ホラーエロ漫画の巻き込まれ主人公ですが、陵辱されたくないので魔法少女始めます。   作:クルスロット

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第二十二話 銃とメイクと魔砲少女

 

 

「いつつ……」

 

 衣装、ボロボロになっちゃったな……。スライムに溶かされた衣装の傷口は、痛々しい。その下の体もじくじくと至るところが痛む。青あざになっちゃってる。これ綺麗になるかな。

 

「ミハ! 大丈夫か!!」

 

「大丈夫。うん、大丈夫。まだいける」

 

 ……ぼんやりとしていた意識がベリアルの声に引き戻される。視界が赤い。手の甲で擦って拭う。ちくりと痛む。瞼の上を切っている。全身、見れないところも傷だらけだから誤差みたいなものだけど。

 

「いけるか? いや、無理はしなくていい。ここは……」

 

「だめだよ、ベリアル」

 

 どこかのオフィスの誰かが使っていたデスクを押しのけて、立ち上がる。体が重い。けどまだやれる。

 

「続けるんだ。ここで負けたら今まで努力がおじゃんだしね」

 

「…………」

 

「ベリアル?」

 

「推しが力強く育ってる……。感無量」

 

「気持ち悪いなあ……」

 

 思わず笑みがこぼれた。この悪魔は、いつだって平常運転だ。真剣に心配したと思えば、真剣に気持ち悪くなる。

 ズズズッ……。と音がした。ベリアルから音の方に視線を向ける。巨大な、赤いスライムがラブホテルから私たちの居るビルへと体を伸ばしてきていた。その触手や体が触れたものから煙が上がって溶けている。

 逃さない。必ず殺す。そういう意思をスライムに感じた。

 

「どうしよっか」

 

「俺の見込みが甘かった。まさかここまでの強度がある魔物とは……」

 

「反省会も今度だよ。倒す方法考えて。私も考えるから」

 

 言いながらもスライムの圧力に負けて、じりじりと後ろに下がる。下がるしか無い。

 

「ベリアルインパクトで吹き飛ばす?」

 

「だめだ。ばらばらにしてもすぐに固まってしまう。完全に消滅させるか核にあたるものを壊すしか無い」

 

「核? 脳とかそういう?」

 

「そういうものだ。スライムを制御しているものがどこかにあるはずだ。ラブホテルももう瓦礫の山。呼び出した魔術師も死んだ。ならば本体にしかなかろう」

 

「よしそれを探そう──って軽くいうのは簡単だけど……」

 

「この巨大なスライムのどこにあるか……」

 

 アイディアが出ない。触ることができない以上、攻撃を通すことができない。つまり削ることもできない。この巨大なスライムを掘削してとかそういうのもできない。状況は厳しかった。

 

「それは任せてもらいましょう」

 

 その時、どこからともなく甘い声がオフィスの中に響いた。ベリアルより高くて、どこか品の良さを感じる声。

 

「その声は……!」

 

「ベリアル、知ってる人?」

 

 私が尋ねる声を掻き消すように、重い金属音がビルを、空を、スライムを貫いた。

 

「何が!?」

 

 疑問の答えはすぐに。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

「では、ミュージックスタート!」

 

 ぱちんと指を鳴らしたアスモダイの言葉の後、どこからともなく鳴り響くポップでテクノなサウンド。どこから流れてるのよ、これ。

 

(ワン)!」

 

 私を囲い込むように読めるような読めないような文字の刻まれた魔法陣が現れる。上に三角形の頂点に3つ。左右前後に1つ。

 

(トゥー)!」

 

 さらに、足の下に一際大きなもの。

 

(スリー)!」

 

 そして、魔法陣が回り始めた。

 

「──メイクアップタイム!」

 

 全ての魔法陣がスポットライトのように白い輝きを放ち私の手先から足先まで塗り潰していく。顔以外が真っ白なシルエットだけになった私を彩るように変わりの衣装が、武器がそれぞれ装着されていく。

 ちょっと甘可愛いすぎない? ふわふわしすぎだし、ふりふりしすぎ。もうちょっとしゅっとしてる方がいいよ。

 

「うう……いい感じです……。泣きそう」

 

 恍惚とした邪念が見えた。我慢我慢。我慢しよう。

 

「──変身(メタモルフォーゼ)!」

 

 同時に、私を覆っていた光が弾けて、その姿がはっきりと視認できるようになった。

 ロリータっぽいオフショルダーのフリフリした白いトップスに、下はフリルの多い真っ赤なフレアスカート。足の方にはガーターベルト付きストッキングに、高めの赤いヒール。いつの間にか両手には、真っ赤で重たげな大口径で、その上やけにバレルの長い拳銃が一丁ずつ。

 

「悪いやつをドカンと粛清! 魔砲少女 アデ♡マギ!」

 

 一応銃口を前に向ける決めポーズ。恥ずかしいし、何より背景で炸裂するハートは余計だと思う。誰も居なくてよかったと思うべきか、誰もいないのに決めてるのがきついのか。

 

「いや、何この尻尾?」

 

 正しく悪魔の尻尾なものが生えていた。私の意思に沿ってくねくね動く。

 それにこの衣装、肩出過ぎ……というか背中も結構もろじゃんこれ。防御力とか大丈夫なの?

 

「蠱惑な小悪魔、ロリータを添えてとなっております」

 

「やかましいわ」

 

 まさかと思って頭に手をやると小さな角が左右揃いである。お揃いなのがはらたつ。

 

「っと遊んでる場合じゃないんだった! やるよ、アスモダイ!」

 

「かしこまりました、マイアイドル」

 

 ツッコまないからね──頭上、ミハに襲いかかるスライムへ銃口を向ける。さっきと違う。今ならやれる。確信がある。

 

「喰らえ────!!!!」

 

 引き金を弾いた。引き続ける。とてもじゃないが拳銃とは思えない射撃音を上げて、高速でブローバックする。人の腕で使えば間違いなく脱臼では無事で済まない衝撃が体を打つ。

 まるでガトリング砲のような何かだった。しかも弾切れがない。

 私は自分の唇の端が持ち上がるのを感じた。歯を剥き出しにして笑う。笑いが止まらない。

 こんなの気持ちよすぎる。恍惚になる。まるでチートだ。

 吐き出される弾丸がスライムの体に大穴を空けていく。ビルに触っていた触手を弾丸が砕く。落ちてくる破片を避けて、さらに撃つ。ひたすらに撃つ。

 

「ココ!?」

 

「ミハ!!」

 

 スライムが堪らず離れたところ、ビルの隙間からミハが顔を覗かせた。よかった。無事だ。安堵の溜息を吐く私をそっちのけに目を見開いて、キラキラと。

 

「!! 可愛い!!」

 

「っ〜〜! そういうのは良いって!!」

 

 頬が熱い。この格好やっぱり可愛らしすぎる。

 

「でも思った時に伝えなきゃ!! 伝えたかったじゃだめな時がある!!」

 

「重いなあ!?」

 

 なんて含蓄のある……。っとスライムが私を見ると同時に触手がぎゅんと前動作無しに放ってきた。さっきまでいた場所の舗装を砕いて、クレーターを作る。跳ねて避けて、お返しと弾丸を見舞う。反射して来る触手を回って打点をずらし、避けてまた撃つ。

 躱して撃つ、を繰り返す。

 

「とりあえず私がスライム引き受ける! 引き受けてる間に──核を、見つけて!!」

 

 空けた穴も、砕けた破片もすぐに本体に戻っていくスライムに私は頬を引き攣らせながらそう叫んだ。

 アスモダイがベリアルから聞いた唯一無二のこのスライムの攻略方法。

 ミハが叩け無いなら、私が撃ち抜くしかない。

 

「できるのよね?」

 

「できますとも、マイアイドル」

 

 だったら。それなら。両手の二丁をスライム目掛けて構え直し。

 

「やってやるわよ……!」

 

 叫ぶように引き金を弾く。

 

「嫌になるほど撃ち込んであげる!」

 

「その意気です。マイアイドル。最高」

 

 ……先にこっちに撃ち込みたい。

 

 

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