おい、バトルしろよR   作:ししゃも丸

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ハナダの洞窟とカスミとマサキ

 ハナダシティ──カントー北東部に位置し、別名水の都とも呼ばれている街である。水の都と呼ばれているように、街中に水路があり観光客相手に多くのゴンドラによる運輸業も盛んである。また街の北部には北の岬と呼ばれる場所があり、そこと街を繋ぐゴールデンボールブリッジと呼ばれる橋がある。ここには多くのトレーナーがバトルを繰り広げておりその腕を高めている。

 

 そんなゴールデンボールブリッジから北西にとある洞窟がある。通称ハナダの洞窟と呼ばれているのだがその情報は少ない。自然に作られた洞窟なのかそれともポケモン、または人によって掘られたものなのか全く判明していない。

 

 近くにハナダシティがあると言ってもここまでたどり着くのは至難の業だ。ハナダシティ周辺のポケモンのレベルはそこまで高くはない。なので新人の肩書が取れるぐらいのトレーナー達にとってはちょうどいいレベル帯のポケモンが生息している。

 しかし、何故かハナダの洞窟に近づくにつれてポケモンのレベルが高くなり、また本来いるはずのないポケモンまで確認されている程だ。

 

 これに当時のハナダシティのジムリーダーを筆頭に腕の立つトレーナー数名で調査を開始。残念ながらハナダの洞窟すべてを把握することはジムリーダーと言えど頭を抱えた。道中襲ってくるポケモンのレベルとは桁違いに洞窟に棲むポケモンのレベルが想像以上に高く、また侵入者には容赦なく襲い掛かってくることから調査は断念せざるを得ない、という結論に至った。

 

 元々人が滅多に来るような場所でもないのだが、一応立ち入り禁止のテープと看板が立ててある。他にもこの洞窟のことを口にしてはならないという風潮もできたため、ハナダの洞窟を知るものはあまりいない──のだが、ここ最近一人の人間が紛れ込んだ。

 

 

 

 

 ──あ、野生のゴルバットが現れた! アーボックが現れた! ユンゲラーが現れた! パラセクトが現れた! ガラガラが現れた! ベトベトンが現れた! 野生のニドキングが現れた! 兎に角いっぱい現れた! 

 ──レッドの連続パンチ! 

 ──リザードンのかえんほうしゃ! 

 ──スピアーのミサイルばり! 

 ──野生ポケモン達は吹き飛んだ! 

 

「戦っても戦ってキリがねぇ……ほんとこの洞窟は最高だぜ! な、リザードン!」

「リザァアアア!!」

「……!」

「今日もみんな張り切ってるピカねぇ……進化先だからって調子に乗るんじゃねぇ!」

 

 ──ライチュウの奇襲! 残念はずれた! 

 ──ピカチュウのたたきつける! 野生のライチュウは地面に埋まった! 

 

 オツキミ山からハナダシティを目指していたレッド一向。当然その道中もトレーナーとポケモン狩りをしていたのだが、突如レッドのバトルレーダー(ただの直感)によって偶然このハナダの洞窟を発見。道中もここにたどり着くまで驚くほどに強い野生ポケモンに襲われ、いざこの洞窟に入ればその瞬間に奇襲を受けるといった歓迎具合であった。当然これにはレッドも満面な笑顔になり史上最高の大乱闘が始まったのである。

 

 その大乱闘レッドカーニバルからすでに数日が経過しており、主と同様に強者に飢えていたリザードは始まって数時間でリザードンに進化。頭部や翼など若干本で見たリザードンとは違う形態なのに驚いたものの。

 

「うぉーかっけー!」

 

 このように珍しく年相応にはしゃいでいたのである。ちなみにリザードはリザードンで生まれて初めて褒められたので、「そ、そうか? て、照れるぜ」とのこと。

 

 二人は当然としてスピアーも二人と同様に張り切っており、自慢の槍で多くのポケモン達を倒していき、以前にも増して槍の強度や攻撃力があったことを実感しており本人もとても喜んでいた。

 

 そんな付き合わされたピカチュウは、「やれやれ。みんなガキピカねぇ」と一人呆れていたのだが、自身の進化先であるライチュウやレアコイルといったでんきポケモンも少なくらず生息したたのか、同族嫌悪ではないがそこはやはりレッドのピカチュウであろうか、負けず嫌いが発動して結局三人と同様に暴れていた。

 その甲斐もあってか、最近になって尻尾が硬くなってレアコイルも叩き切れそうな強度になったという。

 

 日数にして恐らく3日程であろうか。ついにハナダの洞窟を制圧したレッド探検隊はようやく洞窟を出ることを決断。そしてそれは同時に別れの時でもあった。

 

「うぅ……今までお世話になったドン。どうかみんな元気で」

「おう。お前も達者でな、サイドン!」

「またヤろうぜ!」

「リザードンさん、それは遠慮するドン……」

「……」

「あの、硬いからって容赦なく刺すのは勘弁してくださいスピアーさん」

「元気でピカ」

「あ、ピカさんもお元気で」

 

 ロケット団の不思議なお薬によってサイホーンからサイドンになり、レッドに敗北した彼は何故かここまで一緒に行動していた。境遇が境遇故にレッドもハナダシティについたらポケモンセンターかオーキド博士に託す予定だったのだが、ハナダの洞窟なんていう最高のバトルスポットを見つけてしまったがためにその計画はとうに忘れられていた。

 

 もちろんこのサイドンは元々ロケット団のポケモンなので、つまりは誰かの手持ちポケモンなのであるが、彼が入っていたモンスターボールがオツキミ山の崩落で壊れたのが原因なのかは定かではないが野生に戻っていた。なので捕まえようと思えば捕まえられるのだが、素でレッドはその気がなくいつもの感じでサイドンを従えていて、彼もここまで来てしまったのだ。

 

「じゃあその内また来るよ」

「その時を楽しみに待ってるドン」

 

 まあそのおかげで彼のレベルもかなり上がっており、ついにはこのハナダの洞窟のヌシのようなものになるのはそう遠くない未来であった。

 

 

 

 

 

 仲間であったサイドンと別れを告げてハナダの洞窟を後にしたレッド一行は、一時間も経たずにハナダシティへとたどり着いていた。それもそのはずでリザードンに進化したので、わざわざ地上を歩かずとも空を飛べばすぐだからである。

 しかし、今回は例外であった。それはただ単に食料が尽きたので早くポケモンセンターに行きたかったからだった。

 

 だが、そのポケモンセンターで驚くべきことが起きた。

 

「あれ、オツキミ山のポケモンセンターにいたジョーイさん?」

「あらぁ! あの時の少年くん!」

 

 ジョーイさんはみんな顔が似ているという噂があるのだが、目の前のジョーイさんの匂いがオツキミ山のポケモンセンターにいたジョーイさんと同じだったのでレッドは気づいた。

 そのジョーイさんもレッドのことを覚えていたらしく、他の利用者とは違って妙にフレンドリーに話しかけてくる。

 

「へぇ。ハナダシティに異動したんだ」

「そうなのよ。あんなことがあったでしょ。今は調査のためにまだオツキミ山は立ち入り禁止だから、あそこにいてもあんまり意味ないから。で、ハナダシティに補充要員として来たんだけど、まさか少年くんってばまだハナダシティにいたんだ。てっきりもっと先に行ってるかと思ったよ」

「まあ、色々とあって」

 

 何とか平静を装いながら答える。言えるわけがなかった。先の事件の原因が自分、いや、ロケット団の仕業なのは間違いないのだがそれに関わっていたなど言えるわけがない。

 

「じゃあハナダジムに挑戦するんだ。強いわよカスミさんは。なのでくさタイプかでんきタイプのポケモンがおススメだよ!」

「んーとりあえず行ってから考える。じゃあまたね」

「頑張ってね。……またのご利用をお待ちしております」

 

 相変わらず公私の切り替えが早い人だった。

 

 

 

 

 ハナダジムはニビシティと違ってバトルフィールドがプールみたいなところだった。もちろんみずポケモン以外のための小さなステージみたいのも当然あった。

 ジムに着いてからレッドは考えた。確かにみずポケモンにはでんきタイプであるピカチュウが最適であると。しかし、本当にそれでいいのだろうか。相性が有利なポケモンを選ぶのもまた戦術だ。けど、それも踏まえて待ち構えているのがジムリーダーというもの。それでもピカチュウは負けないだろうという絶対的な自信も確かにある。

 

 でも、それは自分のスタイルではない気がする。そう、自分らしくない。いつもは流れに逆らっているようなタイプだ。

 となれば選ぶポケモンは……。

 

 ──おめでとう! レッドはジムリーダーのカスミとの勝負に勝った! 

 

「やったなリザードン!」

「リザァアアア!」

「やったな、じゃないわよ!」

「いてっ。いや、痛くないけど」

 

 リザードンで門下生含めジムリーダーであるカスミとの勝負に勝ったレッドは、彼と喜びを分かち合っていたのだが、向かい側にいた彼女がいきなり隣にやってきて頭を叩かれた。しかし、叩かれた方は平然としており、むしろ叩いた方が痛がっていた。

 

「っ~~。あんた、リザードンで挑んでくるなんてどんな頭してんのよ⁉ いや強かったけど!」

「だって」

「だって、なによ」

「その方が鍛錬になるし」

「……あんたバカ? いや、バカなのね」

「バカじゃないし。でもアレだな。反省すべき点もあった」

「うんうん。みずタイプ相手にほのおタイプで挑むところよね」

 

 と、カスミは笑顔で頷くのであるが。

 

「やっぱりまだハイドロポンプはちょっとキツイよな。今度は川に浸かりながら戦う特訓でもして、いや、いっそ滝行でもして水に慣れるようにすべきかな。どう思うリザードン?」

「いいねそれ!」

 

 やはり一人と一匹は頭のネジが一本ないようである。

 

「バカ、あんたは正真正銘のバカよ! あれ、いま誰か喋った?」

「いや? それとバッジちょうだい」

「あ、うん。はい、これ」

 

 ──レッドはブルーバッジを手に入れた! 

 

「やったぜ」

「はぁ。マサラタウンのトレーナーって強いイメージはあったけど、あんたは先の二人とはちょっと例外ね。いや、ちょっとレベルじゃないわ」

「二人? リーフとグリーンのことか?」

「ええ。あなたより先に私に勝っていったよ」

「それいつ頃?」

「5日ぐらい前だったかな。そうね……ジム巡りしてるならもうクチバシティを通って今頃はシオンタウンの手前ぐらいじゃないからしら」

 

 頭の中で地図を思い出す。シオンタウンの手前ぐらいとなると、恐らくイワヤマトンネルぐらいだろうか。

 

「はぁ。どんどん先に行かれるや」

 

 その原因であるのもまた自分であるということをレッドはあまり自覚していなかった。

 

「リーフは出発を延ばしてハナダにいたわね。ああ、今思うとあんたを待っていたのね。ちょうどオツキミ山で崩落事件があったから。あんたも運がよかったわね。下手したら今頃……」

「あ、うん。ラッキーだったね、うん」

 

 カスミは先の鬱憤がまだ溜まっているのか、わざとらしく脅すような口調でいう。しかしレッドはそれにどう反応すればいいのかわからず、とりあえず適当に誤魔化すことしかできないのであった。

 

「あ、そうそう。あんたもここまで来るのにたくさんポケモンを捕まえてるんでしょ。だったら北の岬に行ってみなさい。そこにポケモンあずかりシステムを作ったマサキってやつがいるんだけど、ついでだから会いに行ってみれば? まあ見るからにインテリって感じだけど、結構すごいやつよ」

「……うん!」

 

 レッドは素直に答えた。言えるわけがない。捕まえたポケモンは手持ちのこの三匹だなんて。それよりも早くジムから出たい気持ちのが大きい。

 なにせ、何故かカスミは普通の衣服ではなく水着……競泳水着を着ておりその所為でとても目に毒なのだ。だからレッドは下ではなくひたすら彼女の顔を見ることしか許されていないのだ。

 

「……ん? 私の顔になんかついてる?」

「いや、ナニモ」

 

 ハナダジムのジムリーダーカスミ。思春期の男の子にはあまりにも強敵するぎる相手であった。

 

 

 

 

 

 

「こんちわー。マサキいますかー」

 

 ハナダジムからそう時間もかからずにレッドは北の岬にあるマサキの家にやってきた。道中多くのトレーナーにバトルを挑まれたが、生憎そのレベルは低く彼らを満足させることはできなかった。

 

「──はいはい、誰やもう……ん? お前さん……その赤い帽子にいかにもバカっぽい顔は……もしやレッドか?」

 

 玄関を叩いてから少しして家主が現れたと思えばいきなり酷いこと言われ、レッドはグッと殴ろうとした自分の右手を必死で抑えていた。

 

「殴らなかった自分を褒めてやりたい」

「あはは。すまんすまん。いや、リーフが言っておった容姿とそっくりだったもんでな。で、わいに何の用や?」

「いや、カスミに行ってみればって言われたから来ただけ」

「子供か! いや、子供だったわ。はぁー本当にリーフから聞いてた通りやな、お前さん」

 

 マサキは首を横に振りながら相当呆れている様子だった。それから立ち話はなんだと中に入れてもらうレッド。中は思っていた以上に機械類で溢れていた。わかる範囲で言えばパソコンぐらいで、あとは何かの操作盤とよくわからないカプセルとかが置いてあった。

 

 中に入れてもらったはいいが全くお茶の一つも出ないなと思いながらレッドはあることを訊いた。

 

「そういえばリーフもここに?」

「そうや。そん時ちょっと色々あったんやけどそこをリーフに助けてもらったんや。で、リーフから色々を話を聞いたんやけど……」

「……なんだよ。人の顔をジロジロ見て」

 

 目を細めてまるで観察するように見てくるマサキに不機嫌そうにするレッド。彼は悪かったと笑いながら続けて言った。

 

「いや、お前さんみたいなのが意外とモテるんやろうなって」

「……?」

「無自覚かい。こりゃあリーフも苦労するわけや」

 

 マサキの話がちっともわからないレッドは首をかしげる。すると視線の先にパソコンの画面が目に入る。そこにはポケモンの写真が表示されていた。

 

「これって確か……」

「ブースター、サンダース、シャワーズ。イーブイの進化先やな」

「なんでイーブイだけこんなにあるんだろう」

「うーん難しい質問やな。しんかポケモンだからと言うのは簡単や。でも、それは答えじゃあらへん。一説には元々自由に進化できたのではないか、そんな論文があるっちゅう話を聞いたことがあるな」

「博士の研究所にも似たようななのがあったような……?」

「博士? ああ、マサラタウンやもんな出身」

 

 思い出す限りだとマサキが知っているような本ばかりだったと記憶している。印象に残っているのはマサキが言ったように、元々自由に進化できたという話。イーブイに進化の石が必要なのは、本来それを必要としなくてもよかったナニカが、種の繁栄と時代と共に失われてしまったのではないか。それがレッドの中で一番印象に残っていた。

 

「自由自在に進化できたら最強だぜ」

「気持ちはわからんくもないがな。でも、イーブイはどちらかというとコンテストとか──」

 

 それからマサキと数時間に渡り楽しい時間を過ごした。旅の話、ポケモンの話、他愛もないつまらない男の話とか。

 これは、生まれて初めての体験だった。マサラタウンでは友達なんていなかった。リーフは幼馴染だからカウントされない。故に男友達なんて存在すらしていなかった。それなのに会ったばかりのマサキとは、何故だか不思議と話が進む。頭より先に口から言葉が出ていた。

 

「──次はクチバに行くんだけど、ヤマブキシティを通っていくのがいいんだっけ?」

「いまヤマブキに入るためのゲートはなんか規制とかで通れへんのや。だからヤマブキの下を通ってる地下通路を通るルートやな」

「情報感謝。ところで、道中強いポケモンがいそうな所ない?」

「ん~そうやな……あ。そうそう、確かハナダの東にあるシオンタウンに通じてるイワヤマトンネルがあるやろ。そこを超えた辺りに何年も前に破棄された──」

 

 マサキ。それはレッドにとって生まれて初めて出来た友達だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ワンポイントレジギガス

「多分今回が一番の変更点なんだな」

 

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