ひとりちゃんは最高にかわいい   作:白ノ宮

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三ヶ月ぶりですね、この作品。
ただの黒歴史になりつつありますが、読み返してから書き掛けのep13に取り掛かりました。
どうにか書き上げましたが、お察しの通り短いです。


ep13 約90日間の空白

「さぁっ!もう出番だよっ!結局一曲しか合わせられなかったけどなんとかなるはずっ!」

 

「大丈夫、この私に任せて」

 

「ほ、本番....が、頑張るっ」

 

みかんのダンボールギタリストのひとりちゃんは思いのほか大丈夫そうだ。

 

三人とは別れて控室から観覧スペースに移動する。

 

この視点から見てもひとりちゃんの容貌は異様だ。ダンボールを被って楽器演奏を行う人間というのは私から見てもネットで動画を投稿している人がおふざけ企画でやっているものぐらいだ。

 

ライブハウスでの演奏でそんな奇怪な事をする人はまずいない筈だ。

 

ボーカルが蒸発したという事でインストバンドに急遽変更となったわけだが、みかんダンボール仮面以外のメンバーの顔つきから変に緊張している様子ではなさそうだ。

 

そして演奏が始まる。

ひとりちゃんはダンボールの構造上前しか視界がないので周りと合わせて演奏する事自体難易度が高い。しかし、先ほどと違って暴走はしていないので演奏という形を崩壊させずに、下手な演奏という枠組みに抑えている。

 

不可に近い可という表現がぴったりだろう。

それでも演奏しきる事は出来ていたのでひとりちゃんにとって今日という日は思い出に残る素晴らしい日になるだろう。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

演奏が終わって再び控室。

 

そこにはダンボールをパージして白くなっているひとりちゃんとそれを見てどうすればいいかわからなくて困っている伊地知さんと燃え尽きたひとりちゃんをジッと観察し続ける山田さんの姿があった。

 

なんだこの状況は。

 

「あっ!暗城ちゃ...おわっ!」

 

私に気づいた伊地知さんが私の名詞を呟いた途端にひとりちゃんがガバッと起き上がり、その急な動作に驚く。

ひとりちゃんはユラァと立ち上がり、走って勢いよくこちらに飛びついた。

 

「おっと...!全く、ぶつかり稽古じゃないんだから...」

 

そう言ってひとりちゃんの頭を撫でる。

意外としっかり手入れされている髪はいつ触っても撫で心地が良い。

 

「なんかこう見ると姉妹みたいだね...」

 

伊地知さんがにこやかにそう言うと山田さんも無言で頷く。

 

姉妹か...。そう言った捉え方も有り得るな。

 

撫でる手を止めずにいると再びこちらにかかる重さが増した。

おそらく寝てしまったものだと考える。

 

「あの、伊地知さん...」

 

「ん?どうしたの?」

 

「ひとりちゃん、再び眠っちゃってます」

 

「え!?打ち上げやろうかなって思ってたんだけど...。それなら仕方ないか、リョウは?あれ?」

 

気付けば山田さんは扉に手をかけており、こちらに振り返って一言。

 

「今日は疲れたから帰る。じゃっ」

 

感情の読めない整った顔でウインクをしてから帰っていった。

 

「嘘ぉ...」

 

打ち上げが出来ずに残念がる伊地知さんを不憫に思いながら、こちらも帰る準備を行う。幸いにもひとりちゃんは自分が燃え尽きる前にギターをしっかりケースにしまっておいてくれていたので二人分の荷物を持つだけだ。これぐらいなら何の苦にもならない。

 

その上でひとりちゃんを背負う。

二つの楽器のせいか見た目が少々凄いことになっているが、私自身は重いと感じていないのでこのまま帰ろうと思う。

 

「伊地知さん、あまり遅くなると親が心配するので私達も帰りますね」

 

「え?あ、うん。おつか...え?それ本当に帰れるの?」

 

「はい、何の問題もありませんよ。それではまた機会があればお逢いしましょう」

 

伊地知さんから見ても凄かったみたいだ。

 

「あ、うん。頑張れー」

 

本日は困惑することが多かった伊地知さん。大変お疲れ様でございます。

 

その後、無事にひとりちゃんを親御さんのところまで送る事ができた。




これ作風変わってるよなぁ...と思ったり。
第1章が終了したのでお次は幕間ですね。
オリ主を主体にした話を『予定』しています。
予定←これ大事

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