「デザリアム本星への直接攻撃!?」
「ああ。君たち"第七航空戦隊"にやってもらいたい」
地球攻撃から二ヶ月が経ったこの日、第七航空戦隊の高官達は防衛軍司令部に呼び出される。そして告げられた指令がこれであった。
本星への攻撃となると少し苛烈なのではないか、と言いたげな古代達に芹沢は数枚の資料を渡し読む様に促す。
「……こ、これは……本当なのですか?」
「捕虜とした情報将校から得た物だ。他の捕虜からの情報とも合致しており信憑性は高い。ともすれば、我々がこの様な結論に至ったのも理解出来るだろう」
"デザリアムの目的は地球人の新鮮な肉体である"
"現状維持ではデザリアムは緩やかに、しかし確実に滅ぶ為作戦中止は有り得ない"
"重核子爆弾は再生産が可能であり出撃前から次弾の製造が始まっていた"
"それらを考慮した結果、2202年下半期には再侵攻の可能性が高い"……
「肝要なのは地球人類の生命と財産だ。必要とあらば波動砲の使用もやむを得ない──それが防衛軍司令部、並びに政府上層部が出した結論だ」
「波動砲の……本気ですな」
第七航空戦隊司令の山南が息を呑む。要するに、最悪の場合デザリアム星を消し飛ばしてもいいと彼らは言っているのだから。
だが、山南にはその考えも理解出来た。
デザリアムによる侵攻を少ない被害で撃退する事が出来たのは幸運に幸運が積み重なったからだ。もし最初に遭遇したのがアンドロメダでなければ重核子爆弾は出会った艦隊全てを無力化し、地球防衛軍は碌に対策もうてぬまま地球そのものを人質にとられていた事だろう。
そうなれば最早防衛軍に出来る事はない。強硬手段を取った所で地球人類が全て死んでしまえば意味がないのだ。
そして、そんな相手との融和の道はどうやら無いらしい。司令部がここまでの対応に出るのも頷ける。
だが、それはそれで不自然な点もある。
「ならば第七航空戦隊のみならず正規艦隊を出撃させるべきではないですか? 我々だけでは些か戦力が少なすぎると思います」
パトロール艦『はるかぜ』の艦長である天馬亮が言う。
戦隊の戦力はヤマトを旗艦としてあまぎ型戦闘空母『あまぎ』、ゆうなぎ型パトロール艦『はるかぜ』の三隻のみ。確かにヤマトはかつてガミラスを単艦で滅ぼした実績はあるものの……常識に照らし合わせると一国を相手どるのには戦力が少ない様に思える。
「今回も以前と同じくアンドロメダを付ける」
「待って下さい。アンドロメダはまだスーパーチャージャーへの換装が終わっていないのでは」
『スーパーチャージャー』──波動エンジンの性能をアップグレードさせる機構である。これを取り付けると波動砲の威力が格段に上がり、数万光年単位のワープすらも可能となる。
ヤマト、あまぎ、はるかぜにはこれが取り付けられたのだがアンドロメダには未だ取り付けられていない。波動砲の威力は兎も角、ワープに関しては同条件でなければ艦隊として組み込む事は出来ないのだ。
「そうだ。そこで今回のアンドロメダは乗員を割り振らず、アンドロメダ単独で──即ち、山南杏一等宙佐がオブザーバーとしてヤマトに乗り込む事となる」
「それは頼もしいですが、どうしてそこまで──」
「──私が頼んだのです、天馬二佐」
天馬の言葉を遮る様に少女の声が聞こえてくる。
それに山南が言う。
「杏、来たのか」
「はい。遅れてしまい申し訳ございません」
「所で、頼んだとは一体……」
「それは……」
そこで彼女の言葉が止まる。
その理由を知っている山南は代わりに言った。
「仇を取りたいんだよ。杏は初戦で乗組員を全員喪ってる、その仇を討ちたいっていうのは
「っ……すみません。私的な考えで軍規を乱してしまう様な具申をしてしまいました。
「……」
彼女の言葉に山南が静かに目を伏せる。彼としては彼女には人間であって欲しいと願っているのだが、如何せん当の本
と、そこで古代が立ち上がり言う。
「そんな事言わないでくださいよ杏さん! どんな理由があっても正式な手続きをして艦隊に入った以上処分を受ける謂われなんてありませんよ! そんな事言ったら俺なんてテレ」
「古代一佐、この場には一応私達も居るのだがね」
「アッ……」
芹沢が呆れた様に言い、古代がたじろぐ。
彼としては「自分の方がヤバイ事をしている」という文脈でフォローをしたかったのだろうが、処分する側の芹沢と藤堂がここには居るのだ。あまりにも軽率な言動だろう。
その少し滑稽な様子に杏の横一文字の口角が少し上がる。
「ふふ……ありがとうございます、古代一佐」
「よ、良かったです。ただ危険な真似はしないでくださいね。今度の敵はこれまでとは違う意味で危険なんですから」
「ええ、重々承知しています」
そう。今回の敵──デザリアムはどうも特殊な素材を使用しているらしいというのが真田の見解だった。
彼が言うには、彼らの使用している素材の一部が波動エネルギーと強く反応する性質を持っており、だからこそゴルバの様な巨大艦でも波動カートリッジ弾一発で撃破する事が出来るのだ。
そして、もしも彼らの本星がその素材で構成されていた場合──仮に波動砲の一発でも撃ち込もうものなら最悪銀河そのものを巻き込む大爆発を起こす可能性がある。
だからこそのスーパーチャージャーだ。もし反応が起きてしまった場合にその銀河から逃げられる様に。そしてアンドロメダにはそれが装備されていない。反応が起きても逃げきれない可能性があるのだ。
「ところで、天馬二佐が最初に訊いた戦力が少ないという問題の理由がまだ答えられていないように思うのですが」
あまぎ艦長の安田俊太郎が訊く。
そうなのだ。確かに第七航空戦隊にアンドロメダが加われば戦力は格段に上がるが、それでも万全を期す為にはやはり正規艦隊クラスの戦力が欲しい。何しろ目標は敵の本拠地なのだ。
それに対しては藤堂が答える。
「ガルマン・ガミラス帝国がボラー連邦に対して正式に宣戦布告した事は知っているな?」
ガルマン・ガミラス帝国──デスラーが建国したガミラス帝国の後継国家だ。
その本星であるガルマン星は元々ボラーの領土であり、それを奪ったガルマン・ガミラスとは小競り合いが続いていたのだが、先日遂に正式に戦争状態に突入したのである。
「今はまだボラーも地球とガルマンの関係に気付いていない様だが直に気付くだろう。その時地球から一個艦隊クラスの戦力が抜けているのは厳しいのだよ」
「なるほど……」
「加えて、現在は表向き友好的なボラー連邦だが、彼らが天の川銀河の中小国家に行っている行為は目に余る物ばかり。そんな国家が、地球から大戦力が抜けたと気付けば──」
「そのタイミングを突いて襲撃してくる可能性がある、という事ですな」
「加えて悠長に事を構える時間もない。情報部からは半年以内の再侵攻の可能性が示唆されている。ハイペロンジャマーへの対策が取られてからでは遅いのだよ」
先述した通り、重核子爆弾が真の力を発揮出来る状態で地球に乗り込まれてしまえば地球防衛軍に出来る事はなくなってしまうのだ。
藤堂はその場にいる皆の顔を見回し、言う。
「地球人類の未来の為、諸君の奮闘を祈る!」
「「「「「はっ!!」」」」」
かくして、第七航空戦隊によるデザリアム本星への攻撃が決まったのである。
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