KAZAMIの新米コーチは特殊な体質持ち…   作:アニアス

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第2話 硬直

KAZAMIの令嬢の風見エレンからジェットバトルのコーチ任命を受けた獅狼は突然のことに固まってしまっている中、同じチームであるジュネーから待ったの声がかかった。

 

「待ちたまえエレン。流石にそれは唐突がすぎるのではないか?彼の了承もまだだろう」

「…そ、そうだ!いきなり何言い出してんだよ!?それに俺はジェットバトルに関しちゃルールすら分かんねぇんだぞ!」

 

ジュネーに便乗して獅狼も慌てて反論する。

ジェットバトルの右も左も分からない自分なんかをどうしてコーチにすると言い出したのか理解できずにいるとエレンが得意気に話を続ける。

 

「もちろん承知の上よ。けど金城獅狼がジェットバトルのコーチになれば次第に興味を湧いてくると思うの。それに、ちょうどコーチに空きが出ちゃったから都合がよかったわ」

 

ツイッターの呟きの意を汲んでの突拍子すぎる行動に呆気に取られる獅狼だが、ふと疑問に思うことがあった。

 

「ちょっと待て、コーチに空きが出たってどういうことだ?」

 

ジェットバトルに関してまったく知らないわけではない獅狼はKAZAMIが強豪であることの知識は頭に入っている。

そんなKAZAMIにコーチが不在だということに首を傾げていると氷織と颯の2人が説明した。

 

「実は前のコーチが実家の農業を継ぐことになり退職されてしまったのです」

「だから今のKAZAMIには、コーチがいない…」

「そう、なのか……イヤイヤだからと言って素人コーチに任命すんなよ!」

 

KAZAMIの現状を理解した獅狼であったものの、やはりコーチなんてできないとエレンに再び抗議する。

 

「何よ。魅力教えて欲しいって言ったのはそっちでしょ?」

「だからと言ってここまでするか普通!?それに俺来月から高2になるんだぞ!」

「安心しなさい。既に手回しは完了してるから」

 

エレンがパチンと指を鳴らすと部屋に1人のメイドが入ってきた。

彼女が獅狼の側まで流れるように歩くと1枚の書類を差し出してきた。

 

そしてそれを見た獅狼は絶句してしまうのだった。

 

「は…?海津見学園への転入届…!?」

 

転入届には海津見学園の学園町と獅狼の通う本土の学校の校長のサインが既に記載されていた。

 

「アンタの実家の荷物も既に手配済みだから今日中にはここに届く予定よ。それから家族のおばあさんには学園からのスカウトで話は通してるから」

「どんだけKAZAMIの権力フル活用してんだよ!?」

 

学園の転入手続きからワダツミへ実家の荷物の手配など何から何まで進められてしまっていることに獅狼は突っ込むことしかできなかった。

ここまで来てしまったからにはもうどうすることはできない。

唖然となる獅狼に対してエレンは別の書類を差し出してきた。

 

「じゃあこれ、KAZAMIのコーチになる契約書だからここにサインして」

「ふざけんなよマジで…!」

 

ジェットバトルについて教えて欲しいと言ったのは確かだが、そこまで願望してないのも事実。

それがここまで事態を大きくしたエレンに怒りしかなかった。

一体自分を何だと思っているのかと同時に獅狼はそのまま部屋を出ようとする。

 

「こんなこと付き合ってられるか!俺は帰る!」

「あっ!待ちなさい!庶民の分際でこの風見エレンの粋な計らいを蹴るつもり!?」

 

そして逃がすまいとエレンが獅狼の手を掴んだその時だった。

 

「がっ…!?」

 

獅狼が呻き声を上げたと同時にその場に仰向けに倒れ込んでしまった。

そのまま動かなくなった獅狼にエレン含めてジュネーも氷織も颯も驚いてしまう。

 

「えっ!?ちょ、ちょっと!どうしたのよ!?」

「エレン、突き飛ばすのは…」

「今回ばかりは度が過ぎてるとは思ったが、まさかの突き飛ばすとはな」

「違うわよ!私は突き飛ばしてないわよ!」

「はい。エレンさんは手を掴んだだけですから突き飛ばしてません」

「お嬢様」

 

するとエレン専属のメイドが獅狼の今の状況について説明をしてくれた。

 

 

 

「私たちが調べた情報によりますと金城獅狼様は異性に触れる、もしくは触れられると全身が硬直して約5分間動けなくなるそうです」

『………え?』

 

 

 

聞き間違えたのかと思えるほどの情報を聞いた4人はうつ伏せで倒れている獅狼を再び見ると、意識だけはハッキリとしていた。

 

実は獅狼はいつからか異性に触れるだけで体がフリーズしてしまう特殊な体質を持っており、手を合わせるだけでもアレルギー発症のように体が拒絶反応を起こしてしまうのである。

ちなみに身内の祖母とではそのようなことには至らないが、見知らぬ異性とだと必ずこうなってしまう。

 

「くっ…!しまった…!」

 

しかしまったく動けないワケでもなく、動かせる頭を上げるといつの間にかエレンが目の前に立っておりこちらを見下ろしていた。

しかしその顔はまるで悪魔のような笑みを浮かべており、その場にしゃがんでは契約書を突き出してくる。

 

「じゃあ動いてからでいいからこれにサインしなさい。もし拒否するなら…永遠にここから動けなくなるわよ」

 

そう言うとエレンは獅狼の頬に手を添えて脅しとも言えるような交渉を持ちかけてくる。

 

「ま、待て…!た、助け…!」

「ふむ、実に興味深い現象だ」

「ホントに固まってる…」

「どうやら皮膚による接触で起きるようですね」

 

ジュネーたちに助けを求めようとするが、獅狼の体を指でツンツンと突いたり手を触ったりとおもちゃのように扱う始末。

もはやこの部屋において獅狼の味方は誰1人としていなかった。

 

 

 

「さぁ選びなさい!サインするか!それとも永遠に動けなくなるか!」

 

 

「く、くっそぉ~……!!」

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

そして数十分後、ようやく解放された獅狼は泣く泣く契約書にサインをしてKAZAMIのコーチとなるのだった。

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