短編:スピアヘッド戦隊の軍医さん   作:御代川辰

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狐さんとカルテ

 ある日の昼下がり。セオはツバサが珍しく留守にしている医務室の掃除を終え、休憩時間中の暇潰しに彼が纏めているカルテや診断書を読み漁っていた。

 今手に取っているのは9年も前になるものらしく、本人が言うには「物心付く頃には簡単な問診を覚えさせられていた」とのことだが、(つたな)(きたな)い字ながらも難しい言葉をしっかりと書きとり、また今後の治療予定なども具体的に記しているところから見ても、この頃には既に医療に関する天賦の才が花開いていたのだろう。

 また診断書であるファイルの表紙には、ツバサが過去に診断者、そして主治医を担当して来たエイティシックスたちの顔写真の他、名前、性別、人種、血液型、生年月日と死亡年月日、果ては個体識別番号と言ったあらゆる個人情報が記載されている。

 

「げっ」

 

 またカルテを眺めるが時々顔をしかめている通り、白系種(アルバ)の治療・検診の記録も当然存在する。だが、ツバサの本職はあくまで軍医、人間の怪我や病気を治療するのが本分である。例え憎んでいる人物であろうと、嫌っている人間であろうと、(みずか)らが担当する患者となる以上は平等かつ公平に扱いをしなければならない。

 白系種(アルバ)に深い怨みを持つセオにとっては、ツバサの方針はあまり気持ちの良いものではない。しかし「救える者は必ず救う」という医師としての姿勢は尊敬に(あたい)するし、誰がいつ死ぬかも分からない戦場にある以上、いちいち口うるさく説教をされるのもあまり気にならない。

 

「…………本当にたくさんの人を診てきたんだな……」

 

 改めて、カルテと診断書を見直す。半分以上が半年足らずで止まっているが、それでも長いものは数年に渡って記録を継続している。もちろん、死因も明記されているものもあれば、消息不明のまま定期検診の更新が止まった診断書もある。

 

(よくもまあ……根気が続くよね)

 

 

 

 ─Chiei Hoya

Sexual:Male

Race:Mixd race(Onyx and Eizen)

Birth and death:9.Mar.2130-30.Apr.2141(11 years old)

Cause of death:Suicide(Used a Handgun)

Blood type:A0B0

Number:E606-01998

Asylum:South ern No.103 asylum

First record:10.Aug.2139

Last record:28.Apr.2141

 

 ─Amina Karyou

Sexual:Female

Race:Saphir

Birth and death:23.Jun.2129-4.Dec.2143(14 years old)

Cause of death:Accident(Crushed to death during a scouting mission)

Final class:2nd Lieutenant

Blood type:B000

Number:E012-93416

Asylum:South ern No.103 asylum

Squadron

9.Aug.2141-29.Jun.2142/Southern front 2nd battlefield 36th squadron “Theacia”

2.Jul.2142-4.Dec.2143/Western front 3rd battlefield 20th squadron “Victors”

Personal name:〈Overrun〉

First record:12.Aug.2139

Last record:29.Jun.2142

 

 ─Fugaku Ote

Sexual:Male

Race:Topaz

Birth and death:1.May.2130-13.Sep.2143(13 years old)

Cause of death:No clear(Escape from the enemy)

Final class:2nd Lieutenant

Blood type:Ba00

Number:E091-34790

Asylum:South ern No.056 asylum

Squadron

10.Jan.2142-10.Jun.2143/Southern front 2rd battlefield 36th squadron “Thracia”

Personal name:〈Redflag〉

First record:18.Jun.2142

Last record:7.Sep.2143

 

 上に挙げた3人の患者の簡単なプロフィールを見るだけでも、ツバサがいかに複雑な人間関係を築いて生きて来たのかが手に取るように理解できる。

 それも、プロセッサーとして戦地に出るようになってからではなく、まだ8歳かそこらの(おさな)い頃からこうなのだ。心労は想像を絶するものだろうとしみじみ思いながら、セオはカルテのファイルを閉じた。

 

(…………本当、苦労してるんだな……)

 

 カルテと診断書を棚に戻した時、ツバサも医務室に戻って来た。出撃もなければ戦死者も怪我人もいない、束の間の平和な一日だった。




名前だけ登場したオリキャラの簡単な設定紹介
チエイ・ホヤ
シンとアネットのご近所さんで幼馴染み
ギアーデ皇室に仕えていた高位貴族の傍系
収容所での虐待に耐えかね、共和国軍人から強奪した拳銃で自殺した

アミナ・カリョウ
パーソナルネーム〈オーバーラン〉
アンジュ・エマの再従姉妹
住んでいた地域が違うためお互い面識なし
雨天の中斥候をしている際に崖から落下し、運悪く土砂崩れに巻き込まれて即死

フガク・オテ
パーソナルネーム〈レッドフラッグ〉
収容所ではルイ・キノの弟分だった
敵前逃亡の理由、目的ともに不明で生存も絶望的
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