俺の待ってた非日常と違う   作:陣陽

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心配性のお人よし

「あ、簪さんお疲れ様…それと…」
「謝る必要は無いわ。茨君はルールの中できちんと勝利を掴んだだけなんだもの」
「ありがと。とりあえず明日は来賓が結構来るらしいから、放課後は部屋に引っ込んでたほうがいいかも」
「いばらん、らいしゅー期末テストだよー、今からでもみっちりやらないとねー」
「そ、そうね。どうせなら食事の後も皆で勉強しましょ」




「てひひ、これでいばらんとの距離、縮められるねかんちゃん!」
「べ、別に…ありがと、本音…」

Σ

「見なさいアレこそが人類悪よアレを顕現させてしまった以上屠るしか術は無いわ離しなさい虚今アイツをしとめなければ人類に明日は無いわ」
「いいえ離しません折角来週デザートをご馳走してくれる連絡が来たんですものここで警察沙汰など起きようものなら折角の週末が台無しです」



第3.75章 オラトリオ(聖譚曲)を背負うものは
追うもの 負うもの 纏うもの


※ダイジェストでお楽しみください

 

 

『待ってー』

『と、止まるもんかぁぁぁぁl!!』

 

 

ポカポカの日より、かぐわしき薫風、そして一面の地に咲くのはタンポポ…そして俺を追うのは白いワンピースの彼女だった。

 

 

『待てよマックー』

『ぁぁぁぁあああ!!お願いだからヤメテ!?』

 

…で、何で黒豹女なの!?普通は山田先生じゃないの!?何で俺が追っかけられなきゃいけないの!?…ああ、やっぱり追いつかれて押し倒されてる、殴られるんだろうな…えっ?何?何で涙ぐんでるの?何かおかしい物でも食ったの黒豹女?

 

『なあ…どうしてあたしを避けるんだ?あたしが嫌いか?お前と無理矢理したのはそんなにイヤだったか!?』

『…そんなことない、だって、俺がIS学園で何とかやっていけるのは、イーリさんが最初に色々と教えてくれたからだから』

 

この言葉には嘘は無い。ISの操縦や戦闘…その、アレだ、女性との接し方だって教えてくれた。レベル1からリムルダールの周辺でくちぶえ吹き吹きレべリングするような荒行のお陰だ…うわ、露骨に喜んでる。これで機嫌を…えっ?何《ご立派様》いじくってるの?何で臨戦態勢になってるの俺?ちょっと節操無さ過ぎない?

 

『…なあ、抱いてくれよ。1回だけで良い。お前の心の中の誰かさんだと思ってさ…こんなガチガチにしてるんだ、いいだろ?』

『俺はイーリさんのものにはならないよ、ソレでいいの…んぐっ』

 

熱い唇、甘い吐息、絡みつく舌…ああ、男って悲しい生き物だよな…!?違う!《アリオク様》の感覚違う!これって!?

 

『ああ、やっぱりココは誤魔化せませんか…ホント、骨盤に穴が開いてれば良い、どうしようもないスケコマシですね猿取君は』

 

えっ!?なにそのオーバーボディ!?明らかに胸に無理が有るんですけど!ていうかなんでタンポポが真っ赤なバラになって絡み付いてるの!?なんでお日様が皆既日食になってるの!?ねえどうしてですか山田先生!?

 

 

 

「山田先生、どうして…んんっ」

「朝日で目が覚めたらとってもおっきくなってましたので…あはっ、ちょうどいいところにかかってますよ」

 

…そういえばもう梅雨明けでしたっけ山田先生。ああそうだ最愛の人との愛の交歓で始まる1日、なんて胸があったかくなるんだろう。きっと良い一日に…

 

「嘘。猿取君当てにメールが着て、その着信音で醒めたんです…誰だか知りたいです?」

 

ハハハ弾のヤツ朝っぱらからメールなんてヒジョーシキだな後でタップリ怒っておきますよだからそんな怖い顔しないでくださいお願いします大体予想はつきます!

 

「コーリングさん、今日の放課後には来るそうですよ…もう1回いけますよね」

「はいもちろんです」

 

 

 

「どうしたんだい、すみれちゃん?」

「当主様から。『あなた達夫婦は息子を使って更識を乗っ取ろうとしているのかしらそうだとするのなら私もあなた達との付き合いを考える時期に来たのかしらそろそろ親としての務めを果たしなさいでなければアイツを私直々に手討ちにしてあげるわ』…本当、一郎さんにベタぼれして『おじ様のお嫁さんになるのー』って言ってたころが懐かしいわね」

「僕は、貉であり、貉でしかない。桑一さんを、千鳥さんを見殺しにした先代を許せなかった僕に、そんな憧れを抱いちゃいけないよ」

「『僕達は』でしょ?私も同罪…さ、お仕事に戻りましょうか。」

「…だね。イギリスからのお客様は学園に行く前にネズミーに行くってさ」

「スタジオは新しいし遠い分、色々目が届かないからネズミーのほうが好都合だけど…いいのかしら?」

「不思議の国のアリスやピーターパンの原作はイギリスだよ、すみれちゃん」

 

 

 

「しかし、2ヶ月ぶり2度目か。イーリさんそろそろ『何度も出てきて…』とかいわれかねないぜ…」

 

金曜日の放課後、延期となった決勝戦が行なわれるはずだった時間。昨日教師陣へ学園長からの『来賓の強い意向により決勝戦は延期となった』の報告は驚きをもって伝えられた。富貴分限何するものぞ、とは言わないが外部の圧力などどこ吹く風のIS学園にしては弱腰だな…と感じたが、なるほどコーリングさんならば貸し借りで言えば借りのある女性だ、少々の無理ならば応じるべきなのだろう。

 

「そうぼやくなよ、茨。コーリングさんには感謝してるぜ…カッとなったら負けだってのが痛いくらいわかったよ、アレで。キレるってのがどれだけみっともないかってのもさ」

 

まあ、この事実を知ったのも朝食の際の茨のタレこみからだった。その事実は我々の度肝を抜き…織斑先生の『あのアホが何度来ようが同じことだ。そんなことよりさっさと食事を済ませろ、遅刻したらグランド10週だぞ』の一言で冷静さを取り戻していた…まさかとは思うが、ああいう女性が好みなのか!?すくなくとも、その、茨がライバルになりかねないぞ、うん!

 

「それだけ凄いのよ、織斑先生は。しかし誰なの?『客人を連れてくる、粗相の無いようにな』なんて…」

 

そう、傍若b…いや、天衣無縫と言っても過言では無い女傑だ。授業中には音沙汰がなかったのだ、そろそろ来ると踏んで我々生徒は待っているんだが…

 

「…にしても、ボーデヴィッヒさんはともかくシャルは会いたく無いだろうにな、今日の来賓…」

「いつまでも避けるわけにもいけませんもの。決着は速く付けるに越したことはありませんわ」

 

 

 

 

「申し訳ありませんでした、お嬢様!」    「どうしたんですか?そんなに泣いて…最後に会った時みたいに売女呼ばわりしないんですか、『お義母さん』」      

 

 

「お久しぶりです、少佐!」「隊長!」「代表!」     「…どうしたお前達、そんなに泣きじゃくって…」

 

 

「社長が悪口雑言を並べ立てたのも、貴女への冷たい対応も、お母様が命を散らされたのも私の…」    「そういう風に言って、ボクに手を先に出させる気でしょう?その手には乗りませんよ社長室長」

 

「お伝えしなければならないことがございます。エイムズ博士が、半年前に…」    「そうか。『醜き兵』に飲み込まれていた時、エイムズ博士とバーバウズ博士の声を聞いた…親というものがいるとしたら、ああいう人たちなのだろう…本当に…」    

 

 

「お願いです…私に…」   「じゃあ教えてください!どうして母さんは死ななきゃいけなかったんですか!財産なんていらなかった!後継者になんてなりたくない!どうして…どうしてなんですか!!!!どうして…」

 

「泣かないでください、隊長!」    「馬鹿なことを言うな。私はまだ12なんだぞ…年上のお前達が泣くんだ、私が泣いて何が悪い…」

 

 

 

 

 

 

『ケラケラケラ!!めすねこタップリはにとらタップリ!!』

 

「メス猫呼ばわりとは良い度胸だな、阿呆ドリ…」

 

 

さて、空を切り裂き現れる怪鳥、と言われて皆は何を想像する?ハーピーとかロック、メガテン好きならモーショボーなんてのも出てくるかな?俺達の前に現れたのもその類の鳥だった。ピンク色のオオハシとか、絶対天然じゃいないよな…シノさん落ち着いテ!?

 

『ケケラケラケラ!!にっぽんノおとこミナろりこん!!アルイハまざこん!アルイハしすこん!!アルイハにじこん!!!』

「スゲーな、あの鳥。あそこまで流暢に喋れるなんて…暴れるなよセシリアに鈴!?」

「名誉既存ですわよ、一夏さん!ああでもそのまま手を握ってくださいまし一夏さん!!」

「離しなさい一夏!あの空飛ぶ悪魔に鉄槌を下すのよ!アアでも離さないで一夏!!」

「どさくさにまぎれてハグとかけっこうあざといねー、2りとも」

 

 

でもどちらかというとさ、アレってアラジンとか宝島に出てきそうな類の鳥だよな。駅のホームの屋根の上に陣取り、言いたい放題喚いてやがる…一夏、感心するのはいいがソコは怒る所じゃないのか。いやむしろ鈴やセシリアのヘイトの稼ぎ具合が…

 

『ケケラケラケラケケラケラ!!ドッチノオトコモばりねこにゃんにゃん!!イレラレナイトマンゾクデキナイ!テヲイレルセンモンカモ呼んでタノシモーゼ!!!』

 

「…シッテタあほイバラ?チューゴクジャアンタミタイナノハミツカリシダイシャサツサレテタノヨ…」

「ナルホド、ナ…ココガ茨ノ本能寺ノヨウダナ…」

「ヤハリアノトキササゲテオキベキデシタワ…」

「専門家についてくわしく!!それとやはり交互に楽しんでるんですねそうなんですね!?」

「そんな、ひどい…」

 

お願い皆離して!?そんな顔はみんなには似合わないよ!だから俺はノーマルだって…お、織斑先生!!?助けてください!!

 

「…その下品な言い様、変ってないな。さっさとでて来いジョゼスターフ!」

 

 

Χ

 

IS搭乗者達が色とりどりのISを纏い、覇を競う大会『モンドグロッソ』。第1回はオリンピックになぞらえ、ギリシャ、アテネにおいて開催された。

 

『前時代的な剣闘士同士の殺し合い』

『美しく着飾った死神たち』

『体の良い代理戦争』

 

 

開催前はこのようなマイナス方向での評価に塗れていた同大会ではあった。では、実際の視聴者達の感想はいかがなものであったのであろうか、IS学園生たちの何名かに意見を聞いてみよう。

 

『胸が躍りましたわ。あんなにも気高く、美しい女性はわたくしの母以外居ないものだと思っていました』

『中国人であった事が嬉しかったことは、あの日から始まったわ…そして日本に住んでてこれほど良かったって事も始めてだった』

『あー、千冬姉の試合はこっそりテレビで見てた…ホント、敵わないって思ったよ』

 

 

『…財団BがMGで出すとは思わなかった…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アリーシャ=ジョセスターフ。第2回『モンドグロッソ』優勝者。イタリア代表にしてイギリス代表と並び立ち『ヨーロッパの双璧』と謳われるファッションリーダー、そして『BIG4』…第1回『モンドグロッソ』決勝トーナメント進出者の一人。織斑先生との対戦経験こそ無いものの今でもヨーロッパを中心として『ブリュンヒルデはアリーシャと戦って惨敗することを恐れて棄権した』とやっかみと嫉妬混じりに囁かれるほどの女傑である。

 

「ブモー、ブモー!…やっぱり分かるカ、ブリュンヒルデ…熱い熱い、空気が美味いねエ」

「身バレ中バレバレバレデスゼ、アネサン!!ガクセイノミンナ、アッコウゾウゴンカンベンナ!!」

 

…だからだ、駅のホームから現れたイヤにぶよぶよした怪獣の着ぐるみから彼女が出てきたときには目を疑った。その端正な顔に光る汗、それをあの下品な鳥が舐めると肩へと止まる。ゼットンに似てはいるが、その体系は似つかない。織斑先生がつく悪態は信じがたいものが…ン!?何だあの防衛隊の女性隊員と不細工なエレキングは!?

 

「大姉御、確かそのカイジューはピポポって鳴くんじゃねーのか?ふー熱い…つーかヤンヤンは良いよな、フツーの制服で」

「一応これも怪獣ですよ。確かヒキョウもラッキョウも大好物な宇宙人が…」

「ああ、メフィラスも良かったかもネ。ていうか熱すぎヨ、ヌイグルミ」

『アセハポロポロ!メイクドロドロ!!オハダボロボロ!!ヒキョウラッキョウハタンキョウ!!』

 

そ、その声はコーリングさんか…ヤンヤン!?彼女がそう呼ぶとしたら…どうした鈴!?思い切り挙動が不審だぞ!!

 

「…や、楊委員長!?…そ、その…お久しぶりです…」

「お久しぶりですね、凰学生。天真爛漫そうで何よりです…相変わらずのようですね、織斑先生」

 

『中国の新IS委員会委員長は前中国代表にして管理官』…確か国際ニュースで見た覚えがある。そうだ、ヘルメットを脱いで現れた凛とした気高い美しさは第1回準優勝者、楊麗々(ヤン=レイレイ)だ。そしてエレキングからでてきたのはコーリングさんだ。

 

「…まったく、ふざけた変装だ。どこからかっぱらってきた?」

「そりゃあツブラヤ。ミンナで一緒に写真撮ってサイン入り色紙プレゼントしたら貸してくれたヨ。」

「むしろ撮影現場が凄かったぜぇ、中の人ってアレだけボッコボコにされるんだなマック!」

「何でソコで拳鳴らしながら俺を見つめるんだよイーリさん!お願いだから助けて!!」

「着替えは全て駅で。『ちょっとしたサプライズをブリュンヒルデに届けたい』の一言で職員の方々も賛同していただきました」

 

…ああ、これはマズイ。マジ切れして姉さんの首を180度回転させた時の織斑先生の顔だ。

 

「お前達、少し駅に顔を貸せ。モノレールの職員達もだ。少し話がある」

「良いけド…公爵様が来るヨ?」

「公爵様はネズミーを家族で満喫中だぜ。もうそろそろ向こうの駅に着くんじゃね?」

「ネズミーでしたら上海にもありますのに…」

 

「猿取、『アンカー・スチーム』で駅まで向え。来賓を待たせるわけにもいかん…法律的な問題なら、私が何とかしておく」

「は、はい!」

 

「ケラケラケラ!アッシーメッシーフナッシー!!ブラックホッシークインシー!!」

「少しは黙れ阿呆ドリ!!」

 

「まったく、どうしてこうも騒々しいのでしょう…」

「そうかセシリア?やっぱりこれくらい元気じゃないとダメなんじゃないか?IS乗りってのは」

 

!!?…そ、そうか…私も何か着ぐるみでも用意してみるか…




甘美なる物

「…でさ、先輩の好物を何とかして茨に…何だよそのため息は!?」

日曜日の夕方、弾からの電話に俺はこれ見よがしなタメイキをつく。非難交じりの言葉に、俺は冷たく言葉を返していた。

「なあ弾、お前の事だからまだ布仏先輩には電話もメールもして無いだろ?好物とかじゃなくてさこういう風に聞いてみるんだよ。何かアレルギーは無いですか?ッてさ」

息を呑む弾、食いついてきたな…

「アレルギーってのはキツイもんでさ、アメリカじゃピーナツサンド食ったあとでキスしたら、相手がピーナツアレルギー死にかけたってことだって稀にあったんだぞ…」
「ど、どうすりゃいいんだ!?俺もうキス出来ないのか!?」
「じゃないよ!アレルギーを気にするって言うことは真剣に案じているって表れだぞ。そういうのが女心をときめかせるんだぜ?」
「で、猿取殿はいかがでござるかなぁ?」
「あ?俺のことは良いんだよ俺の事は!本気と書いてマジで泣くぞ!」

「で、『アレルギーは特にありません』で水羊羹かよ。我が孫ながらセンスがひでぇなおい…」
「あら?すみれちゃんのママから聞いたわよパパ。ママに告白する時に手作りの…」
「あやめはいつも話を大きくしたがるんだ!話10%で聞いとけ!…弾!もっと火は弱くしろ!!焦げ付いたら豚の餌にもならねぇぞ!!」
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