能力バトルかと思ったら魔法少女、相手は怪獣   作:ハピ粉200%

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今年もよろしく!


第六話 To start up a "Sgr A*" 開発!妖精の進捗確認

 

 謎の魔法技術を使い、おかしい・・・・時を創る企業『サジタリウス』。

 そして、その裏に潜む秘密結社"Sgr A*"サジタリウス・エー・スターの立ち上げた三上ユウ。

 

 始まりの魔法少女たるイスタスはシャドウ?イスタスとなり、秘密結社首領となったのであるッ!

 彼女は琴音邸の一角で、その勢力を伸ばさんとスマホ片手に暗躍していた。

 余所行きの高い声で、ぺこぺこと愛想を振りまきながら。

 

「え、契約頂ける。いやー、ありがとうございます。

 ええ、ええ、こちらこそ、助かります。よろしくお願いします」

 

 ぴ、と携帯を切ったイスタスは、目の前の端末で経過を入力していく。

 最高責任者となったはいいが、営業できる人も居ないのでイスタスがやるしかない。

 居候してる龍人達は電話には出せるが、名刺持って突撃できなので営業は無理なのだ。

 

「ええと、N社からの受注見込み大……と。

 次は、なんだ?あー……M社か。見積もり納期早すぎなんだよな……」

 

 端末に営業成果(内示)をぽちぽち打ち込んでいくイスタス。

 現時点で2社からはいい返事を貰っていた。やったぜ。

 

 商品はこの前完成したポヨ公製『魔力を熱に変換するだけ』の素子。

 見た目は、吸熱シートみたいな糊のついたぺらぺらのシートである。

 

 ───その名も、『あたおかシート』。

 

 驚くべきことに、このA4シート1枚で250Wクラスに相当する。

 しかも動力は魔力なので見た目上消費電力ゼロ、という夢の様なシートである。

 

 機能はシンプルに『魔力を熱に変換するだけ』であり、入力した設定値にPID制御で近づけるだけ。

 温度最大値はシート面積に比例して大きくなり、テニスコートぐらいにすれば1200℃まで上げられるとのこと。

 実はこいつの耐熱性能の方が頭おかしいという説もある。

 

 ちなみにペルチェ素子みたいに反転させると吸熱できる。んで吸熱した熱はどこかに消える。

 真実は魔力に熱が移って拡散してるらしいが、観測できないなら一緒だ。

 分かりやすく熱力学の法則を無視した(ように見える)逸品である。

 

「でも……意外に、みんな買ってくれないもんだ」

 

 ただ勿論こんな怪しげなシート、リスクを考えたらみんな二の足を踏む。

 性能こそ凄まじいが、明らかに科学的に説明できないので。

 

 良いものは売れるというナイーヴな考えを捨てたイスタスは、体当たりで数十社以上会社訪問。

 バナナのたたき売りというか、効果の怪しいサプリみたいな商法で契約をもぎ取った。

 

 お相手は暖房器具メーカの下請けの下請けの下請け……の部品メーカからの打診である。

 どこぞのヒーターに搭載するらしい。まずはお試しで試作用だが。

 

 いきなり目標である発電所事業だとか、大企業と取引はできないのだ。

 信用と実績がないと、大企業との取引口座なんか開いてもらえないのである。謎動力だし。

 だから、こうして小さな下請け企業への売り込みから図っていく戦略である。

 

「今すぐは無理だけで、これで販売実績はできそうだし……当面の収入見込みはできた。

 ……これで、銀行から融資いけるかな?」

 

 実績があれば、融資借金できる。

 決算を迎えた来年度からになるだろうが、これで将来的な規模拡張は展望が開けるだろう。

 

 あ、それから特許どうするかだが……。

 

(特許……は、止めとくか。

 魔法技術がある程度周知され証明されてからでないと……難しいな)

 

 安易に魔法技術製のシートなんか売っていいんか?特許はどうしたんだ特許は!

 という考えもあるが、イスタスは熟考の末特許取得を一旦諦めた。

 

 と言うのも、魔法現象が明らかに科学的に説明できないのだ。

 説明できなければ、特許内容を証明できない。

 実用新案レベルならいけるかも知れないが、まだ現時点では悪目立ちするのを嫌った。

 

「当面、特許申請と実用新案は監視しといて……似た案が出たら考えるか」

 

 とは言え、どこかに特許取られるのも業腹なので、ポヨ公になんか適当な科学的理論構築いいわけを考えさせておく。

 似た案がでたら、それで守ろうという考えである。

 実物も販売実績もあれば、負けないだろう。

 

 近い将来、暖おかシートが知れ渡れば混乱が起きる……かも知れない。

 だが拡散した魔法技術を考えれば、先行者利益を確保するためにも発売を遅らせるのは悪手。

 

 当面製品は本社(琴音邸)で作成し、琴音が”結界”を使って秘匿する。

 それ以上害するものが出ようものなら……それこそ、秘密結社の出番である。

 

「まぁ、これで当面、収入確保のストーリーはできたかな。

 販売に関しては表に出ない部分の処理をラ=グラリアに投げるとして……」

 

 この契約が実際の売り上げになるのは来年度なので、現時点ではまだ利益は上がっていない。

 今後、数人~数十人の魔法少女たちを養う可能性を考えると全然足りない。

 それでも、これ以上は高望みと言うものだろう。

 

 

 〇  〇  〇

 

 

「次は、裏の作業だな」

 

 表の立場確保と、営業仕事はここまで。

 次は、様々な『開発』を含む裏の作業である。

 

 ぎぃ、とイスタスは椅子から立ち上がる。

 そして、雪下邸執務室の無駄にシックでおしゃれな本棚に寄る。

 その中の本を一冊横に倒すと、ごごご、と本棚が横にスライドして地下に進む階段が現れた。

 

「無駄におしゃれだな……」

 

 イスタスは溜息をつきつつ、階段を下りる。

 ちなみにこのおしゃれギミック、100年以上前からあるそうだ。

 

 理由は、魔女の迫害云々から逃れるためと聞いた。

 が、日本で築100年とかお前建築法とか……と、イスタスはツッコミたい気持ちを堪えた。

 

(身体とか世話になっている以上、最早突っ込むまい)

 

 かつかつと階段を2階分ぐらい下ると、未来的なスライドドアが現れる。

 その前に立ったイスタスに科学的、魔法的な認証が掛かり、すっと音もなくドアが開く。

 

 その先には……至る所に素材やら書類が散乱し、大の字でひっくり返っている謎の四つ耳生物がいた。

 

「ポヨ公……。

 進捗、どうだ?

進捗、ダメポヨ……」 

 

 ここは雪下邸地下に備えられた『開発室』。

 そこでポヨ公はひっくり返ったまま、イスタスに返答する。

 そこに、ポコポコと謎の気泡を発する鍋をかき混ぜている琴音がこちらに気付いて歩いてきた。

 

「スタ先輩、表はもういいんスか?」

「とりあえず、初動はね。

 後はラ=グラリアたちに投げたから、こっちの作業確認に移るわ」

「あたしの“作品”も幾つかできたっスよ!」

 

 そう言いつつ、イスタスはポヨ公をぐいと耳を掴んで持ち上げ、椅子にぎっと座る。

 何となく、悪の総裁イメージである小動物を撫でながら足を組む姿をイメージしている。

 

「で、ポヨ公は引き続き新商品開発と私たちの装備開発と琴音の『涙虹石イーリス・リアクター』ロック解除と、ついでにブランク・リアクターの例の不安定性解析の報告を」

「や、やる事が多いポヨ……」

 

 ポヨ公がイスタスの膝の上で痙攣しながら答える。

 この組織の根幹とも言っていい、開発担当のポヨ公。

 必然的にやる事は増える。それはもう……しょうがない。ええ。

 

「労働環境の改善を要求するポヨ……」

 

 ポヨ公が涙ながらに憐れみを誘い、イスタスに窮状を零す。

 しかし、イスタスは目を細めて冷徹な表情のまま言った。

 

三食昼寝までして、きっちり8時間しか労働してないだろ

妖精の国は3時間労働が基本ポヨ

羨ましすぎるだろ、妖精の国

 

 恐るべし妖精の国の労働組合。

 人間とは生きるスパンが違うのかもしれない。

 だが、郷に入っては郷に従って貰わないと、とイスタスはポヨ公の頭を撫でた。

 

「タスクは溜まるけど……基本、無理はさせてないでしょ?

 今は頑張りどころだから、頑張ってくれ」

「わ、分かったポヨ……」

 

 イスタスはがくりと垂れ下がった四つ耳を掴んで、膝に抱えて顎を撫でる。

 

「まず、新商品はまだ構想中ポヨ。

 あんまり物理法則に反したもの作っても、説明書作るのに困るポヨ」

「まあ、そうだな……」

 

 あたおかシートだけでも説明に苦慮していたところではある。

 できるだけ科学的に『見える』製品を構想して貰わないと、取引先に説明するのに苦労する。

 ……と、営業目線でイスタスは思った。

 

「次に、イスタスの新装備ポヨが……1つ目の飛行フライトモジュールはできたポヨ」

「お、どんなの?」

 

 ポヨ公がぴょん、と飛び上がり、乱雑な机から翼の絵柄が付いた一枚のカードを加えてイスタスに寄越す。

 それはこの前、クラス委員長卯花うのはななぎさこと『極光石オーロラ・リアクター』製魔法少女、オーロラ・スカーレットの持っていたカードっぽい形をしている。

 

「記録で見た、あの娘の拡張モジュールっぽい形にしてみたポヨ。

 拡張機能は、全身24ヵ所に疑似質量を持たせた魔力スラスターを配置したポヨ。

 空中で直立姿勢を崩さないようにPID制御して、各スラスターが自動出力制御する設定にしてあるポヨ」

「……それ、直立して空中を飛ぶシュールな絵にならんか?

まぁ、そうなるポヨ

 

 思わず顔を顰めるイスタス。

 オーロラ・スカーレットを捕まえるにしても、とりあえず追いつける機動力が必要だ。

 それに応え、突貫で作られたこの拡張モジュールであるが……。

 スカーレットみたいにかっこよく空を飛ぶ、と言う段階にはまだ無いようだ。

 

「思考ファジー入力で推進と姿勢制御するようにしてあるポヨ。

 『前に進む』、『後ろに進む』、『上に進む』、『下に進む』、『左を向く』、『右を向く』、『右回転』、『左回転』の8つの目標値をPIDに放り込めば、そこに向かって進むポヨ」

 

 言うなれば、全身にスプレー缶を配置して半自動制御できるようにしただけ。

 ぶっちゃけ、ポヨ公の慣れた宇宙機のスラスター制御に地球の重力加速度の係数を加えただけである。

 イスタスの防御膜に甘え、流体力学を全く考慮してないお手軽制御法。

 まあ、宇宙でも係数を抜けば使えるという利点はある。

 

「……要練習、かな。

 それより、姿勢はこう……空気抵抗とか考えてうつ伏せの方がいいんじゃない?」

「イスタスはどうせ『強化』膜を張るから姿勢は関係ないポヨ?

 だったら前向いた方がいいポヨ?

 上向くとか、人体の構造上見辛い方向だポヨ」

「ぬぅ……」

 

 イスタスはそれに反論できなかった。

 脳裏に浮かぶスカーレットとの空中戦で、自分だけ仁王立ちの姿勢のまま飛ぶ姿を幻視する。

 

「……。

 いや、あれだ。多少前傾姿勢にするように調整するか」

 

 少し前傾姿勢にすれば、まだ違和感は無くなる気がする。ガン〇ムの飛び方だ。

 そんな先を想像していると、琴音が顔を青くしながら頬をひくひくさせた。

 

「それ……アタシも同じのっスか?」

「琴音はこっちポヨ」

 

 ポヨ公は琴音に向けて、ポイっとホウキを投げてよこした。

 ホウキの先に、チェーンで繋がれた『涙虹石イーリス・リアクター』がきらりと光る。

 

「お、良いっスね! わかってるっスね! 魔女ならホウキで飛ばないと!」

 

 ホウキは勿論、ただのホウキではない。

 琴音がさっそくホウキに横座りし、うんうん唸る。

 そして、何か呟くとあっさりとふよっと浮遊して見せた。適応はやい。

 こいつの魔法関連のセンスにはポヨ公もイスタスも脱帽である。

 

「ロック解除した『涙虹石イーリス・リアクター』と、ホウキ型飛行ユニットポヨ。

 こっちは大気魔力の流れに対し、仮想揚力を発生させて浮遊するポヨ」

 

 イスタスがロケット推進だとすると、琴音のはイオンクラフトが近いか。

 推力は圧倒的にイスタスが高いが、エネルギー効率はイオンクラフトが勝る。

 大量の魔力が使える琴音ならロケット式でもいけそうだが……スピード出し過ぎで墜落する危険は高い。

 

「イスタスみたいな推力は出ないから、スピードは遅いポヨ。

 多分、そのスカーレットとやらには追い付けないポヨが……。

 その分安全で制御は難しくないから、ゆっくり試すといいポヨ」

「まあ、空飛ぶのはぶっちゃけ適正があるからね……」

 

 ふよふよと飛ぶだけなら、事故が起きても怪我しないかとイスタスは考えた。

 アホみたいに頑丈なイスタスとて、空を飛ぶのはまだ怖い。

 自らが傷つかないとしても、かなり墜落事故は起こしてきた負の実績がある。

 

「スタ先輩、今度一緒に空飛ぶ訓練してほしいっス!」

「了解、分かったわ。

 空間認識失調にならない程度に頑張りましょう」

 

 将来的に琴音もオーロラ・タイプの魔法少女と戦う戦力とするなら、飛行能力は多分必要になる。

 飛べるようになって損は無いだろう……と、訓練メニューを考えながらイスタスは思った。

 

「それからブランク・リアクターポヨが……例の不安定性が解決できないポヨ」

「……やっぱりそうか」

 

 ポヨ公が肩を落として首を振る。

 魔力減少による世界崩壊の解決策である、超高出力無限動力炉ブランク・リアクター。

 三上ユウこと魔法少女イスタス専用リアクターとされ、通称“ブラックホール・リアクター”として調整されていたのだが、ここに来て問題が出てきたのだ。

 

 実は試作型ブラックホール・リアクター1号機の起動実験は、つい1週間前に実施されている。

 様々な影響を鑑み、イスタス立ち合いの下月面での起動実験である。

 

 起動後の低出力状態は問題なかったのだが、出力を上げると原因不明の“波”の様な振動でリアクターが破損。

 緊急停止を試みたが、反応が急速に進んだために暴走した。

 月面質量を吸い込みながら成長し始めたため、結局ユウが無理やりリアクターごと特異点に突っ込むことになった。

 

 こうして試作1号機は特異点の向こうに消え去り、ユウはポヨ公を殴った。

 結果的にであるが、あの時無理やり起動してなくて良かった。

 

 ポヨ公はそれから試作2号機を組み上げてはいるのだが、ユウは起動試験を禁止。

 消えた1号機は“バニシング・リアクター”と言う不名誉なあだ名が付いたりした。

 それからずっと原因調査を続けているが、まだ解決の目途は立っていない。

 

「重力場の『波』のようなものが、不意に発生して制御できないポヨ……。

 不連続で発生する9つのパターンを制御しないとリアクターが破壊されるポヨ」

「重力波を遮断できる物質なんか、この世に無いからね……」

 

 ……ユウの『強化』を除けば、であるが。

 だがユウがマニュアルで抑えるのにも限度がある。

 9つも制御しようとしたら、確実に頭がパンクするだろう。

 

「と言う訳で、対策にこれ作るポヨ」

「どれどれ」

 

 こんなこともあろうかと、とポヨ公が企画書をイスタスに渡す。

 それをペラペラと捲って見ていたイスタスの眉間に皺が寄った。

 

GORGONゴルゴーン……不連続重力衝撃波生成システム?」

「イスタスが生成した重力波を思考AIで偏向して、逆位相でぶつけて安定させるポヨ」

「また力業な……で、おいくら万円?」

一千四百万ポヨ

一千四百万!?うせやろ!?

 

 文字通り目ん玉が飛び出たイスタスの喉から、思わず関〇クレーマーが飛び出す。

 まあ一千万越えとなると、イスタスが用意した22金全部売り払った上で融資を受けないと届かない金額。

 軽々と出せるものではない。出せなくはないけど。

 

「こんな……狭い用途で一千四百万て、ぼったくりやろこれ!」

「えー……、あ、重力制御でイスタスの武器に転用とか、できるポヨ」

「あ ほ く さ、それ特異点で良くね」

 

 イスタスがため息をつきながら企画書にバッテンを書き入れて机に置く。

 まあ、イスタスとてこれが画期的な大発明であることには疑いない。

 客観的に見て一千四百万とか、かなり安いとも思う。

 でも、ポヨ公の態度が気に入らなかった。

 

「ポヨ公お前……そもそもの問題は、なんで不連続衝撃波が発生するか原因の特定が先でしょ。

 なぜなぜ分析3回以上やってFTA(故障解析)作って持ってきなさい。これはそれから」

「……めんどくさいポヨ」

 

 ポヨ公が唇を尖らせてぶーたれる。

 これ絶対ポヨ公の趣味でGORGON作るほうが面白そうだから……でやってないだけだろ。

 こんな問題対処やってたんだとしてら、ガ=ヘリクトも苦労したんじゃないかとイスタスは同情した。

 

 企画書を却下され、ふて寝を始めたポヨ公を尻目に琴音がすすすっとイスタスに近寄る。

 

「じゃあ、次はアタシっスね」

 

 イスタスは琴音に手を引かれ、とことこと琴音エリアに足を踏み入れたのだった。

 

 

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