能力バトルかと思ったら魔法少女、相手は怪獣 作:ハピ粉200%
龍の国司令船に突入しての強行採決。
訝し気な表情で顔を見合わせるあかりと琴音に対し、イスタスは人差し指をくるくる回しながら続けた。
憂鬱な暑さの天幕の下では、イスタス・あかり、琴音、そしてミアとポヨ公が真剣に向き合っている。
「なんて言うかな。クーデター……じゃなくて。どっちかと言うと(強制)大政奉還かな。
あるいは政を正統なるものに戻す、皇道派みたいな?
とにかく、ブランク・リアクターと私たちの協力体制を情報公開して、作戦中止を提案。
最終的にはミアの名の下に龍の国の国家権力を掌握し、人類と友好関係を結びましょうというものね」
龍の国的には外患誘致からの立派なクーデターである。
『魔法少女イスタス』という核ミサイルをちらつかせて、政策変更を迫るんだから。
力なき言葉に意味はナッシングやらなんやら。
客観的に見て過激化した北の国ムーブではあるが、あかりと琴音を考慮してイスタスは言葉を変えた。
「はあ、採決って大丈夫なんでしょうか……」
あかりがハテナ顔で首を傾げる。
龍の国が民主主義的なのはちょっかいを掛けるのはいいが、全ての乗っ取りは難しい。
賛同する派閥も0ではないだろうが、議決できる数を超えるとはなかなか思えない。
「龍の国の国民議会は、一応ミアが開く権限があるそうだ。
それも3分の2の賛成で議決できるから、違法ではないんだと。
少し拡大解釈らしいけど……」
本来は1カ月の議会審議と布告期間を持つそうだ。
開催の決定はミアが持つ権限内にあるが、議会審議と布告はあの『ガ=ヘリクト執政官』が持つらしい。
まぁ、ミアは承認するだけの権威として祭り上げられている形。
「それで、肝心の採決する見込みは?」
ミアは神妙な面持ちで目を伏せながら言った。
「残念ながら……今、私に付いてくれるのは良くて3割、といったところでしょう。
ブランク・リアクターが稼働すれば、それはひっくり返るでしょうが……」
「無限動力炉が完成したら、わざわざ地球を『使う』意味もないしね」
ミアとポヨ公が話す現状に、あかりと琴音は渋い顔をする。
「……今稼働させるのは、反対です」
「あたしも反対っスね」
一度稼働すれば、止められないイスタスを核とするリアクター。
当然ながら二人は反対した。
死なないとは言え、いずれ人間じゃなくなってしまうかも知れないものに、あかりは賛成しない。
琴音の場合は『イスタス=魔法使える男(予定)>全人類』という不等式で反対。
別に情が無いわけじゃないが。友か恋かおいといて。
(別にすぐ死ぬ訳じゃないから、構わないんだが……まあ、強行して妨害されても面倒だな)
イスタスとしては別にブランク・リアクター作戦しても良かったのだが、確実に二人は前の様に妨害してくる。
また力付くで制圧できなくもないが、実はそれほど余裕でもない。
特にあかりの必殺は強力。
要はイスタスの隙をついて、一発ぷすっといかれたら普通に負ける。
何かのついでで二人と対峙して、集中力を欠いていたら危ないだろう。
「じゃあ……否決されたらどうするんですか?」
「その場合は残念ながら、作戦の要である『超大型極光石』、これを破壊します。
場所はミアの騎士ラ=グラリアが知っていた。龍の国司令船中枢にあることが分かったわ」
「えと、先にそれ破壊しとけばいいんじゃないっスか?
採決とかやる意味無くないです?」
どちらかと言うと、現実が見えている琴音の発言。
確かに先に破壊しておけばわざわざ採決を迫らなくてもいい。
イスタスは頷いて三本指を立てた。
「当然それも考えたけど、三つ問題がある。
①単純に硬くて生半可な攻撃は通じない。私かあかりじゃないと破壊できないレベル。
②超大型極光石は司令船の動力炉の一部だから、破壊すると国民サーバの大半が落ちる。
破壊後に採決を迫ることはできないし、国民は私たちに『攻撃された』と認識する。
③『正当防衛』が担保できない」
琴音は口をへの字にしてイスタスにぶすくれた表情を向けた。
「うちらとしては、一方的に殺されるようなことされようとしているんスよ?
反撃は『お話』が決裂してからとか、納得できないんスけど」
「でも、こちらが先に手を出したら『一方的』にこっちが悪いことにされるわ。
龍の国も学習してるでしょうから、前の怪獣みたいに攻撃の責任をネットなりで世論誘導されかねない」
「じゃあ、こっちも龍の国がしようとしていることをまたネット配信すればいいじゃないっスか」
「それね……」
今回の場合は、単純に情報公開すると、かなりシンプルな図式になる。
つまり「いいから『龍の国』をぶっ潰せ!」で意見が固まるのは自明。
だからこそ、完全敵対ルートは取りたくなかった。EGOだろ~?
「今回私が考える落としどころは、月にある友好国として『龍の国』を国際社会に加えること。
情報公開するとそのルートがかなり難しくなるのよね……」
「えー……、ちょっとそれは欲張りすぎじゃないっスか?スタ先輩」
「自覚してるわ」
腕組みしつつ、顔を顰めるイスタス。
自分でも、1つの作戦に掛ける目的が多すぎることは自覚している。
作戦はシンプル・イズ・ベストでなければならないが、実際は1石3鳥ぐらいの狙いになってしまっている。
いや、ならざるを得なかった。ミッドウェー作戦かな?
だが、イスタス───三上ユウとしては『彼女達の独善さも含めて助ける』という意思を自覚したのだ。
だから、それが無茶で細い線でも譲れない。
……まあ、いくつか『保険』は掛けておくのだが。
んで、不確定要素がある上に成功する見込みも低いとなれば、琴音の反対は当然であった。
「やっぱり反対っス。
普通に『超大型極光石』壊しましょうよ。
別にサーバ落ちても、人が死ぬ訳じゃないんしょ?」
「でもその先の友好は無くなるわ。
核兵器が撃たれそうだからって、ホントに発射基地を壊したらもう終わりなのよ。
最悪、もう『地球』なんか要らない……って7か所の龍脈を爆破されたらそれで地球人類は壊滅するし。
現状、戦略とテクノロジーで『龍の国』に負けてるのは、覚えておいた方がいいわ」
「うーん……」
しぶしぶと言った風情で琴音は手を下げる。
でもちらちらイスタスを見る顔からは納得がいってなさそうだった。
「今、イスタスさんが言った通り……『アル=ラツェルト』では唯一『魔法少女イスタス』のみを脅威と認識しています。
イスタスさんが居なければ即座に『地球』を制圧に掛かっていたでしょう」
座っていたミアが、琴音を神妙な面持ちで見ながら言った。
ミアがわざわざ地球に来てイスタスを探していたのも、さもありなん。
殆どの権限を奪われた彼女が何か物申すには、『魔法少女イスタス』という後ろ盾が必要だったのだ。
「まあアレ……冷戦時代のアメリカとソ連みたいな、限定的な『相互確証破壊』状態。
どっちかがつついたら連鎖的に世界が終わる、的な」
「マジっスか……」
『龍の国』もそれが分かっているからこそ、表立って『地球』に干渉せず龍脈やらの準備をしてたのだろう。
琴音もあかりも、それ以上の言葉を無くした。
こうなると最悪ブランク・リアクター作戦か?が二人の脳裏にも浮かぶ。
だがあそこまで盛大に反対した手前言い出し難いし、イスタスの将来を考えると賛成できない。
故に、沈黙するしかなかった。
ミアをちらりと見やると、俯いたミアが所在なく瞳を揺らしている。
全面敵対ルートもやりようはありそうではあるが、それをすると多分、ミアと前の様な暮らしはできなくなる。
だから、イスタスは少しだけ……欲張ることにしたのだ。
「でもその……『地球人類』の『極光石』化なんてしたら、イスタスさんから報復されるって思わないんですか?」
おずおずと手を挙げたあかりが、上目遣いでイスタスに訊く。
「当然、想定しているでしょうね。
だから月軌道には警戒線を張られているだろうし……」
イスタスはきゅぱっと黒水性マジックの蓋を開け、ホワイトボードに月軌道を描く。
地球から見て月の裏側に、本拠地である移民船。
月軌道を囲むようにあると思われる、アル=ラツェルトの衛星。
そして、地球-月ラグランジュ点L2と月面に2つの点を描いた。
「以上から、今回の作戦は……地球側には秘密で実行する。
幸いと言うべきか、今回の相手がいるのは月の裏側。
地球側に通信を送れるのは、地球-月ラグランジュ点L2にいる中国の中継衛星、鵲橋と月探査機嫦娥4号ぐらいだから、そいつらを壊せば地球人類が確認する術はない。
まあ、話題に挙がらないって事は龍の国がとっくに壊してるかも知れないけど……」
「念のため壊しとく、ってことスか」
送信データを中国が独占して出していないだけかも知れないが、地球側通信機器はそれほど月の裏側にはない。
むしろ問題は龍の国側の通信網である。
「龍の国と地球上の7つの龍脈拠点との通信は、地球軌道上にある軌道巡洋艦アル=サーペントとの往還船の定時通信。
往還船のタイミングは日本時間で毎日16:30ぐらいに通信可能範囲に入って、6時間ほど。
そのタイミングを外せば、地球-月間通信網を無視して作戦を実施できる」
往還タイミングを変えられてなければ、だが。
その場合はもう往還船をアレするしかない。とは二人を考えて敢えて口に出さないイスタス。
「……」
───そしてしばらく、沈黙が落ちる。
其処にある空気は、妙な罪悪感。
それもその筈。
ことは失敗すれば全人類が失われるような、かつてない大事。
にも関わらず、身内の犠牲を良しとせず可能性の高い方法を取らない。
低い可能性に掛けようとしている。失敗すれば取り返しがつかないのに……。
「うーん……」
あかりと琴音は、バツの悪そうな顔を浮かべた。
二人は事ここに至ってイスタスの考えを理解していたのだ。
ミアを救い、自分達魔法少女の立場を守り、犠牲も最小限。
となるとブランク・リアクター作戦が最良だと思える。
死ぬならともかく、直ちに影響ない()のであれば、許容範囲ではないか、と。
「何かこう……スタ先輩の感動的なポエームで龍の国の国民の心を掴めないっスか?」
「私の言葉なんてなーんにも響かないでしょうに。
北の将軍様のお言葉を聞いて、何か任せてみようと思える?」
「思わないっス……」
ばすん、とクッションに頭を埋めて観念する琴音。
「だから、作戦はミアがどれだけアル=ラツェルト国民に慕われているか。
その言葉がどこまで伝わるか。どこまで、実行力があるか……に掛かっている」
イスタスの言葉に、ミアがぎゅっと手に力が入る。
慕われているかは、下馬評3割。
伝わるかはポヨ公達の作るブランク・リアクターの未来を魅力的に語れるか。
実行力とはイスタスたち、魔法少女の事である。
「実行力は私たちが何とかして、伝達はミアの頑張りを信じる。
後の下馬評3割の人気をどうするかは……もう、相手のネガティブ・キャンペーンしかないかな。
何かネタは無いの?ポヨ公」
「ポヨに振るポヨか」
「だって一緒に研究してたんでしょう?」
執政官ガ=ヘリクト、ポヨ公に聞く限り一緒に研究していた同僚だったと言う。
ポヨは短い前足を組んで口をへの字にし、不満を表しながら言った。
「あいつは、そもそも『魔法』関連の研究者じゃないポヨ」
「へぇ、じゃあ何なの?」
「『超急速異常発達生物』……つまり、『怪獣』の専門家ポヨ」
怪獣の研究者とは、イスタスも初耳であった。
皆は柳眉を立てて、ポヨの話に訊きこむ。
「そいつが何で『涙虹石』の開発に?」
「元々、『怪獣』は『魔法』に対する免疫反応として生まれると言う説があるポヨ。
あいつはその調査で参加していたポヨ」
「ほう……そういえば、龍の国の諸々の技術、『怪獣』由来っぽいものがあったな」
『極光石』には共振音波攻撃が組み込まれていた。
龍の国サーバはカメレオン怪獣(ルクス)っぽいものだったし、樹木っぽいのもあった。
そう考えると、中々優秀な研究者だったのではないかと思われる。
「でも、じゃあなんで政治家になった?」
「知らんポヨ。ミアは知ってるポヨか?」
「……ええ、まあ」
どうやら政治家、執政官になったのはポヨ放逐後らしい。
理由を聞かれたミアはこれまたバツが悪そうに目を逸らした。
「なんぞ、言い辛いこと?」
「……。
当時の皇族派と民主派は、新しく入ってきたポヨさん達由来の『魔法』技術導入を巡って争っていました。
皇族派は『魔法』導入推進、民主派は排除の方向で……」
「あらま」
言いたい事の先が見えたイスタスは、大きく肩を竦めてため息をついた。
あかりと琴音はまだハテナ顔だが、不穏な空気を感じたのか息を潜める。
「元々、彼は皇族派……魔法導入に推進派でした。
ポヨさんが居なくなった後も、『極光石』開発にも推進しています。
でも、その後『魔力』暴走による大規模な事故が起きました。大きな事故です。
惑星表面の1%が吹き飛ばされる大事故によって、彼は家族をすべて無くすことになりました」
「……」
イスタスは目を閉じる。
あまり同情したくは無いが、どんな人間にもそれなりの歴史がある。
そうなるべく因果があり、そこに善悪は無い。
「それからです。彼は民主派に転向し、『魔法技術』……ひいては皇族排除の先鋒として立ち上がりました。
……民衆は、愚かなものです。
それまでの魔法技術の恩恵も忘れ、皇族への弾劾と……その、悪意をすべてぶつけ始め、ました」
ミアはわなわなと震える手を抑え、戦慄きながら言った。
「父と母は斬首された後……飽きる、まで、民衆の元に晒され……ま、した。
私は……わたしは、その……危ない所を、彼に助けれられて───」
ぐっ、ぐっ、と口奥を詰まらせながら言うミアに、見てられなくなったイスタスが手を伸ばしてぐっと抱きしめる。
がしがしと頭を抑えて撫でながら、震えが収まるまでイスタスはそれを続けた。
(なるほど……ミアにとっては憎き敵の先鋒であり、そして命の恩人でもある。
だから彼女では、どうにもできんわけだ)
聞く限り、境遇と手腕でガ=ヘリクトへの支持は厚そうだ。
二人に限定したらミアの格では、ガ=ヘリクトより1枚も2枚も劣る。
政務実績という説得力も無さそうだ。
「……」
あかりと琴音は、それを黙って見やるしかなかった。
ちなみにポヨ公はイスタスの頭の上で毛繕いをしていた。
〇 〇 〇
「ところで……魔法技術排除に固まったのに、結構使ってないっスか?」
ミアが落ち着いたのち。
天幕の下でテーブルを置いて飲み物を出しながら、琴音が言った。
「……確かに」
「いやそれは、しょうがないでしょ。
私たちだって、石油排除のために電気自動車を~とか言われてもすぐに変われないって」
そこは地球人類と同じ、由緒正しきダブルスタンダードを感じる。
人のダメなところを見てシンパシーを感じるのは如何なものか、とも思うが。
「……そうですね。魔法技術排除はガ=ヘリクトの公約ですが、真剣に取り組んでいるのは一部です。
そもそも、それをする前に『魔力減少』による世界崩壊という、災厄が来てしまったので……」
「なるほどね」
それどころでは、無くなってしまったと。
しかし、『魔法技術排除』を掲げた彼が、今は少しでも魔力を求めて地球人類を脅かそうとしているのか。
なんとも皮肉なものを感じる。
そこへ───
「……ん?」
議題も尽きかけ、まったりし出したところでバタバタと慌ただしい足音が響く。
騎士ラ=グラリアが慌ただしく駆けて来た。
「イスタス!空を───月を見ろ!」
「───ッ!?」
空───薄っすらと青みがかった空の中。
其処に……淡く桃色の陽炎のようなものが立ち上っているように見える。
「まさか……」
「スタ先輩!、これ見て、これ!」
そして琴音が掲げるスマホには、SNSで配信される光の柱。
世界7か所から立ち上る、巨大な桃色の光が映っていた。
「世界的な魔力上昇を確認した。
……くそ、4日後というのはブラフだったのか!」
悔し気に臍を噛む騎士ラ=グラリア。
ミアもあかりも琴音も、不安そうにイスタスを見やる。
(……先に引き金を引かれてしまった)
イスタスは唇を噛むしかない。
4日後という情報、彼の慇懃さと民主制に目を曇らされていたが、元々研究者上がりの活動家。
こうなる事は、予想してしかるべきであった、と。
「……当初作戦は破棄、作戦を大幅に変更する。……時間が無い。
ミアと騎士ラ=グラリアは宇宙船発進準備を」
「ど、どうする……っスか?」
ミアとイスタスを交互に見ながら、琴音が戸惑いがちに問う。
ミアは、俯いたまま表情を隠していた。
「最短距離で月軌道に移動、月司令船にある『超大型極光石』を……破壊する」
「……!?」
あかりと琴音は、思わず息をのむ。
それは、その指示は先ほど散々イスタスが避けようとしていた全面敵対する道だ。
「いいん……ですか?」
「……」
あかりの呼びかけに答えず、イスタスはミアを無言で見やる。
相変わらず、ミアは俯いたまま表情を見せない。
「本当に……いいんですか? もう、こんな日々送れなくなっちゃうんですよ?
あれだけ避けようと、してたじゃないですか」
「……既に龍の国の作戦は動き出した。
龍の国国民はともかく……少なくとも、ガ=ヘリクトは止める気はないんだろうよ。
───地球の魔力上昇は、いつまで持つんだ?」
ガ=ヘリクトの独断であれ、一度動き出したのならもう止まれない。
それを理解してるのか、騎士ラ=グラリアも頷いて手に持つ計器を見た。
「1両日中には、『極光石』化できるだけの魔力が溜まる。
もっとも、その前に魔力上昇に伴って、適性の無い人間は倒れるだろうがな……」
「……っ!?」
かつて、ポヨは魔力は普通の人間には毒であると言った。
こうしている間にも、倒れる人間は増え続けるだろう。何人犠牲になるか、分からないレベルで。
───1日で人類が滅びる。人類に待ったなし。
あかりと琴音も、事態の深刻さに目を見開いた。
「手段を選んでいる余裕は……無くなった。いや、無くされてしまった。
……悪いが、これからは時間制限付きの生存競争になる。
ミア、悪いけど───」
「どうかっ!
……どうか、我が国民には寛大な処置を。わが国民をお助け下さい」
「……」
ミアはイスタスに縋りつくように、言う。
自分から国民を裏切っておいて、今度は助けろとは勝手な───とは、言わない。
実に人間らしい感情に、イスタスは異世界の人間でも変わらないショッギョムッジョを感じる。
「任せろ……とは、豪語できない。
でも、狙いは『超大型極光石』だけだ。
……あかり、琴音、いいな?」
「はいっ!」
「お任せ!」
二人の意気は十分。
むしろややこしい作戦がぽしゃって、逆に二人は元気だ。
「……よし、これから月に向かう」
イスタスの言葉に、皆が立ち上がって頷きあう。
バタバタと皆が動く中───イスタスは静かに、内心自らの失策を後悔していた。
(完全に戦略で後れを取ってしまった……。
やっぱり、今の体制じゃあ───難しいか?)
タイムスケジュールの把握は基本。
せめて彼の人となりを先に聞いておけば……は後知恵か。
そもそもの話、仮にも一国が立てる戦略に魔法少女とはいえ、高々数人で挑むのは無理がある。
イスタス───三上ユウとて、高校生に過ぎないのだから。
(切り替えていこう。人が足りないなら、増やせばいい。
───終わったら、親父……頼ってみるか?)
組織の力には、やはり組織が必要だ。
ミア達を頭数に入れても、戦略を考える頭と耳目が足りな過ぎたのだろう。
今後……『怪獣』殲滅後も考えると、逃げ隠れする生活も御免被る。
となると……。
「どうせなら、作ってみるか……『魔法少女』の組織。
箱があれば宣伝もやり易いだろうし」
みんみんと煩く鳴くセミの声の中、イスタスは先の展開を皮算用しながらウンウン唸るのであった。