ぼっ喜・ざ・ぴっく!   作:ライトニングピストン佐藤

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ぼっ喜・ざ・ろっく!

喜多さんに告白する、そう決めたは良いが告白場所が決まらず頭を抱えるひとり...なぜか頭が三つになっていて一人文殊の知恵をしている。

(うぅ、私の青春コンプレックスのせいで告白の仕方わかんなくなってる....)

暫く唸り続けていたひとりに影を落とす存在がいた。

「お姉ちゃん何してるのー?」

後藤ふたりである。

「お姉ちゃん今真剣だから出てってー!!」

恋愛に悩んでいるという恥ずかしい姿を妹に見られて見事に頬に朱が差している。

「あっ、やっぱりちょっと聞いてくれる?」

妹に土下座で懇願することもあるほどプライドがないひとりは人生初の恋の悩みさえ妹に打ち明けてしまう。

「なるほどねー、それは簡単だよお姉ちゃん」

「えぇ!?!?」

「その喜多ちゃん?って人はわかんないけど、女なんて暗い密室に連れ込んで強引に迫れば一発だよ!」

「えぇっ、えっぇえ!????!!」

混乱の渦の中で思考に浸ると、ふたりがお母さんと一緒に昼ドラを見ていたことを思い出す。

(お母さんはもっと子供の情操教育に配慮してよ....けどふたりは前からこんなだった気も)

驚きから散らばった瞳をかき集めながらごちる。

顔を成形し直して視界が戻るとふたりはいなくなっていた、もしかすると妄想だったのかもしれない。

(ってことはあのアイデアも私が...)

再び赤くなったひとりは顔を伏せるのだった。

 

 

 

「おはよう!後藤さん」

「おっ、おはようございます」

「そういえば例の件大丈夫?あんまり調子が戻らないみたいだったら先輩達に練習暫く休みませんかって言っておくわよ?」

「いっ、いえ...それは解決しました...」

「ってことは後藤さんのアレはなくなったのね、ほんと何だったのかしら」

「あっ、それはまだなんですが...」

「そうなの?どちらにせよ悩みが無くなったなら良いことだわ!」

喜多さんの言葉を否定しながら顔を赤らめる、その様子を見ていた喜多さんは恥ずかしい思いをさせてしまったかと少し反省した。

「じゃあ後藤さんまた放課後」

ブンブンと頭を縦に振って肯定を示す、いつもより少し緊張したからかもう喋る能力を失ったようだ。

 

 

 

「放課後が来てしまった」

いつも授業の内容は頭に入っていないが今日は何の授業があったかも覚えていない、こんなことはギターヒーローとしてギターに夢中になってたとき以外なかった。

それはギターに夢中なのと同じくらい喜多さんに夢中になっていることを意味していた。

(告白が成功してしまったら一生意識が戻らないかもしれない)

もしくは人の形を保てない、と、よく人の形を保たなくなることを棚に上げて考える。

放課後が来てしまったので喜多さんとの練習に赴かなければならない、しかし普段よりずっと重い足どりの影響でいつもより少しだけ遅く着いてしまった。

扉の前で一つ深呼吸をする。

中に喜多さんが、好きな人がいる。

いつも苦手なことを自力では乗り越えられなかった、バンドを組むことだって虹夏ちゃんに見つけてもらえなかったらできてない。

けど告白することは苦手でも成し遂げたい。

いつの日か、恋人になれたらいいな、そう考えながら扉を開ける。

よっぽど疲れていたのだろう、ギターを抱えて眠っている喜多さんがいた。

「あっ」

好きが溢れてしまう、いつ聞いても具合が悪くなってしまうような陳腐でありきたりな表現が心の中に落ちてきた。

もしかしたらもう歌詞なんて書けないかもしれないと思ってしまうほど幸せになってしまった、喜多さんを見ただけで。

恋人になれたらもっと気持ちいいのかな...。

一歩づつ一歩づつ、歩みを進める。

ギターヒーローなんてやってしまうほど、イソスタなんてやってしまったら承認欲求モンスターになってしまうと確信するほど、私の欲望は強い。

欲望に従って喜多さんの前に膝をつく。

暗い部屋、二人きり。

ふたりの言葉が脳裏をよぎる。

強引に......。

思わず口から想いが滑り落ちた。

「好きです」

言ってしまったと顔が赤くなる、立ち上がり膝についた埃を払ってギターを弾く準備をして喜多さんを起こそうとすると....

潤んだ瞳でこちらを見る喜多さんと目があった。

互いに無言、パニックになると奇声をあげたり不定形になってしまうひとりは本当に追い詰められると、何もできないのだと知った。

「ごめんなさい、後藤さん」

一瞬伏し目になった喜多さんはこちらをハッキリ見て言う。

その瞬間走り出していた。

後ろから微かに喜多さんの声が聞こえる、距離を考えるときっとその声は大きいのだろうが、それを許容できるほど頭に余裕がなかった。

闇雲に走り続ける、体力には差があるはずなのに喜多さんに追いつかれることはなかった。

嫌われちゃったかな、私を見捨てて帰っちゃったかな。

ポジティブにもネガティブにもすぐ沈んでしまうひとりの思考は今、後者に傾倒していた。

ギターに触る、慣れ親しんだギター、喜多さんを失ってきっと結束バンドも失って、今頼れるのはこのギターだけだった。

指が勝手に曲を弾き始める。

名前をつける元気も、名前をつけて現状を理解してしまう勇気もなかった。

心地よいギターの音色の中に心地よい声が混じった。

「すごーい!感動!後藤さんギターうまいのね!」

二人の関係が何もかもリセットされてしまったかのような薄っぺらい声色、ひとりはそう感じてしまった。

「なんて、昔の私は言ったわ。けど、その演奏上手さもギターを上手くなるまでに費やした努力も全くわかってなかった」

続けて言う。

「さっき私が続きを言おうとしたのに逃げちゃうんだもの、続きはこうしながら言うわね......」

座っているひとりを包容するように軽く覆い被さる、背丈はさほど変わらないはずなのに何故か大きく感じる。

「後藤ひとりさん、あなたのギターに捧げる努力も、固くなった指先も整った容姿も人を気遣う姿勢も、たまに強引なところも全て愛おしく感じます。私と付き合ってください...」

心臓が爆発したみたいだった。

ダイナマイトを放り込まれた心臓が強く跳ねて血液を送り出す。

足にも指先にも瞬く間に巡った血が最後には喜多さんと触れ合っている部分に集中する、まるでそこ以外はどうでもいいかのように。

変形したりなんかしない、等身大の、喜多さんが愛おしく思う自分であり続けようと努める。

火照りを冷まそうと驚愕で軽く開きっぱなしだった口から空気を取り込んでいると喜多さんは言った。

「いつか言おう、いつか言おうと思ってる間に先越されちゃったわ...ごめんなさいって言ったのは、私が先に好きになったのに勇気が出せなくてごめんなさいってことよ」

「返事、聞かせてもらえる?」

体が軽く感じる、何か余分なものを捨て去った感覚、本来の自分に戻れたからかそれとも喜多さんの言葉に有頂天になったからか。

「はいっ、好きです...!愛してます幸せにします。二人でずっと一緒に過ごしていきたいです!」

喜多さんを抱きしめ返し、その顔を見つめる。

言葉はもういらなかった。

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