いつの間にか吹雪は止み、夜の帳に雪がしんしんと降り続いている。窓を叩いていた風もすっかり大人しさを取り戻し、眠ったかのように物音を立てない。平静でありながらも無警戒にはなることができない、緊張感を孕んだ空間。瞳を閉じた村娘の耳には火の爆ぜる音とレイギエナの規則正しい寝息だけが響いている。
その寝息に僅かな熱と呻きが含まれていることを、聞き逃すことはなかった。
村娘はゆっくりと身を起こし、レイギエナの寝顔を見つめれば仄かな辛さが滲んでいる。視線を胸へ、お腹へと移らせ、さらにその下へ。
(中略)
「ごほ……ごほっ……っ…!」
咳をする中で胸元に白いものがこびりついていた。ワンピースが茶色いせいで白色がよく目立つ。村娘はため息をつきながら口元を袖口で拭った。
穏やかに戻ったレイギエナの顔をみれば、村娘は満たされたような心地がした。彼が自分で感じてくれていたのだと、安心感に包まれる。
そして、それと同時に自身の残った熱も自覚し、下腹部を摩る。
ものたりない……
村娘は未だに夢の中にいるレイギエナに身を寄せる。熱の冷めきらないレイギエナの体に顔をうずめれば、野性の匂いの中に雪の香りが混じっていることを感じ取れる。何度も嗅いだことのある、レイギエナの匂いだ。
(中略)
埋め込まれた熱を感じながらレイギエナの顔をみる。起きる気配もなく、ぐうぐうと眠っている。村娘は微笑んだ。密着した体から聞こえてくる鼓動に耳を澄ませれば、ただ眠っているだけではありえないほどの早鐘を打っている。
村娘はこれぐらいでは起きないことをわかっていた。何度もこうして体を重ねてきたのだ。彼は起きない。だから何度も触れられる。
レイギエナの胸に口づけを落とす。よく見れば体の至る所に体色と同化してしまうような薄茶色をした古傷が刻まれている。レイギエナが野生を生き残るためにできた傷跡だ。強靭な獣である証。誰よりも悠然と空を舞い、縄張りを侵す者を退け、主として君臨することさえあるレイギエナ。その彼と村娘は交わっている。その事実が、村娘には堪らなかった。胸を締め付けるような喜びと、疼きを取り戻すような高揚感に頭が真っ白になる。
(中略)
――
レイギエナの姿がみられなくなった。麓に住む村人たちがそう感じ始めた数か月後、村娘は旅立ちの装いをして通いの行商人たちと話していた。前々から話していた通り、彼女は行商人たちに同行させてもらいながら町を目指すらしい。冒険者ギルドがある町に。
曰く、この村には刺激が足りないのだと村人に話していた彼女は、明るく笑っていた。
憂いもなく感謝と別れを告げる娘に村長が「体には気を付けて」と声をかければ、可笑しいものでも聞いたかのようにくすくすと笑う。そしてとびっきりの笑顔で言った。
「もちろんよ」
全年齢版にしたら記載できるところほとんどなくて笑った。