ホラーエロ漫画の巻き込まれ主人公ですが、陵辱されたくないので魔法少女始めます。   作:クルスロット

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第二十八話 魔法少女と悪魔とダイヴトゥホール

 

 

「……ただいま」

 

 確か、ここでよかったと思う。私の前には瓦礫がある。後ろにも、横にも。この区画はあらゆるところに瓦礫が溢れている。だから見つけるのは大変かなと思った。

 けど忘れてなかった。私の体はここで生きていたことを覚えていた。

 

「お花とかお菓子とか持ってきたかったんだけど、誰かに見つかっても誰かが居たことを気付かれてもだめなんだよね。ごめんね」

 

 この区画は今でも立入禁止。だからこっそり裏技、ベリアルの力を借りて忍び込んだ。

 

「最近の話しするね。……色々ありすぎて困っちゃうな。整理しとくんだった。本当に色々あったんだよ? 信じてもらえないような話しばっかり。信じてくれる?」

 

 風が吹いた。冷たい秋の風。秋の終わりを感じさせる冷たい風。

 

「……お母さんとお父さんなら信じてくれるよね」

 

 それから私は、ベリアルに出会ったこと、ベリアルと一緒に何をしているかを話した。荒唐無稽で、漫画みたいな話し。信じてくれるかな。信じてくれるといいな。

 

「学校は……まだ慣れないけど。うん。頑張ってる。あっ、新しい友だちもできたよ。ココっていうの。色々あるのもココのおかげでなんとかなりそう」

 

「ミハ」

 

「あ、ごめん。もう時間?」

 

 離れていたベリアルがいつの間にか寄ってきていて、声をかけてきた。こうして私が実家のあった場所に帰って来ているのは本来の目的じゃない。

 

「いや、そうではない。ただその……ほら」

 

「? 何よ」 

 

 珍しく判然としないベリアルに、眉を顰めた。そうして、もごもごした後、ベリアルは囁くように言った。

 

「……俺が紹介されてない」

 

 推しにご両親を紹介してくださいはちょっと押し付けがましくない? でもお世話になってるのは間違いない。

 

「ふふ……。そうね。これから紹介するところだった」

 

 くすりと笑みが浮かぶ。

 

「ぬぅ……余計だったな」

 

「いいよ。お母さん、お父さん。もう一人、紹介させてね。私の──」

 

 友だち……友だちじゃなくて。もっと相応しい言葉がある。

 

「──相棒のベリアル。彼のおかげで生きていられてるんだ。すごく助けられてる」

 

「…………」

 

 どうだ言ってやったぞ、とどやっとした。反応を見るのがちょっと楽しみになってる私がいるのは間違いなかった。

 ……? 静か。さめざめ泣いたり。呻き声が聞こえてこない。そっとベリアルの方を見てみる。

 

「ベリアル?」

 

 空中に浮かんでる。呼んでも反応がないから顔の前で手を振ってみる。反応がない……というかこれ。

 

「……浮かんだまま気絶してる…………」

 

 刺激が強すぎたかなあ……。苦笑いが浮かぶ。催促してきたくせに、繊細なんだから。

 

「それじゃあ、また来るよ。今度は、色々持ってくる」

 

 気絶したままのベリアルを抱えて、踵を返す。少し離れたところで待ってるココと合流した。

 その間にベリアルをなんとか起こせないか試したけど意味無し。うーん困ったな。

 

「ごめん。待たせちゃったね」

 

「いいよ。大丈夫」

 

 瓦礫を椅子代わりにして、手持ち無沙汰に端末を触っていたココは、立ち上がってお尻を払うと私の方に向くと怪訝な顔で、腕の中のベリアルを指差した。

 

「大丈夫? それ」 

 

「多分……」

 

 ほんとに起きないな。ベリアル。大丈夫かちょっと心配になってきた。

 

「しょうがないですね。ベリアル。起きてください」

 

 ひょこりと現れたアスモダイがベリアルの顔の前で小さな両手をぱちんと打ち合わせると白い光がベリアルの鼻先で弾けた。

 

「────はっ!」

 

 ぶるぶるぶるぶると全身を手持ちマッサージ機みたいに震わせて、ベリアルが目を覚ました。おおすごい。揺らしても振ってもだめだったのに。すごい。

 

「あっ、気がついた。ありがとね、アスモダイさん」

 

「いえいえ。お役に立てて光栄です。ちょっとした気付け程度ですから」

 

 アスモダイさんは、謙虚だなあ。

 

「おはよ。ベリアル。よく寝れた?」

 

 腕の中から私を見上げたままのベリアルに声をかける。重量がまったくないのがなんだかちょっと違和感あるんだよね。

 

「…………お」

 

「お?」

 

「おぎゃ…………」

 

「おぎゃ……?」

 

 よく分からない擬音がベリアルの口から飛び出てきた。

 

「……あ、ああ。すまない。助かったよ、ミハ」

 

「? どういたしまして」

 

 はっと我に返ったようなベリアルがしゅばばばばと腕の中から浮かんだ。やけに素早い。

 

「ベリアル、貴方……」

 

「そんな目で俺を見るな……!!!!」

 

「いや、しかしですねえ……。流石に……それはちょっと……きもち……気持ち悪い……」

 

「う、うるさい! うるさい! うるさい!!」

 

「ほらほら。じゃれてないでそろそろ行こうよ。悪魔2人は見つからないけど私らは見つかるんだから」

 

 悪魔2人の諍いをココがぱんぱんと手を打って中断を促す。

 

「そうだね。暗くなる前に戻りたいし」

 

「……うむ」

 

「申し訳ありません、お二人とも」

 

「じゃあ、行こう」

 

 意見がまとまったのを見て、ココが歩き出す。後に続く私は、転がってる瓦礫や石に足を取られないように続く。

 もう1年以上経っているのにこの区画は、未だに復興していない。それどころか片付いてもいない。当時と違うのは犠牲になった人たちがいないってところだろうけど、規制が大掛かりにかかっていてその様子を見ることはもう叶わない。

 ココにも環境維持保全委員会の方にあたってもらったけど、ココの権限だと見れなかった。しょうがない。

 お風呂での告白は、少し衝撃があったけど腑にも落ちた。ベリアルが同行をするのを許したのもこれが関係していたから。

 そうなるとベリアルからまだ聞けてない話があるはずだ。

 

『ココは、原作のラストシーンで、ミハを庇って死ぬ』 

 

 確信して、お風呂から出たすぐ後、ベリアルを問い詰めると観念したように聞けてなかった事実が出てきた。

 

「……原作通りにはさせない」

 

「あまり思い詰めるなよ、ミハ」

 

「分かってる。けどあんなの知ったら……」

 

「だから言わなかった。現在が変わったといえど、未来なんて知っていても良くはない」

 

「どうして?」

 

「その情報に囚われるからだ。何をしていても思考に隅に引っかかって離れない。忘れようと努めてもだ」

 

「……うん」

 

「まあ、その辺りは──「私どもがサポートします」──人のセリフをとるな!!」

 

 話に頭を突っ込んできたアスモダイさんに、ベリアルが叫んだ。かっこよかったのにね。残念。でもおかげで少し緊張が取れた気がする。

 

「ミハ、こっち」

 

 ココに手招きされて、私はビルだったものの隙間から外を覗き込む。

 

「これが例の……」 

 

 私の住んでいた中層区画の一角、今も塞がれていない区画のほとんどを飲み込むような大穴がそこにあった。反対側まで行くならかなり一苦労しそうな直径。高い柵で大穴が囲われていて、中に入るには柵を破壊するか、よじ登って乗り越えるかくらいしかできなさそう。 柵の隙間からメガフロートの地面になってるプレートの分厚い断面が見える。滑らかで、熱したナイフでバターを切ったみたい。ただの崩落でないのはひと目で分かった。

 事前にココが調べてきた情報通り、武装ドローンや、犬型ロボットが巡回している。監視カメラの他にも柵には重量センサーなどの侵入者を拒むトラップが仕掛けられているらしい。

 

 「やけに厳重だね」

 

 ただの事故現場には似つかわしくない。

 

 「この先にはきっとなにかあるってことよ」

 

 ココの言葉に同意するように頷く。

 きっと、私の両親を、友だちを殺した魔物──光の巨人、2年前の崩落事件についての手がかりがある。

 

「それじゃあ、いこっか」

 

 まあ、私達がやることなんて決まってる。

 

「うん。行こう、ミハ」

 

 目と目を合わせて、互いに悪魔を従えて。

 

「「変身!」」

 

 

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