水野愁(みずのしゅう)。高校2年生で、彼女はいない。
「なんだ普通じゃないか」と思う人もいるかもしれない。ただ、このクラスはほとんどの人が彼女を持っている。
「なぁ、愁」
俺の親友、月島柊だ。名前が同じだから、という理由だけで仲良くなった。もちろん、こいつにも彼女がいる。
「もう彼女できたか?」
「いるわけないだろ。俺だぞ?」
柊は「だからできそうなんだけどな~」と言う。ただ、俺が言った「俺だぞ?」というのはただの誤魔化し。
あの時、違う決断をしていれば今俺には彼女がいたかもしれない。
1年前、春の終わりだった。高校1年生だったのもあり、学校に少しずつ慣れてきた時期だった。
「好きです!」
告白された。風波瑞浪(かざなみみずな)。隣のクラスだった、ポニーテールの女子。
初めて"本気"であろう告白された俺だったが、テンパった。今まで告白されず、モテずに生きてきた俺が今、告白されている。
「えっと……俺が?」
「うん……!」
誤解じゃなかったらしい。この子は俺のことを好きだと言っている。
ただ、俺は本当に釣り合っているのだろうか。実際、過去には罰ゲームの告白を俺がオッケーして、揶揄われたこともあった。正直言ってしまうと、女子が怖い。本当に信じていいのか……
「ごめん」
俺はそう言葉を放った。
やはり信用できなかった。女子はあとでなんかありそう。
「……そっか……っ」
風波さんは振り向いて走り出した。彼女から透明な液体が飛ぶ。涙だ。
「まさか、本気だったのか……?」
俺の中には中途半端な後悔が残った。
「……う、愁?なんだ、ボーッとして」
柊に呼ばれて俺はやっと現実に戻った。
「ああ、なんでもない」
「なんだ、彼女がいないからか」
いつもこうやってからかってくる。ただ、柊からのは悪い気がしない。親友だからだろうか。
「そうだ、俺がみつけてやろうか」
「は?何をだ」
俺がそう言うと、柊は人差し指を立てて言った。
「彼女を、だ。ほら、好きな髪型は」
彼女を見つけてやるって、一体何なんだ。
「……ボブヘアとかか」
「そうか。明るい方がいいか、性格は」
これ、本当に探そうとしてるな。まだつくる気は無いんだが……
「静かな方がいい」
「服装は」
「あの、ノースリーブ……だっけ?のレースかな。こんなもんでいいか」
「ああ。来週には連れてきてやる」
「いい、連れてこなくて」
俺は荷物を持って学校から出た。
俺は学校から出て電車に乗った。なぜだろう、今日は疲れた気がする。
武蔵野台から京王線に乗車し、下高井戸へ行き、世田谷線で上町へ行く。こっちの方角は今日思い出していた風波さんの家の方向だった。
だから風波さんが前に……
「え?」
声が出た。
「……こんにちは……?」
風波さんが俺の前にいた。なんで俺の前に……
「……」
話しづらい。あんなことがあったから。
「風波さんは、まだ俺のことが──」
「水野くんに合わせる。私には決められる権利はないから」
おかしい。告白のときとは性格が全く違う。
「あぁ……そうか?」
自分に判断を委ねられると困る。一回振った女子に好きだと言えるはずがない。
「風波さんは、変わったな」
「……何が……?」
「その……暗くなった……」
風波さんの表情はなかった。笑顔も、怒りも何もない。
「そうなんだ……」
「あぁ……あ、俺のこと、嫌だよな。もう降りるから」
俺はたった4駅目、調布で降りた。まだ下高井戸までは11駅ある。ただ、きっと風波さんにとって俺は嫌な存在だ。一回盛大に振っといて、そのあとは話しもしない。
(俺は、そんな人間なのか……)
俺はそのあとに来た特急新宿行きで明大前に行き、17:52発各駅停車高尾山口行きで下高井戸へ。
上町に着いた俺は、家へ歩いていった。
風波さんが無表情になった理由や、俺が話しづらい理由は全て俺にあった。俺が恐れていたから。俺があいつのことを避けていたから。
「おい!信号無視の車!」
そう声が聞こえたとき、俺は声の方向を見た。ただ、もう遅かった。俺は猛スピードでやって来た車に強くぶつかり、宙へ舞う。
地面に強く打ち付けられ、俺の視界は真っ暗になった。
【風波瑞浪】
電車が発車する音、車が走る音、信号の音、人の話し声。
いろいろな音が聞こえてくる。そこに、少し目立つ音が聞こえた。
高い音で、2つの音を繰り返す。サイレンの音。救急車だろうか。少しずつ大きくなってくる。
私の真横を通り過ぎる。そして、目の前の信号に救急車は止まる。ちょっとした騒ぎになっている。
(何かあったのかな……)
私は帰り道なのもあって救急車の横を通った。横断歩道の白い線には血が点々とついている。
「せーのっ」
救急隊員たちが2人がかりで担架を乗せる。担架に乗せられていた人影に見覚えがあった。しかも、制服姿なのもあり、その制服も知っている。というより、私と同じ学校の制服。
「……!」
電車の中で話していた、水野くんだった。なんで担架に……
「水野くん……」
救急車の扉が閉まる。そのあとパトカーも来て、現場検証が始まるため規制が張られた
私は家に帰り、スマホを取った。LINEを開き、1番下の方にある水野くんのLINEを開いた。
最後のやりとりは
〈明日の放課後、学校近くの公園に来れる?〉
〈いいよ〉
〈ごめん〉
こんなやりとり、見てるだけで悲しくなってくる。
私は悲しさを押し切り、スマホに打ち込んだ。
〈今日はごめん。冷たくしちゃって〉
送ってから2時間、既読はつかない。やっぱり、あの人影は水野くんだったのだろうか。
翌日の放課後、私は水野くんの家に向かった。一回フラれたけど、なぜか諦めきれなかった。嫌いっていう気持ちがない。水野くんが心配だった。
私は前日の内にボブヘアにした。さらに、制服から持っていたレースのノースリーブの私服を着て水野くんの家へ。
私は玄関のドアの前に立ち、呼び鈴を押した。
「はい」
水野くんのお母さんが出てきた。
「水野くんがいる病院って、どこか分かりますか?」
私がそう言うと、水野くんのお母さんは優しい声で言った。
「世田谷中央病院よ。お見舞い?」
「はい。まぁ……」
お母さんは目線を合わせて言った。
「今はもう目を覚ましてるわ。きっと喜ぶと思うわよ」
「はい。ありがとうございます」
私は頭を下げ、水野くんの家から世田谷中央病院に歩いていった。
道中、あの時水野くんが搬送された横断歩道を渡った。信号もあったのに、どうしてここで……そんなに鈍くさかった訳でもないのに。
病院に着いて、私は水野くんのいる病室に向かった。水野くんの病室がある階に着くと、月島くんが歩いてきた。先越されちゃったのか。
「あれ、風波さん」
「月島くん来てたんだ」
月島くんは優しい笑顔で言った。みんな優しそうな顔するな。
「そうだよ。親友だからさ」
月島くんはそう言って帰っていった。親友、か。そういう深い関係持てていいな。
私は水野くんの病室の前に立った。
いや、待って。月島くんがいってすぐだと迷惑かもしれない。それだと、私を嫌いになっちゃう。そうなると、復縁もできないかも……?
けど、早く行かないと次の人が来ちゃうかもしれない。なるべく多く会いたい。
私はドアを開けて病室の中に入った。
「ん……」
水野くんがむくりと起き上がった。
「こんばんは……」
「あぁ……痛っ」
「起き上がらなくていいから!」
咄嗟に声が出た。
「あぁ……」
水野くんは頭に包帯を巻いて、腕も固定されていた。
「なんで風波さんが……?」
そうだ、本題をまだ話してなかった。
「あの……告白の件なんだけど……」
水野くんは不思議そうに首を傾げた。
「あの……復縁っていうか……まだ諦めきれないっていうか……」
水野くんはそれを聞くと、私の上半身を隅から隅まで見てくる。少し恥ずかしい。
「髪型……それに、服も……」
気付いてくれた。水野くんが月島くんに言っていた好きなタイプを意識した。
「……あの時は、信用してなかったんだ。女子を」
水野くんが昔の話しをゆっくり話してくれた。
簡単にまとめると、罰ゲームの告白を受け、それをクラス中に揶揄われてから信用できなくなった、とのことだった。
「今は……私のことは……」
水野くんは手を私の方に伸ばした。
「……もし、今からでも遅くないんだったら……」
水野くんから出たのは告白、と思われる言葉だった。
(告白された、と思っていいんだよね?)
私は伸ばしてきた水野くんの手を優しく握った。水野くんは今までの人たちよりも格別の"優しい"表情で笑った。その表情は、どこか懐かしさを覚えた。初めて見た気がしない。
(そっか……私、水野くんのこの表情に一目惚れしたんだ……)
私はそれからしばらくの間、水野くんの傍にずっといた。
それから2週間、修学旅行2日前に水野くんは退院。朝は途中で転んだりして怪我をしないかの監視役として一緒に登校するように、私のお母さんと、水野くんのお母さんに言われた。私は監視役としてっていう思いではかったけど。
「水野くん、よかったね」
「ん?何が」
水野くんは相変わらずクールだった。
「修学旅行前に退院できて」
「あぁ。そうだな」
クールだった。そんな口調だと、もっと惚れてきちゃう。
「あ、電車来たぞ」
8:26発、下高井戸行きの東急世田谷線がやってきた。2両編成の、いわゆる路面電車だ。
朝の時間帯は結構混んでいる。車内に入るときは少し窮屈。これも慣れたけど。
「風波さん、平気?」
水野くんが私を覆う感じで前に立っている。身長、こんなに違かったんだ。なんか身体が大きく見えて頼もしい。
「うん。大丈夫。って、そっちは?」
「俺は大丈夫だよ。骨折も治ってきてるから、あんまり動かさなければ」
男の人に支えられるって、こんなに安心するんだ。全く不安がない。
下高井戸から京王線の各駅停車に乗車。途中駅で何度か越されるが、武蔵野台には結局1番最初に着く。
「風波さん、修学旅行の部屋割りとかって決まった?」
水野くんが私に聞いてきた。
「部屋割りなんだけど、好きなペアと2人部屋だって」
「そうなんだ。風波さんはペア組んだのか?」
質問してくれると、なんか頼ってくれてる気がして嬉しい。
「組んでない。そろそろ組まないとなんだけど……」
私がそう言うと、水野くんは私の手を握って言った。
「じゃあ、俺と組まない?」
水野くんが言った。水野くんと同じ部屋で泊まれるなんて、夢のようだった。というか、これ以上のことはない。
私の返事はただ1つだった。
「うん、喜んで」
「よかった。よろしく、風波さん」
またこれで、私と水野くんの関係が深まった気がする。嬉しいな。もっと深めたい!
修学旅行の部屋も決まり、団体の新幹線も席が決まった。そんなのもちろん水野くんの隣。無理言ってそうしてもらった。
修学旅行は明後日出発。楽しみだな。
そして修学旅行当日。武蔵野台駅集合で、みんなで東京駅に向かう。電車にはみんなそれぞれで乗り、新宿まで向かう。5:13発各駅停車新宿行きで調布へ行き、調布で5:25発特急新宿行きで新宿まで。5:56発快速東京行きで東京へ。そして団体電車に乗り換える。
私は柊くんの隣でずっと一緒にいた。怪我も治ったばかりなのもあり、付き添いの役割もあった。
「……風波さん、別にこんな近くなくても……」
水野くんが少し恥ずかしがりながら言った。
「ダメ、かな……?」
私がそう言うと、水野くんは視線を逸らして言う。
「あ、いや……別に、いい……」
なんか水野くん、少しかわいい。恥ずかしがってて。
早朝の電車はかなり空いていた。座っている人もいて、いつもの電車とは大違い。
調布で特急新宿行きに乗り換え、新宿まで向かう。特急では水野くんと2人隣で座っていた。
「水野くん、京都でどこ行きたい?」
「ん……定番のところは行きたいな」
定番のところか。清水寺とかかな。結構定番そう。
「清水寺とかは?」
「いいね。ってか、風波さんが行きたいんだったらどこでもついてくよ」
その言葉が嬉しかった。ただ、少し気恥ずかしさもある。けど、恋ってこういうものなんだろうなと思う。
「風波さん?なんか顔赤いけど……」
水野くんに言われてやっと気付いた。ただ、顔赤いのって水野くんが原因なんだけどな。
すると、水野くんは私に近づいて囁いた。
「恋人なんだから、ああいう言葉かけてもいいだろ?」
「ひゃうっ!?」
私は水野くんの甘い囁き声にビックリした。周りは気付いてなかったけど、もう、水野くんってば……
団体新幹線の中。私は水野くんの隣でうとうとしてしまっていた。朝早くに水野くんの家の車に乗せてもらったのもあり、結構眠い。
「風波さん?眠いか?」
「あ、少しね……」
そう言うと、水野くんは私の肩を水野くんの方に寄せる。人って優しく包まれると気持ちよく寝られるって聞いたことがある。それ通りなのかな。
「いいよ、寝ても」
「けど……水野くんと話したい……」
「ホテルでいっぱい話そう?今はゆっくり寝ていいよ」
そう甘い声で言われると、寝ずにはいられなかった。自然に眠くなってきて、水野くんの腕の中で眠った。
【水野愁】
「けど……いっぱい話したい……」
そう言う風波さんはかわいかったが、眠そうなのを引き止めたくない。
「ホテルでいっぱい話そう?今はゆっくり寝ていいよ」
そう言うと、風波さんは俺の腕の中で眠った。ボブヘアの髪が俺の腕にかかっている。
寝ている風波さんはかわいくて、まるで小動物のようだった。小さく丸まっているようにみえて、気持ちよさそう。
「あれ?愁と風波さんって付き合ってたっけ」
「瑞浪ちゃん、寝顔かわい~っ」
横の席にいた柊と柊の彼女、葉山さんが言った。
「つい最近付き合ったんだ」
「そうなんだ~。お似合いだね~♡」
「そうだな。ま、俺たちには及ばないけど」
柊は葉山さんのことを撫でた。なるほど、カップルはそうするのか。
名古屋を出発して数分、風波さんは静かに起きた。俺の腕から風波さんの頭が離れる。
「ん……おはよう……」
風波さんはあくびをする。まだ眠そうだけど、もうそろそろ京都着くし、仕方ないな。
「おはよう。もうすぐ京都着くよ」
「うん……」
風波さんは少しずつ準備を始める。
京都に着くと、全員で今回泊まるホテルに向かう。京都駅から歩いて10分くらいのところだ。
俺と風波さんの部屋は3階。荷物を置いた人から先生に言って部屋ごとの行動に移る。
時間は10時~18時。18時までに京都駅に戻ってくる。京都市営地下鉄と京都のバスが乗り放題の切符を全員共通でもらい、俺と風波さんは京都駅に戻ってバス停を探した。
「清水寺ってどう行くんだろ?」
「バスありそうだけどな」
俺はバスの路線図を見に行く。
京都市営バスが清水寺の最寄りバス停、清水道に行っているそうだ。次の清水道に行くバスは10:15発。北大路バスターミナル行きのバスだ。
バスは平日にも関わらず、観光客でそれなりに混んでいた。
「水野くん、京都は初めて?」
風波さんが近くで言った。近くで言われると少し緊張する。
「あぁ、うん。か、風波さんは?」
「私も。2人とも初めてなんだね」
初めて、か。風波さんと初めてのことをする。そう考えると、少し嬉しい。
10:34、3分遅れて清水道に到着。清水道から清水寺に向かう坂道は人が多くいた。
坂道を上り、清水寺に着いた。かの有名な清水の舞台もあった。
「水野くん、飛び降りないでね?」
風波さんが笑って言った。
「飛び降りないって」
俺は風波さんの手をつないだ。風波さんは肩をくっつけてくる。俺に合わせてくれてかわいい。
坂を下っている最中、風波さんはずっと手をつないでいた。顔を少し赤くしながら手をつないでいたのがかわいすぎて、歩く速度を遅くしていた。
清水道から12:11発予定、京都市営バス202号九条車庫前行きで文化庁前・府庁前バス停へ向かう。
結局混雑の影響などもあって12:15、4分遅れで出発。といっても、バスは座席が全て埋まる程度。そこまで混んではいない。
「水野くん、ちょっと疲れたでしょ?」
「あぁ、坂上ったし」
俺がそう言うと、風波さんは少し胸を張って言った。
「今度は私が連れてく。楽しみにしててね」
「あぁ」
このバスに乗ったのも、風波さんが提案したからだ。何するんだろうか。
文化庁前・府庁前には12:38、5分遅れて到着した。風波さんに俺はついていく。
「ここだよ」
風波さんはカフェの前で立ち止まった。なるほど、ここで休憩しようというわけか。
俺は風波さんと一緒にカフェに入る。軽食がいくつかあり、俺と風波さんで4段重なったパンケーキを頼み、個人で俺はメロンフロート、風波さんはももスムージーを頼んだ。
「メロンフロートとパンケーキです」
店員さんが1つずつ置く。
「男女のお二人がももスムージーを頼みますと、こちらになります」
『え?』
そう言われて出てきたのは普通のももスムージーより一回り大きいももスムージー。しかも、ストローは2本、♡の形になって交差している。
「ご注文は以上ですかね」
「あ、はい……」
「ごゆっくりどうぞ」
まさかの展開だった。まさかももスムージーを頼むとこうなるなんて。ん、待てよ?
「風波さん、もしかして……」
「ち、違うもん……!」
否定の仕方がかわいい。おそらく嘘ではないだろう。
「とりあえず……飲む?」
「そうしようか……」
俺たちは同時に飲み始める。目の前にある風波さんの顔を意識してしまい、暑くなってきた。
いかにも「カップル」な状況をカフェで繰り広げたあと、金閣寺に向かうため、降りたバス停から北大路バスターミナル行きのバスに乗り、金閣寺道へ。
金閣寺道バス停は人でごった返していた。外国人観光客も多く、帰るのも一苦労だと思う。
金閣寺を見るために、入場の札を買う。風波さんと一緒に手をつないでいく。もう手をつなぐくらいは恥ずかしくなくなってくる。
「あれ金閣寺だよね」
「そうだよ。輝いてるな……」
金閣寺は太陽からの反射もあり、光り輝いていた。神々しく、つい見入ってしまう。
金閣寺には30分ほど滞在。13:47発の九条車庫前行きに乗車。次は風波さんが目的地を考えてくれている。
このバスはJR嵯峨野線円町駅、阪急・嵐電西院駅、JR嵯峨野線梅小路京都西駅、京都駅を経由するため、どっちにしろ便利だった。
「西ノ京円町かな……水野くん、西ノ京円町で降りる」
「分かった」
西ノ京円町バス停には13:58、2分遅れて到着。風波さんはマップを見ながら歩いていく。周囲の確認は俺がしている。
着いたのはJR円町駅。嵯峨野線に乗るのだろう。
「14:15発快速園部行きだって」
風波さんが時刻表を見て言う。一体どこに行くんだろうか。結構離れそうだが。
14:15、快速園部行きは出発。次は嵯峨嵐山だ。
14:19、すぐに到着。嵐山か。
「行こっ、あそこ渡りたいの」
風波さんは俺の手を引く。嵐山でわたりたいものだと……
しばらく歩き、川がみえてくる。やっぱりそうだ。
「渡月橋!ほら、渡ろっ」
俺と風波さんは渡月橋をゆっくり渡った。昔ながらの橋で、写真で見るより迫力があった。
渡り終えると、風波さんと俺は渡月橋の写真を1枚撮った。帰りの時間まで余裕があるため、俺たちは渡月橋をまたゆっくり渡った。
観光地なのに本数が少なかったが、俺たちは2人意見が揃ったため、京都まで戻った。
15:25発普通京都行きで二条へ。車内は結構混んでいた。観光客や高校生でごった返す。
二条で人と人との間を縫うように降りた。風波さんは髪が少し乱れたようで、手で直していた。
「うぅ……混んでた……」
「そうだね。どこか痛かったりしない?」
「大丈夫。ありがとう、水野くん」
風波さんと俺は二条駅からバスに乗って移動。
京都まで行って歩いてもよかったのだが、40円をケチった。15:52発京都市営バス北大路バスターミナル行きで京都駅前まで。京都駅前バス停の方が目的地に近かったりする。
16:15、京都駅前バス停に到着。5分ほど歩くと、高くそびえる塔が見えてくる。
「思ってたよりおっきい……」
風波さんも驚いている。
ここは京都タワー。1日目の最後はここで終わりにする。
高所恐怖症ではないため、風波さんも京都タワーに行っても怖かったりはない。
「京都が一望できる……あ、あれ行ったとこかな」
「どうだろうね。見えてもおかしくないし、そうかもね」
京都タワーには案外1番長く滞在した。50分の滞在を終え、17:08、京都タワーを出た。
京都タワーから徒歩10分、待ち合わせ場所の京都駅八条西口に着いた。まだ集合50分前だったが、もう終わりにした。
そのあと、夕食をみんなで食べて、ホテルに向かい、入浴を挟んで就寝時刻になった。22:30、電気を消すと、風波さんはすぐに寝息を立てて寝た。
(早いな……もう少し話したかったんだけど)
最初はただの復縁とばかり思っていたが、いつの間にか本気で好きになっていた。ホテルでたくさん話したかったんだが、仕方ない。
俺は22:45ごろに寝れた。
翌朝6:10、早めに目が覚めた。6:30までは毛布の中にいなければならないため、俺は布団の中で静かにいた。
俺の腹あたり、何か巻き付いているような違和感を感じる。蛇とかではあるまいし、なんだ……?
(あれ……俺腹巻きとか巻いたっけ……?)
俺は違和感を感じるところを触った。すると、少しヒンヤリした、ほんの少しの弾力が、言うなれば「ピチピチ」している感触があった。
「んっ……」
風波さんの声が出る。俺が触っていたそれは、風波さんの腕だった。顔も近い。頬に寝息がかかっている。
それに、横から抱き付いているせいで俺の腕に柔らかな感触が……
(胸……!?)
俺が横を向くと、風波さんの寝顔が目の前に。寝息が顔にかかり、かなりドキドキする。
「すー……すー……んーっ……」
風波さんのつぶらな瞳が少しずつ見えてくる。
「ん……もっとぉ……」
風波さんは目がほんの少ししか開いてないのにさらに抱き寄せる。寝ぼけてるのか?それとも、夢の中だと思ってるとか……
(いや待て。夢の中だと思ってるとすると、風波さん、夢の中で俺を抱いてるのか?いや、俺じゃない可能性だってある。いやでも……)
頭の中でぐるぐると巡っていく。
俺じゃないとすると、なんかもどかしいっていうか、悔しい。俺だとしても、結構ドキドキする。
「水野くん……もっと……抱いて……」
俺であることが確定した。夢の中で俺は何をしているんだ。
風波さんは俺を強く抱きしめる。横向きだと痛いだろうと思い、俺は風波さんの方に身体を向ける。
「んー……」
抱きしめたまま気持ちよさそうに眠っている。気まずくて、俺は辺りを見渡した。
(ん、この紙……)
俺は首だけを動かしてその紙を見る。
その紙には「7月8日(土)スケジュール」と書かれていた。
(今日のスケジュールか……)
一番上には「水野くんの行きたいところを聞く。奇数番目は水野くんに合わせる」と書かれていた。なるほど、俺の意見も聞いて決めてるわけだ。
2番目には「私の行きたい場所 ①銀閣寺②鹿さん!③伏見稲荷大社」。鹿さん!って書くのがかわいい。奈良公園かな。行きたいところも考えてたのか。何か書きかけだったけど、多分寝ちゃったんだろうな。
「んんっ……あ、おはよう……」
俺の顔から2センチあるかないか、という距離で風波さんが起きた。寝起きなんて口が臭いとかあると思うのだが、風波さんの口臭は全く気にならない。というか、匂いがしない。
「おはよ」
あまり声を出すと寝起きなことや、耳も近くのためビックリするだろうと思い、少し囁くような声で言った。
「ん……ひゃぅっ!?」
風波さんは俺から離れようとするが、手を俺に巻き付けているのを気付いていないのか、俺も一緒に引き寄せられる。
「あっ!」
風波さんが後ろ向きに倒れる。俺は上から羽交い締めにするような形になる。
「大丈夫か、風波さん」
「うん……うぅ……ありがと……」
俺は羽交い締めした状態のまま静止していた。風波さんの顔がかわいすぎる。恥ずかしがってて、手で顔を隠している。
「あの……水野くん……?」
「あっ!悪い!」
俺は風波さんから離れた。嫌われたりとかしてないよな……?
2日目は「修学旅行in京都&大阪&奈良」として、京都府、大阪府、奈良県内の全域を部屋別行動。時間は朝7時半~19時。11時間半で回ってくる。
「水野くんはどこ行きたい?」
スケジュール通りだな。ちゃんと考えていた。流れ的に最初は京都府内の方がいいな。
「平等院鳳凰堂とかかな」
「いいよ。行こっ」
風波さんはルンルン気分でスキップしながら京都駅へ。
京都駅まで10分歩き、そこから7:46発JR奈良線普通奈良行きで宇治へ。
23分ほど乗り、8:09に宇治駅に到着。宇治駅から10分ほど歩き、平等院鳳凰堂に着く。
風波さんは平等院鳳凰堂を見るなり財布から10円玉を取り出した。
「似てる……!」
「そりゃそうだ。それ平等院鳳凰堂だし」
風波さんは「そっか……!」と言って、10円玉をしまった。天然なとこもかわいい。
平等院鳳凰堂に20分ほど滞在。その後、風波さんが紙を取り出して言う。
「次は銀閣寺行こ!」
「あぁ。行こうか」
俺たちは銀閣寺へ向かう。かなり遠いが、バスと電車を駆使していく。
8:52発JR奈良線普通京都行きで六地蔵へ。風波さんは俺から少し間を空けて座っている。
「あの、なんで離れてるの?」
「だ、だって……ホテルで、さ……」
俺は風波さんの肩を抱き、耳元で言う。
「寂しいな、風波さん遠くて」
そう言うと、風波さんは俯いて黙り込んだ。何かあったかな。
電車は8:59、六地蔵に到着。9:07発京都市営地下鉄東西線太秦天神川行きに乗り換える。
「風波さん、行くよ──」
風波さんは人の少ない場所の壁に俺を押し付け、俺に強くキスした。
「んぐっ!?」
俺は拘束されたようで、身動きは取れなかった。
口を離すと、風波さんは今までと違う口調で言った。
「寂しくさせないから」
そう言ってまたキスをする。
もしかして、一回スイッチ入ると肉食系なのかな。
「風波さん、急にどうしたの」
「あっ!」
風波さんは俺の胸に頭を当てて唸った。
「うーーーー……」
多分知られなくなかった一面だったんだろう。
「私、たまに暴走しちゃうの……しゅ……じゃなくて、水野くんに甘い声で話しかけられると尚更……」
風波さんは顔を真っ赤にして言う。なるほど、愛が暴走しちゃうのか。
「あのさ、さっき、したの名前言いかけたよな」
「あ、ごめん……」
「いや、したの名前で呼んでくれていいよ」
風波さんは俺の目を見て言う。まだ顔が赤い。
「しゅ、愁くん……」
「なに、瑞浪」
風波さん……いや、瑞浪は「はうっ」とまた俯いた。よっぽど恥ずかしいんだな。
9:07発にギリギリ間に合い、俺たちは隅っこに座る。瑞浪は落ち着いてきたのか、太ももが俺にくっつくくらいの距離になった。
「瑞浪、もう我慢しなくていいからね」
「我慢しないと、ホントに甘えすぎちゃうよ?」
「それがいい。甘えてくれないと不安」
俺がそう言うと、瑞浪は俺の肩に頭を乗せた。疲れたのか、醍醐駅を出発した辺りで寝てしまった。三条京阪までは22分。まだ時間はかかる。
三条京阪には9:29。このあと9:39発京都市営バス岩倉操車場前行きで銀閣寺道まで向かう。
バスは京都駅からの人でほぼ満員に近かった。三条京阪前から乗れた人は俺たち含め4人だけ。ギュウギュウ詰めの状態で出発。
9:57、銀閣寺に到着。昨日行った金閣寺とは異なり、和の感じが際立っている。
「なんかこういう建物って落ち着くよね」
「そうだな。和風の建物ってなんで落ち着くかな」
銀閣寺は心が和んでくる。京都はこういう和の建物がたくさんあって、歴史を学ぶこともできる。最高の場所だ。
銀閣寺からはわざと俺があのスケジュールと被せた。近さの関係で、伏見稲荷大社を先にした。
10:44発京都市営バス錦林車庫前行きで出町柳駅前バス停へ。10:52に到着し、10:59発京阪鴨東線特急淀屋橋行きで三条、三条11:04発京阪本線準急淀屋橋行きで伏見稲荷へ向かう。
伏見稲荷駅は急行までが止まる駅。昼間は急行がいないため、準急が最速になる。とはいっても、萱島までは各駅停車。結局各駅停車に乗っているのと何ら変わらない。
伏見稲荷大社までは10分くらい歩く。多分、瑞浪が見たかったのは……
「すごい、いっぱいある!」
目を輝かせていたのは、やはり赤い鳥居。
今居るのは「千本鳥居」と呼ばれる場所。一見──
「千本鳥居って、1000本くらい鳥居あるのかな?」
と思うだろう。瑞浪はわくわくした声で言っている。
「実は、1000本もないと言われてるんだ」
「そうなの?じゃあなんで千本鳥居?」
俺はここに来るまでに調べたことを言う。
「数え切れないほどたくさんある、という意味で千本鳥居と付けられたらしいよ。実際は800本前後らしい」
本来は鳥居の数は「基」と数えるのだが、細かいことはいい。
伏見稲荷大社にある鳥居を全て通るまでに50分もかけた。すると、瑞浪は悩んだ顔をした。
「いっぱいあったけど、一体何本あるんだろう……」
俺はまたもや調べたことを言う。
「くぐれるくらいの大きい鳥居とか、逆に片手くらいの小さい鳥居もあるらしいんだけど、伏見稲荷大社の方も何本あるかは分からないらしいよ。ただ、2010年に数えた人がいるらしくて、その時は3381本あったらしい。ただ、小さい鳥居は入れてないらしいけどね」
俺がそう言うと、瑞浪はピョンピョン跳びはねて「すごいすごい!」と褒めてくれた。
「なんでそんな知ってるの?」
「調べてきたんだ、ホテルで」
瑞浪は「へぇ」と色んなことに関心をもっていた。
伏見稲荷大社を出て、次はあの瑞浪が楽しみにしていた場所へ。
「次は鹿さんに会いに行くよ」
「鹿さん?どこだそれ」
俺は上手く演技をして誤魔化した。
「奈良公園だよ!ほら、いこっ!」
瑞浪は近い龍谷大前深草駅に俺を引っ張っていった。
すると、瑞浪のお腹が「ぐぅ」っと音を鳴らした。あ、お腹空いたのか。
「お腹空いた?」
「う、うん……」
だったら、と思い、俺はすぐにルートを調べた。今回の自由行動エリアを限りなく使おう。
「さぁ、行くよ」
「何食べるの?」
「お楽しみだよ」
俺は京阪本線で引き続き淀屋橋方面へ。関西の鉄道はあまり分からないため、とりあえず大阪駅へ向かう。
12:31発準急淀屋橋行きで丹波橋へ行き、12:40発特急淀屋橋行きに乗り換える。
13:13、京橋で降り、JR大阪環状線に乗り換える。13:20発大阪環状線、大和路線直通加茂行きで大阪へ。
13:26、大阪に到着。少し遅いが、昼ご飯を食べる。
「ここにしよう」
「ここ……!」
大阪といえばたこ焼き、なんてイメージがあった。俺は本場のたこ焼きのためにここまで来た。ここまででも560円。関西は私鉄を使った方が安く移動できる。
たこ焼きは瑞浪が好きだったらしく、2つ頼んで合計16個。食べれるのかと思ったが、意外とペロリと食べた。
(すごいな、瑞浪……)
俺は瑞浪の食欲に驚かされながらもたこ焼きを食べる。
14:10、俺たちはたこ焼き屋さんをあとにした。少し大阪駅を見て、14:29発、JR大阪環状線外回り、関空快速天王寺行きに乗車。紀州路快速京橋行きも連結している。
車内は空いたまま14:45、鶴橋に到着。このあと、近鉄奈良線快速急行近鉄奈良行きで近鉄奈良まで向かう。
「鹿さん、元気かな」
「せんべいあげるんだろ?」
「うん。食べてくれるかな」
すごくわくわくしてる。かわいらしい。
近鉄奈良には15:20。ここから20分ほど歩き、奈良公園に向かう。
奈良公園に行くと、中の方に鹿がたくさんいた。瑞浪はすぐに鹿せんべいを買ってきて、俺にも1枚渡す。
「はいっ、2人であげよ」
「あぁ、ありがとな」
俺と瑞浪は2人で鹿せんべいをあげる。鹿がよってきて、鹿せんべいを俺の方から食べる。瑞浪のも食べてくれて、瑞浪は嬉しそう。
「はわぁ……!かわいい!」
「ふふっ、よかったな」
「うん!わっ、また来た!」
瑞浪は鹿にすっかり好かれていた。ただ、鹿と戯れている瑞浪の方がかわいく感じる。まったく、
近鉄奈良から俺たちは16:36発近鉄奈良線急行大阪難波行きで鶴橋へ。鶴橋からは17:16発JR大阪環状線内回りで大阪へ向かった。
京都だったら近鉄奈良から2駅、大和西大寺で近鉄京都線に乗り換えれば早く着く。しかも、16:24発は京都市営地下鉄烏丸線直通の国際会館行き。京都まで1本だ。
それでも大阪経由にした理由は、ただ単にお互いに興味があった電車で、してみたいことが合ったのだ。
17:45発JR東海道本線(京都線)、新快速32号草津行き。西の最速種別だ。
途中新大阪、高槻、京都にしか止まらない。京都には18:14に到着する。新快速は17:45に時間通り出発。続けて新大阪に止まり、本気を出す。
130km/hの高速走行は、俺も瑞浪も釘付けだった。
「おぉ……!速いな」
「うん……!さすが、新快速……!」
しかし、快適さも合って眠くなってくる。
俺と瑞浪は睡魔に襲われて高槻到着前に寝てしまった。
起きたのは18:30過ぎ。次の停車駅は……
「瑞浪、おきて!」
瑞浪は寝ぼけながらも起きる。事件が発生した。
京都には18:14に到着する。18:16に出発するため、もう今は……
「まもなく、南草津です」
もう南草津だ。俺たちは急いで降りる支度をする。
南草津で一旦改札を出て、とりあえず京都方面を調べる。
すると、瑞浪がある電車をあげた。
「18:39発新快速29号網干行き……」
俺はその電車を調べる。その電車が京都駅に到着する時間は……
『18:57!』
集合時刻3分前に京都に到着する。もしこれが快速だったら、所要時間は21分ほど。到着は19:00。電車によっては過ぎていたかもしれない。
「よかったぁ……」
「ホントだな……」
俺たちはホッとして新快速29号網干行きが来るホームへ。
18:39、時刻通り出発。途中、石山、大津、山科、京都に停車する。対する各駅に停車する快速は、瀬田、石山、膳所、大津、山科、京都。2駅少ない。
18:57、電車は京都に到着する。
京都駅の八条西口には遅刻ギリギリ、18:59に着いた。走ったが、新快速がなければ間に合わなかった。
その日の夜、俺は瑞浪と同じ毛布で、お互い抱き付いて寝ることにした。22:29だった。
「瑞浪、今京都出てった新快速がいるんだけど、どこ行きだと思う?当てれたら今日抱き付いたまま寝てあげるよ」
瑞浪ちゃんは本気で考え始めた。俺がそう言っただけで本気出すのか。
「ねぇ、後続電車の行き先当てれたらキスしてくれる?」
「新快速の行き先当てれたら、いいよ」
俺がそう言うと、瑞浪は考察を言い始めた。
「22時台の新快速上下6本ある。でも、就寝が22:30で、22:31発は調べた。新快速米原行きだった。ってことは大阪方面。それで、播州赤穂行きはあり得ない。到着が1時台になる。それで網干行き。22時台半ばに網干行きって出るかな……でも、姫路から先の各駅は先発の快速が補ってると思う。だから違う。それで、大阪行きは休日だけあるけど深夜だけ、西明石行きは新快速の終電。ってことは……姫路行き!それで、後続は普通電車の宝塚行きじゃない?」
長い説明を聞いた俺も焦っていた。しかも、後続電車がなんで当てれるんだ。快速の可能性だってあるのに。
「なんで分かったんだ……後続が……」
「京都線から宝塚線直通の終電なんだよ」
マジかよ……確かに言われてみればそんな時間だ。
「分かった。言い出しっぺは俺だからな」
俺が抱き寄せると、瑞浪の方から俺にキスしてきた。こっちも負けじとキスする。
そして、今日は同じ毛布で、抱き付いたまま寝ることになった。抱き枕にされるようだ。
3日目は昼過ぎには団体の新幹線が出発するため、8:00から12:30までの自由行動だった。とはいえ、京都はもう周り尽くしたため、俺たちは京都駅まで移動してJR京都線で大阪へ。
8:14発新快速姫路行きに乗車。大阪に行って何をするかはあとで決める。とりあえず大阪まで向かった。
8:42に大阪に到着。30分かからないで到着した。1本前の8:07発神戸線直通、快速加古川行きは8:50に到着する。1つ種別が落ちるだけで所要時間は15分も増える。
停車駅も、新快速は高槻、新大阪、大阪。
快速は西大路、桂川、向日町、長岡京、山崎、島本、高槻、茨木、新大阪、大阪に停車する。
大阪に着いて、瑞浪が行きたいところがあるらしく、俺は瑞浪に計画を任せた。
9:09発関空快速関西空港行きに乗車した。関空快速に乗って一体どこまで行くんだろうか。
「どこ行くんだ?」
「関空まで。ほら、ラピート見たくない?」
それ目的か。まぁ、大阪なんて来る機会ないし、いいか。
関空快速は福島、西九条、弁天町、大正、新今宮、天王寺、堺市、三国ヶ丘、鳳、和泉府中、東岸和田、熊取、日根野に停車。日根野で後ろの紀州路快速和歌山行きを切り離し、りんくうタウン、関西空港に停車する。10:18だった。
「関空にラピート目的で来る人なんているのかね」
「まぁね。けど愁くんだって楽しみでしょ?」
「実際そうだからいいけど」
関空の南海電鉄のホームに向かい、10:36発、ラピートβ74号難波行きを撮影。
「かっこいいなぁ、ラピート」
仮面のような、先の尖った車体は確かにかっこいい。瑞浪がラピートの写真を何枚か撮っている最中に、俺はその後ろからラピートと瑞浪のツーショットを撮った。
「ん?」
バレた。
「えへへ~」
瑞浪はこっちにピースする。俺はもう1枚撮った。
10:36発ラピートβ74号難波行きを見送り、10:39発空港急行難波行きに乗車した。
空港急行は11:21に新今宮に到着。新今宮から11:28発大阪環状線外回り関空快速天王寺行きで大阪へ。急いで11:35発新快速野洲行きで京都へ。
12:14、京都に到着。集合時間に間に合う最後の電車だった。
団体の新幹線の車内で昼ご飯になった。昼ご飯は旅行会社が用意してくれたもので、結構おいしかった。
15時半頃に新幹線は東京に到着。修学旅行自体は東京駅で終了。解散になった。
といっても、ほとんど全員が15:50発青梅特快青梅行きで新宿へ行く。新宿からは別々の電車になることが多い。ただ、大半は16:09発特急高尾山口行きだろう。
しかし、俺と瑞浪は違かった。俺と瑞浪は15:45発丸ノ内線方南町行きで赤坂見附へ行き、赤坂見附から15:57発銀座線渋谷行きで渋谷へ向かう。
「地下鉄って久しぶりだな~」
「昨日乗っただろ、京都市営地下鉄東西線」
俺がそう言うと、ドアのところに立っていた俺の口を塞ぐようにキスしてきた。
「うるさい口はこれかー?」
こうなるともう謝るしかない。
「ごめんなさい……」
「うむ!」
電車の中でキスされちゃ恥ずかしいし。しかも東京メトロの中だ。人もまぁ少なくはない。
赤坂見附には15:54。次は15:57発銀座線渋谷行き。後ろ半分の号車は同じホームの乗り換えで便利。3分の乗り換えでも余裕がある。
渋谷には16:05。改札を出てバス乗り場へ。
「なんか最近バス使ってばっかりだね」
「言われてみればそうだね。京都もだったしな」
今回乗るバスは東急バス渋22系統。道玄坂上経由の用賀駅行きだ。これを使うと渋谷から上町まで安く移動できる。220円かかる。これでも、東京メトロの東京~渋谷は210円なのだが。
「今日は座れるかな?」
「だろうな。ほら、後ろの2人席空いてるぞ」
俺と瑞浪は2人席に座った。
高校生2人が2人席に座るのは狭かった太ももがあたっているのを感じる。瑞浪はスカートで素股が触れているが、俺はズボンのため直接は感じない。多分ピチピチの弾力がある肌なんだろうなぁ。あ、すべすべしてそう。
「んー?愁くん、どうかした?」
瑞浪は俺のことを覗き込んだ。ヤバい、バレたか……?
「いや、なんでもない……」
「なんでよー。太もも見てたじゃーん」
バレてるじゃねぇか。
「いや、あの……」
「うん」
「感触、感じられないなーって……さ」
俺がそう言うと、瑞浪は俺の手を掴み、瑞浪の太ももに俺の手を当てた。
「はい、どーぞ」
予想通り、すべすべしてる。しかも、なんか柔らかいっていうか、気持ちいい。地下鉄の中だったっけ、そこでもズボンの上からだったし、なんか気持ちいい。
「どう?」
「ん……気持ちいい」
【風波瑞浪】
愁くんが私の太ももを触りたそうにしていた。一見、おじさんとかだったらキモいけど、愁くんだったらそんな気は微塵も無い。むしろ触っていい。
私は愁くんの手を掴んで私の太ももに触らせた。
「はい、どーぞ」
愁くんは夢中で私の太ももを撫でまわす。太ももを撫でまわされてるせいで、なんか変な気持ちになってくる。なにこれ……ふわふわしちゃう……
「どう?」
私は変な気持ちを紛らわすために聞いた。
「ん……気持ちいい」
愁くんは太ももの隅まで触ってくる。
「やぁっ……あっ……」
声が出てくる。ヤバい、変な気持ち……ふわふわしてる……
「あっ、ごめん……」
愁くんは触るのをやめる。
「だ、大丈夫……」
私は息を切らしながら言った。
「なんか、ふわふわした……」
すると、愁くんは小声で言った。
「もしかして瑞浪さ、自分で触ったりとかしたことない?その、胸とかさ」
愁くんから言われて暑くなる。
「ないよっ!」
私は怒るように言う。自分の恥ずかしいとこ触るなんて……したことないよぉ……
上町バス停に着くと、私は愁くんと別れて家に帰った。自分で胸を触る……とか、するものなのかな。
私は家に帰ってスマホで調べた。部屋に入って鍵を閉める。なんとなく外で調べるのは恥ずかしかった。
「女子 胸 自分で触る……っと」
調べると、「オナニー」なんてものが出てきた。
(なんだろ、それ……)
私は検索ボックスに「女子 オナニー 動画」と入れる。すると、自分の膣をいじったり、乳首をいじったりしている動画がたくさん出てくる。
「なっ、ななっ……な……」
私はスマホを閉じた。
女の子って、普通こんなことするの……!?
私はなんか恥ずかしくなって、友達の胡桃ちゃんに連絡した。
《もしもし?》
「く、胡桃ちゃん……その、恥ずかしいこと聞くんだけどさ……」
《うん?》
私は勇気を持って言った。
「オナニー、って、普通女の子するの……?」
すると、胡桃ちゃんは言った。
《高校生だし、することはあるんじゃない?私も“しゅうくん”と会えないときはするし》
しゅうくん?もしかして、愁くん、胡桃ちゃんと浮気とかなんかしてたのかな。そう考えると……私って胡桃ちゃんと会えないときの穴埋め?
《あっ、月島くんだよ?水野くんじゃないからね?》
「えっ、あっ、そうだよね……」
ビックリした……そっか、月島くんも柊くんか。
「ありがとう……」
《うん。じゃね》
胡桃ちゃんもしてるんだな、と思いながら電話を切った。
(ってか、こんなこと聞いてきたってことは、愁くん、胸とか気にするってことだよね?)
↑風波瑞浪の勘違いである。
(……胸に巻いてるさらし、外して行こっかな……)
↑勘違いから恥を捨てた風波瑞浪である。
翌朝、私はさらしをせずに、服を脱いで
なんか慣れなくて違和感があったけど、愁くんのため。私は家を出て上町駅の前まで歩いた。
待つこと5分、愁くんがトコトコ歩いてきた。愁くんは私に手を振ると、動きを止めて首の少し下に視線を向けた。あ。
「おはよ、愁くん」
「おはよう、瑞浪……?」
チラチラ見てるの気付いてるんだけどな。気付いてないとでも思ってるのかな。
「なに?胸がどうかした?」
「いや、あの……変わった?」
「さらし外したからね。さらし巻いてたから小さく見えただけだよ」
愁くんは私がそう言うと、手をつないだ。もういつも通りに戻るんだろう。
「どっちでもかわいい」
愁くんはさりげなくそう言った。愁くん、さりげなく言うの得意なんだよね。ちょっとズルいところでもある。それもいいけどね。
上町7:21発下高井戸行きに乗車。車内はいつも通り混んでいる。ただ、今日はいつにも増して混んでいる気がした。
「なんか今日の電車いつもより混んでない?」
「田園都市線が止まってるからかな」
田園都市線が止まると、確かに渋谷への最速は世田谷線で下高井戸まで行って京王線と井の頭線を乗り継ぐルートだ。
「だからか……きゃっ」
私は電車の揺れで愁くんに突っ込んだ。ぎゅうぎゅう詰めでもまだこのくらいの隙間はあった。
「大丈夫?」
「うん……ありがとう」
愁くんは私を抱き寄せてくれる。離れないようにかな。優しい。
山下を7:25に出発。また人が乗ってきて、車内はスマホも出せないくらいの混雑になった。
「うぐ……」
結構苦しい。四方八方から押されて、押し合い状態。
「瑞浪、あのさ、忘れてない?」
愁くんは恥ずかしそうに言った。
「なにを?」
「あの……ブラは……」
私は自分の胸元を見る。
すると、Yシャツから透けた私の胸が見えた。下着は着けてなかった。
確かに、すぐに家を出たから付けてない。いつもはさらしだったから付け忘れちゃったんだ……
「……忘れた……」
「今戻ると遅刻だけど、どうする?」
もうそんなの一択しかなかった。
「行くしかない。学校まで」
ただ、私の胸は今愁くんに当たってつぶれている。このままいれば、蒸れてさらに透けるかも。
「愁くん……」
「……」
お互いに恥ずかしくて、言葉にならなかった。
7:29、下高井戸到着前に停止。下高井戸駅の急病人救護らしい。
車内は松原で乗客が追加され、もうぎゅうぎゅうだった。しかみ、運が悪いことにとても蒸し暑い。エアコンはついているが、窓も大きいため温かくなりやすい。
車内は蒸し風呂状態。そんな中にずっといるのだから、Yシャツはもう限界が近い。
「動かないね」
「遅刻か……?」
2人で話していると、停止から15分、運転再開した。到着は15分遅れた7:46だった。
あ俺と瑞浪はとりあえず遅延証明書を発行してもらった。15分遅れとしてだ。
京王は7:51発各駅停車京王八王子行き。
「愁くん、あの……胸……」
少し乳首が透けている。このままじゃ流石に……男の人の視線も感じる。
「俺にくっついてて。駅に着いてからどうにかしよう」
私は愁くんに後ろから抱き付いた。さっきより胸がつぶれる。「むにゅぅ」と音が聞こえるくらいだった。
(愁くんは嬉しいんだろうな……)
少し幸せだった。
武蔵野台には8:23。少し急ぐだけで遅刻にはならない。
「待って!その……胸は……」
愁くんは自分が羽織っていた薄いジャケットを私に渡した。
「今日俺らのクラス体育ないだろ。それ着とけ」
愁くんはジャケットを渡すと手をつないで学校まで早歩きで行った。
愁くんの匂いがする。ずっと来てたジャケット……
帰りの時間になった。私は愁くんと一緒に帰ることにした。18:17発各駅停車新宿行きでつつじヶ丘まで行く。帰りの時間帯は武蔵野台を基準としたとき、乗る電車の1本前の電車で下高井戸に着く。
18:17発の1本前は18:07発各駅停車新宿行き。18:17発各駅停車新宿行きでつつじヶ丘に行き、追い抜かされる急行新宿行きに乗り換え、桜上水へ。桜上水で乗り換えるのは武蔵野台18:07発各駅停車新宿行き。1本前の電車になる。
「瑞浪、どうだった?今日は」
「ドキドキしたよ……男子に凄いみられるもん」
「Yシャツはもっと透けちゃったかな。ほら、蒸れるだろうし」
私はジャケットを脱いだ。Yシャツは湿っていて、乳首はくっきり見えていた。
「ひゃっ」
反射的に愁くんに抱き付いた。愁くんは私のことを抱きしめる。他の人からの視線なんてもう気にしてなかった。
カフェについてはフィクションです。近くにカフェはあるのですが、それとは別、という設定です。
今回の前編は楽しんでいる、穏やかな光景をイメージしています。
次回は、風波瑞浪の裏側を知れますよ。結構先になるとは思いますが、ゆっくり待っていてくださいね。