絶対不可避の異世界更生   作:浅葱 沼

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思いつきでのんびり書いて行くので、拙い文章で読みづらいかも知れませんが読んだ方の暇つぶし程度になれば幸いです。


プロローグ

 7月、蒸し暑い部屋の中でデスクトップPCのファンの音だけが響く。

 

「今頃、みんなは学校か」

 

 PCのゲーム画面を眺めながら、ふと、そんな独り言を呟いた。

 

 いつから学校に行かなくなったか、別にいじめられたというわけではないし、友達がいなかったというわけでもない。

 

 端的に言うなら興味が湧かなかった。

 

 元より興味がある事には寝食も忘れて没頭できるが、興味がないものは全く集中してできない性格だった。

 

 勉強はできるとも言わないしできないとも言わないが、やる価値を見出せなかった。

 

 人付き合いも誰かに常に気を遣わなければいけないのが疲れる。仲のいい奴とは家でも一緒にゲームはできるし、むこうが休みの日に一緒に外に遊びに行けばいい。

 

 

 

 そんな風に思っているうちに高校1年の秋頃には学校に行かなくなった。

 それからもう半年ほど経つ、最近エアコンが故障したせいで部屋の中は異常に暑い、全く、こんな時期に壊れるなんてタイミングが悪いな、などと思いつつ、そういえば、いつからゲームをしていたんだったか、ずっと家にいるせいで時間の感覚が

狂っている。

 

 最後に何か飲んだのはいつだったか、さすがに何か飲まなければと、ふと椅子から立ち上がった瞬間。

 

 

 目の前が真っ暗になった。

 

 

 目が覚めると辺り一面真っ白な空間にいた。どこまで続いていそうな空間で、光源がどこにあるか分からないがどこまでも明るく、上下左右の感覚が無くなりそうだ。

 「どこだここ?」

 確か自室でゲームをしてて、飲み物を取りに行こうとして、と今までの状況を頭で整理していると。

 

 「なにボーっとしとんねん、こっちやこっち」

 

 背後から声がした。

 振り返るとそこには女の子がいた。歳は俺の少し上ぐらいだろうか。

 真っ赤な髪のショートヘアだが、癖っ毛なのかパーマなのか全体的に軽く巻いている。

 

 目は少し垂れ目で瞳は吸い込まれそうな金色をしている。

 服も赤を基調とし、ところどころに金色の模様で装飾されているドレスを着ていた。今いる場所が真っ白なせいか、赤色が一際目立つ。

 

 めちゃくちゃ美人な人だなぁ

「なにジロジロ見とんねん、ええからこっちきんさい」

 ずいぶんキツイ関西弁だ。女性の方に歩きながら質問してみる。

「あのー、お姉さんここがどこだか分かります?」

 そう言われると女性は一つため息をつくと。

「それを今から説明したる言うとんねん

                 ツガヤマ コウイチ君」

 

 突然、自分の名前を呼ばれ驚いた。

「何で名前…」

「ええか?単刀直入に教えたるけど、あんたは現世で死んでん」

 

 そう言いながら彼女はその場にあったのであろう椅子に腰掛けた。座った椅子も白い色らしく、背景と溶け込んで認識がしづらい。

 

「死んだ?俺が?」

 

「そういうこと、ほんでここは、この世とあの世の間みたいな場所や」

 

 彼女は人差し指を立てて振りながら、得意げな顔で話始めた。

 

「そういえばまだ名乗ってなかったな、うちの名前はクレナ、あんたら人間でいうところの女神みたいなもんや」

 

「いや、ここがどことかあなたがクレナさんって事は分かりましたけど、死んだの?俺」

 まだ、現状に追いついていけない。

 

「そうやで、急に立ったから立ちくらみで意識を無くして転倒、両親は仕事に出ていて家には誰もいなく、気づかれる事なく放置、そのまま、既に出ていた脱水症が悪化して死亡」

 

 自分でも呆れる死因に言葉を失っていると、目の前の女神を語る女の子はだっさいよなぁ、などと言いながら笑いを堪えて続ける。

「でも、わざわざそんな事教える為に、ここに呼んだわけちゃうねんで」

 

 そんなに笑われると余計に恥ずかしくなる。しかし―

 

 「そうですか、まぁ、死んじゃったならしょうがないですね」

 

「なんや、ずいぶん飲み込み早いな。普通はもうしばらく狼狽えるんやけど、からかい甲斐ないなぁ」

 

 人の死をからかうなよ。ほんとに女神か?という言葉は口に出さず。

「それで、何で俺はこんなとこに呼ばれたんです?」

 

「まぁそう怒りなや、別に死んだ事教える為に呼んだ訳ちゃう言うたやろ」

 

 どうやら、口には出していないが顔には出ていたらしい。

 

「言ってしまえば、現世で死んだダメ人間を、更生の意味も込めて異世界に送って、人生をもう一度やり直せる機会をあげようっていう事を伝える為に呼んでん」

 

「人生をやり直す?」

 

 クレナはこくりと頷き。

 

「そ、まぁ機会っていうか強制的に異世界に送るから頑張ってねって話なんやけど」

「ちょっと待て、強制?なんで俺がそんな事させられるんだ?」

 

 問いかけるとクレナはキョトンとした顔で答える。

「だって、あんた日がな一日、寝て起きてゲームして、ご飯を食べて、眠くなったらまた寝るっていう生産性ゼロの生活しか送ってこなかったやん?」

 

 ふむ

 

「そんな奴にもう一度チャンスあげるって言うてんねんから、断る権利なんか持ってる訳ないやろ」

 

 ぐうの音も出ないな。

 改めて、今までの自堕落な生活を第三者に指摘されると、自分がどうしようもない人間に聞こえる。

 

 しかし、このまま言われっぱなしも癪だ。少し引っかかる部分もあるし、なんとか言いくるめられんだろうか。

 

 

「確かに、ずいぶん生産性のない生活を送ってきた事は認めよう」

「せやろ?」

「しかしだ!とは言ってもそれはある一方から見た側面でしかないとは言えないか?」

 クレナは、少し驚いた顔をした後、微笑を浮かべながら試すように俺に問う。

 

「というと?」

 

 よしきた。

 

「ゲームばかりして、なんて言い方をすれば遊んでばかりの

ダメ人間のように聞こえるかも知れないが、今ではプロゲーマーなんてものは常識として、世に浸透している訳だ」

 

「ほうほう」

 

 我ながら苦しい言い分だ。しかし、始めてしまった事だし、とりあえず行けるとこまで行くか。

 

「それでいうと、俺はゲームをして遊んでいただけ、というのではなくプロゲーマーになる為の努力をしていた、とは考えられないか?」

 

 クレナは何も言わずに話を聞いている。

 

「それを考慮せず、一方的に生産性がない、なんて一言でまとめ、ダメ人間とまで言いい、異世界に行って更生してこいなんて横暴じゃないか?」

 

 言い切るだけ言い切った。現状の沈黙は少し心にくるが、これで押し切れたなら万々歳だろう。

 

 沈黙を破ったのはクレナだった。彼女は、ケタケタと笑いながら話し始める。

「咄嗟に出た言い訳にしては、ようできとるな」

 

 見透かせれているようだが、ここは表情に出さず気丈に対応しなければ。

「俺は心からの言葉で伝えたつもりなんだが」

 

 クレナは俺の顔を見ながらニヤニヤしながら続ける。

「ま、人間相手なら言いくるめられたかもしらんけど、相手が悪かったなぁ、最初にも言ったけど、うち女神やから、あんたの思考なんかぜーんぶ筒抜けやで。」

 

 ……………とんだ茶番じゃないか。

 

「せやで」

 

ふざけるなよこの女神、性格悪くないか?

 

 クレナは笑いながら、

「まぁそう怒りなや、でも咄嗟にあそこまでの言い訳できる頭もあるみたいやし、異世界行ってもなんとかなるやろ」

 

「ずいぶんテキトーだな」

 どうせ思考が読まれるなら、もはや気遣いなど不要だろう。

 

「テキトーいうても、いきなり異世界に放り込む訳ちゃうから安心しい。あと気遣いもいらんから、楽にしてええで」

 

 思考を読まれるのは初めての体験だが、なんだかそわそわしてしまうな。

「じゃあ、いきなり異世界に行く前になにしてくれるんだ?」

 

 するとクレナは椅子からスッと立ち上がり、得意げな顔で話し出した。

「よう聞いてくれた!ここが一番大事やからよう聞いときや、いきなり異世界に放り出すのは、いくら更生の為とはいえ、うちら神様も忍びない。そこでや、まずは異世界の人と会話できる為の言語能力と識字能力は与えてあげよう。」

 

クレナはセールスマンの様に身振り手振りをつけながら説明を続ける。

 

「さらにさらに、なんと一つ、誰も持っていない様な特殊能力を授けてあげちゃうって訳や」

「特殊能力か、なんか異世界っぽくて、ちょっとワクワクしてきたな」

 

 クレナは、俺の反応が良かったのか嬉しそうな顔をしている。この女神ノリノリだな。

「せやろせやろ、でもただ何度も言うとるけど、あくまで更生の為に異世界に行ってもらうから、うちから与えられる使命を人生を賭して達成してもらうで」

「使命?それってどんな使命なんだ?」

 

 その質問を遮る様に手を前に出し静止される。

 

「まあそう慌てなや。その使命はあんたに授ける特殊能力によって決まんねん」

 

 クレナは足を整え、両腕を広げ、目を閉じ、改まった口調で、

「汝、ツガヤマ コウイチ、あなたに授ける特殊能力を教えましょう。」

 

 丁寧な言葉遣いで話し始めたクレナを見て不覚にも綺麗だと思ってしまった。この人、それっぽくしておけば美人なのになぁ。

 

「あなたに授ける特殊能力、それは、<絶対不可避>です」

 

 絶対不可避、俺の攻撃が全部相手に当たるとかか?だとしたら結構強そうだな。

 

「そして、<絶対不可避>の能力を授かった者に与えられる使命は、」

 

 この使命の方が大事だ、せっかく異世界に行くんだ。できる限り厄介事に巻き込まれずに、ほどほどの使命でお願いしたい。更生とは言われている手前、真面目には生きていくから!

 

 

「親しい人達に見守られながら、天寿を全うする事です」

 

 ………へ?

 

 天寿を全うする?それだけ?

 つまり、ただ死ぬまで生きればいいって事?そんな簡単な事でいいのか?

 

「簡単やろ?じゃあ今から<絶対不可避>について説明しよか」

 

 クレナは使命についてはあっさりと流し淡々と説明を始める。

 

「一つ、自分の射程圏内でくり出す攻撃は必ず相手に命中する」

 

これは想定通り。

 

「二つ、敵対者の射程圏内であなたに対して、くり出す攻撃も必ず命中する」

 

「ちょっと待て」

 

「ん?どしたん?」

「どうしたもこうしたもあるか!相手の攻撃も必ず当たるって、とんだ欠陥能力じゃねーか!」

「まぁそのぐらいのリスクは背負わなあかんやろ」

「それは特別な能力と言えるのか?」

「まだ説明は終わってないから最後まで聞きんしゃい」

 

 クレナはノリノリで説明を続ける。

 

「三つ、この能力は生きている間、常に発動し続けるパッシブスキルです」

 

「最後に、<絶対不可避>の能力の所有者はこの世のあらゆる運命に巻き込まれる、これもまた絶対不可避である」

 

「それってつまりどういう事?」

「つまりは身の回りで起こる、幸不幸、大なり小なりに関わらず、あらゆる事件や問題にことごとく巻き込まれるってことやな」

 

 

「ふざんな!」

 

 

 そんな俺を見てクレナは腹を抱えて笑っている。笑いすぎて出てきた涙を指で拭きながら、

「やから使命は天寿を全うするだけっていう、簡単なのにしてるやろ?」

「それってつまり大層な使命を与えなくても、俺が生きてる間厄介事に巻き込まれ続けるから、使命なんて与えなくてもいいだけじゃねーかよ!」

「さすが、飲み込みが早くて助かるわ」

「やかましい!」

「ナイスツッコミ、笑いのセンスもあるやん」

 

 こいつ俺が苦しむの見て楽しみたいだけの自称女神の悪魔かなにかなんじゃないだろうか。

 

「女神や言うとるやろ!疑いなや!」

 

 困った。実に困った。こんな能力、一番のハズレ枠じゃないのか?平穏に暮らしていこうにも、問題の方から俺の所に来るんじゃどうしようもないじゃないか。

 

「ほな、説明も終わったし、そろそろ異世界に行ってもらおか」

 クレナの突然の宣告に、動揺が隠しきれない。

「ちょっと待ってくれ!まだ心の整理が…」

「ちょくちょく更生の経過観察しに行くから、頑張りや〜」

 

 突然新しい情報を出すな!余計、頭がこんがらがって…

 

「行ってらっしゃーい!」

 

 クレナの言葉と同時に視界が眩い光でみちてゆく。

 

 

 

 

 こうして、俺の異世界更生が始まった。

 

 

 

 

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