ホラーエロ漫画の巻き込まれ主人公ですが、陵辱されたくないので魔法少女始めます。   作:クルスロット

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第十四話 魔法少女と悪魔と宅配ピザ

 

 

「むっ……。いいものが届いたな」

 

 こんこんと窓を叩く音にベリアルは気づいた。音の方を見て、納得。頼んだのはココだろう。

 ベリアルが窓を開けると窓を叩いていた宅配ドローンが荷物──ココの頼んだピザ入りのケースを補助アームで差し出した。

 

「うむ、配達ご苦労」

 

『ありがとうございます。またのご利用を』

 

 合成音声の後、荷物の無くなったピザ屋の宅配ドローンがぶんと静かに上昇して、ベランダから飛び立っていった。

 

「最近の人間界は便利なものだな……」

 

 受け取ったピザのケースを片手にベリアルは、夕焼けの街に飛び去っていくドローンの後ろ姿を見ながら時代の変化、人間の進歩に感嘆していた。

 この世界の物語に、神の筋書きあれど進化自体は人間の力。種を植えたのは神であるけれど育てたのは人間だ。

 より高度に、より早く、より便利に。人間の知恵はかくも素晴らしい。悪魔的にとてもいい。もっと励んでほしい。人類最高。

 

「ピザの味も素晴らしい。うむ……美食は、人類の生んだ文化の極みだな。カヲル君も言っていたしな」

 

 器用にケースを一つ開けて、中のマルゲリータピザを一枚摘んだベリアルは、満足げな顔で次を口に運んだ。

 まあそれが同族の人間なり他の生き物なりにもっと強く、もっと硬く、もっと効率よく殺すため向くこともあるのが玉に瑕だが……そういう愚かしさもいいよね……。かわいらしい。悪魔的には良し! 悪魔は人類を肯定してます。悪魔に興味があれば積極的に問い合わせてほしい。

 

「おっと、2人を呼んでこなくてはな。注文しておいて出てこないとはそんなにゲームが楽しかったか。それとも……」

 

 ククク……と笑うベリアルの灰色の脳細胞に、電撃的な蠱惑的な桃色妄想が瞬く間に広がり、凄まじい速度で走り抜ける。しかし、こちらR18のため読者の諸君にお見せできないのが残念だ。頭の中で補完してもらいたい。

 

「まあ、無いか」

 

 そういう気配は感じなかった。ベリアルセンサーはそういうのに鋭く反応する。

 

「ゲームにでも夢中になっているのだろう。呼びに行くか」

 

 よっこらしょとピザケースをテーブルに置いたベリアルは、ピザをもぐつきながらふわふわと廊下を通って、ココの部屋のドアをノック。……返事なし。

 

「しょうがないな」

 

 ガチャッと小さな手で難なくドアを開いたベリアルは、そのままベッドに並んで寝ているミハとココの枕元に浮かんだ。

 顔がいい……。2人を見下ろして心のピクチャーフォルダに保存した、丁度その後。

 

「……しまった」

 

 そんなことしてる場合じゃなかったとベリアルは自分バカさ加減に怒りが湧いた。

 

「そんな場合ではないな。魔物の手より2人を助けなければ」

 

 ミハとココの頭の、VRゲームデバイスから魔物の気配がしていた。うっすらと小さく、しかし、ベリアルは確かな脅威だと認識した。先程まで全く感じなかったのに。魔物が一枚上手だった。

 

「ミハ。起きろ。ミハ」

 

 とりあえず声をかける。もちろん返事はない。魔物の力は、ミハの精神を捉えている。ベリアルも察してはいた。むうと唸る。

 

「ミハ。ピザが届いたぞ。残らず食べてしまうぞ」

 

 ぺちと顔を叩いてみる。

 

「このマルゲリータ、冷めてしまっては台無しだ。美味いぞ。食べたので分かる。これは美味い。焼き立て熱々だ。最近はピザ屋もハイテクだな。保温容器がしっかりできている。素晴らしい」

 

 ぺちぺちぺちと叩く。ベリアルの手の跡が赤く残るだけで変化はない。まるで眠っているかのような静かな呼吸が続く。声とこの程度の刺激では起きないか。ベリアルはぺちぺちとするのを諦めた。

 

「むう……しょうがない」

 

 あまり時間をかけても意味がない。なにより既に発見にかなり時間がかかっている。ミハとココの心拍や脳波、外見には異常はない。現状、特に問題ない。

 ただ、この魔物が何か分からない以上、それを理由に安心はできない。

 これ以上の時間の消費が彼女たちの命の危機になるかもしれないなら。

 

「強硬手段しかあるまい」

 

 ピザが冷めないうちに助け出してやらねばな。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

「……え?」

 

 知ってる声だった。そして今、もっとも必要な声だった。ああ、もう弾がない! 

 

「べ、ベリアル! どこにいるの?! 状況、すごくやばくて……!」

 

 なにせゾンビたちはもう数歩あるけばゾンビに掴まれる距離だ。ゾンビたちの本能に任せた挟撃に私たちは為す術もなく踊り場の隅に追い詰められていた。

 そして、たった今、銃声が止んだ。ココの拳銃がブローバックしたまま動かない。弾切れだ。私とココは、武器を失った。このままだと殺される。なすすべなくゾンビに押し倒され、食い殺される。

 そういえばゲームオーバーって、どうなるんだろう。

 

『オオオオ……』

 

 嫌にリアルな血と臓物の臭いが私の鼻を突く。醜悪なゾンビたちが私たちの新鮮な肉を求めて口を開く。同時に、湧き上がる強烈な恐怖が私の頭を支配しようと牙を剥く。

 

「変身するぞ」

 

 私の恐怖を切って落とすように、断固たる意思でベリアルが言った。

 

「え? わ、わかった……!」

 

 迷う暇はない。ベリアルに従う──するとバックルが腰に現れた。既にベリアルがデフォルメされて収まっている。

 

「諸々省略!」

 

「省略!?」

 

 ぼっ!とひび割れと魔法陣の展開が一瞬で行われた。早い早い。こんなに早送りできるならいつもいらないじゃん! 

 

「流石に俺も配慮した。ミハ、変身を」 

 

 そこは譲らないんだ!? ただ口答えをする暇もやっぱりない。

 

「へ、変身!!」

 

 と叫びながらダッシュして、ココに伸ばされたゾンビの手を横に払うと同時に変身完了。袴にスカート、ガントレットにブーツが装着された。

 勢い余って、ゾンビの腕が吹っ飛んだ。大丈夫。気にしない。人間じゃない。それにここは、

 

「ゲームだ!」

 

 ココを足からすくい上げるようにして両手で抱えると空いた足でゾンビの虚ろな顔に蹴りを入れてやる──想定よりも勢いよく吹っ飛んだゾンビはまるでボーリングのピンが倒れるみたい。階段の踊り場からドミノ倒しが如く、倒れていく。

 

 ちょっとやりすぎた。階段の入り口がゾンビで埋まっていたからドミノ倒しにしたおかげで正直に階段を通ることができなくなった。

 でも、それならそれでだ。普通ならやらないけど今ならできる。変身した私なら!

 

「ちょっと乱暴に行くよ」 

 

 

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