(………なんでだ?)
「この事について詳しく聞かせてもらおうかしら?金城獅狼!」
(なんでこうなったんだ!?)
◆◆◆◆◆
遡ること1日前。
今日は土曜日で学校も休みのためいつものように獅狼が駄菓子屋の店番をしていた時だった。
「ほら、キャベツ太郎2袋な」
「ありがと兄ちゃん!」
お客さんである近所の子供を見送るとポケットからスマホを取り出してツイッターを確認した。
先週投稿した呟きに対する反応は0で誰からも見られていなかった。
「…まぁいいか」
この事に少し落胆してしまうが特に気にすることもなくスマホをポケットへと戻す。
ジェットバトルに興味が沸かなくてもいいためもう忘れようとした時だった。
「いらっしゃいま…」
新しく来た客の相手をしようとした時、獅狼は言葉を途切らせてしまう。
何故なら入ってきたのは黒いスーツにサングラスをかけた体格のいい男だったからだ。
しかも1人だけでなく同じ服装の男たちが次々と押し掛けて来たため獅狼はワケが分からず戸惑いを露にする。
「あ…えっと…?」
「金城獅狼様、ですね?」
戸惑う獅狼に対して、黒服の1人が口を開いて質問をしてきた。
どうやらこの黒服たちは獅狼のことで尋ねてきたようで、獅狼は反射的に頷いてしまう。
「そう、ですけど……」
それを聞いた黒服たちはアイコンタクトを取ると一斉に獅狼を取り囲んだ。
「はっ!?えっ!?」
「申し訳ありませんが、貴方を連行します」
「レ、レンコウ!?どういうことだよ!?意味わかんねムグゥ!?」
あまりの唐突すぎる展開に抗議しようとしたのも束の間、獅狼は頭から黒い布を被せられそのまま意識を失ってしまったのだった。
◇◇◇◇◇
(………ん?)
一体どのくらい時間が経過したのか、意識を取り戻した獅狼だったが布を被せられ何も見えない状態だった。
そしてあの黒服たちに拉致されたことを思い出して動こうとするが、何故か体が動かせなかった。
ここは一体どこなのか、何故自分は拉致されたのかまったく理解できず獅狼が混乱しているその時、被せられた布が脱がされた。
急な眩しさに目を細めてはゆっくりと目を開くと…
「ようやくお目覚めかしら?」
目の前にいたのは金髪のツインテールを携えている小柄な女の子だった。
金髪の女の子はまるで威張っているかのような振る舞いで獅狼を目で捉えていた。
目の前の彼女も気になるが、それよりも獅狼は今の自分の状況に驚いてしまう。
「はっ!?んだよこれ!?」
椅子に座っているものの、縄で縛られて身動きが取れない状態にあった。
必死になり抜け出そうとするがきつく縛られて抜け出すことができなかった。
獅狼は目の前の金髪の女の子へ視線を戻すと睨み付けて声を荒げる。
「ふざけんなテメェ!これは何のマネだ!?縄ほどけ!」
「ひぃ!?そんなに怒んないでよぉ…!」
獅狼の迫力に金髪の女の子の強気な態度が消え去って小鹿のように震えてしまう。
しかし突然拉致されてワケの分からない状態にされたのだから獅狼が怒るのも無理はない。
再び部屋を見渡すといかにも高級そうなインテリアが置かれている一室だったためここがどこなのか分からずにいると、威勢を取り戻した女の子が再び口を開いた。
「んんっ!さて、アンタが金城獅狼ね。見るからにTHE庶民ってオーラが出てるわね」
「失礼だなオイ」
真っ先に悪口を言われて獅狼が反論すると、あることに気がついた。
「あれ?どっかで見たことあるような…」
目の前の生意気そうな女の子とは初対面の筈なのに何故か顔だけはどこかで見た覚えがあった。
しかし一向に思い出せずにいると女の子が自ら自己紹介をし出した。
「まぁ本土の出身が知らないのも無理はないかもね。アタシはKAZAMI の令嬢の風見エレンよ!」
金髪の女の子『風見エレン』の名前を聞いたと同時に獅狼は彼女のことを思い出した。
「風見エレン…あっ、確かジェットバトルに出てた…!」
輝樹が応援してるKAZAMI SEA TEC のリーダーがこの風見エレンだったのである。
しかし獅狼は今に至るまでエレンどころかKAZAMIすら関わりを持ったことがないためどうして連れてこられたのか理解できなかった。
「で?天下のKAZAMIのご令嬢様が俺に何の用だよ?誘拐までしやがって」
「それについては悪いとは思ってるわよ。けどこれは、アンタ自身が蒔いた種でもあるんだからね」
「俺が?」
KAZAMIを怒らせる心当たりがなく首を傾げる獅狼にエレンは懐から1枚の紙を見せつけた。
それを見た獅狼は心の中で『あっ!?』と声を上げてしまう。
「これを投稿したの、アンタよね?」
そこに記載されていたのは、1週間前にツイッターで呟いたものだっからであった。
◆◆◆◆◆
そして現在。
「あの大会で優秀の美を飾ったアタシたちに魅力を感じなかったとはね…呆れて何も言えないわ」
たかが軽い気持ちでSNSで呟いたことが拉致されることに繋がることなんて想像もしなかった獅狼からジェットウェーブの興味の無さを聞いたエレンは腕を組んで目付きを鋭くする。
「俺もまさかあの呟きでワダツミまで連れてこられるなんて…驚きのあまり何も言えねぇよ」
今獅狼がいるここは『ワダツミ』と呼ばれる本土の南に位置する人工島。
ジェットバトルもここでしか行われておらず、選手や職員のためにスーパーや病院はもちろん、学校までの施設が揃っている。
本土からワダツミまでKAZAMIのプライベートヘリで獅狼は連行されたのだった。
これから自分はどうなってしまうのだろうと獅狼が身構えていると、部屋の扉が開いて数人の女性たちが入ってきた。
「ここにいたんだエレン…と、誰?」
「もしや先週エレンさんが見つけた呟きの発信者では?」
「拉致してやると息巻いていたが本当にやるとは…」
入ってきたのは褐色の日焼け肌に紫陽花色の髪を纏めているどこかフワフワしている女の子、腰まで伸びている青い髪を靡かせる凛とした女性、そして白い髪の外国人らしき女の子の計3名。
それを見た獅狼は彼女たちもジェットバトルの選手であることを思い出したのだった。
すると白髪の女の子が獅狼の後ろに立つと縛っていた縄をほどき出す。
「エレンが失礼なことをしたな。申し訳ない」
謝罪を受けては縄がほどかれると獅狼は立ち上がり拘束からようやく解放されたのだった。
「ふぅ助かった…一事はどうなるかと思ったぜ」
「いやはや、本当にすまない。私はジュネー・ヴァイスベルグだ」
「永雪氷織です。ポジションはライダーです」
「…相馬颯」
3人と自己紹介をしているといつの間にか空気と化していたエレンが口を開いた。
「ちょっと!何勝手に縄ほどいてるのよ!?」
「エレン、君のしたことは完全な誘拐・拉致だ。今回は流石にだめだろ」
「いくら何でも、やりすぎだと思う…」
「激昂せず冷静になりましょう」
「ぐぬぬ~!」
3人からぐうの音も出ない程言い負かされてはエレンは悔しさを露にする。
そんなエレンに獅狼は追い討ちをかけるように質問をした。
「なぁ、結局お前は俺をどうしたいんだ?いい加減家に返してほしいんだが?」
いつまでこんな茶番に付き合わされるのだろうかとけだるそうな獅狼にエレンは咳払いをして本題に入った。
「そ、そうね。単刀直入に言うわ金城獅狼……………
貴方はこれから、KAZAMIのコーチになってもらうわ!」
「………は?」