年末の挨拶(オススメの羅列)
今年のアニメは凄いの一言に尽きましたね。
特に、かのガンダムが主軸に『百合』をブチ込んできた辺りは刺激的すぎる新しい試みでしたね。前作の『鉄血のオルフェンズ』も好きだったので、引き続き楽しませて貰いました……まだ最終回が残ってるケドね!
あとONE PIECE、一瞬たりとて退屈させてくれませんね。
実を言うと他人のssを見るのは最高に楽しいですが、自分のssを読み返すと『オリ主邪魔クセェ……』と思ったりしてしまうところを末期だと自覚しています。
でも書いてしまう辺り、終わってるな……。
最近のアニメ、ホントに凄い。
来年も期待作豊富らしいので、退屈しないですね。
……というワケで。
突然始まる個人的なアニメランキング
・2022年部門TOP5
1位『リコリス・リコイル』
キャラデザ満点、ストーリー満点、終盤でリコリスに頼りきった日本の危うい平和に国民が少しだけ疑問を抱いて終わる点が特に良かった。戦いってのは無傷じゃ済まないんです。
他にもちさたきメリーゴーランド、ミカシンのバスローブと色々と既存の物を破壊してくる衝撃があった。
2位『チェンソーマン』
夢バトル最高!夢に貴賤は無い、善悪なんて関係無い、ひたすら欲に奔るデンジが一番人間味溢れてて素晴らしかった。一話の完成度が特に映画のようでイイ。
地味にデンジがポチタで木を斬ってるシーンがじわじわとクる。
3位『ぼっち・ざ・ろっく』
緩やかではあるものの、要所要所で確実に伝わるひとりの成長が素晴らしかった。真のコミュ障は逃げる事すらできない、は正に共感。
それでも直向きに取り組み続けた音楽を入口にし、人間関係も道を切り開いていく姿に感動。このアニメ、絶対に忘れてやらない。
4位『異世界おじさん』
ですよね。異世界に転生したら、むしろ普通は……まあアレは少し特殊かもしれませんが、人間不信になっても可怪しくない。型破りなおじさんの行動に振り回される人間、特に無差別な指輪の贈呈に抱腹絶倒だった。
イキュラスキュオラ、断固拒否。
5位『メイドインアビス』
平等に降りかかる理不尽が最高。ご都合主義とは無縁で容赦ない現実に絶望させられるところが最高のスパイスでした。作者、さてはお気に入りなんていないな?レベルで誰も彼もドン底に叩き落して来るので良き。
中々に良い味だったそす。
※個人的な意見です。
ブルーロックはこれからですね。サイバーパンク・エッジランナーズとモブサイコも、一位にするか悩みました。
サマータイムレンダは面白かった反面、映画などで似た物をよく観ているのでインパクトがもう少し欲しかった。恋愛フロップスのどんでん返しも良い味出してましたね。着せ恋は……五条くん、オメェってやつは……!ってなります。
水星の魔女は『ガンビット、か、か、カッケェエエエエ!!』と『スミレオ』でウキウキワクワク。
因みに個人的歴代アニメTOP5は以下の通り。
ほとんど、親の影響が大きいけど。
1位『蟲師』
蟲師ギンコの儚さ。読んでいれば分かるけど、いずれ必ず蟲になるか食われるかしか末路のない彼の旅に感情が暴走しそうになる。特に救われない終わり方もあったり、幻想的なのに現実的な幕引き方が非常に性癖に刺さる。
ギンコの『春と嘯く』での「少し、長居しすぎたか」は泣きそうになる。
2位『MONSTER』
ヨハン……ヨハン。やはり、笑顔なヤツが最も怖い。EDも意味有り有りの満載で怖い。流石は浦沢直樹センセーが原作ですってところを痛感した。彼の作品は『20世紀少年』は勿論のこと、『PLUTO』や『MASTERキートン』、特に『ビリーバット』はお勧め。
3位『ベルセルク』
どちらかというと漫画派(苦笑)。
鬼滅や色々なダークファンタジーは見ましたが、やはりこれが至高ですね。殆どの作品、みんなある程度の対処法や対抗手段を持って人外と戦うけど、大抵は人外に相対した時に『蝕』のような素の身で絶望的且つ一方的な状況と遭遇する事になる。
アルビオンでのガッツの『祈るな!祈れば手が塞がる!テメェがその手に持ってるのは何だ!』や『ありがとよ、最悪の気分だ』は人生で大切にしたい言葉。
4位『魔法少女まどか☆マギカ』
人の欲につけ込んだキュウべぇの残酷さと素晴らしさ、それを克服しようと抗うまどかの途中の苦悩と答えをしっかりと導き出すところ。夢っていう物に人間が如何に弱いかを知れるし、魔女という身から出た錆のような存在と戦い続ける魔法少女の惨さは必見ですね。
5位『ゆるキャン△』『スーパーカブ』
ダークファンタジーやバトル物の見過ぎで、ふと……「疲れたな」と感じた時に観て癒された。趣味に直向きなところと、それを共有する仲間の個性に惹かれました。
アウトドアは釣り(ブラックバスやニジマス)以外に何もした事がなかったけど、また新たな物に興味の火を点してくれた作品だった。
※個人的な意見です。
他にも色々と挙げたい!
ジブリ作品!特に千と千尋の神隠しと魔女の宅急便。幼稚園から小学校の時は引っ越しが多かった自分からすればゼロから物を始める事に尻込みしている時に途轍もなく勇気が貰えた作品。
猫の恩返し……ムタさんの『恐るるに足らず』は人生最高の名言。
カリオストロの城のパスタ争奪は一度だけ友だちとやりました。食べ物で遊ぶのはヤメましょう。
ヤマノススメも好き!Fate作品も好き!ナルトも好き!鋼の錬金術師とかDTBも好き!ガンスリンガーガールもウルフズレインも好き!ガンダムも好き!物語シリーズとか俺ガイルも好きィィ……!
漫画だとARMSもスプリガンもはじめの一歩も柔道部物語も好き!夢喰いメリーも全然すこ!無職転生もWeb版の時から知ってるけど終わり方がまた……!!
けいおんとかヴァイオレットエヴァーガーデンとか京アニ様には頭を垂れるしかない。特に校舎はあんな事件があったのに映画を諦めず公開まで繋いでくれた所は感謝しかなかった……開始1分で泣いた(アンの家が観えた瞬間)。
え……BLOOD-C?うるさい友だちを黙らせる時はスクールデイズとひぐらしのなく頃にと共に便利です。
オススメがあったら、是非教えて下さい。
今回はアニメ限定でしたが、良ければ洋画や邦画、小説でもジャンルは問いません!
映画は『街の灯』と『エスター』、小説は『まほり』や『月の裏側』がオススメ。
……長々と失礼しました。
語り始めたら止まらなかった。
では、良いお年を。
俺が行けなかった初ライブ当日、事件は起きた。
「完熟マンゴー、ね」
俺は家に招いた二人から経緯を聞き及んだ。
事前に山田からの連絡で、ボーカル担当だった喜多郁代さんが直前になって行方を晦ませてしまい、インスト――楽器だけで演奏された曲の披露という形式になったが、ギターも不在となって虹夏が代行役を求めて周囲を奔走したという。
その過程で発見したのが、帰宅途中だったひとり。
彼女を半ば強引に参加させ、ライブは何とか乗り切った……らしい。
ちらり、と対面に座る少女を見る。
幸せそうに俺の作った唐揚げをひとりが食べていた。
相当の消耗だったのか、さっきまで昏倒していたのに好物を前にして箸が止まらない。
まあ、ひとりが笑顔なら何でも良いか。
しかし、ライブの内容は散々だったらしい。
虹夏もミスが多く、山田も本領は発揮できず、ひとりは人前に出れずダンボールに梱包された状態で演奏?した。
逆に気になって見てみたかった。
山田からくるなとは言われていたんだけどさ。
「取り敢えず、みんなお疲れ様」
「あはは、ありがとう」
「ごめん、俺も急な用事が入って行けなかった」
「いいよ全然!今回はダメダメだったし」
虹夏のコップに来客用のオレンジジュースを注ぐ。
コップを構えて待つ山田――の前にボトルだけ置いた、自分でやれ。
ひとりは黙々と食事を続ける。
箸の手が止まらな……いや止めようとしない。
恐らく、口に常に含んでいれば会話を振られないだろうという謎の陰キャ術理を発揮している。
「それにしても」
「ん?」
「ぼっちちゃんと一郎くんが親戚だったなんてビックリだよ」
「ああ、うん。まあね」
ぼっちちゃん、って何。
訊きたいけど、その名を口にする度に虹夏の隣で笑顔が弾けているので追及しづらい。
ひとりが嬉しいなら何でも良いか。
「父方の親戚繋がりなんだよ」
「じゃあ、年末年始に行く家って」
「ひとりの家。毎年世話になってるから、後藤家もひとりも俺にとっては大恩人なんだ」
「大恩人?」
山田がこてり、と小首を傾げる。
しまった、余計な事を言った。
家庭事情の一端を話した虹夏ですらも、尋ねたそうにしている。両親との仲がぎこちない事は知っているが、それが後藤家とどのように繋がっているのか、彼女からすれば逆に気になるのかもしれない。
どう答えたものか。
自分で墓穴を掘った気分で説明の仕方を考える。
すると、ひとりが箸を置く音で視線が彼女へと集まった。
「あ、えと……」
「どうしたの、ぼっちちゃん」
「あの……いっくん、急に呼んでごめんなさい。ライブ終わって色々と混乱してて」
「大丈夫だよ。……唐揚げ、美味いか?」
「……うん」
ひとりがえへへ、と笑う。
碗が空なので、俺は新しい白米を盛る。
「あ、私も食べちゃおーっと」
「いただきます」
「あ、美味しい!流石は一郎くんだね」
虹夏たちも食事を始める。
ひとりのお陰でどうにか誤魔化せたか。
虹夏と山田、それと喜多さんに用意していた慰労パーティーの料理なので、お気に召したなら何より。
しかし、世間は狭いものだな。
まさか、土壇場でひとりがスカウトされるとは。
数あるギターリストでも、虹夏が連れて行ったのが俺の親戚だとなると、もはや運命力か何かが働いていたとしか思えない。
この三名によるバンド――『結束バンド』。
ネーミングはアレだが、良い面子だ。
天使のように優しい虹夏。
自由だが音楽に直向きな山田。
そして、我らがひとり。
こうして見ると、個性としてはそれぞれが際立つ。
ひとりについては、以前から直樹さんにも教えて貰って彼女が『guitarhero』として動画サイトにギター動画を視聴している。
素人でも上手いと分かるので、きっとライブでもダンボール内とはいえど、かなり良い演奏になったのではないだろうか。
喜多さんの一件があったが、次のライブがあるのなら益々楽しみになってきた。
「でも、そっかぁ」
沁沁という風に、虹夏が呟く。
「結婚しようって言ってた相手、ぼっちちゃんなんだ」
瞬間、部屋から音が消えた。
どうしたんだ、急に。
ひとりが、真っ赤になった顔のまま俺と虹夏たちを交互に見る。
確かに日頃から言っているが、虹夏たちが知っているのはどうしてだろう。
記憶を遡って、該当する物を探す。
……ああ。
以前、二人の前でひとりと通話した時のことか。
その時も、ひとりの将来を案じて仮に追い詰められた時は俺が養うと言っていたな。
「い、いっくん……!?」
「ひとりと通話してた時に二人もいたんだよ」
「あばばばば……!」
俺は手を横に振って虹夏の方を見る。
「それは、ひとりが将来追い詰められた時の話」
「追い詰められた時?」
「そう。ひとりにだって選ぶ権利がある、どうしようも無い時は俺が一緒に居るって話」
「そ、そうなんだ」
虹夏が胸を撫で下ろした。
成る程な。
学生の内から結婚を考えている人間、それも身近な友人がいるのは少しだけ心配になるのかもしれない。友だち想いの虹夏らしいな。
「わ、私なんかにいっくんは勿体無いので」
「えっ」
「あ、嫌なワケじゃないです!?その、いっくんは……自分を甘やかしてくれる人と結婚した方が良いから」
甘やかしてくれる人間、とは。
それは嬉しいかもしれないが、どうだろう。
俺は基本的に結婚自体を考えていない。自分を素直に愛せない人間が他人を愛するなんてどの口が言ってるんだ、と思う人間だから。
それでも、ひとりの場合は例外だ。
ひとりの窮状には必ず助太刀する。
将来が不安なら、将来のひとりの受け皿にだってなる覚悟で結婚を視野に入れている。実際にひとりと一緒に居る時間の自分は好きなので、結婚したとしても一切の苦痛がないと断言できる。
「甘やかすって」
俺が苦笑すると、ひとりは頷いた。
「いっくんは頑張ってるから……一緒にいるなら支えられる人が良いと思う」
支えてくれる人、か。
…………ひとりか?
生きているだけで俺の精神的支柱になっているのだから、実質的にひとりなのではないだろうか。
辛い時に声を聞くと癒やされるし、立ち直れる。
さては……世界が俺にはひとりしかいないと実感させようとしているのか。
いやいや、だとしてもだ。
ひとりの幸せもある。
俺と結婚しても将来の道を塞いでしまうだけだ。
そうなると……他に俺を甘やかしてくれそうな人間とは誰だろうか。
知り合いの女性で考えよう。
バイト先……はいないな。
きくりさん……は絶対に無理。
山田は言わずもがな、論外だな。
「……虹夏か?」
「えっ!!?」
しまった、思わず声に出ていた。
今のは完全にドン引き発言である。
既に家事のできない星歌さんの分まで面倒を見ているような生活をしている虹夏ならば、俺でも甘やかして貰えるのではという浅はかな考えからつい浮かんでしまった。
友だちからそう思われるとか最悪の印象だ。
恐るおそる、虹夏の反応を盗み見る。
あれ、いない。
対面に座っていた彼女の姿が無かった。
一体何処に――。
「そっかー、私なら良いのかー」
……隣に移動していた。
ニコニコと居た堪れないくらい優しい笑顔だ。
正視に耐え難く、俺は思わず顔を背ける。
すみません、ひと思いに殺してくれ。
「すみません、気色の悪い事を言って」
「いやいや、大丈夫だよ!?」
「正直、ひとり以外で考えたらまともな知り合いが虹夏ぐらいしかいなくて……」
「し、消去法なんだ……」
く、話を逸らさなくては。
いや、そもそもライブの話をしたいのに俺が話題になっているのは可怪しいだろう。
でも、俺は観に行かなかったからな。
どこに手を付けて良いかもわからないので、話の切り口が作れない。
ふと、茶番のような会話を続けているが、山田は一切入ってこない事に気付いた。
山田は――?
「……ホンットに自由だな」
背もたれに全身を預けて、天井を仰ぎながら寝ていた。
♪ ♪ ♪ ♪
ライブから数日後。
放課後、シャー芯が切れたので校内の購買部に足を運んでいた。
バイト先近くの書店で売られている物が売り切れているという奇跡的な最悪に遭遇してしまったが為に、ここに購入しに行く羽目になっている。
運が悪いにも程がある。
ここのヤツ、地味に書店より高いんだよな……。
購買部なら学生に優しくしてくれよ。
俺がいつも使っている物を商品棚から発見して手に取る。
今年は消費量が半端ではない。
成績の向上を目指していて、いつも以上に勉強している。
さて、今年こそ成績上位二十名入りしないとな。
「あれ、一郎くん?」
「あ、虹夏」
「奇遇だね。もしかして、一郎くんも切らした?」
「そんな感じ」
虹夏が俺の隣に立って、同じ商品を手に取る。
……今日は山田と一緒じゃないのか。
「あれ、山田は?」
「え?……そんなずっと一緒じゃないって」
「アイツ、一年の時は一人だと何してた?」
「校内散歩してたり、机で寝てたり」
「らしいな」
あの性格が学校でも変わる事は無いか。
ライブハウスだったり、興味のある場所ならば普段の様子が嘘だという程に饒舌にはなるけどさ。
この前も、少しだけ興味本位で音楽に関する質問を投げかけたところ、小一時間に及ぶ長大な説明を展開し、俺の脳みそに大量の情報を垂れ流してきた。
不用意に触れるべきではないな。
充分な覚悟で臨まないと、本気の知識に尻込みしてしまう。
「まあ、常に山田と一緒だと虹夏も大変だろ」
「人の面倒見るのは慣れてるけどね」
「羨ましいよ。俺はまだ人に振り回されるし」
「どうかな〜。私もリョウも、ぼっちちゃんだって一郎くんに翻弄されてる感じするけど」
「翻弄って、そんな迷惑かけてたか」
このこの、と虹夏が肘で脇腹を突いてくる。
それを手で受け流しながら、俺は会計へと向か――う途中で、背後から悲鳴が上がった。
何事かと振り返ると、購買の天井付近をハチが飛んでいる。
「……虹夏って虫が苦手?」
「う、大体は大丈夫だけど……ハチとか危ない系は」
「へえ」
「一郎くんは?」
「カッコいいし面白いと思ってる」
「た、例えば?」
「ハリガネムシとか」
「は、ハリ……?どんなの?」
「カマキリに寄生する虫だよ。小さい頃は川辺とかでお腹の膨らんだカマキリとか探してさ、中に入ってないか調べたんだよな」
何故か虹夏の顔色が悪くなる。
この趣味、山田にはウケるのにな。
どうやら危ない系の虫以外にも寄生虫なども苦手分野のようだ。
でも、俺も苦手な虫はいる。
ハチなどは別に構わないが、アブは無理だ。
小さい頃は、一時的に宮崎県の親戚に預けられた時に遊んだ川の上を群れで飛び回る巨大なアブに追いかけ回されて苦手になった。
だって、スズメバチより大きいんだぞ。
その上で血は吸うし、刺されると凄く腫れる。
まあ、ハチは危険だけど対処法があるしなぁ。
そう考えていたら、虹夏の頭めがけてハチが滑空していた。
頭を抱える虹夏だが、あれでは避けられない。
「危ないって」
「えっ」
俺は虹夏を片腕で抱き寄せる。
彼女を後ろへと移動させながら、もう片手に握るレジ袋で飛んできたハチを包んで捕まえた。
袋の口を縛って、捕縛完了……後で窓から解放してやるから顎をカチカチ鳴らすんじゃないよ。
群で来られるとハチも怖い。
だが、攻撃したり殺したりしなければ報復されない。
昔、ポストの下にアシナガバチが小さな巣を作っていた事があって、開閉の時の衝撃で驚いた彼らに追いかけられた時があったのを思い出す。
いやあ、思えばあれも怖かったな。
いや、懐かしむのは後だ。
まずは虹夏の安全を確認するのが優先。
俺は片腕の中に収まっている虹夏を見た。
「大丈夫?」
「ぁ、うん」
さっきの慌てぶりが嘘のように固まっている。
混乱窮まって、むしろ放心状態なのだろうか。
「ハチはほら、この通り」
「す、凄いね……スパッと袋に入った」
「昔は友だちとか居なくて独りで虫捕まえてばっかりだったから得意なんだよ」
レジ袋を掲げてハチを観察する。
……と。
「ごめん」
「あ」
俺は虹夏を解放する。
いつまでも密着してるのマズいよな。
友だちも多い虹夏に変な噂が立っても困るし。
「じゃあ、俺はコイツを外に放してくるから」
「う、うん。……あ、私は一郎くんの分までシャー芯買っておくよ!」
「え、いやでも」
「守ってくれたお礼!」
虹夏が商品を二つ手に持って会計へと足を進める。
俺はそれを見送ってから、取り敢えず近くの窓で袋の口を開けてハチを放ってすぐに窓を閉める。
何だか得した気分だな。
ハチを捕まえただけでシャー芯代が浮く……。
あれ、山田に思考が似てきたのかもしれない。中々に下卑た自分の所感に、思わず自己嫌悪が湧く。
一人で悶々としていると、購入し終えた虹夏が戻って来た。
「はい、コレ」
「ああ、ありがとう」
「あのさ、一緒に帰らない?」
虹夏に誘われて一緒に廊下を歩く。
今日はオフだし、たしかに虹夏と帰れる。
何なら、遊びに誘ってみるのも友だちっぽくて有りかもしれない。
あれ、でも。
――今日は私もバイトだから、晩ごはん宜しく。
……山田がそんな注文してた気がするな。
家事もやったり、映画を観たい気もするし……後で良いか。先日注文した映画『レプ○カ』も夕方に届くんだった。
流石に今日は断念しておこう。
「いいよ」
「ホントに?」
「え、うん」
そう言うと、虹夏が嬉しそうに笑う。
一緒に帰るだけで大袈裟な……とも思ったが、そこでふと自分自身に違和感が生じる。
あれ、俺だって友だち居ないから人と帰ること自体が特別な事なのに。
でも、思い返すと……よく山田と一緒に帰ってたっけ。
「どうしたの?」
虹夏が不安そうな顔で振り返ってくる。
別に何でもない、とだけ答えて俺は彼女の隣を並んで歩いた。
ぶっちゃけ、誰がヒロインレース一位に見える?
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山田リョウ
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伊地知虹夏
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後藤ひとり
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喜多郁代
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ウルキオラ