無戸籍ネグレクト少女を拾ってしまったから(幸せを)わからせたい   作:エテンジオール

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HAPPYEND?小さな幸せの集まる場所

 すみれに迫って、覚悟を決める約束をしてから僕が陥落するまでにかかったのは、結局二週間程度だった。度重なるアピールと、あの日以降所作の一つ一つが魅力的に見えてしまうこともあり、間違えようのない愛情を実感するまでにかかったのが一週間。

 

 そこから、自分の気持ちは本当に愛情なのか、ただの性欲なのではないかと迷ったり、愛情だとしてもそもそもすみれのような幼げな少女に恋慕の情を抱くのは大丈夫なのかと苦悩して、最終的には何をとち狂ったのかすみれのお母さんの莢蒾さんに相談した始末だ。

 

 その際に、すみれに恥をかかせることになったことについてこんこんとお説教をされて、たとえその衝動が性欲でもそれまであの子を守ってきたのはそれ以外の愛情なのだから、今更感情が一つ増えたところで大事なところは変わらないでしょうと諭された。あと、そろそろ法律的にも大丈夫な年齢になるから気にするなとも。周囲の目線に関しては男ならあきらめなさいと言われた。本当に、過去の行いが信じられないくらいまともな人だ。

 

 

 その後家に帰って、すみれの気持ちを受け入れると伝えると、それならと目をとじてなにかを待たれる。

 

 何を待っているのかも、どうするべきなのかもわかっていても、人間思いのほか踏ん切りがつかないものだ。結局、痺れを切らしたすみれにジト目で見つめられてようやくだった。ヘタレの汚名はまだまだ返上できそうにない。

 

 

 それが、半年ほど前の話だ。

 

 すみれからの猛プッシュに風前の灯かと思われた貞操もなんだかんだで守られて、清い関係のまま……若干オフホワイトな関係のまま、籍を入れた。10代半ばだと思っていたすみれだが、実際のところは17だったらしい。10歳頃からネグレクトされていたと考えれば、成長が遅れているのも納得のいく話ではあった。

 

 そしてこの半年の間に晴れて18になったすみれは晴れてお嫁さんデビューを果たしたわけだ。外見年齢のせいで酷い犯罪臭がする。

 

 これまでの経緯とか、すみれの人に対する恐怖が治っていないこととか、その辺のことを考えて式を挙げることはせず、けれどせっかくの記念だからと写真だけは撮っておくことにした。うれしそうに写真を抱きしめる姿は、他の誰にも見られていない、僕だけの宝物だ。

 

 

 本格的に二人で生活を始めるにあたって六畳一間は手狭だったので、引越しもした。すみれは今のままでもいいと言っていたが、今ある必要最低限のものだけでの生活は卒業したかったし、そうなるとものを置く場所がないのはいけない。するとどうしても、もう少し広い家に引っ越す必要があったのだ。

 

 新しい住居は家賃こそ多少上がるものの、面積で言ったら倍以上になる1LDK。これならば、すみれが欲しがっていた水槽を置くことも出来る。

 

 一通りのものを新居に移して、足りないものやほしいものも買った。手持ちの問題で妥協しようとしていたところは、莢蒾さんが援助してくれた。本来すみれにかけるはずだった分のお金を回すから使いなさいとの事。断ろうとしたら、桐たんすを送られるのとどちらがいいかと言われたため、諦めてありがたく使わせてもらうことにした。

 

 そんなこんなで引越しは済んで、一昨日から新居に移った。部屋は広くて、便利で、何も言うことは無い。あとは今日一日、会社で仕事をしつつ手続きを済ませれば、明日からは休みだ。

 

 お祝いということで、朝から仕込んでいつもよりも豪華なご飯を作ってくれると、()の方も、今日こそは恥ずかしがらずに頑張るから期待して欲しいと言っていた、すみれの赤くなった顔を思い出す。その楽しみが待っているだけで、いつもの何倍のやる気と集中力が湧いてきた。

 

 のんびり休憩するのももどかしくて、休憩とそこそこに仕事に戻り、しばらくしてから規定通りの休憩を取れと上司に呼び出される。大人しく休んでいるのが耐えられないと伝えたところ、それなら帰宅後に休んだことにしていいからさっさと8時間働いてしまえと匙を投げられた。ホワイト且つ気の利く上司で、感謝しかない。

 

 そのまま時間を忘れるように仕事に没頭して、普段の定時よりも30分早くあがらせてもらう。

 

 帰り道を進むにつれて、もっと早く帰りたくなる。少しでも早く、すみれに会いたくなる。早く帰ったら、すみれは喜んでくれるだろうか。もしかしたら料理のタイミングが合わなくて、むくれてしまうかもしれない。それはそれでかわいいので、見たい気持ちもあるが何も言わずに突然だと起こるかもしれない。早く帰れるようになったことだけ伝えて、その後で急ごう。

 

 

 電車の中でメッセージを送って、一番改札に近いドアの前に立つ。早くあって、抱きしめたかった。朝からずっと楽しみにしていて、もう限界が近かった。

 

 走らない程度に、汗をかかない程度に急ぐ。走って帰って、臭いと思われたら心が折れかねないからだ。

 

 慣れない道を帰って、やっと見えてきたのは緑色の屋根のアパート僕らの新しい家だ。すみれが待っていてくれる、幸せな家。帰ったらおかえりなさいと言ってくれる、当たり前の幸せが集まる家。小さな幸せの集まる家。

 

 もう、玄関で待っていてくれているだろうか。いや、メッセージを見ていなくて、びっくりして出てくるかもしれない。どちらであっても、うれしいし、喜べるだろう。

 

 期待と、楽しみにあふれたまま、僕は玄関を開けた。





 ちょっと短いので早ければ夕方頃には次を載せます(╹◡╹)
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