休日の昼間、俺は映画館前に立っていた。
リョウと映画を観る予定だったが、そのアイツは補習を受けている。
大学に行くつもりが無いとはいえ、せめて卒業して欲しいものだ。山田夫妻はリョウを責めないだろうが、成績不振な事の原因で俺が頭にでも浮かんでしまうなんて屈辱的な事には繋がらないよう祈る。
それはさておき。
リョウは一人で観て来いと言っていたが、わざわざ二つ席を予約しているので無駄になる……しかも俺が観たい映画でもないし、映画館だと何故か寝てしまう俺には無意味のように思える。
しかし、無駄にしたくないという無駄な勿体無い精神を擽られてしまった俺は、仕方無くリョウの代わりに来れる人間を誘うことにした。
「こんにちは、一郎くん。待たせてごめんね」
「ん?俺も今来たところだから特に待ってないぞ?」
「……えへへ」
「え、何」
来た瞬間にご満悦な虹夏に少し身構えてしまう。
喜多さんといい、リョウといい、乙女心……であるかすら不明だが、この子がよく分からない。
リョウの代役として虹夏を誘ったら快諾してくれた。
いつもユニセックスなコーディネートを好むリョウを見慣れている俺からすると、虹夏の女の子らしい服装は新鮮だ。
「急に誘って悪い」
「ううん。楽しみにしてたから」
「リョウの代わりなんて嫌だと思ってたけど……」
「代わり……」
す、と虹夏が真顔になる。
感情の起伏が激しい。
「虹夏? 大丈夫か?」
「ううん。平気だよ、今は都合の良い女でも大丈夫」
「え、え?」
「最後が違えば良いんだよ。だよねっ?」
何がだよね、なのかは理解できないが、取り敢えず頷いておいた。
微笑みを顔に取り戻した虹夏は、俺の手を握って映画館の方へと引いて歩き出す。
やや強引な行動に驚いたが、もう虹夏も待ちきれないのだろう。
案外、楽しみにしていてくれたのかもしれない。
「一郎くん。リョウとはよく映画館来るの?」
「たまに。急にリョウから観たい物があるから来いって言われて渋々来るんだよ」
「へえ、来るんだ? 一緒に」
「でも、映画館の暗さとか空調が丁度よくて俺はよく寝てしまうんだよな。家だとそんな事が無いんだけど」
「寝ちゃうんだ。その時、リョウは起こしてくれないの?」
「…………」
思わず口を噤んでしまった。
これはリョウと映画館に何度か来るようになって、ようやく前回気づいてしまった事だが、リョウは起こさずに寝ている最中の俺によく悪戯をしているようだ。
酷い時は、唇を甘噛みしてくるのである。
あれ、本当に何が楽しいんだろう……。
「一郎くん、どうしたの?」
「え、いや何も。リョウは起こしてくれないし、寝てる俺でたまに遊んでる」
「何されるの?」
「よく、憶えてない」
「……そっか」
話せば話すほど、話したくない話題に手が伸びていく気がする。
虹夏は笑顔だが、段々と声が沈んでいく。
人選を間違え……てはいないな、本来なら友達の虹夏と遊ぶなんて楽しい事の筈だ。やはり、諸悪の根源である山田に全て償わせるべきだ。
「それで、何を観るの?」
「恋愛物だってさ。俺もよく知らないけど、リョウにしては珍しいチョイスだよ」
俺と虹夏はチケットを片手に従業員の確認をクリアして、シアターへと向かう。
リョウが選ぶのは、決まって公開終了間近の人が少ない映画だ。俺が人の多い映画館が苦手なのを知って、わざわざ席の状況から俺に都合の良い時間帯も選んでくれている。
意外と気遣われているので、そこは感謝だ。
「それでも恋愛物……もしかして、後半はジャンル変更レベルでアクションシーンが増えるとか」
「あはは、何か忙しそうな内容だね」
「もしくは、二人で見に来ると凄い気まずくなるタイプのヤツとか」
「いやいや。あの小心者のリョウに限ってそんな――」
「――ぅ、うわぁ、わぁ……!?」
映画開始から1時間以上が経過。
内容はかなりドロドロとした人間関係の中、主人公の少女が色んな男性に翻弄され、濡れ場が多い。
虹夏はあまりにも過激なシーン(18禁に比べればマイルド)に、顔を手で覆いつつも指の隙間から除いては小さな悲鳴を漏らしている。
ゴリゴリと俺の神経を削るような強引さがあるとは思えない虹夏の初心な反応に、俺は同一人物か否かを疑ってしまう。
いや、それよりもリョウのやつ、こんな物を俺と観ようとしてたのか……いや俺が寝るから、実質一人で観ているような物だから恥ずかしくないのかも。
あるいは、悪戯する為だけに適当に映画を選んだ……は流石に無いよな。
「虹夏、大丈夫か?」
「う、うん。……それよりも一郎くん」
「ん?」
「全然寝ないね」
「え、ああ」
たしかに、眠くない。
いつもなら、開始三十分くらいで寝てしまうのだが。
しかし、寝ない理由は自分で把握している。
「虹夏の反応が見てて飽きないからかも」
俺がそう言うと、虹夏は頬を膨らませて俺の肩を殴る。
思いの外、重い一撃でしばらく肩が痺れた。
♪ ♪ ♪ ♪
「リョウって、あんな映画いつも観てるの?」
私はバイトで少し手が空いた時、同じように暇そうにしているリョウに尋ねた。
先日の一郎くんとのデートで観た映画は、リョウのチョイスらしいけど、その、あまにも過激で私はほとんど直視できなかった……やたらと鮮明に記憶は残ってるけど。
「もしかして、凄くえっ◯だった?」
「そう! 一郎くんは平然としてたけど私は気まずかったよ!? しかも、一郎くんには反応楽しまれちゃったし……」
「ジャンルは?」
「えっ、リョウは知ってるでしょ」
「目についたやつ予約して一郎誘っただけだから」
「…………」
思わず一郎くんに同情したくなる内容だった。
毎回そんな適当な理由で映画に付き合わされるなんて、如何に映画好きの一郎くんでも堪らないんじゃないかな。
しかも、寝てる時に悪戯するなんてリョウも暇そうだし。
もしかして、その為だけに誘ってるんじゃ――。
「リョウ」
「ん?」
「もしかしてだけどさ、一郎くんに悪戯したいが為に誘ってるの?」
「…………そんな事の為にわざわざ誘ってない」
「不自然な間があったぞオイ」
私が詰め寄ると、顔を蒼くしたリョウが観念したようにぼそぼそ話し出す。
「一郎って、外だと気を張ってるから、映画館も外なのに珍しく無防備で……それが面白くてつい」
「…………」
「悪い事はしてない」
「ふーん?」
何だか嘘くさい。
「虹夏も寝てる一郎見てそう思ったでしょ」
「いや、一郎くんずっと起きてたよ」
「……?」
「私の反応、ずっと微笑ましげに盗み見ててさ……何か視線が擽ったくて、絶妙に不快にならない目でさ……逆に凄いドキドキしちゃったんだよね」
「……………………そう」
「あれ、もしかしてリョウはそういうこと無かった?」
「……これからある」
「……へー」
ちょっとだけ優越感。
表情には出さないけど悔しげなリョウが可笑しい。
この手の話題を鼻で笑うような感じのスタンスの子だったのに、一郎くんに会ってすっかり変わっちゃったなとも思う。……他人事じゃないか、私も。
一年生の時に一目惚れなんてしていなければ、私がそうだったかもしれない。
リョウと私の立場が逆、かぁ。
私と一郎くんが付き合ってて、将来はリョウに盗られる。
……そう考えると、後出しってズルいな。
もし一郎くんを盗っちゃったら、その時はリョウ次第だけど……『共有』もあり得るかもしれない。そんな未来が来た時には、主に一郎くんがリョウの両親やお姉ちゃんにこっ酷く叱られてしまうだろうけど。
「一郎くんにどんな悪戯してるの?」
「鼻とか睫毛で遊んだりする」
「あはは、それで起きないんだ?」
「かなり熟睡。たまに映画の音で起きたりするけど、基本は何をしても目が覚めない。……前回は、何か妙に魘されてるみたいな感じだったけど」
「私も見てみたいなぁ」
「夜一緒に寝てる時と同じ」
「――――」
反射的に拳を強く握ってしまった。
ごき、と鈍い骨の音が鳴る。
リョウが私から距離を取るようにその場から飛び退く。なんて失礼な反応だろう。
最近、一郎くんとリョウの仲睦まじいエピソードを聞くと微笑ましい時もあれば、ふと強く拳を固めてしまう癖が出ている時がある。お蔭で高校三年になった最初の身体測定で握力だけ異常に成長してたんだよね。
「じゃあ、今度からは私も映画誘ってね」
「虹夏と二人ならいいけど」
「一郎くんは?」
「虹夏がいると寝ないから」
「えぇ、そんな理由で三人は駄目なの……私も見たいのに」
相変わらず断る理由がしょうもない。
一郎くん曰く「言葉が汚いけど毎回カスみたいな理由」というのは、まさにこの事だ。
でも、こうやって正直に言ってくれるところが私も気を遣わなくて済むから楽なんだけどね。……変に見栄張って嘘つきやがる事もあるけど。
うん、それにしても映画館でリョウと一緒だと寝て、私とだと楽しくて起きてる……他の子だったらどうなるんだろうか。
「一郎くんに、あまり他の子誘って欲しくないね」
「一郎は私たち以外に誘える友だちいない」
「可哀想だから断言しないであげて!?」
リョウの歯に衣着せぬ物言いについツッコミを入れてしまう。
でも、他に誘える人がいないと聞いて少し嬉しく思ってしまった辺り、私もリョウを責める権利は無いようだ。自覚している以上に、悪い女……いや、ロックって事にしとこ。
「じゃあ、私とリョウだけの秘密にしとこっか」
「でも、油断すると一郎はすぐぼっちとか誘ってそう」
「一郎くん、妙にぼっちちゃんに甘いところがあるからね。気をつけないと」
「最近、何かぼっちも様子が変だから」
油断ならない相手は多くなる一方だ。
廣井さんや大槻さんとだって仲が良いみたいだし、人との関わりを最低限で済まそうとしている割に交友関係を広くしていく一郎くんに少しだけ怒りたくなる。
もっと大人しくしてろーっ!ってね。
「ずっと私たちの目の届くところにいて欲しいね」
「…………虹夏怖い」
白々しい事を言うリョウに、私はつい笑ってしまった。
〜おまけ「TENITOLのカフェスタイルフィギュア記念」〜
「お邪魔しまーす!」
喜多さんの高らかに弾んだ挨拶の声。
玄関に応対に出た俺は、至近距離からそれをキターン光線と共に喰らって思わず仰け反る。
まさか、初手で俺の視聴覚を封じに来るとは。……この娘、本気で殺(と)りに来てやがる!
俺はくらくらしながらも、喜多さんに続いて家に入る結束バンドのメンバーを居間へと案内した。壁に三つのギターケースが置かれる光景は中々の壮観で、居間に四人の女の子が寛ぐなんて俺はこれは悪夢かと己の正気を疑ってしまう。
「一郎先輩のお家って久し振りですっ」
「あ、り、リョウさんの匂いがする……」
喜多さんは、たしかに随分と昔……結束バンドのライブ後にリョウが居酒屋に置き忘れた俺の家の鍵を届けに来た経緯で泊まった時以来だっけ。
そうか、喜多さんには意外と侵犯されていなかったんだな。
喜ばしいのかは分からないが、頻度が高くならない事を祈ろう。
そして、ひとりにリョウの匂いがすると言われたけど、奇遇な事にこの前クラスメイトに俺のシャツから「山田さんとおんなじ匂いだ!」と女子に言われてメンタルが壊死しかけたのを思い出した……忘れろ忘れろ。
「一郎くん、大丈夫?」
俺が苦悶していると、心配そうに俺の肩に手を置いて虹夏が声をかけてきた。
「あ、ああ、ごめん。ぼーっとしてた」
「そっか。騒がしくしてごめんね? こんな急に全員で押しかけちゃって」
「いやいや、別に大じょ――――」
「今度は一人で来るから心配しないでっ♪」
「――う夫ではないな。うん、程々に頼むよ」
っぶねぇ。
今日も今日とて油断も隙もないな、虹夏。
言葉に鋭利さは無いのに、軽い気持ちで受け答えをしているとうっかり喉元に時限爆弾を装着されていそうな危うさを時折言動に滲ませる。
顎を伝ったのは涙かと思ったら冷や汗だった。
俺は動揺を隠しながらせっせと全員に菓子とジュースを配り、床に腰を下ろす。特に選んだつもりはないが、ひとりの隣に座っていた。
すると、リョウが立ち上がってひとりとは反対側の俺の横に座り直した。……狭いんだけど。
「一郎。私は悲しい」
「そうか。乗り越えられるといいな」
「次は選んでくれると信じてる」
「俺は何かを間違えたのか??」
軽く流そうとしたのに、何か重大な過ちを犯した気分にさせる言い回しにぞわぞわしてしまう。
いかん、ただでさえ虹夏と喜多さんという愛らしい捕食者を相手取りながら、いつものようにリョウに構ってやるのは命取りだ。
話を先に進めよう。
「ところで、今日は俺に見せたい物があるとか」
「あ、うん。……ちょっと一郎くんの部屋貸してもらっていい?」
「え?」
「準備が要るからさ、四人で」
「あ、ああ。自由に使ってくれ」
一言断って、結束バンドは俺の部屋に姿を消す。
後日、俺は部屋に見覚えのないペンが置かれている事に気付き、お洒落なデザインからきっと喜多さんの物に違いないと返したら「こんなすぐ監視カメラ内蔵のペンに気付くなんて、それも私の物だとすぐに……そんなに見ててくれたんですね♡」と言われた。何から指摘していいか分からないし、何処を刺激しても特大火力が炸裂しそうな爆弾なので追及はしなかった。
そんな事はさておき、今日こんな事になった経緯だが、特に語るべき事もなく唐突に虹夏から「今日は暇か」と尋ねられ、素直に一日フリーだと答えたら見せたい物があるから四人で来ると言われた。
見せたい物って何だろう。
まさか、次のライブはアリーナ……は冗談として、とうとう粗相が過ぎたきくりさんの生首とかだったらとまうしよう。
ひとりから「助けて」とか言われたら、全力で証拠隠滅に協力しちゃいそうで怖い。
不穏な未来を予感しつつ待機していると、虹夏が部屋から出て俺へと向かって歩いて来る。
覚悟を決め、一体誰の首かと俺は彼女へと視線を巡らせ――思わず二度見した。
「じゃじゃーんっ!」
俺の部屋から出た虹夏は着替えていた。
まるでカフェで働いているような服装である。他の三人はまだ部屋から出てこないが……いや、それよりも。
「何その服。どうしたんだ?」
「何か喜多ちゃんが結束バンドの動画再生数を稼ぐ為にコスプレしようって暴走して……」
「へえ……」
「どうかな?」
虹夏が後ろで手を組みながら、小首を傾げて俺に尋ねる。
うん、まあ。
「……失礼を承知で頼みたいんだけど」
「え、なに?」
「ちょっと、俺を客として扱って対応してみてくれ」
「え?え?……えーっと、お客様ご注文をお伺いしますねっ!」
可愛い。
こんな店員さんがいたら、リピーターが続出する。
「その格好で虹夏に詐欺ふっかけられても、俺は余裕で騙されると思う」
「しないよ!?……もう、素直な感想は?」
「……思わず顔が緩みそうなくらい可愛い」
……何だか、率直すぎた気がする。
リョウ相手にいつもオブラートに包む事を諦めて話している所為で、こんな所でもついそのままの心情を吐露してしまった。
流石に引かれたかと恐るおそる虹夏を見ると、虹夏は少し頬を赤らめて何故か顔を両手でむにむにとしていた。
「ど、どうした?」
「ごめん!私も嬉しくて顔緩んじゃった」
え、可愛い……俺は普段この子の何を恐れていたんだろう。
思わず己の態度を省みていたら、ぽすりと隣に虹夏が座る。近いな。
「ねえ、一郎く……お客様」
「え、あ、なに?」
「もしお客様が注文するなら――何だってしちゃうと思うな、私」
「な、何だってって……」
「何でも、いいよ」
「何、でも……」
「そう、例えば――」
知らず知らずの内に虹夏の顔がかなり近くまで迫っていた。
俺の手に少し火照った虹夏の手が重ねられている。
何だか今、甘美な罠を前にしているような、或いは千載一遇のチャンスを手に掴みかけているような感覚に陥っている。
危険とも幸運とも判じれない状況に俺は動けない。
だが、虹夏は緩やかに……しかし確実に俺に接近し続けていた。
「伊地知先輩、そこまでです!」
頭上からした喜多さんの声にはっとする。
俺達の前に、同じように給仕服に身を包んだ喜多さんが佇んでいた。
「どうですか、先輩!」
「あ、ああ。秀華高校の文化祭でもそうだけど、相変わらず誰よりも衣装を着こなすね」
「可愛いですか?」
「はい」
「でも、伊地知先輩の時より反応が薄い……露骨過ぎて、癖になりそう」
よく分からないが、嬉しそうなので良しとする。
危なかった、喜多さんがいなければ俺はどうなっていたか。
俺が喜多さんに胸の内で感謝を告げたと同時に、おずおずと前に進み出てくる影があった。
俺はその正体に気づいて――。
「あ、い、いっくん……笑わないで下さい」
っ、かっ、あっ。
少しだけ髪も整えたひとりの給仕服姿、が、あっ、ぎぐ、かっ!
苦しくて胸を押さえる。
し、心臓が、胸と背中を叩き壊すほど跳ねている。風呂上がりのきくりさんに優るとも劣らないもろタイプだと一目で本能が理解してしまった。
何故か涙まで溢れてくる。
「うぐっ……止ま゛らない……ごんなッ! 尊い物が世の中にあった、のがッ……!?」
「あ――(そんな見苦しかったのかすみませんもう二度とちょっと褒めてもらえるかなとか調子に乗ったりしなきので神様世界の記録からこの瞬間だけ消し飛ばしてくださ)」
「生まれてきて良かったなんて思った事無いけど……ひどりのこんな゛姿が見れで……俺生ぎてでよかっだ……!」
ティッシュで涙を拭いていると、慌ててひとりが駆け寄って来る気配がして……すぐに頭を抱き締められて、そっと髪の上を柔らかい手が滑る。
あ、もういい。
今この瞬間に誰か殺してくれ。
これなら、未練なく逝ける……。
「一郎、何で泣いてるの?」
うんざりしたような声色に、俺はひとりの腕の中から声の主を見上げる。
こちらも同じくカフェスタイルの給仕服に着替えたリョウ。
…………。
…………。
…………。
スゥっ、と涙も引いて気分が酷く落ち着く。
「っ、い、一郎?」
「ああ、うん。似合ってると思うぞ」
「そ、そう」
俺のリアクションを見るなり、呆れ気味だったリョウが急に少し顔を赤らめて動揺し始めた。
…………。
「これが俺に見せたかったやつ?」
「そう。それで相談なんだけど、今度1号さんと2号さんと撮影するから、その時に一郎くんも協力してくれないかな」
「俺も?……まあ、良いもの見せて貰ったから、やらせてくれ」
俺の返答に、虹夏たちが喜んでくれた。
リョウは、そわそわとしていた。
少し皆で菓子を食しながら雑談をし、お開きとなって虹夏たちが帰っていく。
俺の隣で給仕服のままリョウは三人を見送り、玄関扉が閉まると、こちらをちらりと盗み見てきた。
ばっちり視線が合って、リョウはすぐに顔を背けた。
「……リョウ。どうした」
「一郎、ずっと目がギラギラしてる」
「そうか?」
「これレンタルだから……許してほしい」
「汚さなければいいんだな」
俺がそう言うと、リョウは黙って頷いた。
この後の事は、語りたくない。
総集編を改めて観て、誰が一番可愛かった?
-
山田リョウ
-
後藤ひとり
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伊地知虹夏
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喜多郁代
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伊地知星歌
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PAさん
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後藤パパ・後藤ママ
-
後藤ふたり
-
廣井きくり
-
ファン一号・二号
-
でかつよ族