「まったく、何回言えば分かるんだよ!変な魔獣にちょっかい出すなって言ってるだろうが!」
ギルドに帰ってきて、泥だらけの荷物を置きながらキーラを叱る。
「ごめんって言ってるでしょ?勝てると思ったのよ」
まったく反省の色を見せないキーラは悪態を吐きながら自分の防具を外す。
「お前一人なら勝てるかもしれないけど、こっちはクゥだっているし、俺は攻撃されたら避けれないんだからな!」
「二人共、喧嘩は、あの、えっと…」
クゥはあたふたして俺とキーラの間を行ったり来たりしている。いつもなら困った顔のクゥの頭でも撫でてあげたいと思う所だが、今はそんな気分ではない。
「まったく、迷惑しかかけられないのかお前は」
「だからさっきから謝ってるでしょ!?私だってね良かれと思って…もういいわよ先に帰るわ」
「キーラちゃん待って下さい!」
キーラは一つ溜息をついた後にさっさとその場を後にして、その跡をクゥが追いかけていった。
「なんか俺が悪いみたいな感じじゃん」
一人取り残された俺は受け取った報酬を持って大衆浴場に寄ってから、コルト亭へ帰る事にした。
コルト亭に帰ってからは、なんだかいつもより味が薄く感じるご飯を食べた後、夜も更けてきたので自室へ戻ってベッドに腰掛けた時、ドアをノックする音が聞こえる。
「コウイチさん、いますか?」
ドアの向こうからクゥの声が聞こえる。
「ああ、いるよ」
「入っても?」
ベッドから立ち上がり、ドアを開けてクゥを中へ招く。
「どうしたんだ?こんな時間に」
「あの、今日の事で少しお話ししたくて」
どこか物憂げな表情の彼女を椅子に座らせて話しを聞く事にする。
「キーラちゃんは時々、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ無鉄砲ですけど」
ちょっとではない気がするが…
「でもでも、彼女は自分の装備の一部にコウイチさんがお金を出してくれたのを早く返したいと思って、稼ぎのいい魔獣を討伐しようとしただけなんです」
確かに、装備を買うにあたって少しばかりお金は出したけど…
「だからって、クゥや俺が危ない目に合うのは違うだろ?」
「私なら大丈夫です。最近は、攻撃魔法も覚えようかと思ってたところですし」
クゥはそう話しながら笑ってみせる。
「でもクゥ、攻撃魔法は覚えたくないんだろ?」
そう、彼女は全ての魔法の適性を持っているのだが、誰かを傷つけるのが嫌で攻撃魔法は覚えないようにしているはずだが。
「いいんです。私が攻撃魔法を覚えるだけで今より稼げる魔獣討伐にも行けますし、二人の足を引っ張りたくないんです」
「クゥは足なんて引っ張ってないよ。それにキーラにも、もう怒ってないから大丈夫」
「ほんとですか?」
「あいつ、誰かが注意しないと暴走しそうで心配なんだよ。俺からもキーラには謝っておくからさ」
今にも泣き出しそうなクゥを慰めるように頭を撫でて微笑みかける。こんな小さな子に気を使わせるなんて、自分が情けないな。
「今日はもう遅いから部屋に戻って寝るといい」
クゥが落ち着くのを待ってから彼女の部屋に送る事にした。
「すいません。泣いちゃったりして」
「大丈夫だからさ。おやすみクゥ」
「おやすみなさい」
クゥがドアが閉めるのを確認してから、一つ息を吐き自室へ戻る。
「やっほー ツガヤマ コウイチ あんたの大好きなクレナちゃんやで」
ドアを開けると、ふざけた調子の赤髪の女がたこ焼きを口に運びながら、部屋の椅子に我が物顔で座っていた。
その人は俺をこの異世界に送った、女神クレナその人である。
言いたいことは山ほどあるが、ここは久しぶりの再会だし粋な挨拶でもしておこうではないか。
「間に合ってるんで、帰って下さい」
俺は笑顔で言い捨てる。