その後ひとりと喜多さんは無事に学校を出た、そのまま誰にも聞かれない場所を探してカラオケに向かった。
「えぇっと、つまり夜中目が覚めたらもう既に生えてたってことよね。その....それが」
「あっはい、そうです....」
特徴的な猫背をさらに悪化させ地面に上半身が並行になるのではないかというくらいにまで下を向く。
「じゃあ取り敢えずバレないようにするとして....問題になるのは後藤さんのお家と学校の体育とバンド活動くらいよね」
「他二つはともかく体育はその......大きくしなければ隠すのは簡単だと思うの。......そういえば、後藤さんはどうしてあのとき大きくしちゃってたの?」
喜多さんのその言葉に肩を震わせるひとり、60Hzくらいはありそうだ。
「あっいやぁ、えっと、あの、そっそれは....」
「言えそうにないなら無理しないで後藤さん」
「あっはい、....ありがとうございます」
「それじゃあ取り敢えずの解決策として大きくしない特訓が必要よね....よし!....」
言うが早いか後藤さんは勢いよく立ち上がり、それに驚いたひとりが軽くのけぞる。
「私が服を脱ぐから後藤さんは目に焼き付けて!性的なものに慣れることが必要だと思うの。後藤さん自身の体を鏡で見ても興奮はしないと思うし、ほかに相談出来そうな人もいないから私がやるわ!」
「!?!??!?!!」
基本的にキャパシティの小さいひとりはその提案の奇抜さに目を回した、物理的に、もはや瞳がベイゴマのごとき様相だった。
目とともに急速に回るひとりの脳、廣井きくりへの言い訳が良い例なものでここぞというときの頭の回転には定評がある。
(喜多さんはなんでこんな提案を!?どう考えたって頭が....あー!!そういえば喜多さんってギター嘘ついて結束バンドに入ってライブぶっちぎった人だったああああ)
喜多郁代はひとりや山田の陰に隠れているがその行動力というか爆発力は他の追随を許さない、立派な変人だ。
流石のひとりもそれを止めようと行動し始めるがもう既に喜多さんは制服を脱いで下着姿になっていた。
そんな喜多さんの姿を見てしまったひとりの脳内に一つの映像が流れ始める。
樹の上で生活している猿が人間へ進化していく幾星霜の時の旅、人類を人類たらしめる叡智の発展を後藤ひとりは一瞬にして体験した。
白く豊かなヒゲをつけて後光を浴びて目を瞑り、座禅をくんだ状態で浮遊する、まさしく賢者である。
賢者となったひとりが目を開くとそこは楽園だった。
豊かなリンゴの木の下で生まれたままの姿のひとりが優雅に佇んでいる。
そこへ一人の可憐で生まれたままの姿の女性が現れる、その女性は喜多郁代の姿をしていた。
喜多さんに慈しみの視線を向けるひとりのもとへやって来てリンゴを取り、齧る。
するとたちまち喜多さんの顔に赤みが差し片手で局部を隠そうとする、その行動を不思議そうに眺めるひとりに気づくと少し上目遣いで睨む、またリンゴを一口齧り付き十分に咀嚼してひとりに口移しする。
その瞬間、視界はブラックアウトし現実に帰還するひとり。
ひとりの目の前にはやはり女神が顕現していた。
カラオケボックス内ということを微塵も感じさせない堂々たる立ち姿と少し顔を赤らめながら下に向いた視線のギャップ、なによりも普段使いだということを感じさせる簡素で機能性を重視した下着、その何もかもが後藤ひとりのピックにかき鳴らさせたのだ。
女神を直視したコンマ0秒後には心臓が色めき立ち海綿体が膨らむ、慣れない感覚にひとりは理性を失いかけるも....
(これじゃダメだっ!喜多さんが体を張って私を守ろうとしてくれてる、オーディションに向けた練習の時間を削ってまで....!ならっ、私にできるのは我慢すること、冷静になること、落ち着かせるんだっ)
ひとりの強靭な意思力によってスティックは硬さを失いピックへと回帰していく、ゆっくりとだが確実に。
それはほぼほぼどんな状況でもバレることは無くなったことを意味する、喜多さん以上にひとりにとって魅力的な存在はいないから。
完全にピックに戻ったことを受けて喜多さんは喜んでいる、その勢いのままひとりに抱きつく。
「やったわね後藤さん!流石よ!男の子でも治らなくて苦労するって聞いたことあるのに」
ひとりの意思力など喜多さんにの乳房の柔らかさの前ではクマの前でタップダンスを踊っているシカと同じ、そのままひとりの意識は身体を抜け出しカラオケボックス中を飛び回り天井に頭をぶつけて気絶した。
一方のひとりの身体ではピックはスティックとなり喜多さんに圧力を与える、それに驚いた喜多さんは思わず飛び退き尻餅をついてしまう。
下敷きとなった後藤ひとりの意識は不思議と安らかな顔をしていた。
きららMAX買えませんでした