絶対不可避の異世界更生   作:浅葱 沼

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vsプリム

 

「くそっ!」

 素早く腰に差した短刀を抜いて臨戦態勢をとる。

 

「あなた達、なんであの貴族の娘を助けようとするの?別に関係ないでしょ?」

 短刀を向けられてなお、顎に指を置きながらひどくつまらなそうに聞いてくるプリム。

 

「関係はないけど、こっちにも色々あるんでね。今なら人質さえ返してくれれば、あんたのこと見なかったことにするぜ?」

 

 俺の答えにプリムは口角を上げていたずらっぽく笑うと、

「そう言われるとなおさら返したくなくなっちゃうなぁ」

 

 プリムは横で気絶しているクゥを物のように片手で雑に掴むと、後ろの部屋の中に投げ入れた。

「ちょうど身代金が来るまで退屈してたとこだし、ちょっとお姉さんの相手してくれると嬉しいな」

 蠱惑的な笑顔を向けながら、片足を上げてプリムも臨戦態勢をとる。

 

 まったく、なんでこんなことに…もうどうにでもなれってんだ!

 

 短く息を吐き、プリムに向かって駆け出す。

 

 姿勢は低く、相手に対して体を横にして右手の短刀をプリムに向かって突き上げる。

 

『鞭蹴《ウィップ》』

 

 プリムの鋭くしなるような蹴りが短刀の側面を蹴り飛ばし、右手ごと弾かれる。

「つ〜〜〜ッ」

 なんとか短刀は手放さなかったが、衝撃で右手が痺れる。

 

「思ったより速くてびっくりしちゃった」

 プリムは余裕の笑顔を崩すことなく構え直す。

 

「ーはぁッ!」

 今度は横に振り抜くように短刀を振るおうとすると、

「あら危ない」

 プリムは瞬時に半歩下がり、躱そうとする。が、

「ん!?」

 驚愕の表情を浮かべて固まる。そのまま俺の短刀はプリムの長い髪の一部を断ち切る。

 

 

「何なの?今のは」

 プリムは困惑の表情を浮かべながら、断ち切られた髪を触る。

 

「さぁ?なんだろうな」

 本当は俺のスキル『絶対不可避』のおかげだが、わざわざ相手に教えてやる必要もないだろ。

 

 それにしても、さっき俺が攻撃する前に反応したように見えたけど…気のせいか?

 

 そんなことより、もうすぐクゥにかけてもらった支援魔法が消える。早いとこ決めないと…

 

「どうやら厄介なスキルか何かを持ってるみたいね」

 そう話すプリムの顔からは、さっきまでの笑顔が消え失せた。空気に肌を刺すような緊張感が走る。

 

 その空気に耐えきれず、がむしゃらに剣撃を繰り出すも、プリムはそのことごとくを素早い脚技で淡々と弾く。

「ーぐっ」

 プリムのつま先がみぞおちに刺さる。

「よっと」

 続け様に短刀を上に蹴り上げ、短刀は俺の右手を離れ天井に突き刺さる。

 

 あれはすぐには取れないだろうな。

 

「そこそこ筋はいいけど。相手が悪かったわね」

 確かに強い。それにしてもあまりにも歯が立たなすぎる。支援魔法で強化されてるはずなのに…まるで、

 

「まるで攻撃を読まれてるみたいでしょ?」

 俺が考えていたことをプリムに先を越されて言われ、ドキリとする。

 

「実は私、未来が見えるんだよねぇ」

 

「未来が、見える?」

 プリムは頷きながら自分の目を指差して、

「この目、綺麗でしょ?元々はこんな色じゃなかったのよ?魔眼になったからこんな色になっちゃったの」

 

「悪いけど、魔眼が何なのか知らん」

 拳を構えながら、自慢げに語る魔眼の事をあしらう。

 

「はぁ!?あなた探索者のくせに魔眼も知らないの?しょうがないわね、魔眼がいかにすごいか私が教えて…」

 プリムは呆れたような驚いたような声を出しながら、魔眼の説明をしはじめようとする。

 

 そんなこと言われても知らないものは知らないし、

「知らなくても生きていけるんでね!」

 悪態をつきながら、右ストレートを打ち込む。

 

『三日月蹴り《ムーンシュート》』

 

 俺の拳が届く前に、プリムは体を捻り、高速の後ろ回し蹴りが俺の側頭部を叩き、体を壁に打ち付けられる。

 

「ッ〜〜〜〜」

 激痛で声にならない音が口から漏れる。

「人が気持ちよく話してるんだからちゃんと聞きなさいよ」

 プリムは床に転がる俺の事など気にもとめず、悦に浸った表情で話し続ける。

 

「この魔眼は見た物の魔力の流れを見ることができるの、魔力の流れは力の動き。あなたが右手で殴ろうとすれば、動く前に右手の魔力にゆらぎが生じる。それが分かれば先回りして動けるって訳よ」

 

「わざわざ、ご丁寧に説明どうも」

 さっきの蹴りのせいで目眩を感じながらも、なんとか立ち上がる。

 

「でもそんなこと、敵に教えていいのかよ?」

 

 俺の指摘にプリムは(あざけ)るように笑いながら、。

「知ったところで、あなたにはどうしようもないでしょう?」

 

「そうでもないかも知れないぜ?」

 

 魔力の流れを見るって事なら…可能性はある。ただ、もう少し時間がいる。ほんの少しでもいい、時間が。

 

「そんなみえみえの強がりに騙されるわけないでしょ?さ、もう終わりにしましょうか。いい暇つぶしにはなったしね」

 プリムはそれだけ言うと、足を上げて構える。

 

 

 まだだ、もう少し。

 

 

「ビビってんのか?」

「は?」

 プリムの上げた足が、少し下がる。

 

 食いついたか?

 

「奥の手があるから出してやるって言ってんのに、さっさと終わらせようとしてるからビビってんのかなって、いや別にいいよ、さっさとやってくれていいぜ?」

 

 苦しい言い分だが、少しでも時間が稼げればなんでもいい。

 

「見苦しいわね。そんなのがあるなら、もっと早く出すべきだったわね」

 プリムは冷たく言い放ち、構え直そうとする。が、

 

 今度は足が完全に下がる。その顔からは、もう余裕など感じられないほどの焦りが伺える。

 

 

「あんた、それ、どういうことよ?」

 

 

 支援魔法が切れたせいの、全身の倦怠感を表に出さないようにしながら、精一杯のしたり顔を見せる。

 

 

 

「未来が見えるんだろ?だったら見てみやがれ!」

 

 

 魔力器官がないせいで、魔力を持たない人間の、渾身の一撃がプリムを襲う。

 

 

『正拳突き』!!

 

 

 

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