強いて言えば、全体を見た私の感想的な...。
我々はひとりちゃんを起こしてから、人前で演奏する際に暴走してしまう対策の案を出すことになった。
トップバッターは言い出しっぺである私だ。
「確かひとりちゃんって手元見なくても演奏できるよね?」
「うん...できる、よ?」
「よし、じゃあこれだね」
そう言っておもむろにポケットから取り出したのは...。
「目隠し...?なんでそんなものがポケットに?」
伊地知さんが疑問に思うのも仕方がない。
これは昼休みにお昼寝をする際に必要なものだ。
瞑った視界を真っ暗にするだけでも睡眠の質は向上し、万全とまではいかないが調子のいい状態で午後の授業を受けることができる。そう言った内容のものを告げた。
とはいえ、まだテストが実施されたわけではないのでクラスでの私のイメージはおそらく『いい人ではあるんだけど不思議な人』というイメージだろう。
「ひとりちゃん、着け心地はどう?」
「あ、ばっちり...です。でもなんか...眠...」
「駄目そうですね」
ふらふらしだしたので目隠しを取ると、急に明るくなったせいなのか目を抑えて『聖なる光が...!』と言い出した。
スタジオの照明なんだよなぁ。
次、伊地知さん。
いい案を出してくれると期待して、伊地知さんが発言するのを待つ。
「えっとぉ〜.......。あっ、そうだ!そこにあるのをかぶってみたらいいんじゃないかな!?」
半分ヤケになっているように見える伊地知さんの指差した先には、可燃ごみと書かれたゴミ箱が...。
コレを被れと!?
ひとりちゃんはなんの躊躇も無くゴミ箱を被って見せた。しかし欠点はすぐに浮き出た。
「こ、これじゃ...演奏...できないです...」
「だよね〜、あはは...」
そう、腕の可動域が狭すぎてギターが演奏出来ないのだ。
ゴミ箱の高さがもっと低ければ大丈夫だったんだろうけども。
最後、山田さん。
「人前で演奏するのが苦手なら...アレがいいんじゃない?」
山田さんが指差した先にはみかんの入っていたであろうダンボールだ。
たしかにアレなら穴を空けて腕の可動域も確保できるし、程よい暗さと狭さを与えてくれるだろう。
早速、穴を空けて装着してもらった。
「け、結構いい感じです...!」
「テンションのボルテージが少し上がりましたね」
「人って環境が違うだけでそんなにも違うものなんだね...」
「箱ギタリスト...ププッ、我ながらおもしろい」
活き活きとしているひとりちゃんもかわいいな。
「みっ、みなさーん、下北を盛り上げていきましょーう!」
「この変わり様...さっきのがまるで嘘みたいだね...」
「おー、いいぞー」
問題は綺麗に片付いた。
「んー、そういえば後藤ちゃんの名前どうする?」
「な、名前...ですか...?」
伊地知さんから新たなる問題が投下された。
こちらは些細な問題なので静観していてもいいかもしれない。
「うん、ライブで紹介する時に本名を言っちゃっても良いのかなって。ニックネームってある?」
「え、えっと...中学では《あの〜》とか、《きみ》とか呼ばれてました...」
「いや後藤ちゃん!それ絶対ニックネームじゃないって!」
「そ、そうなんですかね....?」
「絶対違うよ!?」
まぁ、名前が出てこない場合とかあんまり親しくない場合とかもそんな感じの呼び方になるよね。特に《あの〜》の汎用性が高い。
「後藤のフルネームって後藤ひとりだったよね?」
山田さんが何か閃きそうな目でひとりちゃんに問いかける。
「あ、は、はい。そうです...」
すると山田さんはひとりちゃんの名前をブツブツと連呼し始めた。
「.....????」
ひとりちゃんは絶賛困惑中。
「ひとり...ひとり...ひとりぼっち...?よし、今日から君は《ぼっち》だ!」
「うっわまたデリケートなことを...」
「ぼ、ぼぼぼぼっちですっ!」
「喜んじゃってるし...。なんか悲しくなってきたよ」
ロクでもない筈なのに何かしっくりくるのがもどかしいな。本人が気に入っている様なので言及は控えておくとしよう。
そうしているとスタッフさんから声がかかった。
しかし、バンド名が独特な響きでひとりちゃんと私は一瞬バンド名だと認識できなかった。
「結束バンド...ですか?」
「あっ、いや〜...その、ねっ?仮のっ!仮の名前だからっ!絶対変えるからっ!!」
「私的には面白くて好き」
「い、いいんじゃないでしょうか...」
伊地知さんが羞恥的な意味で顔を赤くして蹲る。
結束バンド、一度締めたらペンチで切るまで取れることは絶対にないプラスチック製品だったか。
格好良さとかからは程遠いけど、言霊としては相当いいんじゃ無かろうか。
原作乖離(完熟マンゴー→みかん)
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それではまた次回、お会いしましょう。