旧き世界で貴方と共に   作:デュアン

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土星沖会戦です。


土星沖会戦・地球艦隊集結せよ!

「バルゼー司令……私は……負けた」

 

 太陽系内、フェーベ沖。そこでは今、激しい戦闘が繰り広げられていた……とはいってもほぼ一方的な物なのだが。

 バルゼーは戦闘艦中心のシリウス方面軍、空母中心のプロキオン方面軍のそれぞれで待ち受ける地球艦隊を攻撃する心積りであった。しかし、当のプロキオン方面軍にヤマト率いる機動部隊が奇襲を仕掛けたのである。

 地球側はヤマト1隻と空母5隻、ガトランティス側は大型空母3隻と中型空母63隻、そして護衛艦として駆逐艦が28隻。正面から戦えばまず負ける事の無い筈のこの戦いは、しかし艦載機が発進する直前という最も脆い時を狙われた事で崩壊した。

 そして、艦載機による奇襲で旗艦を含む多くの空母が行動不能になった後、ヤマトらによる直接攻撃を食らった機動部隊はあえなく壊滅したのだった。

 

───────

 

「そうか……作戦は成功か」

 

 一方の地球艦隊。地球防衛軍の総力を挙げて結集させたこの艦隊を率いる旗艦、アンドロメダの艦橋にてその報告を受けた総司令官たる土方はそう呟き、不敵な笑みを浮かべる。

 この作戦は必ず成功させなければならなかった。もしも失敗していた場合、地球艦隊は機動部隊を失い、総勢1000機以上に及ぶ敵機の攻撃を受けなければならなかったのだ。そうなれば敵艦隊の姿を見る事なく全滅していたかもしれない。それが防がれ、一先ず彼は安堵した。

 

「次は艦隊決戦ですね」

「うむ。全艦前進、敵艦隊へと接近する。ヤマト機動部隊には早急に合流するよう伝えろ」

「了解しました」

 

 ヤマト機動部隊は貴重で強力な航空戦力であるが、彼がアテにしているのはそれだけではない。地球側には何としても戦闘終了までにヤマトと空母───()()()を装備した()()空母が本隊と合流して欲しい理由があったのだ。

 それはともかく、今は艦隊戦である。敵艦隊はどうやら機動部隊が到着する前に地球側の本隊を叩きたいらしく、一直線にこちらへと向かってきている。立てていた当初の作戦通りだった。

 

「拡散波動砲の射程圏内まであと20分」

 

 副艦長席に座る(アンドロメダ)が伝える。

 この作戦において拡散波動砲は重要なキーだった。尤も、それだけで戦闘を終わらせるつもりはなかったが。地球側にはあまりそれを使えない理由があった。

 

「まもなくだな……」

 

 土方がモニターに映る略式図を見て呟く。

 

 そうして、彼がとある指示を出そうとした、その時だった。

 

 

ドォン!!

 

 

「なっ!?」

「これは……」

「状況報告!」

「ヒエイ、轟沈!!」

 

 アンドロメダの隣を進んでいた主力戦艦が突如として現れた火柱に包まれ、直後巨大な爆発が発生する。

 

「山南一尉!」

「転送予測システム起動、各艦と連動開始」

 

 そして、彼らはそれに見覚えがあった。

 杏はこの艦に搭載()()()()()あるシステムを起動させる。

 

「反応ありました。方位33、vs4」

「全艦、システムに従い各自で回避運動を取れ!」

 

 次の瞬間、またある宙域で火柱が現れる。だが、それに貫かれて爆沈する筈だった戦艦は間一髪の所で避けており、装甲表面が融解する程度で済んでいた。

 また現れる。しかしまたも火柱は空を切り、目標だった巡洋艦は無事だった。

 

「システム、正常に稼働中」

「ふう……まさかここで現れるとはな」

 

 艦長席の山南が額の汗を拭う。

 彼もアンドロメダに記録されていた映像を観てこの兵器───火()直撃砲の事は知っていた。尤も、そのビジュアルは少し違うが。

 そして、その対抗策もアンドロメダにインストールされていた。ヤマトに乗り込んでいた科学者、真田志郎。

 彼はガトランティスのグダバ遠征軍との戦いの中で使用された火焔直撃砲のデータと七色星団会戦時のデータを基に、転送ポイントを予測するシステムを組み上げたのだ。

 これは2202年当時に建造されていた全地球艦艇にも装備されていた。ガトランティス戦役時にはガミラス臣民の盾と呼ばれる転送阻害装置があった事に加え、人員の練度不足もありこのシステムが使用される事はなかったが、こちらの世界には盾など無い為使用する他なかった。

 

「作戦の第二段階に移行する。ヒペリオン艦隊、出撃せよ!」

 

 

 

「何故だ……何故命中しない!?」

 

 その頃、彼らと対峙していたガトランティス艦隊ではバルゼーが予想外の展開に狼狽えていた。

 彼の乗るメダルーザには"火()直撃砲"という新兵器が搭載されている事は先述した通りだが、それは避ける事など不可能である筈なのだ。

 これまでの戦闘では一切使われておらず、どこからともなく現れる攻撃によって地球艦隊は次々と爆沈していき、混乱の渦に突き落とされる……筈だった。

 だが現実はどうだろう。最初に放った一発こそ戦艦を撃沈せしめたものの二発目以降はまるで現れる場所が分かっているかのように避け続け、自分達へと着々と接近してきている。意味が分からない、恐怖でしかなかった。

 

「っ……だ、だが数はこちらが圧倒的に上だ! 正面から叩き潰してくれるわ!!」

 

 火炎直撃砲はあくまでも一兵器に過ぎない。

 結局の所艦艇の数がガトランティス側が圧倒的に多い以上正面から叩き潰す事は可能なのだ。

 

「火炎直撃砲は停止! 全艦地球艦隊へととつげ───」

 

「11時上方に多数のワープアウト反応を確認!!」

 

 だからこそ、突撃の号令をかけようとしたその時。

 彼らのもとに無数のミサイルが叩き込まれた。

 

 

 

「ワープアウト完了!」

「全艦突撃! 及び全魚雷一斉射!!」

 

 ガトランティス艦隊のもとにワープアウトしたのは本隊とは別の位置に待機していたヒペリオン艦隊であった。

 ドレッドノート級を旗艦とし、駆逐艦と巡洋艦を中心に編成されたこの艦隊はその機動力が売りであり、ワープアウトした直後に機関を再始動させ、突撃しつつ装備された魚雷発射管から無数の空間魚雷を発射する。

 巡洋艦には14門、駆逐艦16門の魚雷発射管が装備してある。その給弾方法は前装式で一回きりしか放てないのだが、艦のサイズを考えればこれが最適解だったのだ。

 その魚雷を一斉射。計200本以上の空間魚雷がガトランティス艦隊へと襲いかかる。強力な破壊力を込めたそれらは迎撃を掻い潜り次々と命中し、宙の海に無数の爆光を作り出す。

 

「続けて主砲発射! 敵艦隊の中央を突破する!」

 

 その号令で各艦から青白い閃光が乱射される。

 ドレッドノート級の主砲は毎秒一発の間隔で発射する事が出来る代物であり、また巡洋艦や駆逐艦のそれらも威力は低い代わりに素早い発射が可能である。

 それらはガトランティス艦隊にばら撒かれ、戦艦や駆逐艦を次々と貫いた。その中にはメダルーザもあり、ドレッドノートの30.5cm三連装収束圧縮型衝撃波砲塔から放たれた陽電子砲が転送装置の一つを破壊し、火炎直撃砲を発射不能にしていた。

 ガトランティス側も彼らを撃沈すべくレーザーを放つが、それらは悉く堅牢な波動防壁に防がれている。

 

「よし! 全艦離脱!」

 

 果たして、ヒペリオン艦隊は敵艦隊を突破しそのまま戦闘宙域を離脱した。

 

「ええい! 追跡しろ!!」

 

 バルゼーは声を張り上げるが、既に加速のついた艦隊に対し、混乱中の艦では追い付くことなど出来なかった。

 そして、敵はヒペリオン艦隊だけではないのだ。

 

「バルゼー司令! 敵戦艦が一隻で突出してきています!」

「何だと? パネルに映せ!」

 

 艦隊を立て直そうとしていた彼らに向かって、一隻の戦艦───アンドロメダが急速に近付いていた。自らが率いる艦隊を置き去りにして。

 その時、彼には全く意味が分からなかった。あれは確かヤマトと共にナスカの部隊を打ち破った巨大艦だ。しかし如何に単艦の能力が高くとも正面から数を相手にするには限界がある。

 

 そこで、報告の中にヤマトが"波動砲"という兵器を使用したという物があったのを彼は思い出す。あれは威力こそ強力だが艦隊に使う物ではない、そう結論付られていた筈だ。その威力も、彗星帝国ならば耐えられる、と。

 だが、彼の背筋に冷や汗が流れる。何故だろうか、何故自分にここまで悪寒が走っているのか。

 

「前進し、射程に入り次第全力で奴を撃沈せよ」

 

 そう指示を出す。

 だが、砲撃が始められる事はなかった。

 

「敵艦、停止しました」

「停止……だと? 射程圏内か?」

「火炎直撃砲以外は届きません」

「何の真似だ……? 波動砲とやらを本当に撃つつもりか?」

 

 惑星規模の物体を破壊可能であるらしい波動砲。威力、射程は共に高いが攻撃範囲は狭い。

 

「敵艦は長距離射撃を目論んでいる可能性がある。全艦()()せよ」

 

 だからこそ、彼が伝える指示は一つだけであり───その一つが致命的だった。

 

 

 次の瞬間、アンドロメダの艦首から光の矢が放たれ───それは艦隊の直前で()()した。

 

「なっ」

 

 分裂したその1本1本が正確に戦艦や駆逐艦を貫いていく。当たらなかった艦艇も衝撃波によって装甲が剥がされ、押し潰される。

 艦隊を集結させていればまた結果は違ったのだろう。しかし彼は散開させ、逆に被害を増やす事になってしまった。

 そして、その代償は自らの命をもって償う事になる。

 

「死して大帝にお詫びを───」

 

 そう呟いた直後、彼は光に包まれた。

 

 

 

「拡散波動砲、発射完了。敵艦隊の八割を殲滅」

「……うむ」

 

 杏が無機質に伝えるその報告は、その場にいる全ての人間を戦慄させた。

 如何に奇襲によって混乱し、数が減らされていたとはいえ、未だ400隻程残っていた艦隊、その八割をたったの一発で破壊したのだ。兵器と呼んでいいのか、そんな考えすら浮かんでしまう程だった。

 確かに威力自体は何度か行われた試射で分かっていたのだが、いざ実戦で見せられると喜びよりも恐怖の方が先に来てしまう。

 

「……これより敵残存艦艇の掃討を行う。全艦砲撃準備」

 

 土方は指示を出す。

 ここまでは凡そ作戦通りに進んでいた。あまりにも順調過ぎる程に。

 

 第一段階ではヤマト機動部隊が敵機動部隊を殲滅、第二段階で敵艦隊が射程に入る前にヒペリオン艦隊による奇襲をかけ、敵艦隊が混乱している内にアンドロメダ単艦で接近、拡散波動砲で一撃を与え、最後に艦隊による砲撃で殲滅する───それが今回の戦闘の作戦であった。

 その中で、拡散波動砲はあくまでも敵を更なる混乱の渦に突き落とす為に使用される筈であり、その被害予測は約200隻。まさか300隻以上を撃沈出来るとは思われていなかったのだ。

 現在のアンドロメダ───アンドロメダ改の波動砲は通常タイプのアンドロメダのそれとは違い、二つある砲口が更に二つに分割され、事実上の四連装波動砲と化している。無論、その分拡散力も上がっている。

 前世では遂に艦隊に対して放たれる事がなかったそれは、今世においては想像する限り最高のシチュエーションで放たれ、最高の戦果を上げていた。

 

 アンドロメダに追い付いた艦隊が残存艦艇に向かって砲撃を加える。旗艦と艦隊戦力の八割を失ったガトランティス艦隊には最早組織的な抵抗が出来る能力は失われており、散発的に放たれるレーザーは波動防壁の前では無力だった。

 波動防壁を打ち破るには圧倒的な数か圧倒的な威力で攻めるしかない。しかし既に80隻弱しかいない艦隊には数の有利すら失われ、メダルーザを失った彼らには威力も足りていなかった。

 

 砲撃開始から数分後には動けるガトランティス艦艇は一隻も残っていなかった。

 

 こうして、地球復興後初の大規模艦隊戦である今回の会戦───後の世で、『土星沖会戦』と呼ばれる事になるこれは、地球側の圧勝で終わったのである。

 

 

───そして、次の試練が降り掛かる。




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な阪関無
拡散波動砲と波動防壁が強過ぎる
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