ホラーエロ漫画の巻き込まれ主人公ですが、陵辱されたくないので魔法少女始めます。   作:クルスロット

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第二十七話 魔法少女と悪魔とお風呂時間

 

 

「頭が痛い……」

 

「分かる。分かるよ……」

 

 はあと溜息を吐いたココに苦笑いする。私は、頭が痛む暇がなかったけど。まるで遠い昔に感じるけどすごく直近の話。

 

「まあ、だいたい分かった。けど……神様の創作物が気に食わないから書き換えに来たって……」

 

「無茶苦茶だよね。分かる」

 

 二次創作しにきました! よろしくお願いします! じゃないんだよ。 

 

「……とりあえず、ミハが死なないように、つまり物語の結末をまともにするのがベリアルの目的ね」

 

「そうだね。私も今の所助けられてる」

 

 いなきゃ酷い目に何度あってるかわからない。

 

「結果、戦うことになっても?」

 

「戦えないよりいいよ。逃げてばっかは疲れちゃうよ。それに誰かが代わりに死んでいくのは見ていられない。ココだってあのままだと死んでた」

 

「……確かに。えっと……」

 

 シャワーを止めたココが壁にぶら下げたボトルの前で迷った。人の家とホテルで最初に迷うよね。

 

「シャンプーは左端。真ん中のやつがリンス。そして、右端がボディソープ。クレンジングと洗顔も使っていいからね?」

 

「ん、ありがとう」

 

 シャンプーを掌に出し始めたココから浴室の天井を見上げる。疲れた体に湯船の湯が染みる……。適当に買った入浴剤も悪くない。少し甘い、白濁としたお湯を掌で遊ばせて、また沈む。

 

「ごくらく〜〜」

 

「ふふ、おじいちゃんみたいね」

 

「分かってるけどしょうがないよ〜〜。あー溶けちゃう……。シャンプー早いね」

 

「短いからね。ミハと違って」

 

「そこの泡立てネット、使っていいからね」

 

「うん、ありがと。あ、凄い泡立つ。おもしろい」

 

 きゃっきゃと笑いながら泡まみれになっていくのはちょっと笑えた。

 

「こうやって誰かとお風呂に入るの久しぶりだなあ……」

 

 昔は、お母さんとか友だち。大昔はきっとお父さんとも。湯気で煙る浴室みたいにぼやけた記憶の向こう側で懐かしさが私に手を振る。手を伸ばしても空を切る。哀愁だけが胸に残った。

 

「私は初めて。思ったよりも楽しいね」

 

 まるでひつじみたいに顔以外泡でもこもこになったココを見ると自然と笑みが浮かんだ。

 

「ふふ、ココ、流してあげるよ」

  

「調子に乗ったらこうなるんだ。すごいね。この泡立てネット」

 

「通販で適当に買っただけなんだけどね。はい、ばんざいしてー」

 

「んっ……。これ、子どもの頃、思い出すね」

 

「分かる」

 

 頷くと曇っていた記憶が少しだけ輝きを取り戻した気がした。

 

「よし、流せたよ。湯船、好きに使ってね」

 

「え? 出ちゃうの?」

 

 残念そうに眉尻を下げたココに見上げられた。そんなに、残念がることも……。

 

「えっと、ほら湯船狭いから、一人の方がいいよ」

 

「いいよ。気にしない。もうちょっと話そうよ。私、ミハともうちょっと話してたい」

 

「……しょうがないな」

 

 そんなこと言われたら頷くしかないじゃない。

 

「やった」

 

 大人しく湯船に戻ると、後からココが私の前に入ってくる。やっぱりちょっと狭い。2人分の体重で嵩の増えた湯が溢れた。

 

「えっと……」

 

 いざ話すと言われても話題なんて。

 

「……ベリアルとミハが隠していたこと、教えてくれたじゃない」

 

「え、う、うん」」

 

 何を話すか迷った私を他所に、ココには元々話題があったらしい。呼び止めた理由がわかった。

 

「私も隠していたことがあるの」

 

「隠していたこと……?」

 

 見当もつかない。なんだろう。首を捻る。思いつかない。なんだろう。疑問符だけが浮かぶ。

 

「それを告白しようと思う。聞いてもらえる?」

 

 真剣な顔して、ココが言った。

 

「……うん」

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 丁度その頃。リビングで後片付けの皿洗いに勤しむ悪魔二匹は、ココの告白を盗み聞きしていた。

 

「……ベリアル」

 

「なんだ」

 

 ベリアルの洗った皿を丁寧に拭くアスモダイは、感慨深そうに言った。

 

「私は、心の底から貴方に料理を教えてよかったと思っています」

 

「……そうか」

 

「おかげでマイアイドル……ココ様に出会えた。ありがとう」

 

「どういたしまして」

 

 そこで会話は途切れた。リビングには、ただ皿を洗う音と水がシンクに落ちる音だけが響く。

 

「アスモダイ」

 

「なんでしょう」

 

「本当のところ、どうしてここに来たんだ」

 

「マイアイドルをお救いしたいという気持ちは貴方と同じですよ」

 

 ただ、とアスモダイが続ける。

 

「1つ、警告にも参りました」

 

「警告?」

 

「ええ……」深く頷いて「バズりすぎましたね。貴方」

 

「? 何か問題があるか? 気持ちいいぞ」

 

「気持ちいいのは……そうでしょうね」

 

 複雑そうな顔をするアスモダイに、不思議そうな顔で、皿を洗い終わったベリアルが水を止めた。ぽたりと蛇口に残った雫がシンクを打つ。

 

「嫉妬深い連中というのはどこにでもいるのです」

 

「だろうな」

 

 ベリアルが遠い目をした。そのつぶらな瞳に過ぎったのは苦くて甘酸っぱい記憶。悪徳の中の悪徳を名乗る大悪魔であるベリアルにもそういう記憶はあるらしい。

 

「我々は悪魔ですし当然といえば当然ですね。ところで見ました? デビチューブランキングの掲載順位上がってましたよ?」

 

「まじ? やっば。激アツ。うお……まぶし……きくぅ……おっほ……」

 

 万年ランキングの底の底のどん底で蠢いている底辺デビチューバーのベリアルには、今の大バズリは刺激的すぎた。先のアスモダイと同じくどこからかとりだした端末の画面を見て、びくんびくんと空中で震えた。

 

「こほん。すまない。気持ちよくなりすぎた。それでそれがどうかしたのか? 下らない話だ」

 

「荒らしですよ。デビチューブは対策バッチリですがこちらに乗り込んでこられると面倒です」

 

「むぅ……。そこまでするのか……」

 

「暇人ならぬ暇悪魔は、腐るほど居ますからね。どうします?」

 

「どうするもなにも撃退するだけだろう」

 

 にやりとベリアルは、凄みのある笑みで答える。

 

「俺は、ベリアルだ」

 

 これで十分だろと言わんばかりだった。

 

「下らない下級悪魔如き、一捻りだ────ほらな?」

 

「……大人げないですね」

 

 ドヤ顔で上を指すベリアルに、天井を見上げたアスモダイがやれやれと呆れたように首を振った。

 ──空より高く、宇宙より遠く。深海の底よりも深く。そして、紙を一枚隔てるよりもこの世界と近い、また別の世界。そこでは今、青と黒の炎が吹き荒れて、下級悪魔たちを無慈悲に焼き払っていた。

 悲鳴も呻きも、絶叫も。何もかもを等しく炎は焼き焦がした。 

 

「……これも動画化したら受けるんじゃないか?」

 

「大悪魔マウントで炎上するだけですよ。やめときなさい」

 

「くぅん……」

 

 ベリアルの口から情けない声が出た。下級悪魔は燃やしても、自分の動画を燃やしたくはない。

 

「アスモダイ。それで、警告とは?」

 

「今みたいに真似をしてやってくるやつには気をつけなさい。私のように同担じゃないとは限らないのだから」

 

「……気をつける」

 

 ベリアルは同担拒否であった。自分の推しを見せびらかすために動画をやっていると言っても過言ではない。

 自己顕示欲と独占欲のモンスターであった。

 

 

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