俺の待ってた非日常と違う   作:陣陽

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…君が人恋しくなるとはね、エイブ。いよいよかい?


『真夜中に大儀なことだ、バーバウズ君…言っておくが、決定は覆らない。『混ぜモノ』は全て除隊、そして『合成モノ』は廃棄処分だ』
『…政府は、『越界の瞳』(ヴォーダン・オージェ)を搭載しろと。アレは人間のメンタリティでは到底耐えられる代物では無い…先生はそう仰っていたはずですが』
『ああ。私もそう思う。どうやらドイツはヒトデナシの国へと成り下がったようだ…そこまで彼女を憎むとは…』


…そうか。ドイツも日本と同じ、小兵ゆえの大跳躍か。『醜き兵』『越界の瞳』…そうか、小兵は小兵同士組めば良いものを毛嫌いするとは業が深い。


『ですので、『越界の瞳』…皆に移植を施しました。今は麻酔で深く眠っております』
『馬鹿なことを!アレが人間に耐えられる代物でないことは君とて重々承知だろう!なのに』
『娘を思う親の思いは馬鹿なのですか!?私は子供は産めません!だから、私は…』

それだけじゃないだろ?…そうか、お前も親になれたのか。

『だからIPS細胞から『合成モノ』を作り上げたのか!?もう少し君はクレバーだと思ったが…』
『もっと愚かです、私は…先生の体細胞から精子を作り出しました。あの子は…』
『…皆まで言うな。何故そんな真似をした!私は人でなしだ。生殖機能を持たぬまま生まれた。人の親にも夫にもなれぬからこそ業を重ねてこられた!』



…そうじゃないさ、愛おしく思えたのだろう?ならそれは家族だ。


『先生を愛している、それでは不足ですか!?先生が人でなし?そんな事はありません!何時だって私たち教え子を見守って…』
『故にここに至るという訳だ。『醜き兵』、『越界の瞳』…どれだけの災厄を招くか知りながら、君たちを邪魔するまいと思い、何も出来なんだ…彼女たちを凡人へと戻す、ソレが君の願いか』
『はい…それ以外は、あの子達の新しい未来以外は望みません』


人殺しとしての贖罪?…違うよ、二度と逢えぬものへの哀悼だろう?


『施術は終わった…君はどうする気だ。これで君の科学者としての、医師としての未来は終わる』
『ですので人生も終わらせます。叡智を求めたオーディンの如く』
『…自殺者は神の国には行けない…せめて椅子を蹴倒す仕事ぐらいはしてやろう…済まなかった、ハール』
『有難うございます…博士…いえ、エイブ』

分かった…今からそっちに行く。コッチも退屈でね。最後の話し相手くらいにはなってあげるよ。



Blue-Monday Before The Blue-Moon Day

…どうやらゲスジジイたちはシノさんたちが部屋に向かうことを確認するとワイヤーガンで寮の屋上に向かい、電子制御の天窓をクラッキングして今か今かと待ち続けていたらしい。だからってロールシャッハのコスプレはないだろうゲスジジイ。1Hyde位しかないだろうがゲスジジイ。

 

「いやいや血は争えないねベビーフェイス!デュノア社にとっては『イグニッション・プラン』は参加するだけバカを見る、こんな当たり前のことに気付かないアホなエコノミストがどれだけ多いことか!」

 

米 ダイジェストでお楽しみくだしあ

 

ICK『CRLぅ!オマエはルームメイトなんだから勿論いいよなぁ…』

CRL『ちょっと!ICK落ち着いてよ!お願いやめて!ヤダ!ヤダよ!こんなのが初めてだなんて…』

ICK『つべこべ言わずにケツを出せよ!…!?…嘘だ!CRLがメスだなんて…こんなの絶対許されない!』

CRL『【えーっと…】』

 

 

「だけど男に対してのケダモノぶりは見てるコッチもドン引きしたよベビーフェイス!あんなふうに毎晩啼かされてるんだねトレイニー!下半身剥かれた挙げ句指一本触れられないなんてアワレだったねマドモアゼル!」

 

《アア…ソウイウ…》

《ナルホド、ナ…ソウイウ関係ダッタノカ…》

《カワイソウナ一夏サン…ワタクシノ体デ正気二モドシテサシアゲマスワ…》

《ホウ…本日コノ日ガ小娘タチノ命日カ…》

《ああ…素敵です先輩…》

 

「何でそうなるんだよ!俺も一夏もノーマルですっての!」

 

俺と一夏の部屋は、これまでにないほどの殺意に溢れていた…何いきなりネガ工作してるんだよゲスジジイ!目で殺すってこういうのなんですか明らかに視線で痛覚が反応してんですけど!?織斑先生、とっくに一夏の心も体もモノにしてるのにそれは無いでしょうどうなんですか!?それと山田先生、ちょっと嬉しそうに見えるのは俺の気のせいですよねそうですよね!?

 

「勉強することを最初に勧めてくれたのは茨だし、箒やセシリアや鈴だって俺の勉強に付き合ってくれた、だから気付けたんだよジイさん。それと、そういうからかいは意味ないぜ…それより千冬姉、どうゆうことなんだよ!?どうして俺に…」

「そうです織斑先生。ボクの父がこんなバカバカしいことを企てたのを知っていたのなら、どうして、どうして!」

 

だよな一夏!そんな事にかまけてる暇なんてないはずなんだ!デュノア君、いいよその表情と立ち居地そのまま行けたらヒロイン決定だよデュノア君!…な、ああいうのが足りないんだよ『淑女協定』の諸君…ああいうのだよ男が弱いのは!

 

 

「…山田先生、説明を頼む」

 

素に戻り、腕を組みながら俺達一同を睥睨し、仁王立ちのままそう切り捨てる織斑先生…いや『超然』って言葉がホント似合いますよ…そして説明を始めようとした山田先生を妨害するかのようにゲスジジイは声を上げる。

 

 

「いやいやメガネ先生!ボクが言うのが一番イイんじゃないかな!ホラ、ツノが立たないスミ立たないって言うんだろこういう時こういう時?」

「は…はいわかりました、アークライト博士…」

 

それをいうなら『角(カド)』だろうがゲスジジイ…

 

「…ん?出て行かないのエブリバディ?少なくともヤマトナデシコとレディとクーニャンは…」

 

「ていうかココまで来て『出て行け』とかあんまりだろ…」

「ふざけないでよゲスジジイ!こんなことされてココではいサヨウナラなんて納得いかないわよ!」

「全くですわね。どのような陰謀を企んでいるのか…是非ともお伺いいたしたいですわ」

「そうだ。男達の住処に女を放り込むなど…もし事故が起きたらどうする気だったんです!」

「ジイさん、聞かせたいからわざわざ俺らが揃うまで待ってたんだろ?聞かせてくれよ」

 

 

「オーケイオーケイエブリバディ!聞いたからには一蓮托生後戻りは出来ないよぉ?」

 

鈴の、セシリアの、そしてシノさんや俺たちの敵意や胡散臭げな視線すら燃料に出来るんだ、有る意味大物なんだろうゲスジジイは。うねうねと動く白黒マスクを脱ぎ、俺たちの視線を十分に意識すると、わざわざロフトに上ると咳払いを一つし、ゲスジジイは喜色満面で大演説をぶち始めたのだった。

 

 

「さて諸君!折角来た男子が女子だったというがっかりなイベントご愁傷様!だけどさ、これにはフカーイ訳があるんだ!そしてボク達AOAにも滅茶苦茶関係してるんだ!何せウチの社長からの直々の命令だったんだ、リーマンとしてのボクとしては絶対服従スルっきゃないって訳さ…質問タイムは随時設けるからご清聴ヨロシク!」

 

「アークライト博士、どのような命令だったんです?…その…」

「気になっちゃうかー、そっかー…デュノア社社長が最優先したのは…君の命なんだよマドモアゼル!

…タイトルは『親子愛』悲しい悲しい父親と母親の物語さ」

 

 

 

 

 

「さて諸君!まずはデュノア社の成り立ちからお伝えしよう!フランスはww2で薄汚いナチに占領されたんだが…それを良しとしない硬骨漢も少なからず居たんだ。その最右翼がデュノア社先代社長テオドール・デュノアだった!元々はフランス造兵廠ル・マン工場に勤めるしがない1社員だったんだが、故郷を蹂躙する腐ったキャベツ共を許せない熱いヤツだったんだ!」

 

『…しかしまあ、惨い話だ。お三時のクレープの食中毒でお陀仏たぁな…』

 

「…まあ、手段自体は戦争協力者だって刺されてもおかしくない手段だったんだけどね。彼の実家はカルナックに在ったんだが綺麗ドコロが『知り合い』には沢山いたのさ!水がイイからかなイイからかな?そこで軍票お断りの『パーラーハウス』(高級売春窟)を『昔なじみ』に運営させて、レジスタンスのアジトに仕立て上げ…ドイツのマルクやらかわいそうなユダヤ人の略奪品を少なからず奪い返した…コール・ガールへの皆様へのささやかなプレゼントとしてね!そしてなにより『寝物語』から玉石様々な情報を引き出しそこから連合国を勝利へ導いたんだ!V2ロケットの発射基地の場所から『史上最大の作戦』の候補地まで引っ張り出せたなんてナカナカ凄いだろ!そして薄汚いナチやその走狗の『お得意様』のあぶり出しにはこれ以上無いくらい役に立てたのさ!ピロー・トークほど口が軽くなるのはホント情けないよね!セックスの後にオスがメスに食い殺されるカマキリを人間もバカには出来ないね出来ないね!」

 

『…違う。アレルギーだ?…にしちゃあおかしいだろ。ガイシャは全員小麦粉にはアレルギーは持ってないってお前言ってただろ…』

 

「そして戦後はその功績で、というよりは女衒の口止めとして…兵器廠を統合して作られたデュノア社の初代社長となったわけだ。彼ぐらいだろうよフランス政府重鎮たちの『お好み』を仔細ご存知だったのはさ。大臣の某サンなんかは指を入れられないと満足できないとかさ!その後もその時のコネを有効に活用しながら辣腕振りを発揮し、遮二無二ライバル企業を買収しつつ業績を拡大させてった訳だ…『ティラン(暴君)』なんて呼ばれたのも頷けるだろ?」

 

『それにさ、もしアレルギーが発症したとしたらよ…普通2回目に起きるもんじゃねえのか?…そうそうアナンフィラキーショックってのがよ』

 

「だが、彼にも弱味が有ったんだ。後継者が居なかったんだよ…信頼できる部下がいなかったわけじゃあない、彼の後を継げる嗣子さ。弱みを握られてた連中は『梅毒で子種をヤラレタ』なんて陰口叩いてたけど、彼は『処女』しかお相手にしなかった。タフな男ではあったんだがブッチャケ『当たりにくい』体質ってヤツだったのさ。『他人』ってモノを信用できない人間ってのはアワレなもんでさ、実子が出来なくて出来なくてピチピチの嫁さんやら愛人をとっかえひっかえして実子である娘が出来たのは結局60歳の坂を越えた辺りってわけなのさ…さてマドモアゼル、君が会った『本妻』って人はドッチだった?」

 

「…こっちです、こっちの女性です…」

 

モデルばりにすらっとした体型、ストレートの腰まである金髪の美女、もう一方は寸胴の体型にくしゃくしゃに縮れた黒髪のまさに肝っ玉カーチャン…ゲスジジイが白衣のポケットから取り出しデュノア君に見せびらかした2枚の写真に写った女性は、同じ白人ではあったがまさに対照的であった。黒髪のオバちゃんのほうを指差したデュノア君に生温かい視線をくれると、ゲスジジイはにこやかな笑みを深くし言葉を続けていく…いや、どうしたよデュノアさん?どちかというと金髪の女性のほうをみてあからさまに動揺してたぞ?

 

「しかしながら一粒種であるドゥニーズが生まれてもデュノア社にとっての苦難ってのはまだまだ続く!冷戦が終結してからこっち中々業務規模は拡大せず、むしろフランスを初めとするオトクイさんの予算は削られていく!シビリアン・コントロールは何処の国でも働いてるから金喰い虫の軍事なんて真っ先に削られるアワレなジャンルだった…そこで現れたのが今回のクライアントにしてデュノア社現社長エルキュール・デュノア…旧名ハーキュリーズ・クラークだったのさ!知ってる人は知ってるだろうけど、彼は元々アメリカン!ダブりながらでもMIT(マサチューセツ工科大学)を卒業できる頭はあったんだが、博士課程に行くガラじゃなくビジネスの世界に飛び込み…運よく拾われたのはデュノア社だったって訳だ」

 

『ソレじゃない?…外部の要素が関わってアナンフィラキシーショックを起こす体質になっていた?…つまり一服盛られたのか』

 

「実のところを言えばね…デュノア社じゃなきゃダメな理由があったのさ、ハーキュリーズには。意外とアクティブな男なんだよ…懐具合なんて気にせずに夏休みやら冬休みやらにはヨーロッパに遠出してヒッチハイク旅行をして、ゼミにたんまりお土産を持ってくる位にはさ。イギリス経由でフランスのカルナックに来たはいいがその時にはスカンピンでねぇ…その頃にはデュノア社の別荘になってた『パーラーハウス』で夏休み中住み込みのバイトをしてそこの年上の『マドンナ』に恋をした、それが16年前のお話さ…マドモアゼルには懐かしい場所だろ地名だろ?」

 

『何?…要素が多すぎて絞り込めないのか…違う?』

 

「で、何とかデュノア社に入社できたはいいが景気は左前、持ち前のセンスと努力、『マドンナ』への憧憬ってヤツで装備部開発課企画係長なんていう30のヒヨッコとしちゃあ出世争いじゃあ中々の位置には居たんだが、どうにもヤンキーじゃあその後の展望は知れたものだった…その時だったんだよ『白騎士事件』『不孝な事故』が起きたのはさ』

 

『年単位で蓄積された要素が複雑に絡み合い、最後のトリガーがクレープとリンゴや梨のシロップ煮と生クリームで、しかもそれは他の物じゃダメで、ガイシャが食った成分じゃあなきゃダメだった?何だよそれ…』

 

「中々の辣腕ぶりだったよ、『ヘラクレス』(狂王)は。AOAの開発チームにゼミで見知った名前がいるのを確認すると渡りをつけ、会社の名義で天文学的な融資を受けると昔のゼミ生のコネでAOAのスタッフを結構な人数引抜き、別件の名称で開発施設を作り上げ…社長に直談判したのさ。お陰で第1世代機最終作『ラファール』は世に生まれ、デュノア社はIS開発の雄となった!」

「ちょっと待ってくださいアークライト博士。以前『ヘッドハンティングをしようとした他国はうまくいかなかった、ドルは世界一強い貨幣だ』…そのようなことを言っていたのは嘘ですか?」

「…確かに、AOAから相当数のスタッフが引抜かれたのは存じておりますが、同窓生であっただけでは引抜きが出来るとは…」

 

シノさんとセシリアの突っ込みを心待ちにしていたのだろう、ゲスジジイは笑みを浮かべたまま嘯き続けていく…なんだろう、これ以上聞いていいものなんだろうか。

 

「簡単さ簡単さ!『ヘラクレス』はね、『功名心』と『罪悪感』に訴えかけたのさ!ドコも同じだろうけど、ISはありとあらゆる科学によって作られるし、大体100チームが関わって作られる!そんでもって一つのチームは百名単位なんだよ。トップやビリッケツはともかく、30番くらいの人間は思うわけさ『このままでいいのかなぁ、もっと活躍したいなぁ…』なんてさ。それに、『自分たちはヒトゴロシの片棒は担ぎたくない』そんなナイーブな連中は結構居たんだよ!『これは宇宙服のはずだった』みたいにね!…さてレディ!『ラファール』が革新的だったのはどこだと思う?」

「は…はい。後付装備(イコライザ)の概念を作り上げたことです…」

 

いきなり話を振られたセシリアが目を白黒させながら返答するのをゲスジジイはウィンクで返す…キレルな俺、キレたら負けだ…

 

「ご名答!第1世代のISは、基本装備(プリセット)の武装のみで戦ってる状態で、しかも相互に使える仕様じゃあなかった!後付装備(イコライザ)のシステムは武装がISに合わせるから、使用者が使用許諾(アンロック)を行なえば、例えば『メイルシュトローム』『タイガー・シャーク』『ラファール・リヴァイブ』が1丁の『レッドパレット』を使いまわす事だって可能だったし、戦車より機関銃のほうがより安く作り上げられるのと同じ理屈で、比較にならない位軽い投資額でIS産業に乗り出せたってわけだ!こいつの特許を取得したお陰で莫大な特許料が入り、ラファールの後継機たる『ラファール・リヴァイブ』は『平和的なIS』としてシェア3位をたたき出し、デュノア社は融資を、それ以外の負債を返し、莫大な利益が流れ込み…『ヘラクレス』の不幸が始まったわけだ」

 

『…このヤマを追いたい?…やめとけ。死んだのはたった2人だ…』

 

「何でだよ?その…ヘラクレスって人は…」

「確かに経済的には豊かになったよベビーフェイス!でもね、いくらポッケにお金があっても不幸せな奴はいるんだよいるんだよ!第1の不幸!『彼は派閥の長になってしまった!』いいかい、朝食のシリアルや歯磨き粉のパッケージにISが描かれてるだけで売り上げは3%伸びる、なんて試算があるんだ!金の集まる所には人が集まり、そこには嫉妬と憎悪が向かうんだよ向かうんだよ。彼はプロジェクトリーダーであり…社内であっというまに形成された『IS派』の領袖となった!なあ考えてもみなよ、入社十年にも満たないヒヨッコが会社の利益の7割をたたき出す新事業を立ち上げた…君が先輩上司ならどう思う?後輩なら?部下なら?彼は味方も敵もとんでもない数に増えたんだよ増えたんだよ!第2の不幸!『マドンナとの離別!』彼は偉くなりすぎてしまったんだよ、『別荘の管理人』とは釣り合わないほどにね!マドンナから別れを切り出され、彼はそれを受け入れた…ま、母一人子一人遊んで暮らせるだけのお金は毎月ふりこまれてはいたんだけどねだけどね」

 

 

『シャロン本店が吹っ飛ばされたヤマ、うちの腕っこきたちが追ってたが相当数飛ばされた…何故だと思う?裏にとんでもないシロモノが巣食ってるんだよ』

 

「そして決定的な第3!『狂王』は『暴君』に後継者としてマークされてしまった!『これだけの稼ぎをたたき出せた男だ、娘の婿としてもふさわしい』そう考えたんだ!無論、彼には断ることなど出来なかった!だが、まかり間違ってでも妊娠させることが出来ないように精巣から精嚢への管を外科手術的に閉塞させたんだよ、『マドンナ』と別れた後に!操を立てたんだろうねぇ…ま、それでもドゥニーズは『跡取り』をこしらえてはいたんだ不思議だね不思議だね!…どうだいエブリバディ、これ以上聴くかい?大人の汚く、醜く、愛に溢れたお話を?幻滅したくないならこれ以上聞くのはおススメしないよマドモアゼル?」

 

…なんだろう、これ以上聞いたら後戻り出来なくなりそうな気がする。でもココまで聞いたんだ、最後まで聞いたって結果は同じだろう。

 

「…お前たち、これ以上聞くなら一つだけ約束してくれ。何があってもデュノアの味方でいてやってくれ…教師としてではない、人として…女としての私の願いだ」

 

…あの『ブリュンヒルデ』が、織斑先生が、瞳を滲ませながら俺達に訴えかけている。それにいの一番に答えたのは…やはり一夏だった。

 

「当たり前だよ千冬姉!何があっても俺はシャルルを守ってやる!」

「ありがとう、一夏…」

「そ、そうだよな!折角出来たクラスメイトだし、守ってやらないとな!及ばずながら俺もデュノアさんを守らせてもらうぜ!」

《涙目のセンパイ…最高です…》

 

 

 

あえて『ルームメイト』とは言わなかったんだ!だからそんな目で俺たちを睨まないでくれよ『淑女協定』の皆!一夏が一生懸命なのは織斑先生からお願いされたからなんだよ!山田先生感極まって失神してる場合じゃないですよ!

 

「勿論です」

「当然ですわ」

「当たり前です!」

「オーケーオーケーエブリバディ!…その前に冷たいものでもご馳走しておくれよトレイニー!コーラでもクリームソーダでもゲッコレードでもイイからさイイからさ!」

「冷蔵庫に入ってるから適当に飲んでくれよゲスジジイ…」

 




良き旅を

「『いやいや、そこまで元気な部下は中々得がたいものです…安心してください!『出向』された皆様はキチンとパリに戻して差し上げます…もちろんです、はい、では失礼いたします』…やっぱり嗅ぎ付ける人はいるもんだね、うちに欲しい人材だよ…ま、パリ警視庁だって有能な人材は中々手放さないだろうけどさ」
「で、その呼び水がデュノア社の頑迷固陋な皆様、ね…まあ、少なくともそれだけの事をしたんですもの、それなりの結果はうけいれていただかないといけないわよね…チケットは取れたわ。私と『ヘラクレス』の二人旅…一郎さんは?」
「僕は『後片付け』さ。それと、『後顧の憂い』は断てるだけ断っておく」
「…気をつけてね」

「ありがとう…それともう一件。






                『副社長』も、『ご子息』も、召されたそうだ」
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