俺の待ってた非日常と違う   作:陣陽

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ときわにまもる きみがみよかな

「『大切な人』を守ってくれた『恩人』…どうやら簪様は猿取君の本命ではないですね」
「猿取君も身の程知らずではなかったm…」
「…しかしながら、簪様は明らかに心惹かれています…このままでは悲劇的が結末が待ち受けているかと…」
「何でよ!?簪ちゃんは他の子や猿取君に牙を剥くような子じゃないわよ!?」
「いえ…」

※ダイジェストでお楽しみください

『や…止めてよ簪さん…俺には心に決めた人が…女の子がそんな…おかしいよ…っつう…』
『フフ…苦ぁい…そんな事言ってこっちは正直よ…』
『それは生理現象で…ひぅ!?』
『ねぇ猿取君…つき合う男の子がドーテーじゃ、女の子も嫌がると思うんだ…大丈夫、ちゃんとつけてもらえるように用意してるから』


「参考資料に基づけば、このような凶行に簪様が…」
「何よその紙芝居!?何処のエロマンガよ!簪ちゃんは私と同じようにピュアでラブリーなのよ!そんな事するわけないじゃない!」
「…そういえば、私の名前で何冊も本を代引きしていましたね、お屋敷では…」
「そ…そんな事はどうでも良い!」


「どーしたんです?かいちょー…おねーちゃんととっくみ合って…おねーちゃん、けーさつ呼ぶー?」
「何ナチュラルにディスってるのよ!?」
「…ごめんなさいね本音…大人になるって…悲しいことね…」
「そんなことよりかいちょー!一郎おじ様から連絡です。『ヘラクレスは姓を譲った』です…どーいう意味でしょ?」
「!?…じゃあ、すみれに伝えて頂戴。『刃も弓矢も使うに値せず』…これでいいわ」


友誼、遊戯、勇義

「しっかし…お前と一夏除いて皆が女だなんてなぁ。しかもそろいも揃って美人ばっかり…」

「おいおい、用務員さんや警備の人たち、食堂のスタッフの人達には男もいるし恋愛禁止じゃないから彼氏持ちの子やイイトコの子には婚約者がいる子だって居たぜ?ゲームやアニメじゃあるまいし女ばっかりハーレム天国ってことはないって」

 

中間テストが終わった後の土曜日、俺は久々に家に帰ってマンションの共有区画の掃除や駐車場の草むしりといったお手伝いをした後、弾の家に遊びに来ていた…ホント、幼馴染にすら言えない秘密抱えて生きていくってのはどうなんだ?それが『世界の平和のため日夜孤独に戦う仮面のヒーロー』とかじゃなく、『友人とその姉の背徳の関係を清算し、自分の愛する女性と姉を結ばせる』…うん、軽蔑どころか正気を疑われるレベルだ。

…テストの結果?何とか平均70点、通信簿の数値で言えば3以下はなかったんだけど目出度く最下位から2番目と最下位を俺と一夏で独占してたよ!何だよ平均90点てのは!?100点取る子が半数以上ってどんな世界だよ!?滅茶苦茶頭いいじゃないか!?『日曜日は特別講習を行ないます、猿取君も織斑君も今までの遅れを取り戻しましょうね』って宣言したピクシー…有難う。意図したのかは知らないけど一夏から織斑先生分を抜く絶好の策だよ!

 

 

「鈴にオルコットさんや篠ノ之さん、更識さんに布仏さんだっけ?あの後2回くらいメシ食いに来たけど…ホント一夏も無欲というか草食系だよな…っと!つーか今のハメだろ!?うちのシマじゃノーカンだぜ!」

 

 

いや…何つーのかな…みんな紫ネームだって事気付かないで釣ってる状態なんだよ…何とかして黄色ネームに戻さないといけないんだよ、うん…

 

 

 

「…ガッツリ行ったらとんでもないことになんのよ、ハニトラや女の嫉妬は怖いぜー…というかキャラ性能を覆すにはコレくらいは許してよ、って負けてるし…そんな弾にはコイツをプレゼントだ、南蛮渡来のリージョンフリーだから日本のゲーム機でもノープロブレムってやつ」

「スゲェ!!?アルティメット・エディションか!!」

ナップザックから取り出したディスクをいそいそとゲーム機に入れる弾。AOAの錬成講習の時に予約しといて正解だったよホント。コンシューマー版は日本じゃプレミアがついて数万円だしPC版はウン十万円するゲーミングPCじゃないとガクガクだしな…日本のメーカー製なのに日本では売られていないってどういうことなんでしょ。

 

…さっきまで俺と弾が対戦していた3D対戦アクションシューティング『IS/VS』(インフィニット・ストラトス/ヴァースト・スカイ)は日本版なんだが、実は最新版って訳でもない…実は国際大会を開こうとしたときそれぞれの『モンドグロッソ』参加国毎にバージョンを作ってたのが災いして、どのバージョンでも角が立ち…『じゃあぜいいん最強にすりゃあいいじゃねぇか』という納期優先のコンセプトの下史上最強にイカレたゲームが出来上がり、肝心の世界大会は下手なドキュメンタリーが裸足で逃げ出す代物となってしまったのだ。

 

『CPU戦は1面からラスボス』

『死ななきゃ安い、死んでも安い』

『このゲームではリアルファイトは起こらない、戦うことこそが感動なのだ』

 

…初めて見たよ、勝った側も負けた側も涙を流すゲームなんて…ただ、日本では実装されていなかった織斑先生の『暮桜』をモチーフにした『イブニング・ブロッサム』が物議をかもし日本語のコンシューマー版は発売の目処が立っておらず、英語のPC版が馬鹿売れしている実情なのである…なんつーか、商売ヘタだな。

 

「す、スゲェ!1面の『打鉄』でもここまで動きが…ていうかCPU動き良すぎだろ!?少しでも気を緩ませたら殺しに来るぞ!?」

「それがきゅーきょくのゆえんってヤツかもなー」

 

…ゲームとしては破綻してるんだけど凄くリアルなんだよな、コレは。中の人のレベルでいくらでも戦局をひっくり返せるし、油断するとあっという間にひっくり返される。

 

 

「お兄も茨もお昼!冷めたらお爺ちゃん雷落とすわよ!」

 

おお、我等が蘭ちゃんが大目玉だ。それではお食事といきますか…皆と来た時はお金払ってたけど、今日はお金払ったら怒るだろうな、弾のジーちゃん…80超えてるのにうちのジーちゃんと同年代にしか見えないわ、ホント…

 

 

「おお茨!2時間ぶりじゃの!」

「ダメじゃないの蘭ちゃん!?見なさい2りの顔を!明らかに不完全燃焼じゃないの!ソースはないけどきっとそう!」

「は!?そりゃねーって茨のバーちゃん!」

「やっぱり…そうだったんだ…お兄も茨も不潔よ!」

「…そりゃオムライスにはケチャップだろうが。ソースなんて聞いたことねぇぞ、あやめ」

 

ああそっか…今日はジーちゃんとバーちゃんは五反田食堂で食事をする日だっけ…ホント、家族ぐるみ、3代の付き合いなんだよな。というか、うちのジーちゃんバーちゃんと弾のジーちゃんは20歳は違うのに何処で知り合ったんだろ?時々聞いてはいるんだが、3人とも教えてくれないんだよな…御免なさい弾のジーちゃん苦虫3割り増しにしちゃって。相変わらずお騒がせしております…そっか、今日はオムライスで決定か、お昼は…

 

 

「…高校の時に身をもって教えたの忘れたのがゴンにあやめ?うちでメシ食う時は…」

「モチロン承知ですじゃ!」

「ああ…あの時のゲンさんもゴンちゃんも素敵だったわ…関係が無いほうがおかしいくらい…ごめんなさいね茨、おバーちゃんの遺伝子が濃くて…」

「ゴン、製造物責任法って知ってるか…」

「あ、あやめちゃんは初見からこんな感じじゃったと思いますじゃ、ゲンさん!…な、蓮ちゃん!?」

「すみれと蓮が生まれたのはおなj…」

「おじいちゃん達、何か言った?」

 

「「「何も言っておりません」」」

 

「…青春を共に過ごしてきた3り、羨ましいですねぇ」

 

…まあ、ジーちゃんとバーちゃんは同じ高校に通ってたから、ご飯食べにココに来てたのかもな…母は強し、なのかな…

 

 

 

 

…同い年なのか、うちのお母さんと弾のお母さん…

 

 

 

χ

 

 

さて、ISコアは467個しか存在せず、他方国連加盟国数は193カ国である。等分すれば各国辺り2.4個しか割り当たらない…しかしながら、アメリカでは各州ごとに代表を立て、AOAに開発用のコアを割り当てることが出来るだけのコアを占有し、日本、フランス、ドイツ、ロシア、中国、イタリア、イギリスも割り当てを遥かに超えるコアを占有している…そこには、あるカラクリが在った。

支離滅裂な論文と日本語のみのプレゼンで世に発表されたISは、万能細胞を使用した架空の手術や幻の万能細胞、或いは第1種永久機関と同じ扱いを受けた…即ち、『ペテン』であり、研究用に送りつけられたISコアを胡散臭げに仕舞いこんだ研究機関を持つ国はまさに僥倖といって良かった。大多数の国は廃棄物を送りつけられた感覚であり、買取を打診してきたアメリカに、日本に、ドイツに…ISを開発した8カ国に売り渡し、思っても見ない臨時収入にホクホクしていた。

 

 

自分が、どれだけ大損をしたのかも知らないまま。

売り渡した代物が、死と、破壊を振りまくどれだけの災厄かを知らないまま。

 

 

 

 

 

 

「相変わらず絶品ですなぁ、ゲンさんのオムライス…茨は相変わらずの早飯でもう少し味わえばええんですが。昔と変らぬ…アタタタ何故そこでホッペタ引っ張るんじゃあやめちゃん!」

「何馬鹿なこと言ってるのよゴンちゃん。日々進歩しているのよゲンさんの腕は!!…ココだったわよね、籍入れた時に晩餐会やった席。ゲンさんがいて、ゴンちゃんがいて、私がいて、雪ちゃん先生がいて…御免なさい、タバスコ入っていたかしら…」

「何で泣くんだよ、あやめ。遅いか早いかの違いだろうが…オメーラより10は年上だったんだぞ、雪は。ソレでなくても俺は置いてかれたんだ。オメーらが先に逢いに行ったらゲンコツしてたたき起こしてやっからな!…クソ、逆光が眩しいじゃねえか…」

「今夜店が閉まったらまたお邪魔しますじゃ…ええ酒が手に入りましてな。ああ、ワシは見ているだけで…」

「ダメですよすみれちゃんのパパ。介抱なら私がします」

 

 

「で、どうだったよ茨?入学1月経って」

「…忙しすぎて目が回りそう。授業が終わったらトレーニング、晩飯がすんだら予習と復習…金曜の夜には生徒会のお仕事もあるし、日曜日には今までの遅れを取り戻す特別講習も開かれるし、ここまでとは思わなかった…」

昔ばなしに花が咲くジーちゃんたちを置いて俺たち3りは『レゾナンス』へと向かい、ぶらぶらと店先を冷やかしていた…充実してはいる、いるんだがとにかくしんどいのだ。

 

「で、どうなのさ、茨?あたしがIS学園受けるってこと…」

「そりゃあ蘭、このままマリアンヌにいたほうがイイに決まってる!」

「お兄には聞いてない!」

 

キーキーウルサイ割には仲いいな、2りとも…俺に言えること、か…

 

 

「錬成講習の時の教官がこの間来てさ、学園の皆に言ったんだ。『IS学園は女が女らしく生きていくためにはサイコーの知識と能力、そして格を身につけられる場所だ』ってさ…蘭ちゃん、エリート中のエリートが集う場所だけど、3年間頑張って卒業すればマリアンヌにい続けるよりもきっと就職でも進学でも有利になるよ」

「…にしては熱烈におススメしてなさそうじゃない」

「…まあ、ね…蘭ちゃんは一夏と…その…恋人になりたいだろ?」

うなずく蘭ちゃんをチラリと見ると、俺は言葉を続けていく。

 

「来年入学すれば、蘭ちゃんは120名いる後輩の1り、入学しなかったとしたら数少ない旧友の妹、これが蘭ちゃんのポジになるわけよ…どっちをえらぶにしても、もう少し考えて答えをだしなよ…若い時のしくじりほど取り返しがつかないんだから」

 

俺は言えなかった。

 

 

黒豹女が言っていたもう2つの言葉を。

 

『ISは最新のモード服でもF1マシンでもない、人殺しの兵器だ』ってことを。

 

『友達がISを纏ってイカレたら躊躇なく殺し…或いは自分がイカレたら友達に殺されても後悔しない』ってことを。

 

Ψ

 

『ヘラクレスは、娘に姓を与えたそうだ』

『ほう…彼は入り婿、身上なぞ興味は無いと思っていたが…』

『ティリンスは…彼が帰るべき場所は壊されてしまったのよ。なら、トロイアでもエジプトでも攻め滅ぼそうとするのは自明の理よ』

『…『更識』からの提言だ。『刃も弓矢も使うに値せず…ハイドラの血潮こそふさわしい』…相変わらずのえげつなさよ』

「僕からも1件。エイムズの未練がドイツからやってくる。『醜き兵』も一緒にな」

『…もう半年か、エイブが召されて』

「…安心してくれ、死者の願いは絶対にかなえて見せる…僕は生者に願いを託されたことは多々有れど、死者から願いを託されたことはないんだ」

 




Narcisse blanc

『シャル、これは母さんからのプレゼント』
『ホントに!?これって…』
『女なら誰しもこの香りに包まれたい、そう願う香りよ…お外でちょっと待ってて頂戴ね、もうちょっとだけお買い物をしたいの』
私は母さんの言葉にうなずき、ドキドキしながらシャロン本店の外に走っていった。



…なんて馬鹿だったんだろう、私は。
お店を眺めていれば、せめて、せめてゆっくり歩いていたとしたら、お母さんと一緒に、木っ端微塵になれていたのに、幸せなまま死ねたのに。

『この泥部猫!売女!』
『いくら左前だからって、あんな子をねぇ…美味そうだけどさぁ』
『ボテ腹にされちまえばコッチのモンだって社長は踏んでんだろうよ』

あんな嫌な奴等と、関わらないまま死ねていたのに。

『そっか…IS学園でもよろしくな、シャルル!』
…あんな人のよさそうな子を、騙さずに済むのに…
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