絶対不可避の異世界更生   作:浅葱 沼

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初仕事へむけて

 

「ほんとに良かったのか?」

 ギルドの受付に戻りながら俺は心配でクゥに念を押す。

「私は大丈夫です。お役に立てるよう努力しますから」

 両腕でガッツポーズをしてやる気を見せるクゥ。

 

「ほんとに申し訳ないとは思ってるんですが、ブランさんには誰も逆らえないので…」

 俺達の横でロゼルさんが謝りながら歩く。

 

「たしかに…あの人には逆らえなさそうですね」

 クゥは真剣な顔で頷く。

 

「なんで二人ともそんなに怯えてるんだ?ただの婆さんじゃん」

 何気なく呟くと二人とも目を見開いて俺を見る。

「な、なに?」

 

「あれを見て平気でいられるコウイチさんがおかしいんですよ!?」

 ロゼルさんはまるで恐ろしいものでも見たように大声を出す。

 

 その時、隣でクゥが考え込むように呟く。

「もしかして…コウイチさんには魔力器官がないから感じられないんじゃないですか?」

 それを聞いてロゼルさんも頷き、

「確かに、魔力を感じられないなら納得がいくかもですね」

 

 魔力を感じられたらブランってどんな風に見えるんだろ。

 

 気になって聞いてみると、魔力器官は人間なら全身に張り巡らされていて、一般人でもとても強い魔力なら感じることができるらしい、そこにブランは凄まじい量の魔力を発していたらしく、魔力器官を持っている者ならその魔力だけでとんでもない圧力を感じるということらしい。

 

 しかも、俺は魔力がないので魔力感知というスキルを持っている人には感知されず、そこにいるのにいないような奇妙な存在に感じるらしい。クゥは魔力感知のスキルを持っているらしく、そのため俺と初めて会った時ひどく驚いたらしい。

 

「じゃあ、あの婆さんってすごい人ってこと?」

「すごいなんてもんじゃないですよ、ブランさんはかつて高名な魔法使いだったんですよ」

 ロゼルはなぜか誇らしそうに話している。

 

「さ、そんなことより気を取り直してクゥさんの測定を済ませて探索者登録をしましょー」

 ロゼルさんはブランと会う緊張から解放されたからか、いつも通りのロゼルさんに戻っていた。

 

「ではクゥさん、こちらの測定器に手を入れて下さい。何か紙のようなものを掴む感覚があれば、手を引き抜いて下さいねー」

 ロゼルさんはそう言いながら俺の方を見ながら意味ありげに薄笑いを浮かべている。

 

 この人ほんと好きだよなー。

 

 あの測定器には嫌な思い出がある。そして、かくいうロゼルさんは測定される人を見るのが大好きな隠れサディストである。

 

 俺が探索者になってからも何人かが測定を受けるところを見たが、いつもその傍らには恍惚の表情を浮かべたロゼルさんがいて、俺も測定を受ける人たちの苦悶の表情を見ることにハマっていた。そしていつからか、俺とロゼルさんは測定を受ける人を見るのが密かな共通の趣味になっていた。

 

「いいかぁクゥ、絶対途中で手を抜いたりしたら駄目だぞ?」

「なんでそんな悪そうな顔してるんですか?」

  

 そんな悪い顔なんてしてないよ?

 

「まぁ測定はしないとだし、とりあえず手ぇ入れてみなって」

 俺は優しく測定器に手を入れるように勧める。横には最早何も語らず、ただ笑顔を浮かべているだけのロゼルさん。

 

「はぁ、まぁどうせ測定はしないと駄目ですし、じゃあ入れますね」

 そっと測定器の穴の中に手を入れるクゥ。そして次の瞬間、

 

「うぴゃああああああああ」

 

 絶叫しながら手を弄られているであろうクゥ。

 

 初めて会った時も思ったけどクゥって驚いた時面白い声出すよなぁ。

 

「こ、これ…ヒェッ!、な、なんなんですか〜」

 目に涙を浮かべながらも言われたことを守って必死で手を抜きたい衝動を我慢している。

 

「なんだかこの絵面、俺達悪いことしてるみたいじゃないですか?」

 そっと隣のロゼルさんに耳打ちする。

 

「何言ってるんですかコウイチさん!最高ですよ〜!ここ最近はむさい男ばかりでしたが、こんないたいけな少女のリアクションはなかなか見れませんよ〜!」

 目を輝かせながら涎でも垂れてきそうなほど興奮しているロゼルさん。

 

 この人マジもんだな。

 

 と思いつつ俺もちょっと楽しんでるけど。

 

 一分程、測定器とクゥの格闘を見物したところでクゥが勢いよく手を引き抜いた。

 

「はぁ、はぁ…なんだったんですかアレ!?」

 身震いしながら肩で息をして、測定器から距離を取るクゥ。

 

「なんなんだろうな〜」

「なんなんでしょうね〜」

「二人してとぼけないでください!」

 

 俺とロゼルさんは謝ってから、測定器の説明をする。

 

「二人ともイジワルしたんですね?もう嫌いです」

「ごめんってクゥ。ちょっとした遊びだよ。探索者になるやつはみんな通る道だよ」

 ふてくされた顔で怒ったクゥもまた可愛らしいが、今はこれ以上からかうのは良くないかな。

 

「そんなことより、ステータスはどんな感じだ?」

「なんかはぐらかされてる気がしますけど…そうですね見てみましょう」

 クゥはステータスカードを少し眺めてから小首を傾げて、ロゼルさんに、

「基準が分からないので教えていただけますか?」

 

「そうでしたね、すいません。では説明させていただきますね〜」

 

 ロゼルさんによるステータスの説明がされる。

 

 まず、基本ステータスの筋力、敏捷、持久力、知力、魔力、運は、レベル1の一般の成人なら平均50程度、

 100〜500ならレベルを上げた探索者なら届くと言ったところ、

 501〜999は探索者の中でも才能がある部類に入り、ここが人間の限界値と言われているらしいが、稀に1000を超えるような人も存在するらしい。

 

 次に適正だが、ランクはS〜Dまで存在し、

 Dが触ったことがある程度でほぼ才能なし。

 Cが少し心得がある。

 Bが修練を積めばある程度はできるようになる。

 Aは才能があり、基本から応用までを短期間で習得できる。

 Sは天賦の才の持ち主で、スキルの習得、威力などに大きく補正がかかる。

 

 最後にスキル、スキルには誰でも修練や条件を満たせば習得できる汎用スキルと、世界でその人しか持たない特殊なスキルのユニークスキルの二通りがあり、俺の<絶対不可避>は後者に当てはまる、ユニークスキルだからといって強いとは限らないが…

 

「ざっとこんな所ですかね〜、以上を踏まえてどうですか?」

「えっと、そうですね、魔力はそこそこ高くて、支援魔法や、ちょっとした魔法なら使えるので役には立てると思います」

 

 なんだか、ふんわりした言い方だな。

「よかったら見てもいいか?」

「えっ、は、はい」

 クゥは少し恥ずかしそうにステータスカードを渡してきた。

 

「どれどれ?」

 何気に他人のステータスを見るのは初めてだなと思いつつカードを見てみる。

 

 <クゥ・ネル>

 

 レベル2

 

 職業 無職

 

 <ステータス>

 筋力:24

 敏捷:33

 持久力:28

 知力:312

 魔力:2164

 

 <適正>

 魔法:S

 

 <スキル>

 全魔法適正

 魔力感知

 魔力強化

 

 

「なんだこれ!?」

 思わず叫んでしまい、周囲にいた人の視線が集まる。

 

「ロゼルさん、これってめちゃくちゃすごいんじゃないの?」

 周りに聞かれないように顔を近づけて小声で聞く。

 

 ロゼルさんもステータスを見て目を大きくして、小声で叫ぶ。

「すごいなんてもんじゃないですよ!このステータスとスキルなら、あっという間にゴールドランク…それどころかプラチナランクにまでなれるほど優秀なステータスですよ!?」

 

「クゥ、お前すごい子だったんだな」

 俺は感心しながらステータスカードを返し、無意識でクゥの頭をなでる。

 

「私なんて大したことないですから、恥ずかしいのでやめて下さい」

 どんどん声を小さくしながらフードで顔を隠して否定するクゥ。

 

 すごい上に謙虚だなんて、よくできた子だなぁ。

 

「将来有望な方が探索者になってくれるなんて、ギルドとしては嬉しい限りですよ〜。では私はクゥさんを探索者登録してきますね〜」

 

 それからはクゥの探索者登録を済ませ、解呪の札の代金、金貨10枚の請求書を渡されて、一旦コルト亭に帰ることにした。

 

「どうしたもんかなぁ。解呪ができたのはいいけど、金貨10枚は中々厳しい問題だな」

 コルト亭への帰り道、これからどうやって金を稼ぐか悩んでいた。

 

「私も頑張って働きます!巻き込んでしまったには本当に申し訳ないですけど…」

 

 気合を入れているクゥとは反対に俺は不安だった。確かにクゥのステータスは素晴らしいが、クゥを守りながら魔獣と戦える程、俺は強いわけではない。したがって、今まで通り討伐クエストなど受けれるわけもなく、採取クエストを受けることになるだろうが…それではその日暮らしがやっとで借金返済など不可能だ。

 

 どこかに俺とクゥの二人でもこなせられて、大金を手に入れられる都合のいいクエストがあったりしないだろうか。

 

 

 

 

 

「ちょうどいい依頼があるよ」

 コルト亭の食堂で酒とつまみを楽しみながら、そんな都合のいい依頼の話をしだすサルビアが、そこにはいた。

 

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