ぼっ喜・ざ・ぴっく!   作:ライトニングピストン佐藤

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ぼっ喜・ざ・ぴっく!

ある朝、後藤ひとりが憂鬱な学校生活の夢から目覚めると、身体に偉大なピックが生えていた。

最初に感じたのは窮屈さであった。

ズボンが僅かに引っ張られる感覚、僅かに漏れてくるはずの陽光さえないことから深夜に寝ぼけているだけだとひとりは判断した。

十分、二十分、体感としてはその程度経っただろうか、その感覚は消えることがなくひとりを否応がなく覚醒へと引きずっていく。

覚醒した頭で現状を把握すると途端に肝が冷えていく、気だるげに閉じられていた瞼が剥がれ落ち、全身の輪郭が曖昧になっていく。

髪の毛は重力に反して四方に伸び、気のせいだろうか、世界の色さえも変容したように感じる。

「こっ、こここれは金縛りっ!?!?」

そのまま一時間、ただ震えていた。

しかしこの後藤ひとり、最後の一歩が踏み出せないだけで行動力は人一倍である。

気合を入れるようにギターで硬くなった手を握りしめる。

「うぇっ、えいやー」

コミュ障特有の不安定な声量と共に上体を起こすと、意外なほど呆気なく、長座の姿勢になることができた。

はて、一体なんだったのだろうかと違和感の発生源を確認する。

そこには偉大なピックが鎮座していた。

否、ズボンの上から見ているからピックのように三角形を描いているように見えるだけで、その本質はスティックであると男性経験の少ない後藤ひとりでも理解できた。

理解できたからこそ、理解出来なかった。

「kshdじぇっkxbxksっkskjfc」

言葉にならない奇声をあげて後藤ひとりは学校に帰っていった。

 

 

 

 

次に目覚めた後藤ひとりはそれが夢でなかったことを確認した。

直接見ることはできなかったが、自分に生えているという現実を確認したためか“その場所”の感覚は鮮明になっていたので、現実を受け入れざるをえなかった。

「なんでこんなことに......」

出来るだけ刺激しないように丁寧に寝巻きから着替える、新しくできた器官なためかはたまた別の理由かピックは非常に敏感だからだ。

幸い通常モードになっているピックはパンツの中に収まっている。

しかし日本人の膨張率を鑑みるに“その時”が来たら容易にはみ出てしまうことは想像に難くなかった。

気恥ずかしさからトイレにも行けず、内弁慶であるひとりにしては珍しく家族とも全く話さない、学校のみんなが知る後藤ひとりの姿がそこにはあった。

そのまま無言で学校へ向かう、慣れているはずの電車の揺れさえも今は新鮮に感じた。

 

 

 

 

結論から書くと学校生活には何の支障もなかった。

強いていうならば、体育があることを忘れていたひとりが時間割を見て青ざめ、保健体育ということを思い出して思わずギターを大きく揺らしながらガッツポーズをとり、二秒ほど注目を集めたくらいだ。

けれども試練がやってきたのは放課後。

女性は男性よりも尿を我慢できないと言われているが尿道が長くなったひとりであっても放課後になると我慢の限界だった。

「喜多さんに遅れるって連絡いれないと」

“初体験”にどれだけ時間がかかるのかは想定できないため、遅刻する可能性があると判断した。

ひとりがロインを送ってすぐ、喜多さんから返事が来る。

「こっちは大丈夫よ後藤さん!何かあって私が力になれそうなら教えてね」

友達が多くいつも忙しそうにしている喜多さんにしては早い返事に、もう友達と別れて練習を開始しているんだと予想がついた。

ぼっちにしては珍しい察しの良さであった。

「いっ、急がなきゃ」

ギターを教室に置いて走るひとり、息は絶え絶えで顔色も少し悪いその理由は彼女のピックにあった。

喜多さんの文章にあった力になるという文言、それによってひとりはよからぬ妄想をしたのだった、そのためピックはスティックにちかくなる。

なれない感覚による羞恥と待たせているという焦燥はひとりの余裕を奪っていった。

元々ひとりと合流しようと教室に向かっていた喜多さんに気づかないほどに。

その様子を見て混乱した喜多郁代はつぶやく。

「後藤さん....ち●ぽでかいのね〜」

対人関係になれ、咄嗟の判断力もある喜多さんを混乱させるほどひとりの股間のスティックは大きかったのだ。

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