旧き世界で貴方と共に   作:デュアン

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アンドロメダ、超巨大戦艦を攻略せよ!

 都市帝国であった火球を押し退け、中から黒い何かが姿を現してくる。

 それは巨大な戦艦であった。一つ一つがアンドロメダよりも大きい巨大な砲塔を無数に持ったそれは姿を現すと、艦首にある10個の"眼"に光が灯る。

 同時に砲塔が動き出し、ある地点で止まる。そこまでの一連の流れの中で、地球艦隊は何もする事が出来なかった。

 

 

「───ッ!! 全艦回避運動を取れ!!!」

 

 

 状況に気付いた土方が声を張り上げる。それに応じてのろのろと艦隊が動き始めるが───少し遅かった。

 

 

───次の瞬間、砲口から巨大な焔がありとあらゆる方向に向けて放たれる。

 それは火線上にいた艦艇を砕いていき、宇宙に無数の光を加えていく。

 

 

「……被害状況を報せ」

「下方艦隊は殆ど被害を受けていない様です……こちらは戦艦シキシマ、ドレッドノート、レナウン、ノースダコタ、そして……本艦の右舷に接舷していたムツが通信途絶。その他巡洋艦等合わせ計34隻がロストしました。また、フソウ、ワイオミング等21隻が大破、その他数多くが損傷しています」

「本艦は……右舷装甲が一部融解した以外は被害ありません」

「っ……」

 

 次々と報告される悲惨な状況。アンドロメダにこそ大した被害は無かったが……右舷を映したモニター、そこにはある筈の物───ブースターとして接舷していた戦艦ムツの姿は無く、アンドロメダの表面装甲も赤く発光していた。

 あの一瞬ではこれが限界であった。何とか避けようとしたものの、結果としてビームはムツを飲み込み右舷装甲を溶かしていった。圧倒的な火力の前に、波動防壁は何の役にも立たなかった。

 

「……杏、大丈夫か?」

「大丈夫です……」

 

 ふと、山南がある事に気付く。杏が右の脇腹を手で押さえていたのだ。

 そして、ある結論に至る。

 

「まさか、お前……」

「文字通り、かすり傷です。戦闘に支障はありません」

 

 彼女はアンドロメダそのものである。戦艦の装甲の前には銃弾も手榴弾も効かず───逆に、アンドロメダ本体が傷付けば彼女も傷付くのだ。

 そして、装甲とは人で例えるならば皮膚である。彼の予想が正しければ、今、彼女の右脇腹の皮膚は焼け爛れている筈であった。

 

「無理をするな、医務室に」

「恐らく……医務室に行っても無意味だと思われます。それよりも今は……ガトランティスとの決着を」

 

 通常の人間であれば無理矢理にでも連れていくだろう。しかし彼女は特殊だった。

 彼女が負傷しているのはアンドロメダが傷付いたから故であり、例え医務室に連れて行った所でアンドロメダ本体が修理されない限り彼女の怪我は治らないだろう。

 それでも少女が、義娘が傷付いている様子を見て何も感じない様な人間ではない。しかし、感情を押し殺さなければならない時がある、そう彼女に教えたのは彼自身だ。

 

「っ……分かった。土方さん、この状況……どうしますか」

 

 だからこそ、彼は土方へ問う。全ては地球を守る為に。

 それに彼が答えようとした、その時だった。

 

 

『……我が名はズォーダー。愚かな地球人共よ、理解しただろう』

 

 

「───ッ!!? 通信!?」

 

 突如として艦橋内部に男の声が響き渡る。それはアンドロメダのみならず地球艦隊全艦、ヤマト、防衛軍司令部や都市にまでも流されていた。

 その声と共に、メインパネルに男の顔が映し出される。緑色の肌───ガトランティス人の特徴だった。

 

『宇宙の絶対者はただ一人、この全能なる私なのだ』

 

 ズォーダーは睨み付ける土方達を他所に話し続ける。

 

『命ある物はその血の一滴まで俺の物だ。宇宙は全て我が意志のままにある』

 

「……!! 敵艦下方に何やら動きが……巨大な何かが取り出されました!」

「巨大な何か、だと?」

 

『が宇宙の法だ、宇宙の秩序だ。よって当然───』

 

「下方に高エネルギー反応───ッ」

 

 

『───地球もこの私の物だ』

 

 

 次の瞬間、下方から巨大な光線が放たれる。それは太さだけでもヤマトやアンドロメダの全長が入ってしまいそうな程巨大な物。

 それは一直線に火星へと向かっていき───

 

「っ……」

「な……」

「……」

 

───その表面を抉り取った。

 

 あまりにも圧倒的な火力。波動砲でも同じ事が出来るかもしれないが、それよりも分かりやすい"強さ"を示された。

 その光景を見た民衆は足を止め、腕をだらりと垂れ下げてその場に立ち尽くす。誰も、何も言う事が出来なかった。

 

 

 ただ一人を除いては。

 

 

『違う!! 断じて違う!!!』

 

 

 若い青年の声が響く。それは目の前の戦艦からではなく───

 

「こ、これは……ヤマトからです」

「ヤマト? という事はこの声は……」

 

『宇宙は母なのだ。そこで生まれた生命は全て平等でなければならない。それが宇宙の真理であり、宇宙の愛だ!!』

 

「……フ……」

「古代戦闘班長……」

 

 先程までの声が"絶望"ならば、この声は正に"希望"その物だった。

 

『お前は間違っている。それは宇宙の愛と平和を、消してしまうものなのだ』

 

 誰しもがその楽観的で、性善的で、理想的で───しかし、あまりにも明るいその言葉に耳を奪われていた。

 

 

『俺達は戦う! 断固として戦うッ!!!』

 

 

 彼のその言葉に、映る男は不快さを滲ませる表情を貼り付けていた。だが、すぐに表情を消し、言い放つ。

 

『ならばそこでダニの様に無様に這いつくばりながら見ているがいい。貴様らが守ろうとした地球が───粉微塵になる様をな』

 

 そこで通信は終わる。

 ここまで聞いていた皆の感情は最低───ではなかった。

 一人の若き宇宙戦士が敵の最高指導者に言い放ったあの言葉は、確かに皆の胸に希望の火を灯したのである。

 

 

「……全艦機関最大、あの巨艦に取り付く」

 

 ニヤリ、と笑っていた土方が口を開く。

 

「撤退ではないのですか?」

「離れればあの巨砲に狙い撃たれるだけだ。それに先程波動砲を放った艦にワープ出来る程のエネルギーは残っていない。脅威になるのは波動防壁の通じないあの巨砲のみ、ならば死角に取り付き、打開策を見つけるまで耐え忍ぶ」

 

 先程放たれた巨砲は、こちらが艦ギリギリまで接近すれば全て死角になる。艦表面に無数の回転砲塔が設置されてはいるものの、今更通常艦レベルの攻撃など考える必要はなかった。

 それを理解しており、尚且つ士気に満ちていた山南はそれに反論する事なく、艦各所に指示を出す。

 

「全艦、最大戦速!! 至近距離まで接近せよ!!」

 

 その号令で、残存艦艇のメインノズルに一斉に火が灯る。

 敵も静観している筈もなく、多くの砲塔が再び狙いを定めてくる。だが、来ると判っていればあのような巨大な攻撃は当たらない。その全てが外れ、地球艦隊は至近距離まで接近する事に成功する。

 所狭しと設置された小型の───それでも大戦艦の主砲クラス───回転砲塔から無数のビームが乱射されるが、その程度ならば波動防壁で防げていた。

 

「まずは近接兵装を破壊する!」

「第一、第二主砲発射用意」

 

 艦体表面を駆け抜けながら回転砲塔や細かな艤装を破壊していく。毎秒一発の発射レートを誇る収束圧縮型衝撃波砲の性能をこれでもかという程発揮していた。

 

 そうして表面を進みながらアリゾナ艦隊と合流する。どうやらこの艦は下方には件の巨大砲塔は設置されていないらしく、艦隊の大半が無事だった。

 

「ここからどうするか、だ」

「波動砲を撃てる艦はもうありません。撃てた所で、ですが……」

 

 しかし、決め手が無い。エネルギー不足により波動砲発射可能な艦は既になく、例えあったとしても先程の波動砲による挟撃を耐えきっているこの艦に通用するとは思えなかった。

 巨大砲の砲口から攻撃するという作戦もあるが、事実上の特攻になってしまう上に効果はあまり無いと推測された。

 

「エネルギー系の攻撃は特殊な力場を発生させて無効化。物理攻撃は多少は効くが素の装甲が硬くこちらもほぼ無意味……」

 

 ここまでで判明した事を山南が言う。

 艦体表面に主砲を放ったが、その際の様子が"耐えた"というよりも"受け流した"様な様相を呈していたのだ。その後行ったミサイル攻撃は表面を少し凹ませる程度で終わり、防衛軍随一の貫徹力を誇る三式弾ですら傷をつけるだけで終わった。

 本当に決め手に欠けているのだ。艦は着々と地球に近付いている。このままではあの男の言う通り地球が破壊されるさまを見せつけられる事になりそうだった。

 

「……一つ、手があります」

「手?」

 

 と、そこで杏が言う。

 

「アンドロメダにエネルギーを集中させ、波動砲を発射出来る様にする。それに加えて私が内部に侵入出来れば破壊は可能です」

「杏、お前まさか……」

「あれ程の巨体ならば艦の何処かに広い空間がある可能性が高いです。そこで艦体を出現させ、内部で拡散波動砲を発射します」

 

 彼女のその提案通りに進めば、なるほど確かにこの戦艦を破壊出来そうだった。

 如何に装甲に力を込めていたとしても内部の隔壁までその強度である筈がない。内部からの拡散波動砲を防ぐ術は無いだろう。

 

「問題は、どうやって侵入するか、か……」

 

 この作戦の最大にして唯一の障壁は、この戦艦内部への侵入方法が現状存在しない事である。波動砲を放つ程のエネルギーを艦隊から集めればその殆どが動作不能になるという問題もあったが、そちらはこの敵を倒せるのならば問題は無い。

 どうやら奴らは地球艦隊の事など全く気にしていない様で迎撃機を出してくる事もなく、発進口からの侵入は不可能。

 回転砲塔は破壊跡が即座に装甲に覆われてしまう為こちらも不可能。一箇所に集中攻撃を続けるという手もあるが、この進行速度では装甲に孔が空くのよりも先に地球が破壊されてしまいそうだった。エアロックは見当たらず、正に八方塞がりといった状況である。

 

「とにかく今は攻撃を続けるしか───」

 

 と、その時だった。

 

 

「? 上部大砲塔が動き出しました……発砲しました」

「何? 標的は?」

「地球からは外れています」

「4時の方向にワープアウト反応!!」

 

 突然巨大砲塔があらぬ方向に向けて発砲したかと思えば、その直後にアンドロメダの付近にワープアウトしてくる者がいるという。

 皆が注視していると───

 

 

「ヤマト……と、あ、あれは……?」

「"ガルンボルスト"? 何故ここに……」

 

 異空間から飛び出してきたのは二隻だった。

 一隻は地球で最も有名な戦艦にして希望の船、宇宙戦艦ヤマト。そしてもう一隻はヤマトの二倍近い全長を誇る超大型艦。武装も地球のそれとは異なり、ガトリングタイプの物が大半を占めている。

 ここに居る多くの者が首を傾げ、自らの記憶を辿る中、杏のみがその正体に気付いた。

 

 その名は『ガルンボルスト』。

 ディンギル帝国が誇る巨大戦艦であり、在地球ディンギル大使であるルガール・ド・ザールの乗艦であった。




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