった。

 力こぶを見せるユウに、騎士もはぁ、とため息をついた。

 

「分かった。姫様もよろしいか?」

「任せます」

「御意に」

 

 こうして、特に目立った戦闘もなくあっさりと大気圏突入したアル=ラツェルト二世。

 ユウは船の舳先に立って『魔法少女は伊達じゃない!』とかガ〇ダムごっこしながら、減速をかけて地上にするすると降りたのだった。

 

 

──────────────────────────

 

 

 ───三上家。

 

 リビングでは久々の実家にあーつかれた、とばかりにどかりとソファーに埋もれるユウ。

 ミアと騎士を引き連れた二人は少し遠慮がちに対面に腰を下ろす。

 

 家ではポヨ公が、待っていた。

 

「お帰りポヨが……二人はなんだポヨ?」

 

 妙に龍人に敵意を発するポヨが、ユウの背中に回って言う。

 

「味方に引き入れたんだよ。

 ある程度事情も聞いた。宇宙縮小の危機なんだってな? ん? どうして黙ってた?」

「う……」

 

 二人を睨むポヨ公をむんずと掴み、問い詰めると途端に目を逸らす。

 

「大方、俺に不利益なことなんだろ? 言ってみ?別に怒らんから」

「……本当に、怒らないポヨか?」

 

 恐る恐る、と言った態度でポヨはあかりと琴音に言った話をしだした。

 宇宙を救う可能性、ブランク・リアクター。

 そして三上ユウをリアクターとし、宇宙を救う事が目的だと。

 

「はーん、なるほど」

 

 ミアと騎士ラ=グラリアは顔を固くしたが、ユウは納得のいったという表情をした。

 これまでどうして、自分やこの世界を気にかけて助けるのかは少し疑問もあったのだ。

 全て自分を使う為だとすると、合点は行く。

 

「分かった……じゃあ、どのくらいで完成する?」

「え……それでいい、ポヨか?」

「本当に作るかどうかは、後回しだ。

 まずは目途を聞きたい。

 龍の国の国民を動かすには、いつできるか目途がいるからな」

 

 うーん、と耳をころころ丸めながらポヨ公は考えた。

 こう見えて故郷では最も高い知識を持つポヨ公である。

 すぐに目算だけは頭の中で弾き出した。

 

「……あと1ヶ月は必要ポヨ。

 設備がない以上、手作業でしか実施できないポヨ」

「僭越ながら……それなら、アル=ラツェルト二世にも設備があります。

 そこで作業してもらえれば短縮できるかと」

 

 黙って聞いていたミアが、それならと手を挙げてポヨ公に言う。

 それを聞いたポヨ公は大げさに飛び上がって喜んだ。

 

「あ、それは助かるポヨ!

 短縮してもしなくても、精度が上がるから使わせてほしいポヨ」

「……で、どれだけ短縮できる?」

 

 ユウの問いにポヨとミアが顔を見合わせる。

 ミアが知る限りの設備名を伝え、それを聞いたポヨがうんうんと唸って考えた。

 

「そうポヨね……魔術転炉とパターンフィッターがあるなら7日ぐらいで行けるポヨ」

「7日か……」

 

 元々一月掛かる作業が1週間とは大した短縮である。

 龍の国の国民向けに目途だけでもいいが、できれば現実にあれば説得力がある。

 そして、地球人類が結晶化される時間に間に合うかどうかが問題だ。

 

「今度はミアに聞きたい。

 全人類を『極光石オーロラ・リアクタ―』にして魔力抽出するってのは、ミアが居ないと出来ない、でいいんだな?」

「今は……そうです。

 この惑星の龍脈にセットされた7つの増幅器。

 それを起動するには、私が直接起動文言を送ることで起動します」

 

 今は助かるが、実に無駄な認証システムである。

 せめてGG〇みたいにカッコよくガラスで保護されたボタンを割るぐらいの演出が欲しい所だ。

 カギだと『発動承認!』と叫びながら回すぐらいか。

 

「なんでまたそんなシステムに?」

「……責任の所在を明確にする為です。

 あれこれ自分たちで勝手に進めておいて、最終的には王族が実施したとする。

 そういうこ狡いやり方をしているのですよ」

「あ、ふーん……」

 

 ミアのむすっとへの字型に結んだ口から、怒りの感情が透けて出る。

 地上に来た安心感からか、素直に感情を出すようになったようだ。

 

「仕様変更するにも、議会承認と変更作業があるでしょうから……あと7日は掛かるでしょう」

「こっちも7日、か」

 

 こちらも、ぎりぎりである。

 ミアが居なくなった以上、仕様変更されるのは必須。

 仕様変更が早いか、説得が早いか。

 

「増幅器を破壊してはダメか?」

「龍脈にセットされている以上、一つ破壊するとそこから貯められた魔力が噴出します。

 リアクター化は防げるかも知れませんが……最悪、大噴火を起こして惑星が冷却化して住めなくなりますよ」

「そりゃまた厄介な……」

 

 大規模噴火なんか起こされては、ユウと言えど手の出しようがない。

 手出しできないのであれば、やはりブランク・リアクターとやらの力を見せるしかないのか。

 目途を見せるにしても、7日以内では碌な説得期間は取れない。

 やはり現物を叩きつけるのが最良だろう、とユウは結論を出した。

 

「分かった。

 俺も準備するから、早速作り始めてくれ。

 あ、俺はその前にあかりと琴音に話を聞かせてくるか」

 

 ミアと騎士ラ=グラリアは硬い表情で押し黙る。

 しおらしい空気を他所に、ユウはあっけらかんと変身して二人をいつもの場所に呼び出すのであった。

 

 

 

 〇 〇 〇

 

 

 

「───と、いう訳で。

 勝負は7日後になるから、皆も準備しといてね」

「……」

 

 月から帰ってきた三上ユウは、改めて『魔法少女イスタス』に変身してあかりと琴音を招集。

 いつもの境内でミアとポヨ公と考えた作戦を披露していた。

 

 しかし、魔法少女二人の反応は鈍い。

 押し黙ったように下を見るあかりと、無表情の琴音が腕を組んでいるばかりだ。

 

「……何か、質問は?」

「……イスタスさんは、それでいいんですか?」

 

 絞り出したような声で、あかりがイスタスに問う。

 

「それって?」

「リアクターにされるんですよ?」

「そうしないと全人類どころか全宇宙滅びるじゃない。

 選択の余地、ある?」

「……」

 

 そうじゃない、と叫びそうになってあかりはぎゅっと拳を作った。

 眩しすぎて……自分なんてとても卑しい生き物に感じるぐらいの、激しい怒りを感じていた。

 特に、なんでもなさそうな顔がとても憎たらしい。

 

「……イスタスさんは、私を助けてくれました。命の恩人です。

 でも……今は貴女が分かりません。

 私は浅ましいけど、どう考えても自分で自殺なんかできない。

 『死んでもいい』という覚悟はできるようになったけど、それは『自殺したい』訳じゃない。

 泥に塗れても生き抜いてやる、そういう覚悟が、『死んでもいい』って事だって思うんです」

 

 ほほう、と感心した目でイスタスはあかりを見た。

 もう、目の前にいるのはかつてのいじめられっ子ではない。

 既に一人の戦士として、ここに立っているのだ、と。

 

「だから、私はイスタスさんを諦めない。ポヨさんを許せない。

 例え世界を───イスタスさんを敵に回したっていい。

 人々を苦しめる怪獣は、私の命を全て使って───倒し尽くして見せる!」

 

 あかりの手には自然と『涙虹石イーリス・リアクター』が握られていた。

 ひび割れ、もう一度使ってしまうと命の保証はできない『涙虹石イーリス・リアクター』を。

 それを見たイスタスはぐるりと考えを巡らせて、もう一度あかりに問う。

 

「私がそれを望まなくても?」

「あなたがそれを望まなくても。

 イスタスさんを倒してでも、イスタスさんを諦めない!」

 

 矛盾する言葉。

 でも、それはあかりの本心そのものであった。

 

(本当に……強くなった)

 

 それは心からイスタス───三上ユウの胸を打つ。

 

 仮に自分が恋人である三上ユウだと明かしていたら、あかりは当然同じ反応をしただろう。

 でも、それは全く意味合いが違ってくる。

 

 彼女にとって『魔法少女イスタス』はいつも無理難題を押し付ける厄介な先輩の筈だ。

 にも拘わらず、彼女は自分をここまで慕っていたとは正直驚きであった。

 

「……じゃあ、琴音はどうなの?」

 

 そこまで聞いて、イスタスは琴音に水を向ける。

 琴音もむすっとした表情のままで、イスタスに答えた。

 

「あたしも……気持ちはいっしょっス。

 何ができるか、どうすればいいかは分からないっスけど……。

 でも、誰かが犠牲になって世界を守るって……違うと思うっスよ」

「……」

 

 琴音はまだ出会って日が浅いものの、イスタスとは一緒に修羅場を潜った連帯感がある。

 それはともすれば戦友とも呼べるもので。

 琴音が命を張るだけの価値があると、信じていた。

 

「それに、イスタスさんは将来の私のお婿さんっスからね。

 子供も作らないうちから死んでもらっては困るっス」

「いやそれは……まあ、いいか」

 

 がしがしと頭を掻いたイスタスは、二人の決意に……どうしようか考える。

 二人の気持ち、心配はありがたく思うし、可能なら尊重したい。

 しかし、先のビジョンがまるでない。

 まるっきり子供の意見である。まあ、子供であってるけど。

 

「ブランク・リアクターに頼らないで世界を守る。龍の国からの結晶化もさせない。

 ……じゃあ、二人はどうする?」

 

 イスタスの問いに、あかりが答える。

 

「世界を守る方法は……これから探す!

 その前に結晶化させないように……龍の国の執政官を倒す!」

 

 ストレートな棚上げ意見だった。

 

「多分、また次の代表者が選ばれるだけだが?」

「それも倒す。時間を稼ぐ、その間に何とかするっスよ」

 

 琴音も賛同するように、二人が手を握る。

 二人は清々しいまでの脳筋だった。

 

 分からないことは棚上げして、目の前の破滅を防ぐだけの……場つなぎをする。

 彼女らの案で世界は救えない。

 でも……イスタスはどうしても嫌いにはなれなかった。

 

「……それでも、私はブランク・リアクター案を進めるとしたら?」

「私が───私たちが、それを止める」

 

 あかりの胸から実体化した『涙虹石イーリス・リアクター』が煌めく。

 それは彼女がすでに決意した事の証。

 

「『極光石オーロラ・リアクタ―』を持つ騎士一人に勝てなかったんだ。

 ───それでも、やるのか?」

「それでも、やる! ここで魔法少女イスタスを倒し、それを証明するッ!」

 

 もはや是非もなし。

 二人は───『涙虹石イーリス・リアクター』をかちり、と突き合わせながら、叫んだ。

 

───変身ッ!

 

 二人は手を握って同時に叫ぶと、二つの『涙虹石イーリス・リアクター』から光が溢れる。

 十字と三日月、二つの『涙虹石イーリス・リアクター』から発する力は相互に干渉し、そして増幅される。

 

 光の中であかりと琴音が来ていた服が虹色に分解され、光の粒となって消える。

 横並びに手を繋いだ二人へ七色の光が巻き付き、黒いインナーが形成。

 

 虹色の光が二人の間を行き来するように跳ね回り、上着が、スカートが、手袋が形成される。

 二人がそれぞれお互いのイメージ・カラーである黒と青のコスチュームを纏う。

 そして二人の袖には、お互いのカラーを交換したかのような、黒と青のエングレーブが付いた。

 

「これは……」

 

 イスタスは、二人の変身姿に目を剝いた。

 いつもの二人とはコスチュームも、感じられる圧も違う。

 いや精神的な覚悟があるのは認識していたが、それ以上に何かが決定的に違う。

 

命と悲しみが───

───使命を希望へと変えて

 

 二人の姿がぶれるように重なり……そして、二人は横に並び立つ。

 黒と青の光が二人を包む。

 

今、ふたりは生まれ変わる

 

 変身完了した二人が、背中合わせのまま。

 二人がイスタスへ向けて指指す。

 

───魔法少女、イーリス・ブラック

 

 以前より遥かに安定したブラックが、突き出した手をぐっと握る。

 

───魔法少女、イーリス・ブルー

 

 以前より遥かに力強いブルーが、被った三角帽子の金具をちりん、と鳴らす。

 

受け継がれし命と力で───

───イスタスあなたを倒し、あなたイスタスを守って見せる!

 

 二人から湧き上がる魔力は、今までの比ではなく。

 それはあかりの壊れかけの『涙虹石イーリス・リアクター』と接続された、二人の『涙虹石イーリス・リアクター』2機分の出力。

 ───いや、更にそれを超えた先にある。

 

<<魔力整流枝プリズム・レクトファイアー、同調接続。稼働時間、無制限>>

<<イーリス・リアクター同調率98%……3rdフォーム・スレッシュルド・オーバー>>

 

 琴音の魔力整流枝プリズム・レクトファイアーによりあかりと同調した二人の魔力。

 それは複合されることで共振・増幅し、本来以上の大きさまで膨れ上がっていた。

 そう、『涙虹石イーリス・リアクター』に眠る最終フォームに必要なまでの閾値を超えて。

 

開け、光差す虹の扉よ!

 

<<最終セーフティー解除。超次元貫通孔、解放>>

 

 手を繋ぐ二人が振り上げた手の先に、七色に輝く波紋が広がる。

 それは高次元から降り注ぐ一滴の雫であり、計り知れぬエネルギーの塊。

 

 その波紋が二人を通り過ぎると……二人の瞳とコスチュームに、虹色が加わる。

 そして二人の背から、エネルギー変換された『魔力マナ』が噴き出す。

 

 本来の機能である『疑似魔力生成炉デミ・マナ・リアクター』として生成される、『魔力マナ』の奔流。

 それは、まるで虹色に輝く光の翼のように広がった。

 

 『涙虹石イーリス・リアクター』製、魔法少女の最終3rdフォームである。

 

「───」

 

 イスタスは言葉もない。

 まさか、という驚きと、よくぞそこまで、という嬉しさで口角が上がる。

 

 彼女たちは確かに浅慮ではあったが、それでもできることを諦めていない。

 自分たちにできること、それを……高めて、そして『魔法少女イスタス』という強大な敵を倒さんとしているのだ。

 

「……分かった」

 

 事ここに至っては、イスタスにも迷いはない。

 だらりと両手を下げ、その瞼を閉じる。

 

「少し本気で相手をする。

 ───来い、二人とも」

 

 二人の魔法少女の前で、どこから見ても隙だらけのイスタスが宣言したのだった。

 

 


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