俺の待ってた非日常と違う   作:陣陽

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心の引き金 心は引き金

※相変わらずの木曜日です

「さて…今お前たち4人が纏っているISは第3世代機にカテゴライズされる機体だが、ISは世代ごとに大きく変化していると座学で教えたな。第1世代ISの特徴を織斑、答えてみろ」

一通り空を飛んで急降下と急停止を実演した後、午前の授業の復習を兼ねて俺達4人への質疑応答が始まった…一夏、地上10センチって言われたのに2ミリで停止したんだ、最初に指定されるのは仕方ないだろ?…安心しろ、地上15センチの俺が次はターゲットだ。女性陣はキチンと停止できたんだ、諦めろ。

「…白騎士の複製を目指した機体です」

良かった、昨日予習していた場所だ…『淑女協定』の皆、静かに自習させてくれてありがとう!イチャつきたいところを我慢してくれてありがとう!IS関連の知識だけじゃなく普通の教科も有るからいくら有っても足りないんだ!


(さり気なく一夏の隣をキープとかやってくれるじゃない、セシリア…)
(鈴さん、先んずれば人を制す、兵法の鉄則ですわよ…)
(お目出度いなセシリア、お前の通った道は私はもう8年前に通り過ぎている!)



…空気はヒンヤリピリピリだったけどさ!!自習室が決闘場にならなくてホッとしたよ。…ああ、補講とか受けないように家でも予習復習をするようにしよう、俺も一夏も。

「猿取、全身装甲(フル・スキン)の意味と、廃れた理由を答えてみろ」

…来たか。まあ、今日の授業はキチンと予習してたし、何よりコイツはイヤでも覚えている。
「はい。宇宙線や太陽風の影響を皮膜装甲(スキン・バリアー)では防御し切れないのではないか、という懸念から採用され、杞憂であったことと何より競技用に使用されることが現在ではメインであるため一部を除き採用されていません」

…『アンカー・スチーム』は俺の見た目が宜しくないから全身装甲(フル・スキン)を採用した、などという余計なことは言わない…ベクトルは少しづつ違えども美女、美少女しかいないってのは凄いよホント。やっぱりISコアは面食いなんだろうか…じゃあアレか?俺や一夏は男好きのする男なのか?何かヤダな、ソレ。

「正解だ。さて、第1世代機は『白騎士』の再現を目指し各国で開発された。日本の『暮桜』イギリスの『クルタナ』中国の『蒼虎』フランスの『ラファール』…武装は各国で独自のものが搭載されたが機体そのものは『白騎士』の模倣だった…第2次移行(セカンド・シフト)を発現させた機体はほぼ別物だがな。これに対し、兵器としての完成を目指したのが第2世代機だ…『打鉄』『ラファール・リヴァイブ』『メイルシュトローム』『テンペスタ』…これらの機体は拡張領域(バス・スロット)に兵器をありったけ詰め込めるよう設計され、量産を前提にした機体であり、第2次移行(セカンド・シフト)、単一能力(ワンオフ・アビリティ)を起こした機体も第2世代ではイタリア代表を含むただの2機しか記録上存在していない…そもそも第2次移行(セカンド・シフト)自体が進化ではなく変質、劣化の類ではないかと開発陣は誤解していた…実際に纏う側からすれば進化であったのだがな。私が3年前まで纏っていた『暮桜』はな、第2次移行(セカンド・シフト)、単一能力(ワンオフ・アビリティ)を発動できたからこそ第2回『モンドグロッソ』でも第2世代機と互角以上に戦えた…整備の尽力もあったがな」

『暮桜』を纏い『モンドグロッソ』で世界一に輝き、雷名轟く織斑先生が真剣な表情で言葉をつむぐ。生徒も山田先生も2組の教諭陣も真剣な眼差しで先生を見つめ続けている…ああ、アメリカの話はあえて避けてくれてるんだ、有難う織斑先生。

「そして、第3世代型装備を搭載しているのが第3世代機の最大の特徴だ。凰、第3世代型装備の特徴は何だ?」
「はい、心をトリガーにして発動し、操縦者の能力がダイレクトに反映されます…基本的に、第1世代機の単一能力(ワンオフ・アビリティ)を参考に開発されています」
「そうだ。第1世代機において発動した第2次移行(セカンド・シフト)、及び単一能力(ワンオフ・アビリティ)はコアを初期化すれば水泡に帰してしまう、だが予め基本装備(プリセット)として組み込んでおけばパイロットを変えても発動するし、その状態で第2次移行(セカンド・シフト)、単一能力(ワンオフ・アビリティ)を発動できれば更なる発展も望める…肝に銘じておけ、お前たちの纏うISもお前たちと歩みをそろえて成長し続けているんだ」

「「「はい!」」」
「…はい」

…相棒は、『アンカー・スチーム』は、どう思ってるんだろうか。
オクビョーモノの俺を。
プロモーションの為に設計された自分のカラダを。
宇宙開発なんてそっちのけな世の中を。



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「幼少の身では親に従い、嫁いでからは夫に従い、老いては子に従う。女三界に家なし…」

 

放課後の第3アリーナ。ISスーツを纏い、ど真ん中で朗々と言葉を紡ぐ女傑…イーリス・コーリング。頑迷固陋な男性至上主義的な言葉に耳を疑う観客席の生徒の視線を感じながらイーリスは言葉を紡いでいく。

 

「こんな事言おうモンなら、あっという間に大炎上だわな今のご時勢…テメーの力で稼いだ金で好きなモン食って飲んでお好みの相手と寝る、あたしはそーいう人生がサイコーに好きだ。オメーラだってそーだろ?少なくともIS学園てのは女が女らしく生きていくためにはサイコーの知識と能力、そして格を身につけられる場所だ…今年はベビーフェイスやうちのマックが厄介になっているがね…ヘンな気起こしてコナカケするなよ?コワーイ怖いブリュンヒルデが…」

 

『話を進めろイーリス!』

 

放送室からの叱責も何処吹く風、ニヤリと笑いながらイーリスの言葉は続いていく。

 

「ヘイヘイ、織斑センセーはお堅いこって…さって、淑女の皆、強くなるためには何が一番大事だと思う?才能、努力、或いはISの性能…まあ色々在ると思うが、あたしとしての答えはズバリ『場数』だ、しかも本物の。あたしもアメリカ代表でございなんて肩で風切っちゃあいるが何のことはねー、『ブリュンヒルデ』との睦みあいがあればこそ、他の連中の毒牙にかからず今までやってこれたと思ってる」

『馬鹿みたいに噛み付いてくるメス猫にどれだけ苦労したと思ってる、この性悪!』

「そんなにカリカリすると禿げんぞ?因みにあたしは禿げてねー…さて、今回あたしが開催するのは入学してから3週間で開かれるはずだった『クラス代表戦』の穴埋めだ。2年、3年のパイロット養成科の諸君は、悪いがミーてールーだけー…ま、見るのも勉強さ。マックにあたしのアドレスを預けておいたから『交歓』したいヤツは個別に相談、ってトコロかな…マック、避妊はちゃんとしとけよぉ?」

「俺は紳士ですっての!そーいうディスりはマジ勘弁なんですけど!?ていうか本名は茨なんですけど!?」

 

アリーナに現れた猿取茨…『アンカー・スチーム』は全身のハードポイントに蜂の巣状のユニットを装備し、抗議の声を上げた。その様を彼女はニヤニヤ笑い…笑みを消すと宣誓した。

 

「ルールは簡単。最初は貸衣装組だ…持ち時間は一人1分。あたしは残り時間10秒になるまで攻撃しない。あたしの武器の補給は『メダルカップ』…マックの背負った補給ユニットから行なうが、マックを攻撃したら即失格だ。因みに蜂の巣1個1個に装備が入ってるんだ、本邦初公開だぜ…あたしに1発でも当てられるか、あたしに仕留められなかったらそいつの勝ちだ。豪華景品として勝ったヤツには『漆黒の嵐』の二つ名をくれてやる…解るか?ステイツが後ろ盾になってくれるんだ、中々のモンだろ?先着1名だが欲しいヤツは奪ったやつからもぎ取りな!さあさ最初に来るのはどんなコかなぁ?」

 

ざわつきだした観客席ににんまりとすると、虎の牙を模したネックレスを彼女はいじり…その一瞬後にはアメリカの誇る最新鋭機『ファング・クエイク』を纏い、ふわりと浮かび上がった。

 

 

「じゃあ、壕に入らば業に従え、ってヤツで名乗るとすっか…」

 

 

『遠からん者は音にも聞け、近からん者は目にも見よ!我こそは『イーリス=コーリング』なるぞ!戦乙女を志したものよ、天に満ちたるこの雨雲…払えるものなら払って魅せよ!!

 

 

                …どうだ、即興にしちゃそれっポイだろ?』

 

 

「取りあえず第3陣まではメンツは埋まった!希望機体ごとに並んで頂戴!!」

「希望武装はリストにチェック飛ばして!対物ライフルだろうがミサイルランチャーだろうが据えたげる!」

「エネルギー補給ユニット、システムオールグリーン!」

「回収班準備完了!アメリカ代表だかなんだか知らないけど、車懸でぶち当たるわよ!休憩する時間なんてあげないんだから!!」

 

 

いつもは閑散としているはずのピットは、まさに戦場だった。整備科の先輩たち、整備科担当教諭陣は一糸乱れぬ動きでパイロットたちのフォローに回る…凄いな、やはりIS関連の最高学府だけはある。

 

 

「皆さん、気負いも気後れも不要です!胸を借りるつもりでどーんと行きましょう!」

山田先生も真剣な表情で皆にアドバイスを飛ばしていく…流石は元代表候補生だ。そのブルブル震える胸なら借りる必要も無いだろうな、などと思ってしまう余裕すら出てしまう。

 

 

「みんな、ガツンといくのよ、ドカーンと!舐めてかかってる相手なんかどんなベテランだろうが怖くない!」

鈴は2組のクラスメイト達に檄を飛ばしている。彼女たちの不安そうな瞳の光は消えることは無いが確実に小さくなり、代わりに闘志の炎が宿った…代表候補生だけの事はあるな…だからそんな恨めしい表情で山田先生の胸を見るな。重いのは重いなりに苦労があるのだ。

 

 

「一番最初は簪さんか…よりにもよって先鋒かよ…」

「…大丈夫、足掻くだけ足掻いてみせる…みんな、良くモニター見ててね。きっと何かしら付け込める隙があるはず…一年四組、更識簪、行きます」

 

『ラファール・リヴァイブ』を纏った簪さんはそう宣言するとカタパルトへと向かう…授業終了後第3アリーナに集められ、唐突に言われた『課外授業』。尻込みする皆を尻目に最初に手をあげたのは簪さんだった。本人曰く『みんなに迷惑かけてるから…これ位はしないとね』…ソレを皮切りに次々と手は上がった。

 

「箒さん…ついていませんわね。まさか最後ですなんて」

「そんな事無いわよセシリア!あたしたちじゃ手も足も出ないかもしれない、でも延々戦った後なら十分に勝ち目はあるわ!最後の〆は任せたわよ、篠ノ之さん!」

「解ったからそう大声を出さないでくれ、鷹月さん…出番が次なのは解る…」

 

…そしてその代わりに提案されたのは私が殿軍になることだった。『いくら手だれとはいえ人間よ…2時間戦い続けるなんて無理にもほどがあるわ。クラス代表決定戦で見せた技の冴え、彼女に教えてあげて頂戴』…まあ、買いかぶられるほどの腕は無い。少なくとも私の前に彼女は地に塗れる確率は高いだろう。

 

 

「あー、千冬姉からの受け売りだけど…ISってのは人の心に反応するんだ。だから皆、心を強く持って、ぶつかっていくのが何より重要だと思う…ほら、授業じゃまだISの操縦法まで行ってないだろ?予習だと思って行けばいい。結果を恐れずぶち当たろうぜ!…そうだ、茨は一撃入れたことあるって言ってた!…えーと、確か…模擬戦で瞬時加速(イグニッション・ブースト)の練習をして、その時マチェットで一撃入れることが出来たって!…アリーナの茨から最新情報だ、ディズニーの『ターザン』のサボーだと思っていけって」

 

…そうだな一夏。それに彼女は一夏の手を握ろうとしたのだ!ディズニー映画の悪役のようにコミカルな敗北がお似合いだ。

 

 

 

「更識さんの交戦を確認!…がんばって!!」

 

 

 

 

「ところで布仏さん、『ターザン』のサボーとはどんなヤツだ?」

「とねー、ターザンのりょーしんとははおや代わりのゴリラの息子のカタキの豹、だったかなー」

 

 

 

 

『随分と剛毅だな…アメリカ代表の座をエサにするなど』

『ソレを言うならアグレッサー役を買って出るなんて、破格の対応よ。彼女の一手指南を願うなら、一人100万ドルは積んで頂かないとね』

『それに学園での緊急時の整備班の対応のテスト、か…全て考え無しでやり、それが理に適うからこそイーリは怖い。そして、そこまで恋焦がれるブリュンヒルデも、な』

『そこまで入れ込むとは、ブリュンヒルデも罪な女だな…アル、そちらはどうだ?』

『難しい所だ。さっさと治せば更なる対応を取られかねない、されど癒さなければ手遅れになる…それと、イーリが入れ込んでるのはブリュンヒルデだけじゃあない、『彼』もさ』

『…随分と『彼』は気に病んでいたようだがな、イーリとの関係を』

 

 

 

 

 

「ビビリすぎ!初めて『スリラー』見たオコチャマじゃあないんだから、ガツンときなよ!57番!」

「ノォォォォ!!」

 

 

 

…俺とか一夏はISを纏ってまだ2ヶ月、って所だけど女性陣はオルコットさんや鈴のようにみっちり訓練している子たちも結構いる。例えば鈴のルームメイトはニュージーランドの代表候補生だ。日本でだって倉持が中学校の生徒たちに適正の高い子達限定ではあるが特別講習を実施していたし、適正や能力の高い子達は幼稚園の時から企業や国が『囲い込み』をやってるなんて噂すらある…でも、そんなものはドングリの背比べなんだろう、ベテランにしてみれば。

 

「凍らないオイルのCMじゃあないんだからさあ、もっと熱くなりなよ!冷たいままならバナナで釘が打てるくらいクールになんな!63番!」

「オウフ!」

 

 

『課外授業』が始まってからはや2時間。休み無く黒豹女は1年生たちの攻撃をかわし続け、残り10秒で撃ち、切り払い、きっちりとカタをつけていく…休みも何も無しで延々戦い続けられるとかホント化けモンだわ、ターザンレベルじゃないときつすぎるわ。

 

「猪じゃねーンだからもう少し捻りを入れなよ!22番!!」

「アウチィ!」

 

 

…俺?いつもよりはるかに重い『アンカー・スチーム』を纏いながら補給の業務をこなしていた。ミサイルのシステムを流用しながら射出しているんだがキツイキツイ。射程範囲に納まるように、しかも速攻で補給しないといけないんだからホント死ぬ…それでも何とか動けているのはISコアの疲労軽減、体調調整等のバックアップのためなんだろう…イヤだな、解除したら筋肉痛とかで死ぬんじゃないんだろうか、俺。

 

 

 

「チャンスの後にピンチあり!油断大敵ぃ!101番!」

「すいまえんでしたー!」

 

…最後に叫んでる番号は俺が展開するコンテナのナンバーだ。射出したコンテナは黒豹女の近くで展開され、緊急補給用のカートリッジでシールドエネルギーが補給され、武装はハードポイントに自動的に接続されていく。ライフル、ランチャー、ハンマー、エナジーアックス、プラズマカノン…初めて見たよ、ショルダーマウント式のマシンガンなんて。

 

「後ろ取られようがミサイルより早く動けば何てこたぁ無いんだよ!49番!」

「やーらーれーたー」

 

 

『ファング・クエイク』は多種多様な装備を使うため代表決定戦の時の格闘用フレームではない、汎用型フレームだ…凄いね、ハンドガンでミサイルって撃墜できるんだ。パズルゲームか何かみたいに布仏さんの『メイルシュトローム』は連鎖しながら吹っ飛んでいく…絶対防御って偉大だよね。

 

(ああ、残りコンテナ26…補給用コンテナは144個あったから…ん?まだ専用機持ちとは戦っていないはずだよな?どこかで計算狂ったか!?)

1年生は1クラス30名で4組まであって120名、先週鈴が転校してきて121名のはず…お、とうとう最後か!?

 

「マック、1番だ!終わったら13番だ!」

 

射出されたコンテナから展開されたブレード…『ブッチャー・ピート』を手に取ると笑みを深める黒豹女。

 

 

カタパルトから飛び出してきたのは、打鉄を纏い、ブレードを手にしたシノさんだった。

 

 

 

 

(まさかここまで無傷とはな…ブランクは長いとはいえアメリカ代表は伊達ではない、か)

 

クラス代表決定戦の折は感じなかった『葵』…ブレードの重さが少しだけ気になってしまう…いかに鍛錬が足りないか、身につまされる…いや、自己嫌悪に浸るのは後だ、今はこの相手をいかにして倒すかだ。

ブレードを納刀し、体を着地させ、居合いに構える…一瞬だけコーリング女史は驚いたようだった…が、すぐに満面の笑みへと変る。

 

「いいのかい?」

「はい、これで結構です」

「メンドクサイのは嫌いでね。コレで良いだろ?」

「…有難うございます」

 

彼女はブレードを八双…いや、持ち手が逆だ…に構え、踏み込めば丁度切っ先が触れる位置に着地する…まさに好都合だった。

 

 

 

 

ISにおいては圧倒的に彼女のほうが経験が深い、だが、彼女にとって馴染みの薄い剣術ならば、或いは…!

 

 

 

「懐かしいねえ、ブリュンヒルデそっくりだよその構え」

 

 

           そして、彼女は音を軽く超えた。

 

 

 

 

「いやぁ、凄いっスねえ『イーリス・コーリング』。べら棒なスタミナ、必要最低限の動きだけで回避する技量、極上のエサをちらつかせ、『あえて』相性の悪い武器を選ぶことで慢心させる抜け目の無さ…敵に回したくないッスよ、ホント」

 

 

観覧席のパイロット養成科の面々は、真剣に、或いは自然体で、或いはだらけながら観戦を続けていた。

 

「それを2時間通して行なえる集中力、欠点の指摘…フォルテ、教えを乞えないのがここまで悔しいとは思わかったわ…」

「ダリル先輩、お隣の国なんだし菓子折り持参でお伺いしたらいかがっス?流石にあのボーヤは…」

「あなたはイヤなの、フォルテ?あだ名で呼ぶあたり、そこそこの関係だとは思いますよ…寝物語を聞かせるくらいには…」

「いやぁ、流石にソレはないッスよ…まあ、彼はトーシロにしては動けているとは思うッスよ、トーシロにしては…先輩、1年がぜいいん済んだら2人で乱入でもどうッス?」

 

だが、共通する点があるとするのなら、見学者全員の血の熱さだった。もしもチャンスがあるとするのなら割って入りたい、その思いを胸にぎらつく瞳を皆が輝かせている…ただ1人を除いて。

 

 

「無粋な真似は止めたほうが無難よ。何せ、日本暫定代表と倉持技研の現役テストパイロットを『1年生と同じように』あしらったのよ…119名と戦うのはおかしいでしょ?121名の1年生の中で4名は除外されているのよ」

「ああ…確かに117名じゃないとおかしいですわね…」

 

生徒会長…更識楯無は眼の下に濃い隈を作りながらどんよりと濁った瞳でアリーナを眺めつつぼやいていた。変則タッグマッチなら或いは…と淡い期待を抱いていたフォルテ・サファイア、ダリル・ケイシー両名が眼を白黒させているのにも目をくれず、生徒会長のぼやきは続いていく。

 

「まったく…ぽこじゃかぽこじゃかと面倒事を引き込んでくれちゃって…師弟揃って私の胃を破壊するつもりなの…!?」

 

「ぽこじゃかなんて単語初めて聞いたッス、何処の生まれッス会長?」

「何処だっていいでしょ!あんた言語学者!?」

 

 

 

…ちなみに『ぽこじゃか』とはアイヌ語と日本語が融合して出来た北海道の一部地域の方言である。

 




格闘美人・策謀美人


「『…ええ、はい…いずれ『モンデグロッソ』でお会いできる日を楽しみにしております…』…袖にされちゃったわ、虚」
「カムバックしたアメリカ代表からですか…大舞台でこそ雌雄を決したい、と?」
「『東西超大国がカメラの無い場所で雌雄を決しても意味は無い』だなんて…言ってくれるじゃない」





「何が『学園最強は強いヤツとは戦わないから最強なんだろ?万一負けたら立つ瀬が無いだろ?アラスカのキングサーモン送るからそれでも齧ってな』よ!?私鮭アレルギーなのよ!?」
「ご馳走様です、お嬢様」
「誰もあげるとは言ってない!」
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