無戸籍ネグレクト少女を拾ってしまったから(幸せを)わからせたい   作:エテンジオール

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 書いててめちゃくちゃつらくなった(╹◡╹)


第109話

 

『こうやって手紙を書くのははじめてで、どんな風に書けばいいかわからないので、変な風になっちゃってたらごめんなさい。

 本当ならおしゃれな封筒に包んで、封蝋でもして残したかったものですが、今のわたし、右半身しかまともに動かすことができなくて、できませんでした。紙を抑えられないから字も汚いですし、ぐちゃぐちゃです。本当はわたし、もっときれいな字がかけたんですよ。本当なんです。もっと早く手紙を書いていればよかったって、すごく思います。』

 

『でも、ぐちゃぐちゃでも、上手に書けなくても、やっぱり紙が良かったんです。こうして紙に書くと、いつまでも残ってくれそうでしょう?スマホのデータは、いつ消えちゃうかわかりませんからね。』

 

『なんて、変な書き出しになっちゃいましたね。ごめんなさい、こんな出だしですが、これはわたしが最後に残す手紙、いわゆる遺書というものですね。今日は、燐さんに最後に伝えたいことを、ここに書かせてもらいます。ノートに書いてたら手紙じゃなくて書き置きじゃないかなんてツッコミは、しないでくださいね。』

 

『さて、一体何から書けばいいでしょうか。書きたいことも伝えたいこともたくさんあるけれど、いざ書き始めると迷ってしまいますね。こんな調子で書くので、途中おかしなところがあっても大目に見て貰えると嬉しいです。』

 

『まず最初は、燐さんに対するお礼から書きましょうか。わたしのことを拾ってくれて、まだ生きていたいと思わせてくれて、ありがとうございます。本当は、拾ってもらった次の日にはもう、自殺したいなんて思わなくなっていたんです。燐さんは前に、わたしにそう思わせないために頑張ったと言っていましたね。すぐに素直になれなくてごめんなさい。』

 

 

『でも、そのおかげでわたしは、普通の幸せを知ることができました。何もなかったわたしに、幸せを、生きる目的をくれたのは燐さんでした。書こうと思ったらどれだけ書いても終わらないくらい、燐さんには、お兄さんにはたくさんのものをもらって、そのどれもがわたしにとっては宝物だったんです。』

 

 

『瑠璃華さんとのことも、燐さんはずっと自分のせいだと気にしていたみたいですけど、燐さんは何も悪くありません。誰もわからなかったことだったんですから、仕方がなかったんです。……それに、あの後から、燐さんはわたしのことをずっとずっと甘やかしてくれるようになりました。片手がうまく使えなくなってあの時は苦しかったですけれども、それと同じくらい幸せな時間でもあったんです。』

 

『それに、あの事があったおかげで、わたしは戸籍を取って、ずっと大好きだった燐さんと結ばれることができました。燐さんならもしかしたら、あの事がなくてもゆくゆくは、わたしをもらってくれたのかもしれませんけど、わたしにとってはあのおかげという気持ちがあったんです。』

 

『どれもこれも、素敵な時間で、わたしの宝物です。』

 

 

 

 

『それじゃあ次は、謝らないといけないことですね。』

 

『謝らないといけないことは、お礼よりもたくさんあります。でも、全部を伝えたらわたしのお礼の気持ちが伝わらない気がするので、ほとんどは言わないでおきますね。最後の最後まで、悪い子でごめんなさい。』

 

『なかでも最初に謝らないといけないのは、不用心なことばかりだったことでしょうか。一番のきっかけになってしまったあの日のことも、わたしがムードの事なんて余計なことを考えていたから、あんなことになってしまいました。普通なら、もっと警戒心を持っていれば、そんなことよりも自分の身を心配して、防げたはずのことだったんです。』

 

『その結果、あんなことになってしまって、燐さんに何もすることができなくなってしまいました。ずっとやっていた家のことも、ずっと作っていたかったご飯のことも、これから幸せな家族になるために期待していた、子供のことも。また燐さんのことを怖がるようになってしまって、今度は簡単には治らなくて、何もできなくなってしまいました。』

 

 

『それにわたし、あんなことになっちゃったのに、最初の方少しだけ、悪くない生活だなんておもっちゃったんです。燐さんがいつもわたしのことを考えてくれていて、燐さんが他の何よりも優先してくれて、そして燐さんから捨てられる心配がなくて。大好きなあなたを一生わたしだけで独占できるって思ったら、思っていたほどつらくなかったんです。燐さんはずっと苦しんでいて、何もかにも全部頑張っていてくれたのにそんなことを思っていたんです。ごめんなさい、ひどい奥さんですよね。』

 

『そのあと、そのことに気付いて、ちょっと不安定になっちゃったりもしました。自分のひどさに、みにくさに気付いて、自己嫌悪が止まらなくなっちゃった時期もありました。今思い出せば、燐さんがお酒を飲むようになったのも、この頃でしたね。』

 

『燐さんがもともとはお酒を飲んでいたことは知っていましたし、最初はそこまで深刻に考えていませんでしたが、それまで飲まない生活をしていた人がほぼ毎日飲むようになるということがどういうことなのかを考えられていませんでした。燐さんがお酒に頼らないといけないくらい苦しんでいることに、気付けませんでした。』

 

『気付けても、何もできなかったとは思います。きっと一番のストレス源になっていたわたしでは、愚痴を聞くこともできませんから。でも、それでも気付いていないといけなかったんです。気付いているだけでも、しないといけなかったんです。本当にごめんなさい。』

 

 

『これ以上書いてると、謝るだけでノートを使い切ってしまいそうなので、ごめんなさい、謝るのはここまでにしておきますね。まだまだわたしが伝えなくてはいけないことは残っていますから。』

 

『次に書いておきたいことは、わたしの気持ち、突然こんなものを残して、燐さんを残して、こんなことを決めた理由です。』

 

『燐さんがくるしんでいることがわかっていて、その原因がわたしであることもわかっていました。わたしがいるせいで、燐さんは毎日頑張らなくてはいけなくて、わたしがいるせいで、燐さんは今幸せから遠いところにいます。これをどうにかするには、わたしがいなくなるしかないです。』

 

『わたしが離れるだけだと、今よりは多少良くなるかもしれませんけど結局燐さんに負担がかかります。相談したらお母さんは助けてくれるかもしれませんが、わたしにはそれで燐さんが幸せになれるとは思いませんでした。』

 

『わたしは、燐さんのことが好きです。誰よりも近くにいたくて、だれよりもあなたのことを愛していたくて、だれよりもあなたに愛されていたいです。そうしていられることがわたしの目的で、幸せです。そのはずなのに、間違いなく幸せなはずなのに、すごく心が苦しいんです。』

 

『自分が幸せになるために燐さんの生活に入り込もうとして、やっと手に入れたはずの幸せなのに、燐さんが幸せそうにしていないと、全然うれしくないんです。悲しくなるんです。』

 

『燐さんには、あなたには幸せでいてほしいんです。でも、そのためにはわたしが一番じゃまで、一番いらないんです。』

 

『苦しかったんです。あなたが苦しんでいることが。悲しかったんです。あなたがお酒に、たばこに溺れて、どんどんやつれていくところを見るのが。』

 

『幸せそうにしていたあなたを好きになったから、あなたのことを愛しているから、もう、全部やめて幸せになってほしかったんです。』

 

『何も相談しないで、一人で決めてかってにこんなことをしてごめんなさい。でも、もし誰かに相談したら、きっと止められてしまうから、わたしの周りには、そんな優しい人しかいないから、できませんでした。』

 

 

『最後に、一つだけ、すごくひどいことを書かせてください。』

 

『燐さんはきっと、わたしがいなくなったら、悲しんでくれると思います。あなたはとっても優しくて、いろんなことに責任を感じてしまう人だから、きっと引きずってしまうと思います。』

 

『だからどうか、わたしの事なんか忘れてしまって、わたしよりももっと素敵な人と結ばれてほしいんです。わたしが無駄にしてしまった三年間を取り返せるくらい幸せになってほしいんです。あなたは素敵な人ですから、少しすればきっとそんな人に出会えるはずです。瑠璃華さんの邪魔がなくて、わたしみたいなのがいなかったら、本当にすぐだと思います。』

 

 

 

 

 

 

 

 

『ごめんなさい、紙がぐちゃぐちゃになっちゃいました。』

 

『大好きだから、幸せになってほしいんです。これから出会う、幸せにしてくれるひととの未来を、必ずつかんでほしいんです。わたしに無理だったから、その人に任せたいんです。』

 

 

『だから、燐さん、必ず幸せになってください。しぬのはまだちょっとこわいですけど、あなたのしあわせのためならがんばれます』

 

 

 

 

『ちゃんと向かい合って、言葉で伝えられなくてごめんなさい。あいしています。ほかのだれよりもきっと。あいしています。できれば、あなたのことをこんなにもあいしている人がいたのだと、おぼえていてくれるとうれしいです』

 

『さいごになりますが、わたしにしあわせをおしえてくれて、ありがとうございました。あなたのおかげでわたしはしあわせでした。さようなら、おにいさん』

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