ホラーエロ漫画の巻き込まれ主人公ですが、陵辱されたくないので魔法少女始めます。   作:クルスロット

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第二十一話 FPSオタクとピンチと自称ファン

 

 

「うっそでしょ……!?」

 

 客たちを逃した私は、突如頭上から聞こえた轟音の後、降り注ぐラブホテルの瓦礫を避けて離れたところ、ようやく何が起こったか認識した。

 巨大なスライムがラブホテルの頭を引き裂き、現れていた。地上からでもはっきりと視認できる巨大さ。体色と状況から先程私たちを襲ったスライムであるのは間違いない。

 間違いないけどあまりに大きすぎる。私たちの部屋に現れたものよりもずっと。一体、何がどうなってるの?

 

「なんて思っても答えは出ないし……特にできることもないんだけど……」

 

 強いて言うならミハの無事を祈るとか、ミハの邪魔にならないようにするとか。どちらにしてもここから逃げ出すことになる。

 

「くそ……!」

 

 歯噛みするしかない。何を言っても何をしても無意味。あのスライムへの有効打を私はもちえない。というか、環境維持保全委員会の、私が知っている兵装であれを倒すのは不可能だと思う。

 スライムは、ラブホテルの中の時と違って私を見てもない。相手にもされていない。今こそ逃げるべきだ。

 

「……だけど」

 

 あの子が、ミハが一人になってしまう。

 誰かの為に頑張っているミハが一人になってしまう。誰にも見届けられることなく、ただ一人で戦うのはきっと虚しい。

 

「だったらなによ。ここで祈って見て何が起こるのよ」

 

 それで巻き込まれでもしたら心を痛めるのはミハだ。友だちの足手まといになりに来たわけじゃないでしょう。

 環境保全委員会の一員としている。この都市を守るために居る。

 友だちと都市、2つとも守りたい。 

 

「だけど……」

 

 そんな力はない。どこにもない。都合よく力はもたらされない。

 

「──そこの可憐な方、お困りですね?」

 

 ────そう。普通ならそうだ。私はどうやら幸運で、普通じゃなかったらしい。それはこの後知ることだけど。

 

「誰……!?」

 

 いやに甘い空気をまとった声に反応して振り返る。

 そこ居たのは、白い悪魔。ずんぐりとした真っ白いツノと羽のある生き物。

 悪魔と分かったのは、あまりにベリアルとそっくりだったから。ベリアルと違うのは色と片眼鏡(モノクル)をつけてるとこ。明らかにこの世の普通の生命体じゃない。

 

「ベリアルの友だち……?」

 

 魔物──と前なら思うところだけどよく似た存在を知っていたからまずその線から探ってみることにした。

 

「ベリアル? まあそうですねえ。友人ではあります。そして。私は、強いて言うならば……」

 

 考え込む素振りをした後。

 

「貴方のファン、でしょうか」

 

 悪魔って、ほんと……。ベリアルの同類だとすぐに分かった。

 

「それで自称ファンさんはなんのよう?」

 

「欲しい物があるのでしょう? 私のアイドル」

 

「普通に名前で読んでもらえない? 流石にその呼び方は辛い。というかきつい。キモい」

 

「うっ……ふふ……ならココ。君は、今、なによりも欲しい物があるのでしょう?」

 

 いや気持ち悪い。なんだろう。なんか気持ち悪い。

 

「……あるけど、それがなに」

 

 ……上空でミハがあらぬ方に弾き飛ばされた。大気の震えが地上の私まで伝わってきた。ビリヤードの玉のように空中を転がり、吹っ飛ぶミハを触手が追う。体勢を立て直したミハは、ビルを足場に、時に触手そのものを足場にしてミハは懸命に抗っている。しかし手数に差がありすぎる。なによりメインの打撃が通らない。防戦一方だ。

 

「それを私は与えてあげられると思うのです」

 

「……どうしたらいい?」

 

「求めてくれればいい」

 

「そんな、都合のいい……」

 

 まるで、いやこれは正しく。

 

「言ったでしょう? 私は、貴方のファンです──欲されれば与えずにはいられなのですよ」

 

 悪魔の誘惑。伸るか反るか。悪意か善意か。この胡散臭い存在は、信用できるのか。

 ……ミハもこういう気持ちだったのかな。

 ああ、私、こんなことも聞けていない。ここでなんとかしなきゃ、きっと多分永遠に聞けない。丁度、近くのビルの壁と窓を破壊しながらミハの体がビルの奥へと消えていった。

 スライムがラブホテルから這い出してくる。

 もう時間がない。こんなの、もう。

 

「ずるい……!」

 

「ファンと言えどあくまで、悪魔ですから」

 

 含みのある笑みを浮かべる悪魔は、どこまでもなによりも胡散臭い。

 

「わかった! 分かったから、私の欲しい物を頂戴!」

 

「具体的に、マイアイドル」

 

 ああ、もう調子に乗って!! 歯ぎしりして、しゃにむにに叫んだ。

 

「力を、私に力を寄こしなさい!!」

 

「了解しました、マイアイドル」

 

 悪魔がうやうやしくお辞儀をすると腰に、ミハと同じバックルが出現した。それから小さくなった悪魔がバックルに収まった。

 

「では、参りましょう」

 

「変──「おっと待ってください」──もうなに!? 急いでるんだけど!!」

 

「変身口上をお願いします」

 

 ああ、ミハがやってるあの恥ずかしいやつ……ってベリアルの同類は皆こんななの!?

 

「失礼ですが、大事なので繰り返します。変身口上を。なにより君は既に知っているはずです」

 

 あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”もう! ふざけるな!! と叫び出して苛立ちのまま地団駄を踏みたいのをなんとか堪えた。ただでさえ時間がない。大きな溜息を吐いてから大人しく口を開いて。

 

「お腹から声を出す感じで。後、可愛さを忘れてはいけません。キュートに、とってもキュートにお願いしますね。大事ですから。大事なんですよ? 私、この変身口上考えるのにとっても時間を費やしたんですよ」

 

 眉尻をひくつかせて。

 

「…………あんた、そういえば名前は?」

 

「ああ、失礼。私、名乗ってませんでしたね。とんだ失礼を」

 

 こほんと咳払いをした悪魔は、折り目正しく慎ましく。人間だったなら深々とお辞儀をするように名乗った。

 

「アスモダイと申します。今後ともよろしくお願いいたします。私のアイドル」

 

 そして、悪魔(アスモダイ)は、甘く胡散臭く微笑んだ。

 

「その呼び方やめてって……」

 

「おっと失礼。では今度こそ」

 

 言われなくても分かってる!

 

「──行くよ!」

 

 

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