基本設定の部分になります。半分あたりから各話に分岐します。
テラという名の大地。
この苦難に満ち溢れた世界には、あまりに強大な脅威が、この地に根を生やしていた。
炎国に根付く、目覚めかけの災厄とその端末達。
海の底から手を伸ばす、狂気に満ちた生物達。
最北に押し止められた、恐怖の悪魔達。
幾つもの国が謀略を張り巡らせ、終着点を見失った戦争達。
そして...この大地に住むものを蝕む、天災と鉱石病。
仮にそれらが全て終わりを告げた時。
私の役割は...ここにあるのだろうか?
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「ん......」
窓から差し込む光が私を照らして、自然に目が覚める。
「...朝か。」
ゆったりと、身体を起こして毛布を取る。
陽の光で目を覚ます日々。実に健康的だと言えるだろう。アラームに起こされ使命に追われていたあの頃とは違う。
「......」
アラームはあるが、何やら壊れているようでうんともすんとも言わないし、そもそも早起きをする理由はもうない。
煤汚れたカレンダーを見る。今日で...全てが終わってから丁度半年。
あの日、私達の過酷な戦いの日々は終わりを告げた。このテラに広がる、思いつく限りの脅威を全て、収めることができたのだ。
それは当然、私だけの力などではない。
ロドス・アイランドのオペレーター達。数多の地から、私達の理念に共感して手を取ってくれた戦友達。
「よっ...と。」
今は...私一人だ。
備蓄倉庫から缶詰を一つ手に取る。備蓄倉庫といっても、地下にあるちょっと涼しいスペースに食べ物が積んであるだけのものだが。
ここはロドス・アイランドではない。それだけは分かるし、それ以外は分からない。
気がついたらこの荒原に倒れていて、たまたま近くにあった小屋に転がり込んだ。
地図もなければ移動手段もない。外は照りつける日差しと、見渡す限りの荒野。
元々貧弱な身体の私が、食糧を背負ってまだ見ぬ世界に旅立とうとすれば、あえなく荒野の塵と化す以外の未来はないだろう。
「...はぁ。」
味気のない朝食を終えて、少し外を歩く。
起きたところで...近くの湧水を汲みに行くか、無駄な思考に身を預ける以外にすることはない。
今なおこの大地を照らす太陽を見上げて、思いを馳せる。
半年前。最後の戦い。
何もかもが捨て身だった。幾つものオペレーターが犠牲となった。
そして全ての解決と共に、我々を導き続けたロドス・アイランドという方舟もまた、崩壊した。
かつて共に歩んだ彼女達は今、一体何をやっているのだろうか。それともあの戦いで、既に...?
いくら目を凝らしても、視界に流れ込んでくる情報は一面の荒野のみ。
ああ...
教えてくれ、ケルシー。クロージャ。
みんな...どこだ...
私を、一人にしないでくれ、アーミヤ。
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ED1 doctor
……
……
朝だ。
……
身体を起こさず、カレンダーを見る。
ええと...
ああ、そうだ。
いつだったか、もう印を付けるのをやめたのだった。
……
――おはよう。
「...おはよう。」
もう何も分からない。
あれから......どのくらい経った?
半年?一年?それとも数ヶ月?
変わるのは、倉庫の食糧くらい。
――今日は砂嵐が薄い。水を汲むなら今日だ。
「ああ.........?」
起きようとするが、手に力が入らない。
まだ食料は残っていたはずだ。それを食べて...
………………
ああ。
そうか。
―――。
今、私は自分の体のことを把握した。
お腹が空いて動けない訳でも、運動不足で筋肉が衰えた訳でもない。
きっと私は、もう諦めたのだ。
「......」
起きるのをやめて、目を閉じる。
――もう良いのか。
「......」
きっとこれは間違いだったんだ。
私の役割は、あの日、あの瞬間に終了していたんだ。
これはエラー。消えるべき場所を見失った、ただの余剰。
――そうだ。
プログラムを終えたデータは、何をすることもなくただそこに在るだけ。
「もう...良い。ありがとう、昔の私。」
――ああ。
いつの間にか私に話しかけてくれていた、声が聞こえなくなる。
意識が、深く落ちていく。
どうか。
どうか、みんなが、ここでは無い場所で、災いが消え去ったこの世界で。
幸せな未来を取り戻せていますように。
それだけで、私は――
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調査報告
◼️◼️◼️◼️所長
第4回B3エリアの捜索について
東南部分の捜索を行なっていた特別調査隊Dが、砂嵐の先に使い古した小屋を確認しました。
古屋の調査を行ったところ、消費期限切れの備蓄食糧と、種族不明の亡骸が発見されました。
B3エリア支部の仮設基地に遺体を輸送したのち検死を行いましたが、死後かなりの時間が経過しているようで難航しています。
つきましては◼️◼️◼️◼️所長に、直接の検死を――
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「......」
表情の読み取れないフェリーンは、移動車の窓から空を見上げる。
彼女は何も言わずに、目を伏せた。
ドクター。
君のもたらした結末は、この広大すぎる大地にとって最良の選択肢となっただろう。
...言いたいことは山ほどあるが、あえて何も言わないでおく。テラにおいて平等に訪れる死は、今も以前も安らかで在るべきだ。
だから...ただ君に、最大限の感謝を。
今、迎えに行く。