能力バトルかと思ったら魔法少女、相手は怪獣 作:ハピ粉200%
琴音の家に集まった魔法少女3人とポヨ公。
3人と一匹で今後を話し合っている中、ポヨ公の最後の『涙虹石』、紛失が発覚。
ボコボコに叩かれたポヨ公がボロ雑巾のように干された後、探し物はどこですかとばかりに方々を捜索。
しかしカバンの中も机の中も、ものの見事に見つからない。
あまり捜索ばかりに時間を掛けてられないポヨ公は一旦切り上げ、ブランク・リアクター制作に戻ることになった。
「まあ、探し物と言えばアタシっスね」
最後の手段と変身した琴音が魔法で捜索する、まあいつもの手段。
便利屋扱いではあるが、実際便利なので仕方がない。
琴音がうにょらっと変身して補った魔力で探し物の魔法を手に持ったペンデュラムに掛けると、ぐぐっと宝石が東方向に持ちあがる。
「うーむむむ……よし」
そしてそのまま歩いていこうとする琴音の襟を、イスタスがむんずと掴んで止めた。
「よしじゃない。
地図に方角記録してから、北か南に向かって1kmぐらい歩いてもう一回同じことして」
「何でっスか?」
「高校生でしょ。三角関数で角度……も要らないな。
二点間から線伸ばせば場所特定できるでしょ」
「あー……そっスね」
それはそうだとばかりに、手を打った琴音がいそいそと家を出る。
あかりはそれに付いて行こうとしたが、途中で何かに気づいてもじもじしだした。
「あ、あの……イスタスさん」
「なに?」
「三上くん……龍の国に連れてかれた男の子は、大丈夫でした?」
「……」
ユウ───イスタス自身忘れかけていたが、地球に帰ってきてから『三上ユウ』としてあかりには再会していない。
まだ正体に気づいていないのは……まあ、若干鈍い所のあるあかりである。
いっそ、もうバラしてもいいか? とユウは思いかけるが、そこは初志貫徹することに決めた。
「……ええ、大丈夫よ。
彼の家に寝かせてあるから、明日にでも訪ねてみるといいわ」
「ありがとうございます!」
るんるんと、見るからに機嫌の良くなったあかりを尻目に、明日再会した時の言い訳を考えるイスタスであった。
〇 〇 〇
時間が飛んで、翌日の三上家。
そこには、朝も早よからピンポン鳴らして来たあかりを迎え、リビングで三上ユウと対面していた。
ミアと騎士ラ=グラリア、及びポヨ公は沖合に沈めた船の中でブランク・リアクター制作作業で留守。
親父も大学から帰ってこないので二人っきりである。
あかりは初めて上がった男子の家という状況にもじもじしながら無事を喜んだ。
「えー……はい。説明は聞いたよ。
俺も協力させてもらう」
「あ、うん……ありがと」
ユウはポヨ達と相談した結果、イスタス含むポヨ公から魔法少女についての説明を受けた一般人という体でカバーストーリーを展開。
これからは一般協力者ポジで関わっていく……という、話をした。
正体バレはまだリスクが高いという判断である。
「その……イスタスさんに酷い事されてない? 脅されてない?
もし何か言われたら私に言ってね?」
「……い、いや、大丈夫だよ」
ユウは隠れて汗を流しながら答えた。
順調にイスタスに対して苦手意識やら負の信用が溜まって行っているのを感じる。
でもこれだけ嫌な人間に対して、自分の命をチップにしても助けると言える心根を持つのがあかり。
助けるのではなく、助けてしまうのがあかりなのだ。
やはり彼女は黄金の精神……というよりも黄金の鉄の塊でできているのだろうか。
本能的にヒーロータイプ。
少し前……いじめられていた際は、それがマイナスに作用していた。
どれだけ相手への負の感情を貯めようと、鋼の自制心でやり返したりしない。
それが面白くない相手は更にいじめを加速させるという悪循環。
コミュ力か計算高さでもあれば抜け出せたかも知れないが……まあ、それは今は置いておく。
「ちなみにあかりは、ミア達のことはどう思ってるんだ?」
「え……異世界人?」
出された紙パックのジュースをちびちび飲みながら、きょとんと答えるあかり。
ぱっと見人間と変わらないミアも、肌は鱗っぽいし変温動物っぽい謎人類。
これまでの言動から大いに共感するところはあるが、多分公表されたら世界的に反発が大きそうな気配がある。
「そうじゃなくて、これからどう付き合っていくとか」
「妹みたいなものなんですよね?」
「……まあ、そうだけど」
ちなみにこれまた忘れていたが、最近(月への拉致)までストーカー紛いの事をしていたあかりである。
彼女に隔意を持っても仕方がないが、それでも彼女たちに手を出したりする気は無いらしい。
「もう、いいです。なんだか吹っ切れました。
……あくまで妹みたいなものってことで」
「あ、そう……」
帰ってからべたべたしたシーンを見せてないせいか、落ち着いている。
彼女の境遇を話した同情もあるかもしれない。
とりあえず、二人の間で無用の争いが起きないでよさそうで、ユウはそっと胸を撫で下ろした。
「あと彼女……なんだか、似てるなって……」
「似てる?」
「私に。頑固なのとか……」
頑固か。意地が強いのは、まあ、確かに。
なにせあの『ガ=ヘリクト執政官』の誘導があったにせよ、国民議会───ひいては全国民が賛成した事業に対し『NO』を突き付けている。
それも彼女に行政権が無いにも関わらず、だ。
“わが国民は善性であるべし”、というエゴを押し付けているとも言えるのだ。
言い方は悪いが、独裁者のそれと近しいと言えるかもしれない。
彼女が大成した場合、後年最悪の管理社会が誕生しても、ユウは驚きはしない。
「……そうかもな。あかりとミア。
1クラスと1国のスケールは違いはあるが、二人とも暴走する民意に押されて虐げられて。
それでも、諦めず考えを曲げずに、そして───」
ユウ/イスタスという最悪の暴力装置によって、それを退けようとしている。
「……」
あれれー? なんかおかしいぞー、と心の中でユウは首を捻った。
この流れはもしかして、まずいのではないか? と。
あかりとミア、二人は善性の人なのは間違いない。
でも、その善意とは同じ方向を向いているからであって、見方を変えれば容易に独善と化す。
他のクラスメートから見たら、あかりは自分勝手に和を乱す人間だ。
他の龍の国国民から見たら、ミアはせっかく安全を確保できる方法、それも議会で決まった方法を無視してリスクの高い方法を選択する人間だ。
「うーん……」
ユウは首を傾げて考える。
改めて考えてみると、ユウ自身もう首を突っ込みすぎている。
あかりとミアを放り出すような気はないし、するつもりもない。
だから、彼女達の独善さも含めて『助ける』。助けなければならない。
『助ける』とは、その後の責任を持つことまで含むのだ。容易に放っていい言葉ではない。
その重さが、改めてユウ/イスタスの背に掛かっている事を自覚して、ユウは目を瞑った。
「……あかり。
あかりは、もしクラスメートと俺、どちらかしか助けられないとなったら、どうする?」
「え? うーん……両方助けるよ」
「どちらか片方だけだって」
「それでも、両方助けるよ」
彼女の頑固さが良くも悪くも現れている答え。
ユウは少し考えて、諭すように指を立てて言った。
「……じゃあ、少し言い方を変えようか。
クラスメートが『怪獣』に変えられた。
クラスメートを殺さないと世界が滅ぼされる。
クラスメートを元に戻す方法がない。
……そんな時、どうするのかなって」
「……。
三上君、少し意地悪になったよね?」
「そうかな? ……そうかも」
イスタスである意識に引きずられている自覚はあった。
どうも、あかりに対しては三上ユウとして守りたいと思うし、イスタスとして育てたいとも思う。
「……それでも、私は」
ぐっとあかりはユウの肩に置いた手に力を入れて口籠る。
その手に込められた力が、ユウに答えを告げてた。
よく女性は現実的だと言うが、あかりは、逆に理想主義だ。
それは悪くないし、見習う面もあるのだが……極端が過ぎると、それはそれで危うい。色んな意味で。
いや、それよりも変わった、成長したと言うべきだろう。
三上ユウとしてはその純粋な心持を羨ましくも思う。
クラスでハブられていた少女は、もういない。
でも魔法少女イスタスとしては、現実を無視して突っ走りそうな『危うさ』を感じる。
(実際、イスタスの犠牲には絶対反対するだろうし)
死ぬ覚悟で戦いに向かわせたのは自分だが、命捨てがまるまで突っ走ることはないのに。
今の三上ユウには、申し訳ないがあかりのような高潔さはない。
自らに宿った力を鍛えながら、生き抜くことを考える冷めた男。
……そう、自分では思っていたのだが。
(案外、俺は強欲だったのかもしれない。
だって、これだけ極端な奴らを好ましく思うのだから)
単に、もの凄い好みの激しい男だったというだけ───という事なのだろう。
『厄介さ』は『楽しさ』と表裏一体。
ユウはあかりや琴音、それにミアと関わるようになって、『楽しんで』いる自分を改めて自覚した。
全人類滅亡の危機を前に楽しさを自覚する、と書くとまるで悪役のそれである。
『義憤』が無いではないが、それはほんの少し。
「……そっか。
俺は、結局は二人(の性格・精神)が好みだから、手助けしたいってことなんだろうな」
「……!?」
ぐるぐる思考を巡らした結果、ユウは結局は『好き』だから守りたい、というありきたりな結論に戻ってきた。
ちなみに琴音は微妙に『守りたい』枠から外れている。
うむ、そうだ。それだと一人頷くユウ。
その向かいでは物凄い表情に顔を歪ませたあかりが。
ぐしゃり、と手に持つ紙パックを握りつぶしたのだった。
〇 〇 〇
そのまた翌日、いつもの神社にて。
魔法少女イスタスに変身した三上ユウが、天幕の中でホワイトボード前に腕を組む。
その頭の上には、我が物顔でポヨ公が乗っている。
そしていつもの定例会議として出席したあかり、琴音がパイプ椅子に座り。
今日は追加でミアが加わり、ちょこんと座っていた。
ちなみに騎士ラ=グラリアは宇宙船にてリアクター作成と準備作業の為不在である。
「んじゃー、状況確認だけど……『涙虹石』見つかった?」
「見つからないっス。これ見てくださいよ」
「どれどれ」
琴音からの『涙虹石』捜索結果を受け取ったイスタスは、首を傾げた。
「……うん?」
「まるで出鱈目な方角を向くっスよ。何かパターンありそうっスけど……」
彼女が地図に書き込んでいる方角は、東だったり西だったりまるで一致しない。
北や南には向いていないが、東西方向が見事にバラバラであった。
極めつけは地面の下を指したり、空の上を指す場合もあった。
「……これ、時間帯は?」
「ええっと……大体しか覚えてないっスけど」
ボールペンを持ち上げた琴音が、大体の時間を測定場所に書き込んでゆく。
すると少しだけ法則性が見えてきた。
夜中の時間帯にだいたい地面の下を指し、昼の時間帯におおむね空を指す。
「……え、これもしかして太陽指してる?」
「いや、近いけどズバリ太陽じゃない見たいっス」
近いけど太陽じゃないとは? 宇宙空間?
イスタスは腕を組みながら考える。
ペンデュラムが指している先は明らかに地球上ではない。
自転軸方向に連動してしているから、太陽以遠ぐらいの遠い天体かもしれない。
もしかして『龍の国』に盗まれたか、とも考えたか、月軌道とは一致しない。
それに彼らにとっては最早上位互換である『極光石』とか言うシステムがあるから、無理に盗む動機も薄いだろう。
「うーん……距離的にそんなところに行くとは考え辛いな……」
「ポヨさんいつ無くなったか、知らないっスか?」
「ポヨも気が付いたら無くなってたから分からないポヨが……数日前ぐらいはあったと思うポヨ」
太陽までの距離は1億4960万km。
仮に1週間として、そんな時間で太陽付近まで移動できたとすれば……秒速600万m/sぐらい?。
化学ロケットだとすると、どれだけ燃料を積めばいいのか分からんレベルのΔVだ。
月でスイングバイしたとしても、現実的じゃない。
「やはり龍の国っスか?」
「……まあ、そうなる、のか?」
人類の技術で現実的でなくとも、魔力があれば不可能じゃないかもしれない。
でもそんな事する動機がよくわからない。
「……無理に取りに行く必要はないか」
「必要です!」
既に諦めムードのイスタスに対し、あかりは断固として取りに行くことを主張した。
それが無いと、最終的にイスタスが無限動力炉である『ブランク・リアクター』となる未来になる。
「どうやって?」
「ミアさんの宇宙船があるんですよね?」
「先に『龍の国』の対処があるから、暫く使えないぞ」
「その後でも取りに行きます!」
「少なくとも地球から秒速600万m/sで遠ざかってる想定になるぞ?
『龍の国』対処が終わってからだともう、土星とか木星軌道ぐらいまで行っている。
諦めた方がいい」
「それでも取りに行くんです!」
あかりは必死だ。
前回の経験上イスタスを救うためになら、頑として曲げない。
でも、今回は分が悪い。
イスタスが力づくで対処できる内容なら、何とかする気にもなる。
広大無辺な宇宙で秒速600万m/sで飛んでると思しき、3cmほどの物体とランデブーすることが必要になる。
……いや無理だろ!
仮に加速・減速はイスタスがフォローしたとして、センサ役を琴音がカバーしたとして。
……あれ、できる気がしてきた。
いや、でも無理だろ!
大雑把な加減速を目測で実施できるのがイスタスの強みだが、宇宙空間での加速・減速誤差は致命的だ。
惑星レベルのものとランデブーするのとは訳が違う。
「一旦保留ね。先に龍の国への対処について話すけど、いい?」
「……分かりました」
しぶしぶあかりは引き下がるが、目は諦めていない。
イスタスはコホンと一つ咳払いして次の議題を口にした。
「先日、龍の国で正式に地球の龍脈を使用した『極光石』化作戦を4日後に実施することが分かった。
最終決定者であるミアがいないけど、国民投票の3分の2以上の賛成で議決したんだとの事」
「!……」
あかりと琴音の表情に緊張が走る。
それは、地球人類が4日後には消えてしまうという事になる。
「そこで明日、私たちはミアの宇宙船で地球重力圏を脱出し、月軌道を目指す。
月軌道から降下して龍の国司令船に突入、国民サーバにアクセスして『強行採決』を実施する」
「強行……採決?」
二人の顔に、緊張と疑問が走るのだった。