絶対不可避の異世界更生   作:浅葱 沼

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ステータスと適正と仕事

 

 ロゼルさんに促されるままステータスカードを覗いてみる。

 

 

 …いいのか悪いのか分からん。

 

 

「あのー、俺仕事を探してるんですけど、ステータスによってどんなのがおすすめとかありますか?」

「そうですね、基本的に成人の方だと数値が40あれば平均といった所ですね。筋力、敏捷が高ければ力仕事が向いてますし、知力、魔力が高ければ事務仕事や魔道具などの取り扱いに長けているのでそちら系の仕事がおすすめですね。運は高ければ仕事が上手く行きやすい傾向がありますね。」

 

 

 よろしければ拝見してみましょうか?と言われたのでロゼルさんにステータスカードを渡して見てもらうことにした。

 

 

「では失礼しますねー」

 

 ロゼルさんはカードを受け取ると眺め始める。

「ツガヤマ様ですか、珍しいお名前ですね。筋力と俊敏はなかなか高めですね、しっかり鍛えられてるんですねー、でも知力が一際高めですね、魔力と運は……ん?うん!?」

 

 

 ロゼルさんが顔をしかめて止まってしまう。

 

「なに、これ?しかもこのスキル…」

 

 小さい声でなにか呟きながらロゼルさんの顔はどんどん険しくなっていく。

 

「しょ、少々お待ちいただいてもよろしいですか?」

「え、はい大丈夫ですよ」

 

 

 しばらく受付の前で待っていると、ロゼルさんとモノクルをかけた鋭い目つきの初老の女性が戻ってきた。

 

「あんたかい、ツガヤマってのは」

「はい、そうですけど」

 

 これってあれなんじゃないんですか?俺って実はすごい潜在能力を持っててみたいな?これからみんなにちやほやされちゃうみたいな?やつじゃないの?

 

 

「あたしゃ、ブランってんだ。一応ここのギルドマスターをやらせてもらってる。単刀直入に聞くよ……あんた何やらかしたんだい?」

 

「はい?」

「悪事かなんか働いたんだろって聞いてるのさ」

 

 ほんとに何言ってんの?この人。

「悪事って言われても、身に覚えがないんですけど、なんでそんな事になるんですか?」

「測定の精霊は滅多な事で測定ミスしないんだよ。それなのにこのステータス…どう考えても異常さね」

 

 そう言ってブランは俺の前にステータスカードを突き出す。

ステータスカードにはこのように表示されていた。

 

 

<ツガヤマ コウイチ>

 

レベル 3

 

職業 無職 

 

信仰 クレナ教

 

<ステータス>

筋力:53

敏捷:58

持久力:57

知力:65

魔力:なし

運:なし

 

<適正>

武術S

剣術C

 

 

<スキル>

絶対不可避

料理

 

 

 

「これのどの辺が異常なんですか?」

 

 俺の返事にブランは顔を鼻がつきそうなほど近づけて、声を荒げる。

「すっとぼけるんじゃないよ。まず魔力、普通はどれだけ少ない人でも1はあるはずなのに0ってなんだい0って、あんた魔力器官どうなってんだい」

 

 魔力器官ってなんだ。この世界の人はみんな付いてんのか?

 

 

 俺が聞いたことのない単語に頭を悩ましていると、ブランは続けて話し続ける。…というかブランが大きい声を出すせいでギルドにいる人の注目が集まりだしてるんだが。

 

「一番問題なのは運のステータスだよ。いいかい?運ってのはその人がどれだけ世界に愛されているかという数値でもあるんだよ」

 

 ブランは一息ついて、

「その数値がなしってのはもう意味不明だよ。世界に嫌われてるというより最早、認知されてないとかってレベルの話だよ」

 

 

 俺はこの世界にとって路傍の石みたいなもんって事?

 

「こんな事はありえないのさ、だからあんた世界から拒絶される程の事やらかしたんじゃないのかい?」

 

 

 そんなこと言われたって何もしてないのになぁ。まぁ強いて言うなら異世界から更生しに来たって事になるかのだけど、そんなこと言って変なやつに思われるわけにもいかんしな。

 

 

 俺がしばらくなんと説明しようか思い詰めているとブランが、

「しかし、あんたまだレベルも低いし、悪人がわざわざ測定しに探索者ギルドなんぞに来る理由もないしねぇ」

 

 ブランは少し考えるように顎に手を当てて俯くと、

「あんた、しばらくウチで探索者として働きな」

「はい!?」

「聞くとあんた仕事探すためにウチに来たみたいじゃないか、こんなステータスで雇ってくれるとこなんか、どこにも無いよ。それを様子見って事で探索者にしてやるってんだからありがたく思いな」

「そんな横暴な!」

 

 ブランは鼻を鳴らして、

「まぁ働きたくないなら別に構わないよ。職無し文無しになって野垂れ死ぬのが関の山だろうがねぇ」

 

 

 くそ、人の足元見やがってこのババア。

 

 

 俺は口から出そうな言葉をぐっと飲み込み答える。

「分かりました。ここで働けばいいんですね」

「そう構えなくたっていいよ。探索者になった所でブロンズランクからスタートだから、簡単な魔獣の討伐や薬草なんかの採取しか受けれないし、しばらく働いてまともな人間って分かれば仕事の斡旋ぐらいしてやろうじゃないか」

 

 

 言われるだけ言われて探索者としてギルドに登録されてその日は帰された。

 

 結局、王都まで来てもタートス村とやる事が変わらないな。

 

 

 しかし、落胆するのはまだ早い。しばらく探索者として働いて、ブランに認められれば仕事は斡旋して貰えるみたいだし、さっさと認めてもらえるように一生懸命働くとしよう。

 

 

 その日のコルト亭のご飯はいつもより優しい味のような気がした。

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