絶対不可避の異世界更生   作:浅葱 沼

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情報収集と実感

 

 タートス村へ向かう道中

 

「そういえばまだ名乗ってなかったな、俺の名前はゴートだ。よろしくな!」

「俺はツガヤマ コウイチです。よろしくお願いします」

「おいおい、敬語なんていらないぞ。同じクレナ教徒じゃないか」

 

 一緒にしないで欲しい。

 

「じゃあ、改めてよろしくゴートさん」

「さんもいらねぇよ!コウイチは随分と礼儀正しいな」

 

 ゴートはそう言いながら豪快にがははと笑う。

 いい人なのは分かるのになぁ。なんでクレナ教なんぞに…

 

「ならゴート、俺田舎から出てきて世間の事に疎くてさ。色々質問してもいいかな?」

「おうよ。俺が答えられる事ならなんでも聞いてくれ」

 

 異世界に来て初めて会った人がいい人で助かった。とにかく俺はこの世界のことを知らなさすぎる。まずは情報収集だ。

 

 だがとりあえず今一番知りたいことは…

 

「クレナ様ってどんな神様なの?」

 俺の質問にガジは顔をしかめた。

「そんな事、クレナ教徒のお前さんなら知ってるだろ」

 まあそう思いますよね。

「いやぁ、うちの親がクレナ教徒だったから俺もクレナ教なんだけど、俺が小さい頃に両親とも死んじゃってさ。村に他のクレナ教徒もいなかったから、さっきの祈りのポーズしか知らないんだよね」

 

 もちろん嘘だが。

 

「そうだったのか。大変だったんだな」

 俺の話を聞いて、ガジは少し涙ぐんでいた。

 この人、俺でも壺かなんか売りつけられそうだな。

「よし!俺がクレナ教がなんたるかを教えてやる」

 

 ゴートの熱心な話は長かったので割愛するが、まとめると、クレナ教は極東から伝来した宗教で、信仰している人が少ないマイナーな宗教らしく、クレナは武の神様として崇められているらしい。(そのため武闘家などが多く信仰している)

 

 その後は、ここがクエス王国という国の西の端に位置する場所だという事を教えてもらった所でタートス村に到着した。

 

 村は高さ2メートル程はある、丸太を立てて縄で縛った壁に囲まれているようで、同じぐらいの高さの木製の門から中に入るらしい。門の前には門番らしき若い男が立っていた。

 

「おかえりゴートさん。狩りはどうだった?」

「おう、今日はいいジブウサギが獲れたぞ。しかも今日は珍しく、客人もいるぞ!」

 

 どうも、獲物のコウイチです。と一礼。

 

「あはは、俺は門番のサクだ。なんにもない所だけど歓迎するよ。」

 

 柵の中は思ったよりも広く、今入ってきた所の反対の柵は目を凝らしても見えず、緑の野原と小麦?と思われる物を育てている畑が広がっている中に、家がぽつぽつと建っている。

 

「なんで村にこんな柵に門番までいるんだ?」

 畑と野原に挟まれた、土の道を歩きながらゴートに聞いてみる。

「まあこの辺はまだ平和だが、近くに森もあるし、いつ魔獣が出てくるか分からんからなぁ」

「魔獣!?」

 

 俺の驚きの声にゴートも驚いた様子で、

「なんだ急に大声出して、魔獣ぐらい大なり小なりどこの森にもいるだろう」

 

 魔獣って俺の想像しているような怪物で合ってるんだろうか。

「いやごめん、俺のいた所では魔獣なんて出てこなかったから」

「コウイチ、お前本当にどっから来たんだ?魔獣も出てこないなんて所、聞いたことないぞ」

 

 日本っていう所なんですけど、知るわけないよな。

 

 俺が黙っていると、

「まぁ無理に詮索したりはしないさ。誰にでも知られたくない事の一つや二つ、あるもんだしな。さあ着いたぞ」

 

 前を見ると小さな木造の家が立っていた。家の隣に木が一本立っていて、少し離れたところに、小屋が一つ立っているが、それ以外は特に目立つものは何もない。なんというか…

 

「今飾りっ気のない家だと思っただろう」

「い、いや?そんな事全然思わなかったよ?シンプルな感じでいいじゃないか」

「嘘つけ、顔に出てたぞ」

「………すいません」

「あっはっは、まぁこの辺のじゃ一番簡素な家なのは確かだから間違ってないがな。まぁ寝れさえすればどこも同じよ」

 ゴートはそう言いながらドアを開けて中に入るように勧めた。

 

「おお」

 

 家の中に入ってみると思ってみたよりいい家だと感じた。木造だからなのか、どこか暖かさが感じられて安心する。物は外と同じで生活するのに最低限の物しかないが、そこもまた味があるというか。

 

「案外いい家だろう?」

「だね」

「やっぱりお前は分かりやすくて面白いな」

 

 すぐに飯を作るからくつろいでてくれと言い、ゴートはキッチンに向かった。

 

 

 やっと一息つける。異世界に来たばかりで右も左も分からなかったが、人のいる村にこれて良かった。これからどうしていくか考えなければ。俺はボーッと外を眺めながら現状や将来についてぼんやりと思案する。

 

 

 てか俺、無一文じゃね?

 

 

 着てる服しか服もないし、そもそも家もないし、職もなし。これは俗に言う浮浪者という事では?

 

 俺がお先真っ暗な事に絶望して、うんうん悩んでいると、声がかけられる。

「コウイチ、飯ができたぞ、食おう」

 勧められるまま、テーブルにつき、出てきた料理を見る。シチュー?のようなクリーム色のスープとパンが置かれていた。このスープに入ってるのってさっきのデカいウサギの肉か?

 

「ほら、冷めちまうぞ、早く食え」

 ゴートは先にシチューとパンを食べ始める。

 少し抵抗があるが、シチューにスプーンを入れて一口啜る。

 

 ………美味い。めちゃくちゃ美味い。

 

 俺は腹が減ってたこともあってか夢中でご飯を流し込む。

「おいおい、あんまり急いで食べると喉に詰まるぞ」

 ガジは少し嬉しそうに笑いながら俺が食うところを見ていた。

 

「これ美味いよ、すげー美味い」

 気づくと、目から涙が流れていた。

 

「おい、大丈夫か?」

「あれ、なんで泣いてんだろ俺

             ごめん、俺、なんで」

 俺は自分がなぜ泣いているのか説明できず、言葉もうまく出てこないことに困惑した。

 

「心配するな、お前さんにも色々あったんだろう。ここは安全だし、いたけりゃいつまでもゆっくりしてていいんだぞ」

 ゴートが優しく声をかけながら俺の肩を叩いてくれた。

 

 俺は泣いた。

 声を出しながら泣いたのなんて何年ぶりだろう。

 

 俺は死んで、何も知らない世界に飛ばされて、これからどうすればいいかも分からないし、知り合いもいないこの世界で生きていく事に対しての不安が込み上げてきたんだと思う。

 

 その日は泣き疲れていつのまにか寝てしまった。

 

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