「…んー、たしかにいばらんがかいちょーとイチャついてたってゆーのは、なさそーだね…」
「ううう…やっと信じてくれたのか、布仏さん…信じてくれよ簪さん…絞め殺されるようなこんなイチャつきがあってたまるかよ…」
「そうよ悪い冗談にもほどがあるわ何でよりにもよってこんなタラシとイチャつかないといけないのかしらお見合いの依頼は山のように毎週来るのよ良物件を断り続けてるのにシャケの皮並みの価値しかないコイツなんて関わる価値なんて1銭も無いわ」
(!!私がシャケの皮が好物なの、知ってて!?)
(そのネガこーさくは逆効果だと思いますよー、かんちゃんのこーぶつ、知らないでしょかいちょー…)
◇
「ここは…どこだ?」
「お目覚めかい、ここはAOAのIS学園における根拠地さ…元気そうで安心したよ。バイタルデータに異常は無いそうだ…どうしたんだい?狐に化かされたような顔して」
「夢を見ていた…私を止めてくれた、過ちを正してくれた…」
「織斑君の夢かい?それとも家族かい?別に少年少女なら変な話じゃあないだろ。かくいう僕だってワイフと娘夫婦が夢枕に稀に良く出てくるしね」
「違う!こんな、機械の…兵器の…出来損ないの…」
「…エイブもバーバウズ君も、一度だって君を機械扱いなんてしなかったはずさ。君が良く知ってるはずだよ」
「!!…あ、あの!?何処で二人を!貴方は一体!?」
「それはもうちょっと後のお楽しみさ、じゃあね…ん?…おおこのままじゃあトレイニーが涙の海で溺れ死んじゃうじゃないか!さあとくと味わいたまえボーイ&ガールズ!ミル・マスカラスをも唸らせたフライング・ボディ・プレス!!」
◇
「!!そうなんだ…茨君がいるから、ずっと断りを入れてたんだ…お姉ちゃんも茨君も嫌い、だいっ嫌い…」
「わかったわ今からこのタラシをぶっ殺すわ大丈夫いくらでも誤魔化しは利くし勿論麗しき姉妹愛の為に死んでくれるわよね簪ちゃんの泣き顔より価値がないのよアンタの命は」
「だから何で俺が…ったあ!?何するんだよゲスジジイ!ていうか何で少佐殿の病室から出てくるんだよ何やらかしてたんだよゲスジジイ!!」
「そりゃあ可愛い寝顔を延々と録画してたんだよ!トレイニーだって気に入るはずだよ『日本の男は皆ロリコン』なんだろなんだろ?しかしメガネちゃんやカイチョーの盾を引き受けるなんて中々のジェントルじゃないかトレイニー!」
(!!…私たちの盾に!?あんなになじってたのに…御免なさい、私…茨君のこと、誤解してた…)
(!!…露骨な点数稼ぎね…やり方が姑息なのよ!大体ソコは膝剣山を決めるところでしょう!!)
「相変わらず元気だねー、あるちゃんは。元気のヒケツってなーに?」
「そりゃあ食べたいだけ食べて寝たいだけ寝る、遊びたいだけ遊んでその合間に働くことだよホノボノちゃん!そうだ、今回のネタバラシ聞きたいだろ聞きたいだろ?大講堂で行なうそうだよ光栄だね光栄だね!さあレッツゴーエブリバディ!」
「てひひ、じゃあ一番乗りねらおー!」「ち、ちょっと引っ張らないでよ布仏さん!イタイイタイ間接が軋む軋む!!」「…二人とも、待ちなさい!」「な、なんだ?そっちへ向かえばいいのか?」
「もう少し…妹離れをしても良いんじゃないかな?別に彼は簪君を異性としては意識しちゃいないよ」
「そ、そうおっしゃられても…姉としては心配です!」
「僕にも女孫はいるけどね…いやいやどうにも命中率の低い恋に焦がれてるのが困り者でさ」
※ 人工知能が星新一賞に応募するご時世、考える葦の一本としては負けていられないですね。
「デュノアさんもか」
「まあ…予想はしてたけどね」
一夏が検査を受け、その後は体を休めている『ジョブ&ホビー』内の病室。そのドアの前にたたずんていたのは私、鈴、セシリア、そしてデュノアさんだった。寂しそうに笑うデュノアさんに鈴はぼやき、セシリアは鋭い視線を向けながら言葉を紡ぐ。
「マドモアゼル・デュノア、貴女は一夏さんを愛しておりますの?」
「勿論。でも自分でもびっくりしたよ…こんな惚れっぽい女だとは思わなかった」
「デュノアさんはさ…インスタントな関係を持ちたいだけ?それとも一夏やその周りとずっと仲良くしていたい?」
自嘲気味の笑みを浮かべるデュノアさんに鈴はジト目を向けつつ言葉を返し、紡ぎ続ける。
「あたしも、一夏が好き。でも…ここにいる誰が射止めたとしても笑って見送れるし、誰かが一夏に危害を加えようって思うんなら、精一杯防いでみせる…デュノアさんもそうでしょ?」
「…信用していいの?ボクを」
躊躇いがちいなデュノアさんに、悪戯っぽい笑みを浮かべながら私は言葉を返した。
「一昨日までのデュノアさんなら、信じられなかった…かもな」
「一夏さんと一つ屋根の下…何もアクションを起こさなかったのは賞賛に値しますわ」
「むしろフランスで男だって信じ込ませたほうが不思議よ…どうやったらアレがこんなにコンパクトに納まるのかしら…」
「ちょっとやめてよ…くすぐったいってば…」
…だからそういう手つきと目つきは止めろ、鈴。そうやってワシワシ揉むな。
「…んー、良く寝た…何だまだ1時間しか経ってないのか…ゴメンな、わざわざ待っててくれたんだ…シャルも鈴も仲良しになったみたいで良かったぜ」
「「!?」」
…突如として病室から現れた一夏の陽気な言葉に鈴とデュノア君は凍り付いた…すまないな、自分で何とかしてくれとしか言いようが無いぞ。
「お前達…今から何が起きたのか、何が起きなかったのか…アークライト博士が懇切丁寧に説明をするそうだ、講堂へ向かえ」
…良かったな、やって来た織斑先生に助けられて…
П
(ここは…?何で、私はココに…)
ボンヤリとする頭を振り払いながら、クラリッサ・ハルフォーフは瞳をゆっくりと開け、瞳をこすろうとして腕も足もマトモに動かないことに気がつく…締め切られ薄暗く、静まり返った空間…カウンターやテーブルが据えられ、カウンターの奥のキャビネットには様々なアルコールが並んでいる…場末の酒場、といった所だった。
(そうだ…訓練に向かおうとロッカールームに向かって、ドアを開け、その時に呼び止められて…)
目の前の席で状況を静観していたのであろう、刈上げの東洋人の紳士はチェアーから立ち上がると心配そうにクラリッサを見つめ、言葉をかける。
「目が覚めたようですね。現状説明は同じドイツ人であるカールが行うべきなんでしょうが折悪く席を外しておりまして…ご無事ですかハルフォーフ大尉。ドイツ各地から貴女の部下や同僚もこちらに向かわれております。ご自宅にいる気分で御緩りと…」
「ふざけるな!だったらさっさとこの拘束を解け!…!?」
そう悪態を吐き、薄暗闇に慣れた瞳で自身の姿を再確認し、愕然としていた…手も足も拘束されていないのだ、自分は。
(…ガスか!?それとも注射か?)
「『行蘊仮散』ですよ。あと五分もすれば手足はキチンと動くようになります…拘束しなかったのは、信頼の証と思っていただければ何よりです」
動揺を隠せないクラリッサに、ポケットの缶コーヒーを取り出し、開けながらどうと言う事はないように彼は…野ノ原一郎は言葉を紡いでいく。
「そうだ、ボーデヴィッヒ少佐の最新映像、拝見しませんか?」
■
「いやいや照れるね照れるね…ボクみたいな小心者はこういう大舞台は苦手なんだ、分かるだろトレイニー?」
「ならさっさと説明しろよゲスジジイ…こっちは死ぬほど疲れてる上にあちこちの間接が悲鳴上げてる…」
IS学園大講堂…卒業式の時か、或いは要人が講演でも行なわない限り満席になることはないだろう場所…ソコを学生、教師、職員が立ち見までする大盛況振りを示している…その興奮の坩堝の中心となっているのがゲスジジイとISスーツ姿の俺だという事実さえなければ、俺を状況を楽しめただろう。俺の近くにいる一夏も、少佐殿も、簪さんも、デュノアさんも、『淑女協定』の皆も居心地の悪い表情を受かべている…平然としていられるなんて凄いですね織斑先生、まあゲスジジイは何があろうがこんな感じなんだろうけどさ!
「切欠は、GWに試合を行なった猿取の報告だった。『私のことばかり気にかけ、周囲のことなどさして気にも留めていない様子だ』…あまりにも、私の知っていたドイツでのお前と行状がかけ離れていた。そしてお前が入学してからの行動…私としてはやっと逢えたという気分だよ、ボーデヴィッヒ」
「申し訳ありませんでした、教官。その、すまなかった…織斑君、猿取君、更識さん、放送室にいた諸君…数々の非礼、どう詫びればいいのか…」
織斑先生のからかい半分の言葉に顔を赤らめながら体を縮こませる少佐殿…おお、歳相応というかホント可愛らしいね…そうだよな、今朝のあんな怖い調子の織斑先生は腑に落ちなかった…じゃあ、一体何があってあんなことになってたんだ?
「いえ、非礼を詫びねばいけないのはわたくしたちもですわ、ボーデヴィッヒ少佐」
「そうね、あんな煽り受けたらあたしだってキレるもの…本当に御免なさい」
「本当に御免。例え何が過去にあったって、言っちゃいけないことくらい分かってる」
「御免なさい…真剣勝負を…邪魔しちゃった…」
だよな、皆いい子たちだ…じゃああの煽り上等の発言…ああ、原稿書いたの1りしかいないか…
「ここにいいる3りのセリフはボクが考えたのさ!中々の煽りだったろ煽りだったろ?…よし、じゃあ強いISとは何か、ボク達AOAがどのようにフロイラインに勝つためアプローチをしたのかソコから今日の顛末を話そうじゃないか!マイク借りるよ!!…『アーアー本日は曇天なり、アメンボ赤いなアイウエオー!』…もうちょっとエコー下げてくれないかなくれないかな?」
「カラオケじゃあないんだからそのままでいいだろ…あと、小指立てるなよ…」
◇
『さてさて、ISがこの世に生まれ出でて約10年経って、キミたちの先輩達もポツポツ各国代表や開発チームなんかに参加してるんだが…ISパイロットのトップは相変わらず『ブリュンヒルデ』を頂点とする『BIG4』、そしてその後を追っかけるイーリのような古参ってところさ…知ってるかい?イーリはまだ21なんだけどさ、実は9年間はISに関わってるんだよ!追っかけなきゃあいけない身としちゃあ肝が冷えるだろエブリバディ?』
「博士、私はもう引退した身です…『モンドグロッソ』に参加することはもうないでしょう」
《…博士、全ての記憶媒体及び電脳の初期化及び破壊終了しました》
『そんな寂しい事言わないでくれよブリュンヒルデ!イーリが夜泣きするだろするだろ?…まあ、人材不足ってのはステイツも一緒でさぁ、イーリの教えてる子達も玉石混交ってトコロなのさ。彼女達の名誉にかけていうけど、い・ま・の・キミ達よりも遥かに強いよ。でもさ、イーリの後を継げるのはマーシィとあと2・3名くらいってトコロだろうね。ISはどうしても教育や訓練じゃあ埋めようのない、天賦の才ってのが問われる兵器なのさ。大体シワクチャになってもISを纏わなきゃいけない人生なんてぞっとするだろ?』
(((((確かに…))))
《お疲れくーちゃん。…だからおかーさんでOKだよくーちゃん!》
『如何ともしがたいテクニックの差を埋めることができるのは?そうテクノロジーだ!今回ボク達AOAが用意したのは『プロヴィデンス』(神意)!知ってる?知ってる?ハイパー・センサーから入手できる情報のうち、平均的なパイロットが有効に活用できるのは約4割だなんて試算があるんだよ?しかもさ、観測地点は定点なんだ!プログレス(成り行き)ってのは主観よりも岡目のほうが分かりやすいし、俯瞰視点で敵情が分かるってのそれだけで勝率は何倍にも跳ね上がる!!特製のドローンをアリーナの天井付近に待機させ、そこからの情報と『アンカー・スチーム』からの情報を統合、『ジョブ&ホビー』内で『打鉄弐式』開発チームによって情報の精査と機体制御、火器管制、推進制御の補助を行なっていたってワケなのさ!トレイニーはデイビー・クロケットかジム・ボウイもかくやの存在へとなったというわけさ!ソレだけじゃあない、『停止結界』(アクティブ・イナーシャル・キャンセラー)を無効化したスタングレネードの射出やウェポンセレクトは『ジョブ&ホビー』内のスタッフがやってたってワケなのさワケなのさ!さらに、データの共有も行なわれていて『打鉄弐式』の最新の交戦データは『アンカー・スチーム』に、そしてカタパルトルームで待機していた『白式』にも共有されていた!GWの時の戦闘データも残っていたからねいたからね、君の挙動は八割がた予測済みだったというわけなのさフロイライン!』
「あいかわらずエゲツナイ真似するわね、ゲスジジイ…」
(デイビー・クロケット、ジム・ボウイ:アメリカ西部開拓時代のヒーロー。3歳で熊をぶち殺したとか借金を断った銀行家を決闘のどさくさで刺殺したとか凄まじい逸話あり。両名ともテキサス独立戦争時のアラモの闘いで戦死)
《生存者は0…大脳、小脳、脳幹全て沸騰しています…お母さんがやったのですか…?》
『まさか!ココからが主題だよクーニャン!!トレイニーは実はほとんど動いちゃあいない!イーリの各種モーション・データを予め登録することで射撃も格闘もセミオート、コンタクトレンズタイプのウェアラブル・コンピューターで視界内に行動のコマンドを新たに追加、視線をカーソルにすることで複雑な動きは全てマクロで行なってくれるというわけさ!ドラクエみたいで楽でいいよねトレイニー!コレこそが、真に馬鹿でも使えるISなんだよエブリバディ!!実質200対1くらいのハンデ戦お疲れ様フロイライン!言うなればキミは人参ジャガ芋カブ牛骨持参でコンソメ入りの鍋に飛び込む黒兎ってヤツだったのさフロイライン!』
「何処が楽だよ、眼は思いっきり疲れるわ二人羽織でもやってるみたいに勝手に動き出すわいつもは自分で展開している装備は勝手にポンポン出るわ気持ち悪くて仕方なかったぜ…ていうかアレだ!プロヴィデンスじゃなくてパペット(操り人形)だろゲスジジイ!!ゴメンな少佐殿、こんなアンフェアなペテンじみた戦いを仕掛けて…ホントゴメン」
《まさか。先生の半年前に死んだ兄弟…アブラハムのジジイのせいだよ。虫も殺さないような優しいフリして、裏切り者にはきっちりと制裁する…死んだ後でも追っかけてくるなんて、ハールちゃんみたいなお人よしじゃなかったらとてもじゃないけどついてけない人だったよ》
「いや、君の過去の試合を思い出し、舐めてかかっていたのは私だ…あのランチャーが外部からの操作だということも気付けず、あの盾の性能も知らずに挑む…まさに良いカモだったな、私は」
『そういう謙虚さが怖いんだよフロイライン、やっぱりブリュンヒルデの直弟子は格が違うね違うね!さて、そんなフロイラインの体に起きた出来事なんだけどさだけどさ…よし、じゃあ聞こうベビーフェイス!ISのエネルギー源って何だと思う?』
《お母さんは…その人が嫌いなんですか…》
「え?えーと…電力だろ…」
『確かに正解だけど50点だね。機体そのものを駆動させるだけなら機体の蓄電層に溜め込んだ電力だけで済むんだけどさ、ソッコーでエネルギー補給を行ないたいんなら、爆発的なエネルギーを欲しいなら別だよ。ISコアが摂取したエネルギー源を元に供給される電力は燃料電池なんてメじゃないほどのかなりのモンなんだよ。拡張領域(バス・スロット)に有機物を入れると消える、ってのはさ…正確に言えばISコアがムシャムシャしちゃうんだ。しかも生きてるやつのほうが食いつきも爆発力もダンチなのさ!さすがに新入生はともかく2年3年の皆はよーく知ってるだろ知ってるだろ?』
「おい、まさかジイさん緊急補給用のカートリッジに入ってたのって…」
《まさか。連中に好きも嫌いもないよ…ひたすらにどうでもいいだけ》
『安心したまえベビーフェイス!補給用カートリッジの内容物は植物性プランクトンさ!IS学園では珪藻だし、ボク達AOAが用意してるのは『フィエステリア』さ。コイツはとっても喰い付きがイイ!食欲のないISにはこいつがおススメだよエブリバディ!』
「『フィエステリア』…危険度で言えばエイズウィルス並みの殺人プランクトンじゃ御座いませんの!?」
《ですが…アークライト氏のお話をするお母さんは、とても懐かしそうでした》
『量と質を考えればこいつが一番なのさレディ!さて、そもそも通常の使用方法なら君たちパイロットがムシャムシャされることはないんだよ…シロナガスクジラのエサがオキアミだってのと同じさ。だけどさ…とあるシステムをかませれば…』
「すまない、ココから先は私が言うべきだろうアークライト博士。これは、ドイツの侵した罪だ」
『いいともここからはバトンタッチだフロイライン、はいマイクだよ…た・だ・し、もし少しでも錯誤や瑕疵があったなら、容赦なくツッコミ入れるから覚悟したまえフロイライン!』
《懐かしいよ…死ぬほど懐かしくて、死ぬほど憎いよ、先生は》
問答歌
「ご馳走様…いや、茨は何をしておるかの…」
「お粗末さまでした…そりゃあ青春を謳歌してるわよ。どうしたのゴンちゃん、急に?」
「…山田先生は、茨の何処に惹かれたんじゃろうかの…」
「決まってるわ、茨の心よ」
「心、のぉ…」
「だから織斑君や弾君の脈だって十分に有り得るのよ!結婚した後でも焼けボックイに火がつくことは稀に良くあるのよ!ああ、そういうそこはかとないモノゴトに茨はいつ気付いてくれるのかしら…」
「ワシ、どうしてあやめちゃんと結婚したんかの…」
「それはあたしが好きだからよ、ゴンちゃんを」
「ワシもじゃよ、あやめちゃん」