SOS火星!!甦れ宇宙戦艦アンドロメダ
「火星に?」
「はい、観測レーダーが捉えました」
「ガミラスか……?」
西暦2199年、地球。ガミラスによる遊星爆弾の影響によって赤く焼け爛れた地上を捨て逃げ込んだ地下都市に存在する地球防衛軍司令部にて2人の男がそんな言葉を交わす。
1人は紙を片手に報告に来た職員、そしてもう1人は地球防衛軍連合艦隊司令長官の土方竜である。
遠き宇宙の彼方より地球へと手を差し伸べた文明、イスカンダル。彼の国から提供された技術によって建造された地球初の恒星間航行船、宇宙戦艦ヤマト。彼女は地球に僅かに残っていた戦士達を乗せてイスカンダルへと
そして空母の撃沈、人類初となるワープ、波動砲による浮遊大陸の破壊などを経て、遂に先日地球へと遊星爆弾を落とし続けこの様な星にした元凶、冥王星基地を攻略したとの報告が来たのだ。
この報告に地球市民は歓喜に震えた。これでもう二度と隕石が落下した際に起こる揺れを感じずに済むのである。
当然、防衛軍司令部も喜んだ。これにより僅かながら人類の寿命は伸びたのだから。じわりじわりと放射能が侵食してきている状況は変わらないが、暴動が頻発し、毎日の様に自殺者が出ていた地下都市には久しぶりに陽の光が射したのだ。
そんな矢先───
「火星に謎のワープアウト反応、か……」
火星宙域にヤマトではないワープアウト反応が観測された。
現状、地球に居る船でワープ可能な物は無い。自ずと候補は絞られる。
「もしもガミラスの残党ならば一大事です。ヤマトを呼び戻しますか?」
「無駄だ。既にヘリオポーズの外に居る。今の我々に文を届ける手段はない」
ヘリオポーズ。太陽風と外宇宙の星間物質が混ざり合う宙域の事で、そこを超えると現在の技術では通信が不可能になる。そして先日、ヤマトは地球との最後の通信を済ませた所だった。
「……反応は一つか?」
「は、はい。反応はその後火星へと降りていきました」
その未確認物体はどうやらワープした後火星へと降りていったという。この状況で惑星に降下したとなると前線基地を作っている可能性がある。
反応が一つだというのが気になるが、あくまでも感知出来たのが一つだというだけだ。敵はこちらよりも圧倒的に高度な技術を持つ。未知のステルス艦があってもおかしくはない。
そして、基地が完成されてしまっては現在の地球の戦力では太刀打ち出来ない。
「選択肢は無い、か」
故に、彼は決断した。
「……沖田、借りるぞ」
───────
M-21741式宇宙戦艦225号『えいゆう』。地球の英雄にして現在はヤマトの艦長として戦っている沖田十三が乗ったその宇宙戦艦は、いつしか『沖田艦』という名称で呼ばれるようになった。
地球防衛軍の最後の艦隊行動である冥王星会戦。地球最後の宇宙戦艦としてミサイル駆逐艦を率いて行ったその戦いは、しかし地球艦隊の壊滅という結果のみを残して終わることとなった。
唯一生き残った彼女自身も無数の火砲をその身に受け、まともに戦闘能力を取り戻したのはほんの一日前のことである。
そんな沖田艦が今、名将土方竜を乗せて地球を飛び立った。目標は火星の未確認物体である。
「現在地球より2億5000万キロ、まもなく火星に到達します」
「レーダー、依然反応ありません」
「……静か、ですな」
「……」
沈黙したまま見えてきた紅い星を見つめる土方に、隣に座る男が話しかける。一見すると飄々とした印象を受ける彼の名は山南修。いつもこの艦の艦長を務める男である。今回は土方が艦長として乗っている為彼は副艦長であった。
凪いだ海、それがここの印象だ。ガミラスが居るとは到底思えない程に何の反応も攻撃も無い、静かな空間。
そしてそれは、火星へと降下しても変わらなかった。
「この辺りの筈なのですが……」
「人っ子一人居ませんな」
「……総員、警戒を怠るな」
未確認物体の降下予想地点、その上空を飛行する。しかし、地表に見えるのはかつての都市の残骸ばかり。
ここはイスカンダルからの使者が墜落、死亡した星でもある。もしかすれば我々は化かされたのかもしれない……兵士の頭にはそんな考えまで浮かんでくる。
だがしかし、任務は任務だ。彼らは高度を落とし、しばらくの間飛び続ける。
「───ん?」
と、そこで窓から地表を眺めていた山南が何かに気付く。
それは、到底人の目では気付く事が出来ない筈の物。しかし、何かに導かれるかのように彼はそれを知覚した。尤もすぐに見失ってしまったが。
「どうした」
「地表に誰か倒れて……気のせい、ですかな?」
「観測員、どうだ」
「す、少し待って下さい……」
観測員が双眼鏡を手に地表を見渡す。艦底部のカメラも同時に起動し、地表を映し出す。
そして当然、第一発見者たる山南も双眼鏡を覗き込み───
「───っ!? に、2時の方向、やはり地表に誰か……少女が倒れてます!!」
「え───ほ、本当だ……本当です!! 確かに人が見えます!」
「直ちに100式を発進させろ!」
二人の驚愕の声を聞いた土方の対応は迅速だった。
ガミラスによる攻撃で既に草一つ生えない地である火星、そこに人がいる。かつての住人は全員地球へと避難したか地に還っている為、可能性があるとすれば───異星人だ。
彼の指示を受け、艦底部のハッチが開き100式探査艇が出撃する。機は全速力で指示された座標へと向かい、五分程で戻ってきた。
「───で、彼女がその少女か」
「はい。倒れていた時は何も身に着けていませんでした」
「ふむ……」
医務室。救助された少女を見る為、土方と山南はそこへ来ていた。
ガラス越しに少女を見る。簡単な検査を終え、驚くべきことに特に身体に異常無しと判断された彼女は現在、念の為にと隔離室のベッドに病院服を着せられて寝かされていた。
「中々にへ……特徴的な髪をしていますなあ」
「検査の結果、あれは地毛のようです」
「地毛!?」
軍医の答えに山南は驚愕する。
特徴的な彼女の髪。全体は青みがかった灰色をしているが正面中央部に伸びる部分だけは限りなく白に近い灰色をしており、10人に聞けば9人は染めていると答えるであろう配色だ。
それ以外の身体は至って普通の少女である。恐らく年齢は10代後半だろうか、白磁の様に美しい肌、整った顔立ち、絹の如き滑らかな長い髪。とてもではないがあの
「……やはり、宇宙人ですかな」
「……分からん。確定しているのは、あの星はあのような少女が呑気に寝ていられる環境ではないという事だ。人間ならば、な」
彼女は何者なのか。検査では人間と出ているが、状況証拠がそれを否定している。となると、真実を知る事が出来るのは彼女が目覚めてからになりそうだった。
今は地球への帰還中だ。いつ敵が出てくるかも分からない状況で司令と艦長が揃って艦橋に不在というのは不味い。
そうして視線を彼女から離し、戻ろうと───
「……! 目覚めました!!」
───した時、軍医の声が彼らを呼び止める。二人が振り向くと、そこにはベッドから身体を起こす少女の姿があった。
彼女は暫くの間呆然と佇み、続いて自分の両手をじっと見つめる。次に首をゆっくりと動かして室内を見回し───窓から見つめる山南と目が合った。瞬間、彼女の動きがピタリと止まり、瞬き一つしないその赤紫色の瞳の中にやや困惑気味の彼の顔が映り続ける。
そんな状態が数十秒間続き、流石にこちらから何か動こうかと彼らが思い始めた頃、ようやく彼女が動き出す。
どこかぎこちなさを感じる動きでベッドから降り、ふらつきつつ彼の前に立つ。そして、真顔のまま何かを呟き始めた。
『……ません』
「……ん?」
『申し訳……ございません……』
スピーカー越しに聞こえてくるその声、それはまさしく謝罪だった。彼らが依然困惑する中、少女は壊れた機械の様に同じ言葉を繰り返す。
『申し訳ございません……申し訳ございません……申し訳ございません……』
感情の抜け落ちた顔でひたすらに謝罪を繰り返す謎の少女。
いたたまれず声をかけようとした、その時だった。
『山南司令……
爆弾発言だった。ピシリ、と山南は硬直し、残りの二人は彼に対して疑惑の目を向ける。
「山南……」
「副艦長……?」
「ちょ、ちょっと待って下さい! 自分は何もしていません! そもそも彼女が誰なのかすら知らなかったのに……そんな目を向けないで下さい!!」
少女は明らかに山南の事を知っている。その上でまるで人形の様に硬い表情で謝罪を繰り返している。宇宙人かどうかはさておき、ここから導き出される結論は───虐待。突然湧いてくる虐待疑惑。これまで至って優良な宇宙戦士という評価を受けてきた彼にまさかの疑惑が降ってきた。
そもそも彼は結婚すらしていない。隠し子、虐待、児童遺棄。軍籍剥奪の上司法にバトンタッチしなければならない程の罪である。彼もそれは分かっているので必死に否定するが、この状況では滑稽な物にしか映らない。
だが次の瞬間、それは新たな衝撃に掻き消される事になる。
『───ッ』
「……?」
少女の瞳に土方の顔が反射する。直後、元より無表情であった顔から更に感情が抜け落ち、目から光が消える。そのままふらふらとベッドに戻り、使われる事のなかった点滴用の針を───
「───止めろッ!!!」
───乱暴に入ってきた山南に止められる。彼女の首元には、突き刺さる直前の針があった。
「何をしようとしているんだ!! 死ぬ気か!!?」
「……私にはもう生きている価値なんてありません。貴方を殺してしまい、
「何を言ってるんだ……地球を?」
「申し訳ありません……私は貴方を……山南司令も……そして地球も……守ることが出来なかった……」
彼らにとっては余りにも意味不明で、余りにも意味深な言葉を呟き続ける。
「土方宙将……ヤマトは……地球は……」
彼のみならず、土方やヤマトの事までも知っている。これでいよいよ彼女の事を
「……とにかく、君について教えてくれ。君が何者で、何処から来たのか」
「……そうですね。この様な姿では……分かりませんよね。私も何故このような……
そう言うと、彼女は彼の前に起立し、胸の前に拳を掲げる───軍式の敬礼をし、言った。
「私は地球連邦宇宙軍所属、前衛武装宇宙艦AAA-1───アンドロメダです」
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