「この波長は……重核子ですね」
「重核子?」
「これにより発生した重力波を浴びた人間は脳細胞が破壊され、事実上の脳死状態になってしまいます。アンドロメダ乗組員の様に」
アンドロメダに残されていたデータを見た真田が山南に言う。
太陽系外縁部にて訓練中であったアンドロメダが大破状態で見つかった。見つけたのは遅れて訪れたディンギル艦隊であり、彼らはすぐに地球へ一報を入れ、近隣の冥王星基地へと残骸を運び入れた。
アンドロメダの破損状況は酷い物だったが何とか修復は可能であった。
だが、問題はそこではない。
一体誰がこれをやったのか。その答えはアンドロメダ周辺に漂っていた。
黒い残骸、そして復元されたアンドロメダの映像記録。それらは以前のイスカンダル攻防戦にて第七航空戦隊が戦った『暗黒星団帝国』のそれと酷似していた。
この事実に議会は紛糾した。
イスカンダル攻防戦にて地球が知られてしまった、そう考えて軍の責任を追及したのである。
だが、そこで待ったをかけたのが真田である。彼は「僅か一か月で用意出来る戦力ではない」と主張したのだ。もしも重核子爆弾(仮称)が短期間で用意出来る代物であるのならば、イスカンダルにて使用しなかった理由が分からない。
また、映像記録にあった艦隊戦力も膨大な物だ。イスカンダルで見られたショックカノンが通用しない大型戦艦に加え、中型艦や小型艦も多数。合計で数百隻は下らないだろう。これ程の戦力を僅か一か月で用意するのは困難だ。
だから、この侵攻は以前から計画されていた事である、そう結論付けたのだ。
この意見には中々説得力があり、また22-23世紀の宝とまで言われる真田の言葉だ。議会は一先ずそれで納得した。
そうなれば、次に議論すべきは再び来るであろう侵攻軍への対応である。
艦隊戦力の方はどうにでもなるが、重核子爆弾については難しい。何しろ波動防壁が通じず、射程に優れる収束波動砲も歯が立たない。ワープ直後に使用可能で奇襲を受ければ如何に優秀な艦隊であろうと一撃で全滅してしまう。
それに対抗できるのは、現在の地球においてはアンドロメダのみ。そしてそのアンドロメダは今修復中だ。
もし今奇襲を受ければ、為すべなく地球は占領されてしまうだろう。
「一先ず、各艦隊は各基地に分散配置。少しでも全滅の可能性を減らす」
防衛軍総司令部では土方ら将官が対応策を練っていた。
ガトランティス戦役とは正反対だ。あの時は単純に"敵が圧倒的物量で勝る"状況であり、戦力を集中させる必要があったが、今回は未知の兵器に対抗する為艦隊を分散配置させなければならないのである。
「真田、重核子爆弾への対抗策は?」
「攻撃側の重力波と逆の波長を流す事で打ち消す装置を現在開発中です。完成までには二週間程かかるかと」
「なるべく急げ、敵は待ってくれん。民間人の疎開はどれ位終わっている?」
「現在30%が地下都市への避難を済ませています」
士官が報告する。
地球が再び狙われている、そう知った政府の動きは速かった。会議と並行して取り敢えず警戒態勢を整えていったのである。
まず市民の地下都市への避難。ガミラス戦役の記憶が未だ残る人々は我先に地下へと飛び込んでいき、避難は順調に進んでいた。
次に防衛陣地の構築である。空港やビルの屋上などを一時的に軍が接収し対空砲やミサイルシステムなどを設置していた。防衛衛星もフル稼働させ、常に二個艦隊が周辺を警備している。
科学局では真田率いるチームが重核子爆弾への対抗システムを急ピッチで開発し、また一時的な対策として一部戦闘艦艇を遠隔操作出来る様に改造を施す事や、かねてより考案されていた"無人艦隊"構想などの実現などもしていた。こちらは要するにラジコンでありあまり戦力としては役に立たないだろうが、外縁パトロール艦隊などに配属された。
また、波動カートリッジ弾の量産も急ピッチで進められた。現状ゴルバや重核子爆弾に通用するのはそれだけなのだ。
二度の大戦争を経験した地球。彼らに最早油断など無かった。
───────
「じゅ、重核子爆弾無しでですか」
『そうだ。新たな物を製造して輸送するのには少なくとも半年はかかる。既に地球に我らの存在が知られてしまった以上、時を空ける事は出来ん』
何故我々がお前の失敗の尻拭いをしなければならないのだ、言外にそう言われカザンは苦い顔をする。
アンドロメダを奇襲し、結果として50もの艦艇と重核子爆弾を失った地球侵攻軍は中間補給基地にて一時的に待機していた。
そして、総司令のカザンは本星の
『援軍としてガルバス少将の第四機動艦隊、及びグロータス准将のゴルバ部隊を送る。良い報告を期待しているぞ』
「はッ……」
そこで通信は切れ、彼は平伏したまま暫く動かなかった。
「ゴルバ七機、ですか」
「ああ。通常の星間国家が相手ならばこれだけで殲滅出来る戦力だ。だが……」
作戦会議。カザンは不安げな表情を崩さない。
ゴルバ型浮遊要塞。自動惑星ゴルバの発展版であり、その装甲は如何なる攻撃も通さない───筈だった。
だが、此度の敵、地球はイスカンダルにてその自動惑星ゴルバを撃沈している。発展版とはいえ装甲は同じ、撃破されない道理はない。
「その他の艦隊戦力とてどの程度通じるものか……」
本作戦に参加する艦艇数は、輸送艦や揚陸艦などの補助艦艇を除けば援軍加えて約300隻。数だけ見れば十分だが、しかし相手はたった一隻で50隻を撃沈する戦艦を持つ国家である。
その撃沈数には重核子爆弾の誘爆によるものも含まれているが、理論上は同じ戦艦が六隻いれば全滅させられるのだ。なんと恐ろしい国家だろう。今まで何故この国家の存在が隠されてきたのかが甚だ疑問である。
───もしも彼が、地球連邦はほんの数年前までは光速突破すら出来なかった国家だという事実を知ればどう思うだろうか。まあ、恐らく信じる事はないだろう。
「……全艦の整備と補給が終わり次第再侵攻に移る」
カザンはそう言い、その会議は終わった。
「全艦隊、太陽系に向け出撃せよ!!」
そして地球時間にして12日後、中間補給基地から大量の艦船が発進する。
舞台は再び、太陽系に移っていく───
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