旧き世界で貴方と共に   作:デュアン

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決戦!!地球の攻防戦!!(後編)

──今回行われたデザリアムによる直接の地球侵攻はある程度想定されていた物だった。

 

 アンドロメダによって大打撃を被ったデザリアムが起死回生の一手として出してくるであろう、地球本土の電撃占領。成程、確かにそれをされれば如何に精強な艦隊を持っていたとしても太刀打ちできない。

 地球防衛軍の根幹にあるのは「地球市民の守護」であり、その守るべき対象を人質に取られたとすれば動き辛くなるのは当然の事。そしてそれは、相手も理解しているであろう事だった。

 

 だからこそ考案されたのが、地球そのものを囮としてしまう大胆な作戦。

 地球市民を地下都市に避難させ、敢えて地球圏内に敵を誘い込むのだ。奇しくもそれは冥王星にて行われた作戦と似ていたが、その作戦が行われた陽動作戦とこの地球侵攻はほぼ同時に行われた為に情報共有がなされる事はなかった。

 

 さて、何故わざわざ無人艦隊を使い捨てにしてまで敵を地球に誘い込んだのか。それはゴルバの存在がある。

 地球連邦の決戦兵器、波動砲。その存在は当然デザリアムも知っている筈であり、ならばそれに対して何かしらの対策を施してくるのは当然の摂理。そしてお誂え向きにデザリアムには波動砲を防ぐ事が出来る艦艇がある。

 その艦艇──ゴルバは以前のイスカンダルでの戦闘にも出張ってくる程度の戦力。ならば、地球侵攻というそれなりに力を入れるであろう作戦には複数隻が投入されるであろう、というのが地球側の認識であった。

 そして、一隻ならまだしもある程度の数が揃えられた時、数に劣る地球艦隊では真正面から打ち破れない可能性がある。ゴルバの重装甲と多数の艦隊による防空が重なるのはそれだけ厄介なのだ。

 ならばいっその事一度地球に降下させてしまい、地上部隊という足枷を作ってしまえばいい──それが作戦司令部の判断だった。重核子爆弾は既に地球の優秀な科学者によって無力化されており、地下都市は遊星爆弾の直撃にも幾度となく耐えた程の耐久性を誇る。入口さえ塞いでしまえばそう簡単には侵入出来ない。

 重核子爆弾への対抗策が無い段階では二個艦隊が常に警戒にあたっていた訳だが、それが無力化された今ではこの様な大胆な作戦への転換も可能となったのだ。

 

 

──果たして、その作戦は見事に的中した。

 

「坂本! 油断して墜とされるなよ!」

「加藤さんこそ! 怖くなったら自分の前に隠れても構いませんよ!」

「大口を叩く様になったものだな! 山本! 四郎! 行くぞ!」

「俺達もだ! 牧、村上、俺に続け!」

 

 第七航空戦隊から発進した航空隊がミヨーズ率いる第一・二分艦隊へと突撃していく。

 航空隊に先行して艦隊から発射された青白い光線が無数の爆発を起こし、艦隊は混乱に陥っている。航空隊の任務は敵艦隊をヤマトらに集中させない事、そして敵から発進した航空戦力の殲滅だ。

 

 慌ただしく発進してきたイモ虫型戦闘機を叩き落とし、次いで激しい対空砲火を潜り抜け空母の発進口へとミサイルを叩き込む。

 それにより艦載機が飛び立てなくなった空母へと重爆撃機が接近、搭載してあるミサイルを放つ。

 重爆撃機が搭載しているのは新型ミサイル──所謂"波動ミサイル"と呼ばれる物だ。これは通常の物と違い波動エネルギーを封入しており、特にデザリアム艦艇とは相性抜群であった。

 

「よし!!」

 

 コスモタイガーⅡの攻撃によって直掩機を失った空母はあっさりと波動ミサイルをその身に受けてしまう。

 ミサイルは装甲板に突き刺ささった後、波動カートリッジ弾と同じ要領で装甲板を融解させながらロケットブースターで突き進み、内部に弾頭が侵入した所で炸裂。デザリアム特有の特殊組成と波動エネルギーが融合し大爆発を起こし消滅する。

 波動カートリッジ弾、その元となったハイパー放射ミサイルの原理を応用したこのミサイルは、その初陣で見事な戦果を挙げる事に成功したのだった。

 

 

 一方その頃、カザン率いる黒色艦隊本隊もミヨーズらに劣らず大混乱に陥っていた。

 その原因は──波動砲である。

 

「ガリアデスからの返答は! カザン総司令はどうなったのだ!?」

「返答ありません」

「クソッ、地球人め……!」

 

 地球侵攻軍、第四機動艦隊旗艦であるアトラクター級巨大空母『グレート』ではその司令官であるガルバスが目の前で繰り広げられている悲劇、その下手人に向かって悪態をついていた。

 

 事の始まりはほんの数分前。丁度ヤマトらが海中から飛び出してミヨーズらに攻撃を仕掛けた頃である。

 

「下方に重力変動を感知」

「来たか。迎撃準備。ゴルバは直ちに配置を変更せよ」

 

 旗艦『ガリアデス』にてワープアウト特有の重力変動が感知される。

 まさか本星たる地球をこのまま放っておく訳ではあるまい、出撃してきたのであろう地球艦隊がワープによる奇襲攻撃を仕掛けてくるのは火を見るよりも明らかであり、総司令たるカザンも極めて冷静に指示を出す。

 成程、確かに盾となるゴルバが居ない下方からの奇襲は有効だろう。事実ゴルバが居なければ200隻強程度の艦隊など拡散波動砲によって瞬殺されてしまうのだから。

 だが、その為のゴルバである。それに波動砲には莫大なエネルギーを必要とする事は既に判明しており、()()()()()()使()()()()事も調査によって判明している。

 自分達がするのはワープ直後に行われるであろう通常攻撃を耐え抜き、その間に割り込んだゴルバによって波動砲を防ぎつつ包囲殲滅する事だ。

 

 地球艦隊、恐るるに足らず。カザンは自らの勝利を確信した。

 

 

 やがて重力変動は最大に達し、地球艦隊が出現する。

 彼はそれらに向かって攻撃を命令し──

 

 

──次の瞬間には、莫大な熱と光によって艦と共に蒸発した。

 

 

「発射完了、敵艦隊の七割を殲滅!」

 

 地球防衛艦隊総旗艦『アリゾナ』艦橋にて士官がそう報告する。

 艦橋窓からは波動エネルギーの残滓と砕けた艦の欠片、そして硬直して動けないでいる残存艦とゴルバの姿があった。

 

 地球艦隊が行ったのは"機動波動砲戦術"と名付けられた作戦である。

 波動砲の弱点とは先述した通り莫大なエネルギーを消費する点、そしてそれをチャージする時間が必要である点だ。その為ワープ直後は使えず、チャージ中の移動も不可能だ。

 だがアンドロメダが居た元の世界、そしてこの世界における地球艦隊はこの問題をとある力技で解決していた。

 

 以前都市帝国攻略作戦においても使用された『トランスワープ』という技術。

 波動砲を発射する艦の両側に重力アンカーによって小型艦を接舷、その小型艦に機動力を任せる事により()()()()()()()()()を可能とする恐ろしい戦法。

 都市帝国戦では接舷する艦艇は有人艦艇であったが、今回はエイジャックスという無人艦が存在している。

 

 要するに、アリゾナ率いる地球艦隊はエイジャックスを補助動力として使用、トランスワープによって敵艦隊直下にワープ直後に拡散波動砲を発射したのである。

 ただし、ワープ直後という事もあり照準があまり定まらず、以前土星沖会戦にてアンドロメダ単艦で使用した時よりも被害は少ない。これは機動波動砲戦術の弱点でもあり、「敵艦隊至近にワープアウト」するリスクを「波動砲による殲滅」によってクリアしている特性上、拡散波動砲のターゲティングが定まり辛いのだ。

 なのでこの戦法は移動している敵に対しては使い辛く、下手をすれば特攻になる恐れすら孕んでいる。

 今回の様に静止している敵に対してならば非常に効果を発揮するが、通常の艦隊戦に対しては必ずしも有用とは言えないという訳だ。艦を使い捨てにしても良い程有り余っている状況*1ならばこれだけで戦闘も済んでしまうが、さしもの復興しつつある地球連邦とはいえそこまでの戦力は保有していない。

 

「全艦突撃!」

 

 土方の指示で地球艦隊が動き出す。

 アリゾナの48cm三連装ショックカノンが、ドレッドノート級の30.5cm三連装ショックカノンが、巡洋艦の20.3cm連装ショックカノンが、護衛艦、駆逐艦の12.7cm連装ショックカノンが、それぞれがそれぞれの目標を狙い陽電子の奔流をばら撒いていく。

 不幸な事に黒色艦隊旗艦であるガリアデスが波動砲によって消滅してしまった為に一時的に指揮権の空白が発生しており、デザリアム側はマトモな応戦態勢をとることも出来ず次々と撃沈されていった。

 

 そして、艦隊が防空任務を果たせないという事は、今のゴルバは無防備も同然である。

 確かにゴルバ自体も攻撃力・対空能力共に高い水準にある。しかしながら、縦長かつ武装がある一周部に集中しているという特性上どうしても死角が多くなる。

 本来であればそこの防衛を艦隊が担う訳だが、この混乱状態にあっては満足な防空は望めない。

 

「馬鹿な──」

 

 浮遊要塞部隊司令、グロータスが爆炎に呑み込まれる。

 地球艦隊から放たれた波動カートリッジ弾は少なくない数が迎撃されたもののゴルバに命中、特殊組成が波動エネルギーと反応し大爆発を起こし轟沈させる。

 そして、その爆発に多くのデザリアム艦が巻き込まれ、その際に『グレート』も消失してしまったが為に、現時点で黒色艦隊本隊の指揮権は完全なる空白状態となってしまったのであった。

 

 

「ミヨーズ司令! 撤退のご決断を!」

「撤退……撤退だと!? 貴様、地上の揚陸部隊を見捨てよというのか!?」

 

 この時点で、生存していた艦隊指揮官級の人間はミヨーズのみとなっていた。

 彼らの艦隊はヤマトらと対峙しつつも何とか統制を保ち、はるかぜを中破させ撤退に追い込むなどの戦果を上げていた。そんな中、主力部隊とゴルバが壊滅した事を知った参謀はミヨーズにそう進言する。

 だがそれは、彼に地上部隊を見捨てろと言っているのと同義であった。

 

「このままでは我等は上方の地球艦隊と挟撃を受けて全滅してしまいます! 艦隊からの継続的な支援無き揚陸部隊などどちらにせよ敗北は必至、ならば今ここで撤退をし再起を図るのです!」

「ッ……」

「閣下、ご決断を」

 

 ミヨーズは苦虫を嚙み潰したような表情になる。

 彼とて参謀が言った事程度理解していた。だが本作戦に参加した上陸部隊の将兵の数は数万に及ぶ。人命が貴重な資源となってしまったデザリアムにとってはこれを見捨てるのはかなりの痛手となってしまう。そもそもデザリアムが地球侵攻を決めたのは生殖能力を取り戻し人口増加を図る為なのだ。

 

 数秒にも満たない逡巡の後、彼は口を開く。

 

「……撤退だ。揚陸艦・輸送艦も三分以内に撤収作業を打ち切りただちに中間補給基地まで撤退せよ!」

「了解。残存艦に通達、ただちに中間補給基地まで撤退せよ! 繰り返す……」

 

 

──その後、デザリアム艦隊はワープによって撤退した。

 作戦開始時には200隻以上いた戦闘艦艇だったが、無事中間補給基地まで辿り着けたのは僅か30隻にも満たなかった。

 

 また、揚陸部隊に関してはその大半が残されてしまった。そのうち半分程度は降伏したものの、残りは徹底抗戦を選択する。

 圧倒的に不利な状況下で抗戦を選んだ理由は()()()()()である。実は偽装の為に今回使用された重核子爆弾がただの案山子である事は一般兵には秘匿されており、そうとは知らない一般兵はまだ逆転の目はあるとして戦ったのだ。

 当然の事ながら重核子爆弾が作動する事はなく、抗戦を選んだ兵士は悉く殲滅された。一部兵が地下都市への出入口封鎖を突破して侵入する事態があったものの、それを想定して配置されていた陸軍兵士や、修理中だった為に今作戦に組み込まれずディンギル大使警護の任に就いていた杏などによってやはり殲滅された。

 

 

 ここに、デザリアムによる地球侵攻は地球側の完全勝利と至ったのである。

*1
通常の十倍で戦力が補充される特殊な状況




Q.牧と村上って誰?
A.アクエリアス・アルゴリズムを読むのです……
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