能力バトルかと思ったら魔法少女、相手は怪獣   作:ハピ粉200%

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最近仕事が忙しくて更新遅れます。


第七話 涙と虹の魔法少女VS始まりの魔法少女

 

 3rdフォームに変身した七井土なないどあかりと、雪下琴音ゆきしたことねの二人。

 虹色の魔力が噴き出す翼が、天使を彷彿とさせる。

 

「ナナ先輩、一緒に!」

「うん!」

 

 二人は繋いだ手を放し、左右に分かれてイスタスを挟むように立つ。

 そしてそれぞれが3rdフォームに強化された足腰で地面を踏み抜き、一撃を加えんと飛ぶ。

 

 二人の強化度合いは、パンチ力にして既に300tを優に超える。

 だらりと脱力して目を閉じたイスタスは諸に隙だらけで、避ける暇もなく二人の攻撃は直撃した。

 

「……ッ!?」

 

 そう。直撃した。

 余波だけで廃神社の境内に残った石畳が吹き飛ばされる程である。

 

 だが何もイスタスはリアクションしていない。

 手で庇う事すらせずに脱力したままの状態を維持している。

 

 それは、彼女たち二人の攻撃など全く意に介さないとばかりの、無関心。

 まるで何事もなかったかのように。

 

「ちょっとそれは、舐めすぎじゃないっスか?」

 

 琴音はイスタスの鳩尾目がけて第二撃を繰り出す。

 何もしないイスタスに直撃し、今度はその威力によって吹き飛ばされる。

 

 が、すたっとその勢いを謎に軽減して降り立ったイスタスに何の痛痒も見られない。

 ただ、だらりと隙だらけに突っ立っているだけの姿に、二人は怯んだ。

 

「……なるほど、大体分かった」

 

 そして、イスタスは声に出す。

 イスタスは二人の強化具合を身体で実感して、そして比較した。

 

(大体、300tクラスのパンチ力。二人の戦闘用フォームから10倍程度以上の強化がされている)

 

 破格の強化具合と言っていい。

 ラ〇ダーだったら最終フォームクラスを超える威力を誇る。

 でも、それだけではイスタスには届かない。

 

「二人の力は、大体分かった。

 これなら……私が居なくても怪獣にも対抗できそうだ」

「それはどうも。なら、少しは堪えて下さいよ」

「力押しで、私に敵うとは思わない方がいい」

 

 理不尽な防御力の前に、二人の最終フォームの膂力は無力。

 でも、二人は諦めなかった。

 

「じゃあ、これはどうっスか?」

 

 イスタスの澄まし顔に向けて、琴音───ブルーが手を振り上げる。

 そこに込められた『魔力』が渦巻く。

 

飢餓の祝福呪い

 

 瞬間、イスタスの防御を貫いて強烈な飢餓感が呼び起こされる。

 

「───!」

 

 イスタスの防御は基本的に物理現象に対してである。

 魔力による『呪い』に対する対抗手段は、ない。

 

「ホントは意志持つ動物には効果薄いっスけど……この最終3rdフォームの力でブーストしたっスから、効くでしょ?」

「……ぐっ」

 

 それはまるで、何週間も水だけで過ごしたかのような絶望感。

 目の前に御馳走があるのに、手が届かないかのような焦燥感。

 行動のすべてが空腹を満たすだけになりそうなそれに、イスタスはぐっと目を閉じて脳内に意識を向ける。

 

(行動制御とは脳内伝達物質の流れ……なら)

 

「……脳内物質伝達、『強化』」

 

 蹲りそうだったイスタスは、数秒額から汗しながら目を瞑った。

 しかし暫くすると、ふう、と息をついて顔を上げる。

 そこには先ほどまでの呪いに掛かった焦りはなく、平常通りの澄まし顔だった。

 

「うそ、効いてない!?」

「いや、効いてるっス!手ごたえはあったはず。

 ……これでも、無理だって言うっスか」

 

 二人は驚くが。確かにその呪いはイスタスに効いていた。

 ただ、イスタスが平常時の脳内伝達物質状態まで強制的に『強化』されたのだ。

 その結果、呪いは相変わらず訊いているが、物理的に無視されている状態となる。

 

「精神攻撃は基本だからな。

 対抗手段ぐらいは考えているさ」

 

 元々イスタス───三上ユウが小学生から恐れていた能力バトル。

 相手に洗脳などの精神攻撃を想定しないわけがない。

 『強化』能力でそれに対抗するには、やはり物理的な手段に限られる。

 

 そこで編み出したのは、脳内伝達物質を『強化』すること。

 特定の対象に従わせたり、記憶を弄るのは脳内伝達物質の一部を阻害したりあり得ない流れを作る事と定義。

 

 ならば、平常時の脳内伝達物質の流れを記憶し、強制的に元に戻してやれば効かない。

 記憶関連だったら少し厄介だったが、今回は特定感情の想起だったので、異常に増加している部分さえ是正すれば大丈夫だった。

 

「ナナ先輩、ここはやっぱり───」

「───そうね」

 

 二人は頷き合うと、一緒に一歩下がる。

 ブラックが前に立ち、ブルーがその後ろで集中する。

 

トニトルス、ダブル・ソード・フォーム!……連結!

魔力整流枝プリズム・レクトファイアー、出力最大!

 

<<イーリス・リアクター同調出力臨界点。魔力整流枝プリズム・レクトファイアー幻想改変枝プリズム・コンバーターと直結>>

 

 ブラックが作り出した二振りの剣。

 それを連結させて巨大な一振りの剣となる。

 そしてブラックの後ろで巨大な虹の翼を広げたブルーがそれに向けて『魔力』を供給。

 

 虹の翼から生み出される魔力が全て剣に集中し……その体積を3倍はある巨大な剣へと成長させた。

 渦巻く魔力が剣に宿る魔術文様を成長させる。

 

「ナナ先輩、分かってるっスね?」

「ええ。狙うは『涙虹石イーリス・リアクター』、一点のみ!」

 

 二人分の思いが剣に宿る。

 狙いはイスタスの胸元にある『涙虹石イーリス・リアクター』。

 それさえ破壊すればイスタスを抑え込めると考えて。

 

「……」

 

 イスタスはそれを見て、懐から取り出した鉄球に『強化』を込める。

 

(流石にあれの直撃は耐えられない。でも……)

 

 時を遡り因果を消滅させるブラックの必殺。

 その原理が魔法所以ならばイスタスがいくら身体を『強化』しても耐えられない。

 ……でも、逆にその原理ゆえにイスタスは対抗策を考えることができた。

 

「……コア物質、加圧開始

 

 イスタスが取り出したのは、いつもの強化鉄球。

 毎日練習している強化により、最初より強化時間が短くなっている。

 加圧強化された鉄球が白い光を放ち、そして強い光を放ってぐにゃりと空間が歪む。

 重力崩壊点を超えて特異点と化した

 

「イスタスさん……その変身、解かして貰います!

 トニトルス、エクティス、フル・チャージッ!

「……」

 

 魔力強化を終えたブラックが、3mはある巨大な剣を寝かせ、イスタスへ向けて一直線に飛び込んでくる。

 狙いは一点。イスタスの『涙虹石イーリス・リアクター』。

 

 脚力も動体視力も相応に強化されたブラックの一撃は、イスタスと言えどなかなか避けられるものではない。

 その軌道にある歴史・因果を消し飛ばしながら狙い過たずイスタスの胸元に剣が迫る。

 

 ───しかし。

 

「……ッ!?」

 

 ブラックの剣が止まる。

 剣先にあるのは、イスタスが目の前に翳した『特異点』。

 それをなかなか消し飛ばすことができずに、まるで万力のように捉えられてしまった。

 

「どうして!? この剣なら……どんなものだって!」

「時間の流れは相対的なものだ。

 お前の剣が時を遡り因果を消し飛ばすとしても……無限の時間を内包する特異点を消し飛ばすのにいつまで掛かるかな?」

 

 イスタスが翳す特異点。

 外から見れば一瞬だが、中は中心点に近づくにつれて無限に時間が引き延ばされていく。

 過去を遡り因果を消し飛ばす剣でも、特異点の中心は無限の時間。

 その力が到達する時間は……同じく無限である。

 

 ───びしり、と剣に罅が走る。

 

「ナナ先輩、剣を引いて!

 『魔力』が吸い込まれてるっスよ!」

「……抜けない!?」

 

 そして剣と言う物質に昇華した以上、『特異点』の引力の影響も無視できない。

 イスタスが設定したシュバルツシルト半径内に侵入すれば、この宇宙で脱出できる物質は存在しないのだ。

 光でさえ吸い込む引力は『魔力』毎強大な引力に引き裂かれ、細く引き伸ばされて中心点に落下していく。

 

<<警報。イーリス・リアクター同調出力低下。タイムアウト死亡まで49秒>>

 

 そして魔力整流枝プリズム・レクトファイアー幻想改変枝プリズム・コンバーターと接続していたことが災いし、剣を通して『魔力』が急激に吸い取られる。

 無限の時間を消し飛ばし続ける剣が最大稼働し続けることで、強大だった二人の同調『魔力』が減少に転じた。

 

「『魔力』が……吸われるっ!?」

 

<<……3、2、1スリー ツー ワン、イーリス・リアクター強制冷却>>

 

 急速に減少する『魔力』によりリミッターが作動し、二人の姿が強制的に変身解除させられる。

 これ以上はあかりの命に係わるのだ。

 

 また負荷に耐えかねて、びしりとあかりの『涙虹石イーリス・リアクター』の罅が広がる。

 

「……でも!」

 

 剣を吸い込み終えたイスタスが、『特異点』を強制的に蒸発させる。

 きらきらと残留物質が舞う中、それでも、とあかりはイスタスに向かってぐっと服を掴んだ。

 

「それでも……わたしは貴女を諦めない!」

「……どうして、そこまでする?」

 

 いつもの私服に戻ってなお、あかりはイスタスに詰め寄って襟を掴む。

 掴むこの手がイスタスを引き留めるんだとばかりに、ぎゅっと力を入れて。

 あかりの頬につうっと涙が伝った。

 

「……わたしが虐められている時、わたしは最初以外苦痛じゃなかった。

 だって、諦めてたから。諦めていたら、どんな扱いも苦痛じゃないから。

 でも、それは間違いだって強引に引っ張ってくれた人がいたから」

「……」

 

 イスタスは無言であかりの泣き顔を見やる。

 いや、どちらかと言うと魔法少女イスタスではなく、三上ユウとしてあかりの顔を見て話を聞いていた。

 

「自分だけじゃ、分からなかったけど……それはダメなんだって。

 強制的に引っ張って貰わないと、分からなかった。

 そうじゃないと、一生わたしは何事も諦めたまま……生きていくだけだった」

 

 過去、ユウがあかりを助けたのは、あくまで偶然に過ぎない。

 たまたま現場を見かけて、少しだけ力を試してみたくなっただけ。

 そうしたら失敗して、疎まれ、そして助けた責任を感じて目を掛けていただけ。

 

 ……だからあかりの言葉は逆にユウにとって、それは違う意味に聞こえる。

 「責任をとれ」と、あかりの言葉はユウの心に刻まれる。

 

「だから、わたしもあなたを諦めない。

 例えあなた自身が諦めてしまっても、わたしは貴女を諦めない」

 

 そして、あかりの言葉はユウが自ら立てた誓いにも似て。

 少しだけ目を見開いたイスタスが、あかりの肩を掴む。

 

「……諦めている、私自身が?」

 

 助けを求められたら、諦めない限り、助ける。

 確かにそう誓ってはいた。

 それは今、ミアの願いを叶えるために動いている。

 

 ……確かに、そこに、自分自身はない。

 

(ああ、だから……あかりはこうも頑ななのか)

 

 衣食足りて礼節を知るではないが、救済足りて人を助けるを知ったとでも言うか。

 今、あかりの心は三上ユウと少し近しくなっているのだ。

 それが良い悪いは別として。

 

「イスタスさん……私はあなたに、命を懸けてでもやり遂げる大切さを教わりました。

 だから、今度はあなたを命を懸けてでも……諦めません」

 

 あかりの涙を湛えた真剣な瞳は、イスタスをまっすぐに見つめた。

 

(これは……自業自得って事なのか)

 

 ユウはあかりを助け、強引さを教え、そして命を懸けても戦う気概と根性を鍛えた。

 その矛先が自分に向いただけの事だ。

 

 多分、叶わないまでも彼女は諦めずに妨害してくるだろう。

 力づくで抑え込めはするが、自身の『涙虹石』が砕けるまで止めはしない。

 つまり、二択だ。

 

(世界を取るか……あかりの命を取るか)

 

 また、言い換えればミア陣営とあかり陣営だろうか。

 根本的な解決と現状維持のぶつかり合い。

 

「……」

 

 ユウにとってミアとあかり、両方とも助けると決めた命だ。

 二人を助ける道が世界を助ける道だと信じたが、その道ではあかりが助からないのであれば……。

 

「……しゃあないな」

 

 魔法少女イスタスとしての言葉遣いを崩して、思わず声が出る。

 彼女の頑なさには折れるしかないと、イスタスは頭を掻いた。

 

「ポヨ公のところに行こう。

 ───もう一度しっかり、話を聞く。

 多分、二人は……まだあいつの言葉の裏を読めてないからな」

 

 あかりと琴音が二人そろって、首を傾げた。

 

 

──────────────────────────

 

 

 とりあえず、琴音の家に集まった魔法少女3人とポヨ公。

 ポヨ公は開口一番、こう言い放った。

 

最初からポヨは、イスタスが死ぬなんて言ってないポヨ?

 

 あかりと琴音はずっこけた。

 

「ポヨ公が口に出した事実以外、信じたらダメだ。

 あいつは『これ』でも死人には感傷的だったからな。

 死ぬと言わない以上、犠牲とはなるけど、死ぬことはないと考えていた」

「酷い言われようポヨ……。

 ポヨはこれでも、嘘は言ってないポヨ」

「言葉の裏が多すぎるんだよなぁ……」

 

 ぽすぽすとポヨ公の頭を叩きながら言うイスタスに、心外だとばかりの目を向けるポヨ公。

 イスタスはこれまでのコミュから何となく、ポヨ公のニュアンスを読み取れるようになっていた。

 しかし二人の魔法少女はそこまでの域にない。

 

「ええと……ポヨさん、一般的に『犠牲になる』ってのは、生き死にの話なんですよ」

「辞書には『ある目的のために損失となることをいとわず、大切なものをささげること』ってあるポヨ?」

「ええまあ……そっスね……」

 

 椅子にがくりと腰かけて天を仰ぐ琴音。

 あかりはうつ伏せにクッションに顔を埋めたまま動かない。

 一世一代の恥ずかしい告白じみた青春をしてしまったあかりは、しばらく立ち直れなかった。

 

「あれだけ騒いで勘違いってちょっと可哀そうだけど……。

 あかり。まあ、その……気持ちは嬉しかった、わよ?」

「……ッ!?」

 

 クッションに埋まったままのあかりが真っ赤になってゴロゴロと転がった。

 テンションに身を任せて盛大にアオハル展開をしてしまったあかり。

 

「……死にます」

 

 恥ずかしさが死の恐怖を超越し、あかりの胸からころりと『涙虹石』が出る。

 慌ててそれを拾い上げてぎゅーぎゅー胸に押し付けた。

 

「まあ、それはいいとして……ポヨ公、もっと具体的にブランク・リアクター完成イメージは?」

「分かったポヨ。

 妖精の世界にいる幻獣の涙を核にした『涙虹石イーリス・リアクター』とは異なり、ブランク・リアクターはイスタスの『特異点』を核にするポヨ。

 『特異点』の潮汐力によって引き寄せられるのは、物質だけじゃなく『魔力』も例外じゃない。

 『魔力』で高次元貫通孔を開いた状態で『特異点』の潮汐力で一気に『魔力』を吸い上げて圧縮するんだポヨ」

 

 ぎゅっぎゅと前足で圧縮するイメージを伝えるポヨ公。

 あかりと琴音は話半分に頭を傾けながら聞いていた。

 

「圧縮時に降着円盤から漏れ出す魔力を起動キーにすれば、『涙虹石イーリス・リアクター』みたいにちょろっと漏れた一滴の力なんて比較にできない、無限大の魔力が引き出せる筈ポヨ!」

 

 嬉しそうにポヨが説明する。

 ちょろっと漏れた一滴の力。

 先ほどまであかりと琴音が纏っていた3rdフォームの力である。

 それとは比較にならない無限大の力……となると、最早二人の想像の範疇を超えていた。

 

「更に一定圧力を超えたら、イスタスから世界を膨張させる魔力ジェットが噴き出すはずポヨ。

 それが世界に『魔力』を供給し、世界を支えることができるポヨ!」

 

 世界を支えるための『魔力』生成。

 高次元から『特異点』の力で無理矢理引き出すとなれば、イスタス以外に適任者はいないだろう。

 だが、そうなるとイスタスはどうなるのか……。

 

「はぁ……で、イスタスさんはどうなるっスか?」

「ちょっと……大変ポヨ。

 特異点を維持し続けないと、リアクターに溜まった魔力が滞留して故障するポヨ」

「寝てる時もっスか? それは無理じゃないっすか?」

 

 寝ても覚めても『特異点』を維持し続けなければならない。

 それは確かに、かなり辛い。

 

「一応、そのための訓練はしてるが……」

「あと、世界はこれからイスタスの供給する『魔力』で支えられて膨張することになるポヨ。

 妖精の世界にも繋げて供給してもらうポヨから、イスタスが供給を止めたら世界が滅ぶポヨ。

 頑張って維持してもらうポヨ」

「……」

 

 イスタスの根性で支えられる世界とは、と少し宇宙猫顔になる。

 個人の手に世界の命運が委ねられるとは恐ろしい状態である。

 イスタスは腕を組みながら、思案顔でポヨ公に尋ねた。

 

「じゃあ私が寿命で死んだらどうなるんだ?」

「多分、リアクターが供給する高密度魔力を直接受け続けたら、もう生物から逸脱して妖精に近く成るポヨ。

 そうしたら、死んでも多分ポヨ達みたいに魔力で新しく生まれ直すポヨ」

「犠牲になるって、そういう事か……」

 

 死ぬことは無いが、妖精みたいな生態になって永久に世界を支えることになる。

 あれ、もしかしてこれ拷問かな?

 ごろごろ転がっていたあかりが、すっくと立ちあがってポヨ公の前に立つ。

 

「……やっぱり、その方法以外ないんですか?」

「うーん……」

 

 超次元貫通孔が開ける領域は針の孔ほどしかない。

 そこから無限大の魔力を引き出すには、できるだけ特異点中心に超次元貫通孔を開けなければならないのだ。

 

 天然のブラックホールではロシュ限界を超えずにそこまで無事に近づくことはできず、砕かれてしまう。

 やはり、イスタスの力によるコントロールは不可欠なのだ。

 

「……イスタスの力を複製したりとか、特異点を維持できるような固有魔法が現れたらいいかもしれないポヨ。

 でもそんな都合よく現れるとは、到底思えないポヨが……」

「……」

 

 ポヨが短い前足を器用に組みながら言う。

 あと一人の枠でそんな都合のいい固有魔法が現れるのは、宝くじ一等前後賞当選レベルで低い。

 しかし……希望はある。

 

「……仮にブランク・リアクターを使ったとして、直ぐにイスタスさんが人間じゃなくなっちゃうんじゃないですよね?」

「そうれはそうポヨ。

 正直いつそうなるか、あるいはならないのかはポヨにも分からないポヨ。

 少なくとも、年単位はいると思うポヨ」

 

 今焦ってやる必要はない、と分かってあかりは胸をなでおろした。

 まずは龍の国の対処、それからじっくり最後の魔法少女を探せばいい。

 

「……ところで、ポヨ公。

 お前の耳にあった『涙虹石イーリス・リアクター』はどうした?」

「ポヨ?」

 

 かりかり、と犬みたいに耳を掻いたポヨが不思議そうに首を傾げる。

 其処にはいつもあった最後の『涙虹石イーリス・リアクター』が……無くなっていた。

 

「あれ?何で無いポヨ?」

「……なに?」

 

 ほっと息を吐いていたあかりと琴音の表情が凍る。

 がさごそと自らの身体をまさぐって、ぐるぐる辺りを見回して。

 ん~……?と首を90度ぐらい傾げながらポヨ公は言った。

 

落としたポヨ

ふざけん、な!

 

 あかりと琴音の拳がポヨ公に左右から突き刺さる。

 対イスタス相手に磨き上げたコンビネーションにより、息ぴったりの動きだった。

 

 

 

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